676.洗濯槽には手を入れるべからず! (2008/09/10)

最近、回転中の洗濯機に手を入れて怪我をする事故が相次いでいると、asahi.comで警告しています。


脱水中は洗濯槽が高速で回転するため、ふたを開けてもすぐには止まらず、回転に気付かずに手を入れて指が切断されたり、子供が誤って手を入れて腕を骨折するという重傷になるケースもあるそうです。


2槽式が主流だったころは脱水槽にはプラスチックのふたが付いていて、必ず装着するように但し書きがありましたから、容易には指や腕に衣服が絡みつくことはありませんでした。


全自動式が普及してプラスチックのふたがなくなり、回転している状態で手が入ってしまうことが以前より起こりやすくなりました。また、洗濯槽が2槽式に比べて大型化していますから、絡みついた時にかかる力がより大きくなっています。


あるケースでは、洗濯完了のブザーが鳴ったにもかかわらず、まだ洗濯槽が惰性で回転を続けていて、手を入れ怪我をしたそうです。


考えてみれば、洗濯機が大型化と全自動化により洗濯槽が以前より大きくなり、危険性が高まったにもかかわらず、回転を止めるブレーキ性能が向上してこなかったところに、放置されてきた問題があるように思います。


家電製品協会は、ふたを開けてから回転が止まるまでの時間が、15秒以内でなければならないという規格を設定しているそうです。


しかし、果たして15秒以内というのが妥当な規格なのでしょうか? 15秒以内で止まれば、これらの事故は未然に防ぐことができたのでしょうか?


私は、ただ単にメーカーが低コストで実現できるための規格であるのではないかと思います。


USで生活をしていた時、いくつかのメーカの洗濯機を使っていたことがありました。今で言うところの8Kgとか10Kgぐらいの容量だったでしょうか。乾燥機は別で、洗濯から脱水まで行うものをWasherと称していました。


何せ大型で動作中は大きな音を出しますから、さぞかしふたを開けてもかなり長い時間回転し続けるだろうと思って、脱水の回転が最高速に達したころふたを開けたことがありました。


「カーン!」


金槌で金属の塊を殴ったような音がして、現れたのはゆっさりと揺れている洗濯槽でした。直前まで轟音を立てて回転していたはずなのに、ふたを開けた途端停止しているのです。


もう一度やっても同じこと。洗濯槽は寝起きの如く、ゆっさりと揺らいでいるだけです。


ふたを開けた時の甲高い音とゆっさり洗濯槽! 恐ろしくなりましたね、どうやって止めているのかを考えると。


これは「ブレーキをかけている」というより「衝突している」という感じです。何度も試していると、確実に洗濯機が壊れそうです。


この停止装置の耐久性がどの程度あるのかは判りません。しかし、もし洗濯機が壊れやすいとしても、人間の指や腕を壊してしまう日本製の洗濯機よりは、はるかに安全だったのだなと思いました。

654.Globalizationの初夢 (2008/01/10)

最初「グローバライゼーション」と書いていたのですが、「グローバリゼーション」とどちらが正しいか迷っているうちに、面倒臭くなって英語のままにしました。(面倒くさがり!)


新年のメッセージをやり取りしている時に聞いたのですが、以前パリ近郊にある半導体工場がリストラの対象になり、その後しばらくは合弁会社によって辛うじて運用されていたのですが、最近になってロシア企業に身売りされたそうな。


昔なら半導体を東側の諸国に販売することさえ有り得なかったのですが、最近は先端技術を持った企業が中国企業に買収されることも珍しくなくなってきました。経済活動に関しては、一部の国を除き、国境は消えつつあるのでしょう。


昨日は、関西エリアで広範囲に濃霧に覆われたため、しばしば通勤電車が停車することがありました。景色が停止した電車の中で身動きが取れずに立っているのは退屈この上なく、隣のおじさん(私もおじさんですが)の新聞を盗み見していると面白い記事が。


どうも国内の新車販売が振るわないことを解説している記事のようで、最近の若者は自動車などの機械ものに興味を示さなくなったことに、その原因があると書いています。


確かに昔はかっこいい車を持つことは、若者にとってステータスでした。新しい車をいち早く手に入れることで、仲間内でのヒーローに成り得たのです。私が入社したころは、誰もが車を手に入れるためにお金を貯めたものです。


ところが、最近になって若者が興味を持つものが多岐にわたるようになったために、車はそのオタクアイテムの一つに過ぎなくなったのでしょう。


今や交際相手の興味を引くためには、車なんかを所有することより、携帯のメールに小まめに返事を返す方が余程大切なことだそうです。


う~ん、携帯に負けたのはPDAだけかと思っていましたが、車も同類だったとは気付きませんでした。


最近はカーナビの上にiPodが合体するものもありますから、確かに車とモバイル機器に親和性があるのは頷けますが、車の売れ行きに携帯電話の動向が影響しているとは、グローバル化によってマーケティングも難しくなったものです。


ひとつの商品の売り上げや流行が、全くセグメントの異なる商品によって左右されるのですから、これまで以上に広範囲な競争相手に対して対策を講じなければならないと言えるでしょう。


しかし逆の見方をすれば、これまで特定の競争相手に対して劣勢に立たされていた商品も、全く異なる種類の商品とドッキングさせることによって、新たな活路を見出すことも可能になるのではないでしょうか?


グローバル化をきっかけに、Palmがよみがえるのも夢ではないかもしれません!


では、まず手始めに、カーナビにPDAを乗せてみますか!(もう少しひねらんかい!)

606.正露丸訴訟について (2006/10/25)

日経ビジネス10月16日号の「敗軍の将兵を語る」という記事に、正露丸訴訟で敗訴した大幸薬品の社長の言葉が掲載されています。


この訴訟については、すでに語り尽くされている感がありますが、この記事を読んで少し疑問に思ったことがありましたので、書かせていただきたいと思います。


この訴訟は、「平成17年(ワ)第11663号不正競争行為差止等請求事件」として、大阪地裁で平成18年7月27日に判決が言い渡されたものです。事件名として不正競争行為とあるように、「正露丸」という商標や製品のパッケージの意匠を中心に争われています。


原告の大幸薬品の主張は、以下の通りです。



  1. 最近10年だけに限っても約60億円の宣伝広告活動を行ってきた。
  2. 同期間に約285億円の販売実績を記録しており、正露丸という名前の医薬品のブランドを築いている。
  3. 被告の和泉薬品工業が、その類似した医薬品名と製品パッケージによって、大幸薬品の商品イメージに便乗した商売をしている。
  4. 消毒薬のクレオソートを主成分とする点で似た医薬品であるが、和泉薬品工業の製品には「ロートエキス」という緑内障,排尿困難,心臓病等の患者には症状を悪化させる可能性がある成分が含まれており、それにより大幸薬品の製品に対する信頼や信用が毀損されている。

さて、判決文を読んでみると、結局大幸薬品の「ラッパのマーク」と、和泉薬品工業の「瓢箪マーク」を、消費者が混同するかどうかだけが焦点になっていることが分かります。


製品のパッケージそのものの類似性は当然のものとして、マークが明らかに異なるために混同する恐れはないと言うのが、判決文の趣旨です。


さて、日経ビジネスの記事の中で大幸薬品の社長は、「争点が商標や意匠にすり替わってしまったが、本当に訴えたかったのはロートエキスの副作用による信用喪失であった。」と言われています。実際に消費者から苦情があり、返品された商品を受け取ってみると異なるメーカーのものであったことが頻発するようになってきたため、訴訟に踏み切ったと言うことでした。


判決では、ロートエキスが添加されている事による副作用に関しては、もし現に症状の悪化が生じているとしても、包装箱に禁忌例を記載するなどによって解決すべき問題であるとしています。また、ラッパ瓢箪のマークが明らかに異なっているので、それらを消費者が取り違える可能性はないとしています。


ここで消費者の立場で考えてみると、同じ「正露丸」という医薬品名である以上、一般にその成分に大きな違いがあるとは想像しにくいことです。「ロートエキス」が配合されていることが成分表示から知ることが出来ても、その成分によってどのような影響があるかは容易には分かりません。


ロートエキスは、一種の興奮状態を作り、腸の動きを一時的に止めることによって腹痛を鎮める効果があるそうですが、その為に細菌性の下痢の場合には腸内で細菌が繁殖し、悪化することがあるそうです。


O157が流行した時に、ある種の胃腸薬を服用すると、かえって症状を悪化させるという例が報告されていました。ロートエキスがその一因として考えられるのなら、成分を解りやすい場所に表示する事が、ラッパや瓢箪のマークにこだわるより重要でしょう。


一般的に、クレオソート製剤と言うことで全く同じ効能があると思っていましたが、添加された成分によって大きく異なってくると言うのなら、同じ「正露丸」という製品名を付けるところに問題があるのかも知れません。


登録商標の「正露丸」をめぐっては、過去に最高裁判所で商標の無効、すなわち普通名称として広く使うことを認める判決が出されています。しかし、消費者にはいまだに特定の商品名だと思っている人が多いようですし、ましてや成分に違いがあると思っている人は少ないのではないでしょうか?


「正露丸」は元来「征露丸」と呼ばれ、日露戦争当時から使われてきた医薬品名だそうですから、類似した医薬品が同じ名称を付けることは仕方がない部分もあるでしょう。そもそも、「正露丸」という普通名称か商品名か消費者が容易に判断できない曖昧な名前を使い続けることが、すでに問題であるように思います。


大幸薬品は、大阪高裁に控訴したようです。控訴審では、商標・意匠の問題にとどまらず、医薬品表示や販売方法にまで踏み込んだ判断を仰ぎたいものです。


参考までに、判決文(PDFファイル)のURLを、リンクを張らずに記載しておきます。興味のある方はご参照ください。→ http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060731093511.pdf

605.番号ポータビリティー制度 (2006/10/20)

番号ポータビリティー制度(電話番号継続制度)が、10月24日から始まります。日経ビジネス10月16日号に、どのぐらいこの制度を利用しようとしている人がいるかを調べたアンケート結果が、掲載されています。


ぜひ利用したいという人が2%、今後検討するという人を会わせても20%程度だったようです。携帯電話会社のシェアが大きく変わると予想されたことから、各社は既存の顧客の確保と新規顧客の取り込みに躍起になっていましたが、すぐに勢力図が一気に変わってしまうことはなさそうな気配です。


電話会社を変えたいと思っている人の内訳は、ソフトバンクモバイル(旧ボーだフォン)を使用中の人が約3割NTTドコモ約2割au約1割だったそうです。また、新しく契約したいと思っている会社は、auが圧倒的に多かったそうです。どちらからも、今はauが人気を集めていると言うことが出来るでしょう。


約8割の人が、番号ポータビリティー制度の利用を考えていないと言うことですが、その一番大きな理由は、「メールアドレスを変更する事が煩わしい」と言うことのようです。電話番号が変わらなくても、メールアドレスを変更しなければならないので結局通知して回らなければならず、電話番号が変わるのと手間はほとんど変わらないと言うことのようです。


携帯電話が普及し始めた頃はおまけにしか過ぎなかった携帯メールも、今や欠かせないものになっていますから、そのアドレスを変えることは、電話番号を変えるのと同じぐらいの労力を伴います。


一部の携帯電話会社では、POP3メールなどに対応した機種もありますし、携帯電話会社が提供するメールサーバーで、".com"や".jp"などの独自ドメインが使えるものも出始めています。今後、携帯電話会社のサブ・ドメインを使ったお仕着せのメールアドレスではなく、独自ドメインを使ったオリジナルアドレスを取得して、それを継続的に使う人が増えてくるのではないでしょうか?


また、メールサーバーを携帯電話やプロバイダーと切り離して、独立したサービスとして提供するメールサーバー・プロバイダーが主流になってくるかも知れません。そうなった時に初めて、電話番号やメールアドレスに束縛されずに、携帯電話を選択することが出来るようになるのでしょう。


番号とメールアドレスの両方がポータビリティーを備えたとき、料金制度や接続の安定性など、携帯電話の基本的な性能が真に問われることになりそうです。

595.リチウムイオン電池問題 (2006/08/26)

ソニー製リチウムイオン電池の回収騒ぎが起きています。デルアップルノートブックパソコンに使われている充電池において、使用条件によってはリチウム金属が析出し正極と負極が短絡することによって、発熱発火の危険性があると言うことです。


安全性の観点からこの問題を捉えると、近年海外旅行にノートパソコンを持参する人が増えてきており、機内での使用も可能になっていることから、飛行中の発火による事故の危険性が問われています。


機内にはあらゆる危険物の持ち込みが禁止されて来ました。以前なら預け入れ荷物の中なら持ち込めた物でも、最近の状勢ではあらゆる危険物を排除する傾向が強まってきています。


航空機の運航に障害を及ぼす可能性がある物は徹底的に排除する構えですから、このままリチウムイオン電池の安全性に疑問がもたれる状態が続けば、ノートパソコンの航空機への持ち込みが禁止される可能性も無いとは言えません。


電池が発火する事故は、これまでおそらくパソコンの使用中に起こることがほとんどだったと思われますが、微弱な電流は常に流れているでしょうし、自然放電による電解液の変化もあるでしょう。ソニー製品に限らず、リチウムイオン電池の安全性に対する検証を、業界全体で行っていく必要がありそうです。


また一方、製品の品質という観点からは、例え発火に至らないような場合でも、電池に品質的な問題があることが分かっているのなら、全数を市場から回収し交換に応じる必要があるのではないかと思われます。


新聞の報道によると、今回回収に応じるのは、デルとアップルのノートパソコン用として出荷されたものに限るとされているようです。ノートパソコンの電源部にも安全装置があり、もし電池内部で短絡などによる以上が検知されたときは、自動的に電源をシャットダウンする為、安全性には問題と言うのが理由のようです。


しかし、リチウムイオン電池が期待されるべき品質を満たしていないのにも関わらず、発火しなければ交換に応じないと言うのは、許されるのでしょうか?


「この湯沸かし器は、火を噴いて火事になる場合は交換いたしますが、火が勝手に消える場合は安全性には問題がありませんから、修理費を頂きます。」では通用しないでしょう。


ソニーはアイディアや新規性で長けたものを持っていながら、品質面では長年問題を抱え続けてきました。今回の事故をきっかけに、ソニータイマーなどという不名誉な称号を、拭い去ってもらいたいものです。