498.アーバンネットワークの功罪 (2005/05/08)

今年は連続して休んだ為、明日から出勤です。休みが長くなればなるほど、休み明けの出勤は気が重くなるものです。通勤に使っているJR宝塚線の復旧も、まだ全く目処が立っていないようです。


今回の事故原因の一つに、列車のスピードアップが挙げられています。確かに、速度が増せば増すほど危険性が増すのは確かです。安全性の向上が、速度を上げる上での必須条件であることは言うまでもありません。


以前、新幹線の運転を紹介したテレビ番組を見たのですが、時速200キロメートルを超える新幹線の場合、運転手は列車の前方を見なくても良いそうです。つまり、前方の確認義務がないのです。


人間の視界に障害物が入ってからブレーキをかけても、全く意味がないのでしょう。運転手が注視するのは、運転台の表示灯や速度計、運行計画表と時計です。新幹線の安全性は、従来の鉄道と全く違う次元で保たれているようです。


JR西日本の、在来線におけるスピードアップ過密ダイヤによって、日常的な遅延が発生していることに疑問はありません。しかし、遅延にはそれら以外にも多くの原因があります。特に、旧東海道・山陽線は、姫路エリアから米原に至る長距離を走り抜けるため、そのどこかで発生したトラブルが全体に影響を及ぼすことが頻繁にあります。


濃霧や積雪の影響、早朝に起こった人身事故、踏切での無理な横断、車両や信号機の故障、九州から来る夜行列車の遅れ、架線事故、等々。他の私鉄に比べて圧倒的に長い距離を一つの列車が走る事によって、遅延につながる原因の発生頻度が高くなってしまうのです。


また、JR尼崎駅で2つの線が合流するため、それぞれの遅延が互いに影響を及ぼしあい、さらに遅延が頻発することになります。


しかし、長距離路線によるメリットも見逃すわけにはいきません。観光のために兵庫県の姫路から滋賀県の長浜まで、新快速で訪れる人は決して少なくはありません。また、これまでは通勤・通学が不可能だった地域が、JRのアーバンネットワークによって可能になったケースもあります。


ニュータウンをいくつも抱える三田市が、人口増加率で全国トップを誇ったのも、JR福知山線の電化がなければあり得なかったでしょうし、これまで大阪地区から通学が困難だとされていた奈良の学校も、今では通学圏内に入っています。


JR西日本のアーバンネットワークに対抗するように、阪神電鉄、山陽電鉄と近畿日本鉄道を結んで、姫路ー奈良直通特急が計画されているようです。


従来、神戸方面から奈良方面に抜けていく直通ルートがなかったため、京都に比べて奈良は実際の距離に比べて遠い印象がありました。新しいルートによって、奈良と神戸の実質的な距離が縮まる事でしょう。


日本の都市の発達において、鉄道は大きな役割を果たしてきました。しかし、この事は逆に考えれば、鉄道の安全性の崩壊は、同時に都市機能の崩壊を意味すると言うことではないでしょうか?


今回の事故の経験を踏まえ、理想的な鉄道とは何か?都市機能のあるべき姿は何なのかを、真剣に考える事が大切だと思います。