個人情報保護法が、今年4月1日に全面施行されました。これまで個人の情報は、それ程注意を払って取り扱われることがなかったため、知らないところで名簿が売買されていたり、アンケートに書いた内容がとんでもないところで流通していたりしていました。
子どもが通う小学校でも、クラス替えに伴う名簿の作成をしていません。ですから、生徒の電話番号や住所は、本人から直接聞くしかありません。また会社でも、昔は社内の電話番号のリストを配っていましたが、かなり前から作成しなくなりました。
個人情報保護法が施行されると、病院の受付で患者さんの名前を呼ぶことが出来なくなるので、取り違えが起こりやすくなるという心配がされていました。しかし、厚生労働省から次のようなガイドラインが出されています。
受付での呼び出しや、病室における患者の名札の掲示などについては、患者の取り違え防止など業務を適切に実施する上で必要と考えられるが、医療におけるプライバシー保護の重要性にかんがみ、患者の希望に応じて一定の配慮をすることが望ましい。
これを受けて、基本的には患者さんの名前を呼び、本人が希望した場合だけは名前以外の方法を使うという医療機関がほとんどのようです。また、名前で呼ぶときも、必要最小限の音量と繰り返し回数に留めるように心がけると説明している場合が多いようです。
銀行の窓口などで、番号札を発行して順番に対応している場合がありますが、番号で呼ばれても気付かない人が多いようです。自分の名前には本能的に反応しても、慣れない番号には意識していなければ反応しないのでしょう。
医療機関に置いては、個人情報の保護よりも取り違えの方が事が重大ですから、名前に代わる呼び方は難しいかも知れません。
ところで、USでは名前を愛称で呼ぶことがほとんどです。「クリス」やら「ジョー」やら「スー」のように、よく使われる覚えやすいものがほとんどです。USでは初めてあった人に、"Mr.xxxx"なんて呼び方をしても、「ただクリスと呼んでくれ!」と言われる事がほとんどですが、ヨーロッパ人の場合は、日本と同じく名字で呼ぶようです。
以前、物知りのアメリカ人と話しをしていたとき、なぜUSだけが愛称を使いたがるのかを考えたことがありました。その時の結論は、USは移民の国であり、名字(Last Name)には出身国の特徴が表れるため、それを知られたくない人が、意識的に名字を使うことを避けたからであろうと。
McDonaldのように、頭にMcがあるだけでアイルランド出身だと判ってしまうものもありますし、何となくドイツ系だなと思う名前を見つけるのはそれほど難しくはありません。名前を出すたびに出身地も知られてしまうのがイヤだった人もいたのではないでしょうか。
そこで出身地の情報を持たない名前(First Name)をもっぱら使い、しかもそれを簡略化することによって、性別が判る程度の情報しか含まないようにした愛称を、日常的に使うようにしたのではないかと言うのです。
つまり、USで使われている愛称は、ハンドルネームそのものなのです。
日本でも携帯メールの普及によって、ハンドルネームを日常的に使っている人が増えています。また誰が見ているか分からないインターネットの世界では、ハンドルネームは必須と言えるでしょう。
個人情報保護法の施行によって、自分の名前をむやみに大衆の面前で使うことを躊躇するようになれば、そのうち病院の受付ではハンドルネームを呼ぶようになるかも知れません。
「ぱむとろさん、3番の診察室にお入りください!」