699."People walk by much too fast!!" (2009/09/13)

先月、携帯電話機種変更をしました。相変わらず分厚い使用説明書が付いてきました。


最初に携帯電話を持った時は、懸命に説明書を読んですべての機能を確認しようとしました。しかし、結局複雑な操作が必要になる機能は滅多に使うことはありませんでしたし、その時まで覚えていられるほど操作は簡単ではありませんでした。


携帯電話に限らずデジタルカメラやDVDレコーダーなど、デジタル家電と言われるものは簡単に機能を追加しやすいため、どんどん機能が増えて気が付けばメタボリック家電になってしまいました。


もう少しスリム化して、シンプルで健康的な昔のPalmのような製品が増えてくれば良いのですが、、、


さて、複雑化する家電にも搭載されているLSIを見てみると、半導体プロセスが微細化するにつれて設計工程が格段に複雑化してきています。


例えば、以前なら設計ルールを逸脱しているかどうかだけをチェックしておけばよかったのですが、今ではそれに加えて製造工程における微小部分での不適合をチェックするDFM(Design For Manufacturing)やDFY(Design For Yield)なども考慮しなければならなくなりました。


同様に論理設計を行うフロントエンド設計においても作業の複雑化に設計環境が対応できなくなってきています。特に複雑な回路の検証にかかる時間が飛躍的に増大してきたため、品質にかかわる問題も多くなって来ているように思います。


本当に、ここまでの複雑な機能を製品に詰め込む必要があるのでしょうか?


買っても使いこなせないユーザー、売っても儲からないメーカー、達成感を感じられない設計者。(それは私!)


「もっとゆっくり納得できる仕事をしたい」、「ゆったりとした日常の時間を過ごしたい」といった基本的な欲求を満たすことが難しい世の中になってしまいました。


USのバーモント州ストウ(Stowe)という小さな町があります。州内で一番高い山、マウント・マンスフィールドの麓にたたずむ美しいところで、冬はスキー、夏はハイキングやサイクリングで賑わいます。


バーモント州は"Green Mountain State"と呼ばれていて緑豊かな山がたくさんありますが、地ビールの名前にもなっている"Long Trail"と呼ばれる登山道がバーモント州を縦断していて、マウント・マンスフィールドの頂上まで登ることができます。


ストウには「サウンド・オブ・サイレンス」で有名なトラップ一家が移り住んで、今もその場所には"Trapp Family Lodge"があります。本館の一階にはライブラリーがあり、宿泊しなくてもロッジの雰囲気を味わうことができます。


ゆるやかに差し込んでくる日の光と、オーストリアに似ているという周りの山々の景色。知らぬ間に忘れかけていた「時が流れる」という感覚を、久しぶりに感じることができました。


そのライブラリーの壁に、1枚の色紙が掛けられています。


「休養のためにやって来たホテルの中を、人々は早足で歩きまわっている。もっと花を眺めて、その美しさを感じる余裕を持ったらどう?」


時の流れよりも早く急いで突き進もうとする私たちに、警告を促しているのではないでしょうか?






The flowers do their best to bloom,

the people walk by much too soon~



The flowers do their best to last,

but people walk by much too fast~



They ought to stop and drink it in,

to walk so fast by is surely a sin ~



The flowers plead to be admired:

"Enjoy our beauty – and don’t be tired!"




(Emilie Johnson, at 100, in 1992)






695.USの歴史博物館3: コロニアル・ウィリアムズバーグ (2009/06/15)

さて最後にご紹介するのは、ディズニー・リゾートに匹敵する規模を誇る、コロニアル・ウィリアムズバーグです。


確かに単純に規模だけを比較したらフロリダのディズニーワールドの方が大きいでしょうが、一日ではとても見て回ることができない滞在型のリゾートであり、内容の濃い趣向を凝らした展示やツアーには目も見張るものがあります。


場所はバージニア州の中央にあり、ワシントンDCからはそれほど遠くありません。ただ、日帰りではなく、2・3日じっくり滞在して見学したいものです。


入場者はビジターセンターから出発する専用のバスで回りますが、建物が点在する園内には明確な境界がなく、普通の街並みが歴史的建造物になってしまったような感じがします。


これまでご紹介してきた博物館が、どちらかと言えば庶民の暮らしぶりを伝えようとしているのに対し、ここでは18世紀の暮らしぶりを紹介するに留まらず、当時の上流社会の生活や、建国に携わった人たちの姿や政治・経済の様子を知ることができます。


また、本来は宿であったり酒場であったタバーン(Tavern)と呼ばれるレストランでは、昔のままの雰囲気の中で食事をすることができます。


その中の一つであるChristiana Campbell’s Tavernは、ジョージ・ワシントンのお気に入りだったそうで、当時を再現した素朴でボリュームのあるメニューを楽しむことができます。


夜になると、季節に合わせた特別なツアーが催されます。夜の明かりの中で聴く弦楽奏などは、昼間に見学したのとはまた違った雰囲気を味わうことができます。


夜の街頭では兵隊の行進があったり、クラフト製品のオークションを当時の衣装のままでやっているのに参加したり、朝から晩まで一日中園内を楽しむことができます。


ホテルはリーズナブルなホテルチェーンから選ぶことももちろんできますが、かつてモービル・トラベルガイドで5つ星を取ったWilliamsburg Innなどは、たとえ宿泊しなくても一度は中を覗いてみたいものです。


バージニア州には、他にはあまり訪れるべき場所が多くありませんが、夏場の絶叫系遊園地としてはビールでおなじみのブッシュ・ガーデンがすぐ近くにあります。


また、ニューヨーク市に向かって戻る場合は、Chesapeake Bay Bridge-Tunnel (CBBT)を通るのはいかがでしょうか? 今では東京湾アクアラインができましたから珍しくなくなりましたが、1964年に完成したという20マイルに及ぶ湾内橋とトンネルはなかなかの迫力です。


また、アトランティックシティでギャンブルに興じるのも、ウィリアムスバーグとは全く雰囲気が違っていて、おもしろいかもしれません。


さて、USの歴史博物館をご紹介してまいりましたが、どの博物館も歴史を十分に説明して正しく伝えていこうという気持ちが伝わってきて、それほど歴史に興味のない人でも自然に理解できるように工夫されています。


遊園地のようなリゾートも楽しいものですが、これらの歴史博物館を訪れてみるのも、知的な刺激があってよろしいのではないでしょうか。




694.USの歴史博物館2: アッパーカナダビレッジ (2009/06/08)

本日ご紹介するのは、当サイトが最もお勧めする歴史博物館であります。しかし、前回のシェルバーンと比較しても、さらに田舎にあり行きにくいところにあります。


オンタリオ州とケベック州の境に近く、モントリオールとオタワの中間に位置します。近くにはセント・ローレンス川が流れ、実に風光明媚で自然に溢れたところです。


ここで気づいたのですが(気づくのが遅い!)、このアッパーカナダビレッジがあるのはUSではなく、カナダのオンタリオ州でした。成り行き上、USの博物館として紹介してしまいますが、それにはもっともな訳があります。(おそらくこじつけ!)


「大草原の小さな家」というテレビドラマがありましたが、その雰囲気にぴったりの場所なのです。


舗装されていない砂だらけの道の向こうには、遠く粉ひき小屋の煙突が見えます。その道を向こうから歩いてくるのは、開拓当時の衣装をまとった少女たちでした。


そのまるで「大草原の小さな家」から抜け出してきたような風景に、私はしばし呆然と、その情景に見惚れていました。


今思えば、写真を撮っておけば良かったと思います。しかし、その時はカメラの存在を忘れてしまうほどに、心は開拓時代の中に引き込まれてしまっていました。


ここは建物が小規模なものが多く、開拓時代の人々が日常に必要としていたものを中心とした構成になっています。また建物が自然の中に点在しており、現代のものは目に入らないようになっています。


ここで登場する人たちは、粉ひき職人だったり鍛冶屋だったり家具職人だったり、皆さんが当時の衣装を着ているため、博物館の解説員の説明を聞くというより、当時の人と会話しているような錯覚を覚えます。


ホテルでは昼過ぎになると、アフタヌーン・ティーのメニューがあり、スコーンとジャムが紅茶と一緒に出されます。その他にも当時のメニューを再現した食事があり、確かにすばらしくおいしいものではないですが、素朴な味わいの食事を楽しむことができます。


さてアッパーカナダビレッジに来たついでに、モンテベロという町に寄ってみるのも面白いでしょう。


シャトー・モンテベロは、かつて経済サミットが開催されたことで有名で、ログハウスによる建造物では最大規模を誇っています。


ここではホテル内の自然を生かしたコースを1時間ほどかけて乗馬することができ、私のような初心者でもスリルを味わうことができます。


「大草原の小さな家」のファンの方は、ぜひアッパーカナダビレッジを訪れてみてください。


UpperCanadaVillage.com (English Version) (http://www.uppercanadavillage.com/)

Chateau Montebello (http://www.fairmont.com/montebello/)

693.USの歴史博物館1: シェルバーン・ミュージアム (2009/06/06)

普通、博物館と言えば立派な建物の中に展示物が並んでいる様子を思い浮かべます。フェラデルフィアワシントンDCに行けば、そのような歴史博物館はたくさんあるでしょう。


今回の特集ではそのような博物館ではなく、体験型と言いましょうか。日本では明治村にあるような、昔の生活を再現したような屋外型の博物館をご紹介したいと思います。


まず最初は、US北東部、ニューイングランド地方と呼ばれるバーモント州にある、シェルバーン・ミュージアムです。


シェルバーンという町は、グレート・バーリントン(Great Burlington)エリアにあります。ボストンからモントリオールに向かって車で4時間ほど(200マイル、320Km)の位置にあります。


バーリントン市はバーモント州では最大の人口を誇っていますが、バーモント州自体がかなりの田舎で人間より牛の数の方が多いと言われていたぐらいですから、かなりのどかな土地柄です。


また町の西側には、USでは五大湖に次ぐ面積を持つシャンプレイン湖 (Lake Champlain) があります。


広い芝生が広がる園内に点在するのは、移転された古い住居や鍛冶屋、新聞の印刷所、雑貨屋や湖にあった灯台など。17世紀から20世紀にかけて実際に使われていた建物が移築され、当時の姿のままに内部を見学することができます。


また一部の建物には、古いキルティング (Quilting) の作品や美術品などが展示されています。


日本には古いものがたくさんありますからそれほど驚かないような古さのものでも、歴史の浅いUSでは100年前の工芸品はすでに"Oh, very old !"。


展示のそばには博物館員がいて、詳しく解説をしてくれたり実演をしてくれたりします。


ランチはピクニックをしながら、丸一日かけて園内を回るのがバーモント流。両親が子供たちに昔の生活を説明している姿が、あちらこちらで見られます。


冬が厳しいバーモントでは、新緑が美しく映えるこれからが一番よい季節です。サンドイッチでも持って、今度の週末にでも出かけましょうか? (ってちょっと遠すぎると思うが?)


Shelburne Museum – Homepage (http://www.shelburnemuseum.org/)

672.2回目の台湾出張3: 台北夜市とタクシー (2008/06/22)

毎日夜10時までオフィスに缶詰になっていましたので、その時間から行けるところと言えば夜市しかありません。早速タクシードライバーに、ここから近い夜市はないかと尋ねてみました。


「士林夜市はどうか?」と言うのですが、そこは前回行きましたから別の所を頼むと、あまり規模は大きくないが「臨江街観光夜市」が近いと言うことになり、そこまで連れていってもらうことにしました。


おそらくかなり市街地を大回りしていったのでしょう。思ったより時間が掛かりましたが、無事到着。いつ見ても台北の夜市はすごい人混みです。


ここは、前回宿泊したハイアットホテルから近いのですが、行く機会がありませんでした。少し市街地から外れているように思えたのですが、そんなことはありません。たくさんの人で溢れています。


ここは、観光夜市と呼ばれていますが、どちらかというと観光客は少なく地元のお客さんが多いようです。また、服や靴などのファッション関係の店が多いため、仕事帰りの女性客が多く見受けられました。夜市の怪しさはあまりありません。日常的な市場の健全な雰囲気で、屋台なども充実しているように思いました。


帰りは、「臨江街観光夜市」からMRTの「国父記念館」まで歩いてみました。JCBで手に入れた地図ではかなりの距離があるように見えますが、実際歩いてみると20分ぐらいで駅に到着しました。


MRTに乗っていると台北の市街地はかなり大きな印象を受けますが、歩いてみると意外と小さく感じます。どちらの印象が正しいのでしょう?


さて、別の日に中正紀念堂を見学したついでに、「華西観光夜市」にも行ってみました。台北夜市の中では一番ディープとされているらしく、刺激を期待するにはもってこいです。


近くに「龍山寺」という古い寺があるのですが、着いたときはすでに22時20分で参拝は出来ませんでした。守衛の方に聞いてみると、22時までは開いているそうです。外から眺める寺の雰囲気もなかなかディープです。


さて、「華西観光夜市」がディープな訳は「蛇」にあります。蛇料理を食べさせるレストランが何軒かあり、店の前には体長4~5メートルほどの蛇がとぐろを巻いています。しかも放し飼い!


時には生き蛇を使ったパフォーマンスが店先で行われるそうで、それ以外にも微動だにしないワニや、大トカゲの類がウヨウヨしています。また、蛇から作った強壮剤を売っているお店もありました。爬虫類好き以外にはあまい居心地の良いところではありません。


ただし、ここの足裏マッサージは競争が激しいのか、かなりレベルが高そうです。また、ここの夜市には見慣れないゲームをやっている店がたくさんあり、賭事をしている雰囲気です。


確かに夜市全体として醸し出す雰囲気はディープであり、日本にこれと同じものはないでしょう。どう見ても万人受けはしませんが、好きな人には面白いと言ったところでしょうか。私には面白かったです。(好き者だから)


最後に台北のタクシーについて、少し書いておきましょう。空港から市街地に行くタクシーは、概してぶっ飛ばします。しかし、街中で乗るタクシーには色々あって、勿論ぶっ飛ばすタクシーは多いのですが、逆にやたら慎重な運転だったり、歩道に乗り上げて車の底を擦ったり、結構当たりはずれがあるようです。


しかし一番困るのは、目的地と反対の方向へ走るタクシーです。朝ハイアットホテルに同僚を迎えに行くときに、南東の方角に行かなければならないのに、真っ直ぐ北に走り続けたのです。


方向が違うと言うと、目的地を間違えた振りをしてホテルに向かうも、目的のホテルが目前に見えているのに再び全く反対の方向に走り出したのには、さすがの私も怒りながら抗議しました。


タクシーに乗り込むときには、嘘でもいいから地図でも開いて、方角が判っている振りをすることも必要なのでしょう。