698.ハイブリッドカー競争 (2009/09/02)

手帳替わりにPalmを使ってきた私にとって、Palm centroは少し機能が多すぎて使いづらいという感じがしています。また、以前よりノートパソコンを持ち歩くことが多くなったこともあり、パソコンのデータをハンディに持ち歩く必要性も薄らいできています。


以前愛用していたPalm m100の方が、シンプルで私には使いやすかったです。最近のエコ感覚にも合っているように思います。


そういえば、最近のテレビCMではやたらとエコカーを宣伝しています。以前のように大型の乗用車の広告は影を潜め、エコカー減税などの効果もあって、街中で新型のプリウスやインサイトを見かけることが多くなってきました。


一口にエコカーといっても、燃費性能が良いとか二酸化炭素の排出量が少ないなど、いくつかの特徴があります。


ヨーロッパでは二酸化炭素の排出量の観点からクリーンディーゼルが普及しているようですが、日本や米国ではディーゼルには黒いばい煙のイメージがあるからか、ハイブリッドカーが普及し始めています。


プリウスのように、動力にエンジンとモーターの両方を使うハイブリッドカーをパラレル型と呼ぶそうです。比較的リスクが低く、これまでの自動車の技術を生かすことができることがメリットです。基本的に、低速域はモーターを主に、高速域はエンジンを主に走るように想定されています。


しかし、これらの走行モードがバランスよく組み合わされることはむしろまれで、使用者によってどちらかに偏ること場合が多いのではないかと思われます。


また、両方の動力を搭載することによる重量の増加は致命的で、本命が登場するまでのつなぎ的技術であることは否めません。


よく省エネには「アクセルをゆっくり吹かすのがよろしい」と言われますが、BMWなどに言わせれば、一定速度まで一気に加速した方がより省エネになるとのこと。


高速道路を多用するドイツならではの結論でしょうが、省エネのための方法も時と場合によっては使い分けなければならないのが難しいところです。


もう15年ほど前になるでしょうか、とある車の雑誌に省エネカーの特集が掲載されたことがありました。


その頃は二酸化炭素による地球温暖化の問題はそれほど騒がれていませんでしたが、石油枯渇問題は重要視されていて、ハイブリッドカーに加えて、燃料電池車水素エンジン車など、いろいろな将来の自動車の可能性について解説されていました。


トヨタのハイブリッドカーもまだ発売されていない当時は、どの方式のエコカーが主流になるかまったく予想することさえできませんでした。


その紹介されていたプロトタイプ社の中で私の目に留まったのは、VolvoECCEnvironmental Concept Car, http://www.greencar.com/articles/volvo-hybrid-environmental-concept-car.php)でした。


基本的に動力源はすべてモーターで、小型のガスタービンは発電するためだけに使われていました。


もちろん搭載する電池に十分な電力がある場合は、燃料を使わず電気だけで走ることができました。しかし、タービンを回すことによって、これまでのガソリン車を凌駕する走行性能を得ることもできました。

当時、ほとんどの省エネコンセプトカーが、押し並べて省エネのために性能を犠牲にしていたのに対し、ボルボのコンセプトカーだけは、ホイルスピンを起こすほどの性能と省エネを両立させていたのに、感心したことを覚えています。

内燃機関を様々な負荷のもとで効率よく働かせることは、一般的に困難だといわれてきました。回転や負荷の状況に合わせて、排気ガスの浄化方法も変えていかなければなりません。


ところが、発電のためには一定の負荷と回転数でガスタービンを回すため、一番燃焼効率の良い条件で運転させることができ、省エネや排気ガスのクリーン化に効果があるとされています。

全くクリーンと思われている電気自動車でも、その電気を作るどこかの発電所がクリーンであるとは限りません。システム全体でのクリーン化と省エネ化を同時に考えた場合、エネルギー効率が良いことは大きなメリットになるでしょう。

雑誌で見てから10年以上が経ち、その後どうなったのか興味があったのですが、2007年のフランクフルトモーターショーで、"ReCharge Plug-In Hybrid C30"と称して再びコンセプトカーが登場したようです。


基本的にモーターだけを動力源としていますが、発電用のガスタービンが1.6リッターのエンジンに置き換わっています。さらに、プラグイン方式も採用し、市販されればプリウスやインサイトと真っ向から競合しそうな雰囲気です。


燃料電池車や水素エンジン車、あるいは電気自動車に対して実用化で一歩先を行くハイブリッド車ですが、そこで市販車としての実績を蓄積してきたトヨタやホンダに対して、ボルボが今後どのように製品として展開していくか楽しみです。

641.半導体テクノロジー (2007/06/24)

梅雨に入った途端に真夏のような日差しの日になったり、一転して断続的な大雨が降ったりして、異常気象を実感させる天候が続いております。しとしと、じめじめといった梅雨のイメージは過去のものとなってしまいました。


先週は、京都で半導体関係のシンポジウムがあり、デバイス開発に関するいろいろな話題に触れることが出来ました。


10年ほど前までなら、最新の半導体技術を使ったデバイスと言えば、大規模なハイエンド機である大型のサーバーや高速演算を行うコンピューターに使われていることが多かったのですが、最近は家庭用のDVDレコーダーゲーム機等にも多く使われるようになってきました。


シンポジウムにおける半導体デバイスのトレンドをみても、そのキーデバイスはゲーム機等のかつてはローエンド機と言われた市場が牽引しています。


半導体の進歩と言えば、少し前までのテクノロジーなら写真製版技術であるリソグラフィーの精細度が高まっていけば、自然と動作電圧が低くなり、高速化と低消費電力化が同時に実現できました。


ところが、90nm以降のテクノロジーにおいてはそう単純な話ではなくなってきています。


これまでのテクノロジーでは、世代が1つ上がるごとに寸法が0.7倍になるスケーリングファクターと呼ばれた一律の縮小率が成り立っていたのですが、最近の進んだテクノロジーではマスクレイヤーごとに異なる縮小率を採用しなければならないなってきました。


また、最小加工線幅が光の波長に近づくにつれて、寸法制度が求められる特定のマスクレイヤーには露光波長の位相を考慮した設計が求められてきています。


また、精細度が高まってデバイスが小さくなれば、酸化膜厚も同時に薄くなっていたため動作電圧をさげる事が出来ていたのですが、これも成り立たなくなりつつあり、速度を維持するためにはかえって電圧を上げる必要が出てきました。


ですから、一部のテクノロジー競争が過熱したゲーム機やグラフィックカードが、真っ先に新しいテクノロジーを採用したデバイスを開発しようとするのに対して、製品の差別化に新しいテクノロジーを必要としない製品分野では、90nmはおろか130nmまでの枯れたテクノロジーで、しかもすでに償却された低コストの製造ラインを使った部品が使われることが多くなってきています。


この状況が一過性のものではない場合、半導体のテクノロジーの進歩が限界に来ていると同時に、半導体が搭載される製品がもはやこれ以上のテクノロジーを必要としていないと言うことになるのかも知れません。DVDがさらに進化した次期光デバイスであるブルーレイディスクやHV DVの市場が、いまだに光ディスク全体の1%にしか満たないという現状に似ているでしょう。


一方、半導体の分野もRF無線技術をCMOS論理回路と混載することが出来る、シリコン・ゲルマニウムなどのテクノロジーが大きく成長し、携帯電話の高性能化に活かされています。


今回のシンポジウムの発表をいくつか聴いていて、さらに新しい半導体技術のトレンドが生まれつつあるように感じました。

592.電卓はテキサスインスツルメンツに限る! (2006/07/18)

パームコミュニティーにおいて知らぬ者はいない老舗サイト、"WorP@holic"「エキスパート電卓!」という記事が掲載されています。電卓の中でも高度な計算が可能である、グラフ表示機能付き電卓が紹介されています。


パームも電卓にかなり似ていますから、パーム好きの人の中には電卓も同様に好きな人も多いのではないかと思います。私も電卓を集めるほどではないのですが、電卓の魅力を少なからず感じてきたのは事実です。


思えば、電卓に平方根の計算機能が付いたのが高校の頃でした。カシオが「カシオミニ」と言う製品で、ルート計算を売り文句にしていたのを懐かしく思います。当時はテレビで頻繁に、黒柳徹子出演の電卓のCMを流していたのです。それ程、計算がボタンを押すだけで出来るというのが画期的だった時代でした。


そう言えば、高校の化学の試験では計算尺の使用だけが認められていて、友人の中には、計算尺を大阪の旭屋書店まで買い求めに行っていたやつもいました。建築用、電子工学用などと用途に応じて様々な計算尺があり、それらを次々に買い集めていました。


当時の電卓は、やっとルート計算ができるようになった時代ですから、まだまだ関数電卓と言えるような物はありませんでしたが、それから2-3年後には、ほとんどの関数に対応した電卓が、1万円台で手にはいるようになりました。


始めてアルバイトをして買ったシャープの関数電卓(EL-5000)がまだ手元にありますが、プラスチックの筐体が一部溶けていたりしてかなりガタが来ています。しかし、計算の機能は全く問題なく作動します。当時はまだ、蛍光表示管が主流で、電池も単三電池が4本必要でした。


当時、テキサスインスツルメンツの電卓はプログラム電卓が主流で、独特の蛍光表示装置と相まって独特の雰囲気を醸し出しており、いつかはTIの電卓を持ちたいと思っていたものです。


それから20年ほど時は経ち、関数電卓もほとんど使わなくなったころ、ふとディスカウント店にぶら下がっていたTIの関数電卓が目に留まりました。


TI-36X SOLAR


憧れていたTIの電卓が、わずか3000円ほどで手に入るのです。例え関数電卓はもう使わないとしても、買わないわけにはいきませんでした。


買ってから説明書を読みあさりましたね。すべての関数、すべての機能を理解して使いこなせるようになりたい一心で。今ならハンディーゲーム機や携帯電話機がありますが、昔は電卓がデジタル機器への入り口だったような気がします。


いまだに電卓が機能を拡張しながら健在であることに、少しうれしくなってしまいました。

575.竹でできたスピーカー (2006/03/31)

から作られた紙を使ったスピーカーが開発されたというニュースが、asahi.comに掲載されています。これまでの針葉樹を使ったものに比べ軽くて硬いため、再生音域が広くなるそうです。


ただ、繊維の組成が異なるため、これまでの方法で振動版を作るのではなく、砥石を使って繊維を細分化した後に形成する方法を採用したそうです。発売は2007年末との事ですからあと2年近くかかりますが、どんな音が出るのか今から楽しみです。


スピーカーの素材としては、ビクターが販売している樺の木を使ったウッドコーンスピーカーが既にあります。カチッとした硬い音質でありながら、どことなく木のぬくもりを感じさせるこれまでにない味わいがあります。


特に薄くスライスされた木をスピーカーの形に成型する際、日本酒に浸してやわらかくしてから型にはめると言いますから、もうそれだけで人間味を感じてしまいます。このスピーカーを使うときには、人間の方もお酒に浸してから音楽鑑賞といきたいものです。


これまでのスピーカーの素材は、広葉樹に比べ比較的生長が早い針葉樹が主に使われていました。しかし、竹はその針葉樹よりさらに早く生長しますから、資源として有効に使うことによって、他の木材資源の利用を抑制する効果が期待できます。


そういえば、数年前に竹でできたギターが発売されました。アコースティック・ギターの素材には、マホガニーローズウッドなど、資源として保護しなければならないものが多く、まだブラジル産ローズウッド(ハカランダ)のように、原木での輸出が長らく禁止されているものもあります。


楽器のメーカーによっては、輸出禁止措置以前の原木のストックから、小出しに製品を製作しているところもありますが、近いうちに良質の材木は底をつくと予想されています。


代替材料として成長の早い竹を採用できれば、安定した材料の供給が可能になりますし、また竹の優れた特性を生かして、これまでにない新しい可能性を創出することも可能になるかもしれません。


「竹から生まれたかぐや姫」のように、これからも竹からいろいろなものが生まれて来るのではないでしょうか?(何のこっちゃ?)

574.近況報告とLVS (2006/03/18)

ご無沙汰致しております。すっかりサイトの更新をさぼっておりまして、2週間以上間があいてしまいました。とりあえず仕事が忙しいと言うことにしておきましょう。


確かにいつまで経ってもらちが明かない仕事をやっているのには違いないのですが、仕事そのものがどうしようもない仕事であるのか、あるいは仕事そのものは普通なのに、仕事量の見積もりを誰かが技術的に誤ってしまったために、このようなことになってしまったかは定かではありませんが、その両方が原因かも知れません。あと2ヶ月ぐらいはこの状態が続きそうです。


今回の仕事はLVS半導体業界では"Layout vs. Schematic"の略であります。ところが時々これを、"Logic vs. Schematic"と講釈する輩がいたりするものですから、一体何の事だか判らなくなってしまいます。LogicとSchematicは、半導体業界では同じものを意味します。


LSIを作る場合、ロジック回路をどのように並べて、どのように配線するかをまず決めます。ハードウェアを作る上での設計図に相当します。設計の工程の中でこの部分を通常はロジック設計と呼びますが、ロジックをもう少し限定的に放言する場合はネットリストスケマティックと呼びます。また、これらをLSI設計の前工程であることから、フロントエンド・デザインを言うこともあります。


フロントエンド・デザインには、実際のハードウェアに関する情報は含まれていませんから、ネットリストを使ってシリコンウェハー上に回路を形成するための、フォトマスクの設計を行わなければなりません。これには、トランジスター等の回路素子をウェハー上に配置・配線したり、電源線の配線やLSIチップに電極を取り付けるためのパッドを配置するなどの物理的な設計を行わなければなりません。設計の後工程であるため、バックエンド・デザインと呼んでいます。


配置・配線、すなわちレイアウトが、正しく論理設計されたネットリストと一致した機能を持っているかを検証するのが、「レイアウトとスケマティックの比較」であるLVSという作業なのです。


思えば10数年前までは、LSIの設計のおいてLVSを行うためのソフトウェアが実用化されていませんでしたから、論理設計とレイアウトの検証を行う事なしに、マスクの製造を行っていました。しかし、ハードウェアの処理能力の拡大やソフトウェア技術の進歩によって、レイアウトにおける設計ミスを未然に防ぐLSIが可能になってきました。


現在のテクノロジーでは、半導体のフォトマスク一式で1億円以上の費用がかかりますから、設計ミスによる作り直しは、直接製品の単価に響いてきます。あらゆるデジタル機器の価格が下がり続けている影には、LVSの技術の進歩が少なからず貢献しているのです。


と、まあ表向きにはLVSはすばらしい技術なのですが、実際に携わっているとこれがなかなかくせ者でありまして、そもそも設計が美しく整然としていればいいのですが、世の中はそう美しいデザインばかりではありません。


余り美しくないデザインがなされたLSIの場合は、LVSも必然的に泥臭いものになってしまいます。正に今扱っているのがその典型的なものと言えましょう。


今担当しているLSIが世の中に出れば、それなりにインパクトがあり注目されるはずの製品に搭載されるのですが、「こんな設計でちゃんと動作するんかいな?」と思いながら、「自分は絶対にこの製品は買うまい!」と心に誓うのでありました。