今朝、今年中学一年生になった息子と駅まで歩いていた時、こんな話をしました。
息子 「よく野菜を食べないと体に良くないと言われるけど、ライオンは肉ばかり食べて野菜を食べないのに、どうして健康なのか分かる?」
おやじ 「わからんな。ゼーゼー!」(歩き急いで息が切れている。)
息子 「ライオンが食べる草食動物がいつも草を食べていて、ライオンはその肉を食べているので、野菜の栄養を草食動物の肉から取っているんだよ。」
そう言えば、時々クレジットカード会社から送られてくる雑誌の最新号に、おもしろいサイエンス・コラムがありました。タイトルは、
"You are what you ate."
西洋の古い諺だそうです。北海道大学の南川教授が研究されている「同位体地球化学」についての記事でした。その科学考古学とも呼ばれている学問は、化石などを組成する原子の同位体を調べることによって、外観からだけでは分からない環境の変化などを調査しようとするものです。
例えば、古墳や遺跡を調査した結果、イノシシを食用にしていた時代があったことが分かったとします。しかし、そのイノシシが狩猟されたものか、あるいは家畜として飼育されたものかによって、当時の生活を知る上で大きな違いが生じてきます。家畜であった場合は、狩猟の場合に較べて食料の確保がより安定するでしょうから、同じ場所に長い期間居住することが出来るため、組織的な社会が発達していた可能性が高くなります。
しかし、出土したイノシシの骨を眺めていただけでは、食用にしていたことまでは分かったとしても、野生のイノシシであったか家畜であったかは分かりません。
炭素原子には、質量が12のものと13のものがあり、通常植物はどちらも区別することなく光合成に利用するそうです(C3型植物)。ところが、光合成をする植物のなかでヒエやアワなどの穀物類(C4型植物)は、質量13の炭素原子をより多く光合成に使うそうで、その結果穀物を多く摂取したイノシシの骨には、質量13の炭素が通常より多く含まれることになるそうです。
この事により、これまで家畜としての飼育の証拠がはっきりしているのは、弥生時代(約2千年前)以降とされてきたそうですが、沖縄地方で縄文後期に出土するイノシシの骨から抽出された炭素原子の同位体の解析から、それらが家畜として飼育されていたことが分かってきたそうです。
同様に、古代人の骨の炭素同位体を観測することによって、農耕が始まった時期を推測することが出来るそうです。気候の寒冷化はC4植物の繁殖を促すため、人類が穀物の栽培を始めた時期と寒冷化の時期が一致する事が予想できるそうです。
なるほど、確かに "You are what you ate." ですね。
そう言えば、中学のころ理科で人体を構成する元素を覚えたことがありました。テストに出題されると思っていたので、自分なりの覚え方を考えて必至に覚えたことを思い出しました。今でも覚えているのは、
酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、カルシウム(Ca)、窒素(N)、リン(P)、塩素(Cl)、硫黄(S)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、フッ素(F)、鉄(Fe)
あと2つ元素があったのですが、さすがに思い出せません。体内に占める割合の高い順に覚えていたのですが、今インターネットで調べると順番が違っているようです。記憶がいい加減なのか、昔の理科の教科書が間違っていたのか、はたまた人体を構成する元素の割合が30年以上立つと変わってしまったのか分かりません。(たぶん記憶がいい加減!)
はじめの話に戻りますが、確かに元素と言う観点から見れば、ライオンの体を構成している元素には、草食動物が食べていた草を構成していた元素が含まれているはずでしょう。もしその草食動物がほとんど草しか食べていなかったとすると、ライオンの体は、ほとんど草を構成している元素からなっていると予想できます。
ただ、だからと言って、私たちが肉を食べれば、野菜を食べたのと同じであるとは言えません。食物を構成する元素は同じだとしても、物質が異なっているからです。
例えば、草に含まれるビタミンCが、同じだけ肉にもあるとは言えないでしょうし、一口にアミノ酸と言っても、その種類によって異なった作用を人体に与えるでしょう。
"You are what you ate."
されど
"What I eat are not what my foods ate." (何のこっちゃ!)