企業の顧客情報が漏洩したというニュースが、後を立ちません。インターネットのサイトが不正にアクセスされたり、ノートパソコンを盗まれたという類の事件は、日常茶飯事になってしまいました。
サーバーが狙われた場合は、サーバーシステムのセキュリティーを強化することになりますが、ノートパソコンを盗まれた場合は、所有者に管理の徹底を促すしかありません。
このノートパソコンの管理と言うのが意外と厄介なのです。第一常に身につけておくには大き過ぎます。また、パスワードをかけろと言われても、ディスクを取り出して他のパソコンにつなげばデータが読めるのでは、意味がありません。
本体やディスクにそれぞれパスワードをかけることができ、ディスクを取り出しても他のパソコンではアクセスできない製品もあるようですが、それでも全てのパスワードをかけていないケースが多い現状では、完全にノートパソコンからの情報の漏洩を防ぐのはそう簡単なことではなさそうです。
その対策として、ステートレス・デバイスやディスクレス・パソコンを開発したパソコンメーカーもあります。鳥取県がディスクのないパソコンを一斉に導入しようとしているのも、ディスクが付いたままのノートパソコンでは、いつまで経っても情報の漏洩を防ぐことができないと判断したからでしょう。
個人情報保護法が施行されたこともあり、組織として個人情報の管理を徹底しておくことが必要であるという認識が、広まってきているのでしょう。
一方、PalmOneがこの度発表した新製品LifeDriveは、PDAでありながら4GBのディスクを内蔵しています。ディスク内蔵で先行するザウルスと共に、今後のPDAのあり方を問うているように見えます。
情報の漏洩の原因になりかねないとハード・ディスクを、パソコンから外し始めたノートパソコンと、そのディスクを逆に内蔵し始めたPDA。これらの流れが同時に起こっているのは、単なる偶然でしょうか?
ノートパソコンが移動中にどこかに置き去りにされがちなのは、常に身に着けておくには大き過ぎ、重た過ぎるのが理由だと思われます。それに比べ、PDAは圧倒的に小さくて軽いですから、どんな時でも身に付けておく事ができます。
つまり、重要なデータが入ったディスクを、盗難の可能性が高いノートパソコンに内蔵することをやめ、常に身に付けることのでき安全なPDAに装備するようになってきたと言うことではないでしょうか。
機長さんが5月18日のProject Palmの中で、
「本当の意味でポケットに入るノートパソコン代理」
と言われている通り、PDAがノートパソコンに取って代わる日が近づいているのかも知れません。ノートパソコンが、さらなるダウンサイジング化を始めたのではないでしょうか?
ハードウェア的には、これまでのハンドヘルドにハード・ディスクを追加しただけに見えるLifeDriveの戦略が、見えてきたような気がします。
その目指すところは、ダウンサイジングをもう一歩進め、これまでのIT機器の主役であったノートパソコンに取って代わることにあったのです。さらに、ただダウンサイジングするに留まらず、これまでのノートパソコンにはなかったエンターテインメントをも包含する可能性さえも示しているのです。
そう考えると、handheldsではなくmobile managerでなければならない意味が理解できますし、LifeDriveとはまさに、生活(人生)の全てをこれひとつで操る、究極のIT機器を狙った戦略製品であることが見えてくるのです。
これまで、携帯電話とノートパソコンに挟み撃ちされていたPDAが、IP電話によって携帯電話の牙城を崩し、ハード・ディスクによってノートパソコンの領域を侵し始めたのです。
「PDAの時代はこれからだ!」
新たなIT機器の覇権争いが、今静かに始まっています。