もう2、3年前になるでしょうか、JRの大阪近郊を走る電車で、車両のドアが閉まる時の車掌のアナウンスが変化した時がありました。
それまでは「ドアが閉まります」であったのが、「ドアを閉めます」になったのです。車掌のアナウンスに限らず、駅の構内アナウンスでもほとんど同時に変わっていったように思います。
聞きなれた言葉が急に変わると違和感があるものです。それと同時に、以前より少し厳しい言い方であるように感じました。「なんとなく閉まってくるドア」から「意思を持って閉まって来るドア」に変わったのです。
例えば京浜急行電鉄では、以前から「ドアを閉めます」を使っているようですが、確かに他の鉄道会社に比べて、駆け込み乗車をしてドアに挟まった乗客に対して厳しいように思います。
また、「JRでは定時運行に努めております。駅でのスムーズな乗り降りにご協力ください。」という決まり文句も、この頃から始まったように思います。
当時は、年に数回のダイヤ改正の度に速度の向上が図られ、新快速の新型車両によって130Kmの高速運転が始まった頃でした。主要な駅間に要する時間が、新しいダイヤが発表されるごとに短縮されていきました。
おそらく高速運転だけでは新ダイヤを実現するには十分でなく、停車駅での乗降時間も削られていったものと思われます。
インターネットで調べてみると、日経ベンチャーのサイトに“「駆け込み乗車」という習性につける薬はあるか”と記事がありました。
その記事によると、どうも「ドアを閉めます」と言い出したのは、JR宝塚線の宝塚駅が2001年8月に始めたのが最初であるとされています。宝塚駅が、今回の事故を起こした列車の始発駅であったことは、単なる偶然ではないかもしれません。
JR宝塚線の事故から1ヶ月が経ちましたが、停車駅での乗降時間を短縮したことが、列車の定常的な遅れの原因であるとされています。
JR西日本は、「ドアを閉めます」、「定時運転に努めております」を連呼するようになる以前のダイヤに、戻す必要があるのかもしれません。