215.持続可能な生産と消費 (2003/10/07)

日経エコロジーに“英国政府が「持続可能な生産と消費」の国家プランを打ち出す”と言う記事が掲載されています。


この中で、環境汚染をしない経済成長のあり方や、資源の有効活用、製品のライフサイクル評価、環境負荷の少ない技術等が提案されています。


例えば、携帯電話等の電子機器が、2年や3年で使い捨てられている現状は、やはり異常ではないかと思います。新しい製品にはそれなりの魅力があり、便利になってはいるのでしょうが、果たして買い換えなければならないほど違いがあるのかと言えば、出来ることは対して変わらないのが現実ではないでしょうか?


それより、資源や環境汚染への影響の方が大きいのではないでしょうか?100円で教材用、分解用として積まれているカメラや携帯電話の山は、本当にその寿命を全うしたのでしょうか?


充電池が駄目になったが、交換をすると高いから本体ごと取り替えるのが当たり前になっていますが、その方が合理的だと言います。一体誰の合理性を考えているのでしょうか?


もし、資本主義における市場経済が、使い捨てを前提としているのなら、社会主義が崩壊したのと同じように、遠からず崩れ去って行くでしょう。さもなければ、地球が崩壊してしまいます。


ユネスコの世界遺産というのがあります。世界遺産として指定されるには、その財産の価値が高いかどうかだけでなく、継続的に維持をするために努力を払っているかどうかが重要だそうです。


地球に価値が無いという人はいないでしょう。その地球で、好きなことをやって生活をしていたのでは、地球を維持していく事は出来ません。オゾンホールや地球温暖化、あるいは資源やゴミの問題にどう取り組んでいるのかが、電子機器のスペックとしてこれから重要になってくるかもしれません。

214.アメリカ人と議論と小切手 (2003/10/06)

「アメリカ人は議論が好きである」と言われることがあります。自分の主張を押し通す事を良しとし、リベートなどの練習を積んでいますから、議論すること自体を得意としているかに見えます。


仕事の上でも、当然自分の意見を主張することが求められ、日本の様に角が立たないようにうまく収めるのはもってのほか、議論その物を楽しんでいるのではないかと思えるぐらい、積極果敢にまくし立てます。


ところが本当にアメリカ人はみんな議論が好きなのでしょうか?


例えば自動車を買う時、価格の交渉が楽しいという人もいるでしょうが、面倒だと思う人もいるでしょう。一生懸命交渉しても、結果は誰もが同じ値引きを獲得するだけ。それなら、最初からハッスル・フリーで均一価格で販売すればいいと、全国均一料金、値引きなしの新車販売方式が受け入れられたことがありました。


GM系のサターンが採用したこの販売方式は、日本車を研究した生産方式による品質と相まって、大きな支持を得ました。つまり、アメリカ人の中にも、ハッスルした議論や交渉を、できれば避けたいと思っている人がいると言う事なのでしょう。


USに住む時に、真っ先に必要な物は自動車です。日本では、新車は注文してから納車までしばらく時間が掛かりますが、USは広いヤードにある在庫の中から選んで、支払いが終わればすぐに納車です。納車と言っても自分で乗って帰るだけですから、何も特別な事ではありません。


1997年の冬、私はフォードの新車の価格交渉を終え、新しく自動車保険にも加入し、車の代金を小切手で支払おうとしていました。パーソナルチェックと呼ばれる小切手は、1ドルであろうと1万ドルであろうと使えますから便利です。私は、ブランクの小切手を取り出し、金額を記入し始めました。


通常小切手には、本人の名前や住所と電話番号が印刷されています。ところが、銀行口座を開設したての頃は印刷が間に合わないために、口座番号以外は記入されていないブランクの小切手を一時的に使います。金額と一緒に自分の名前や住所を書くのです。


さて、自動車のセールスマンは、そのブランクの小切手に書き始めた私を慌てて止めました。「その印刷されていない小切手は、信用できないから受け取れない」、と。


つまり、偽造がしやすいブランクの小切手は、信用することができないと言うのです。私は、まだ印刷された小切手が出来ていない事を説明しました。しかし、今日この車を手に入れないと明日から生活することができません。何としてもこの小切手を受け取ってもらおうと、ハッスルする心構えをしました。


セールスマンは、別室の支配人に相談しに行きました。私は、どのようにして議論を展開しようかと思案していました。


しばらくして、セールスマンがやって来て、支配人と話をしろといいます。私は、覚悟を決めて支配人の部屋に乗り込みました。


一通りの挨拶が終わると、突然支配人は私に、「今日は車を持って帰って、明日銀行渡し小切手(Bankers’
Check)を作って持って来れば良い。」
と言うではないですか!


新車を、見ず知らずの外国人が買いに来て、一切お金を払わないのに持って帰らせると言うのはどういうことですか?信用できないからと言って小切手を拒否したのに、私はそんなに信用できる顔をしていましたか?


次の日、銀行で小切手を作って持って行きましたが、受け取った時安心したような顔をしましたから、やはり不安だったのでしょうね。しかし、アメリカ人のビジネスのやり方に感心したと同時に、それからはアメリカ人が何を考えているのか、解らなくなりました。

213.カルフールに参上 (2003/10/04)

10月1日に関西地域で2店目となる、カルフール箕面店がオープンしました。最初の週末となる今日の午後、早速行ってみることにしました。


箕面と言っても旧市街ではなく、新しく住宅が開発されたり船場の繊維問屋が新しい店を構えたりしている、比較的最近開発された地域にあります。


フランス製のスーパーマーケットとは、どのようなものか興味津々で多くの人でごった返す店内に入ってみました。


宣伝では、広々とした店内にゆったりとした商品配列と言われていましたが、さすがにオープン記念の人の多さでそのような印象はありませんでした。また、インラインスケートを履いた店員が素早く駆けつけると言うのも、店が込んでいるせいか一度見かけただけで、まだその機動力を発揮するまでには至っていないようでした。


期待してPDA関連の売り場を探したのですが、その関連ではパソコンや電子辞書止まりで、PDAの売場は見つけることが出来ませんでした。


フランスで、カルフールがどのような店舗展開をしているのか知らないので、その特徴に関して箕面店のオープンに関する宣伝広告に頼るしかないのですが、USならばウォールマートが展開しているのと同じ様に、エブリディロープライスを特徴としているようです。


オープンセールもあり、全体的な価格がどの程度であるかがわかりにくいのですが、売場の商品毎に最低価格のものに表示を付けて、比較をし易いように工夫をしていたりするので、それなりに価格にこだわっていおるように見えましたが、少し上品な印象を受けました。


イトーヨーカドーが関西に来たときにも感じたのですが、安さをオブラートで包んで表現したと言う感じで、関西で見慣れた露骨さが無く、その為それほど安くないのではないかと思えてしまいました。


それから一番気になったのは、取り扱う商品の範囲が広いために、それぞれの商品におけるバリエーションが少なく、比較して納得して購入することが出来ないのではないかと思いました。


それぞれの売れ筋商品は押さえてあるのでしょうが、比較の対象となるメーカーやグレードの商品がそばに展示されていない様です。売れ筋の商品を徹底的にリサーチして、結果的に売り上げに寄与しない商品を廃した結果でしょう。


売り上げに寄与しない商品として、PDAが扱われなくなったとしたら寂しい限りです。


一般的な電化製品に関しても、いろいろな商品の中で結局売れるのはその中の一部である事は分かりますが、最初から売れ筋商品しか置かれていないと、選択する余地が無く、また商品選びの楽しさも味わえません。


カルフールの2階に関してはあまり印象が良くなかったのですが、食品売場はフランスらしく、ワイン売場が充実していたりシードルを売っていますし、チーズ売場もバリエーションが豊富でいい感じでした。また、周辺のモールにも魅力的な店を誘致しており、また訪れたいと思わせる魅力があります。


全体としては、これまでのダイエー、ジャスコ、マイカルなどと少し趣が異なっていて楽しかった事を、申し添えておきます。10月16日には尼崎にもカルフールがオープンするそうで、周辺の既存店には脅威になるでしょう。

212.OMAPを採用することの意味するもの (2003/10/03)

ところで、最近のpalmOneの製品群で気づくのは、以前からのモトローラに加えて、インテルTIプロセッサーを採用していることです。これらは、ARMのコアを採用しています。


今やARMコアと言えば、泣く子も黙る破竹の勢いで様々な製品に採用されています。PalmOSがARMベースのプロセッサーに対応したことによって、PDA以外の他の製品と同じプラットフォームで、Palm製品の開発をすることができるようになったようです。


OMAPTIアプリケーションプロセッサーとその開発プラットフォームの名称で、“Open Multimedia Application Platform”の略だそうです。FOMAをはじめとする今の3Gと呼ばれている携帯電話のプロセッサーとして、世界中で採用されているそうです。


特徴は、何と言ってもARMコアDSPコラボレーションでしょうか。音声や動画などを処理する場合、ARMコアだけの場合と比べて、半分以下の消費電力2倍以上のパフォーマンスが出ると言われています。


DSPを1チップに搭載する事によって、別個のDSPチップを搭載するより低コストにできますし、何より世界中の携帯電話と同じプロセッサーを採用すれば、その膨大な生産量によるコストの引き下げが期待できます。


また、開発プラットフォームを携帯電話と共通化することで、携帯電話で開発された機能をPalmに移植することも容易に出来るでしょう。


Dellのビジネスモデルは、デファクトスタンダードをかき集める事だと言われています。世界中で標準的に使われている技術をうまく製品に取り込んでいく事が、変化の激しいデジタル機器を短期間に開発するためには必要になっています。


ソニーは、Handheld EnginePEG-UX50で登場させました。ARMコアとDRAMを1チップに搭載したもので、Embedded DRAMによるコストの削減を狙ったものだと思われますが、その半導体のプロセスを含めソニーの自前ですべてを供給しようとしています。


全てのCLIEが、将来Handheld Engineを搭載するかどうか分かりませんが、デファクトスタンダードに乗って行こうとするpalmOneとは、戦略が少し異なる様に思えます。


モバイル機器のための自前のプロセッサーを持っていることは、大きなアドバンテージであると同時に、高コスト体質になる危険性も持ち合わせています。そのことが、現在のCLIEの価格に影響していると言えるかもしれません。


OMAPの資産を積極的に利用し始めているpalmOneと、独自技術を研鑽するソニーそれぞれが、別々の道を歩んでくれた方が、製品に幅が出てくるのでユーザーにとってはありがたいのですが、どちらの道が険しいかは、もうしばらく様子を見てみなければならないでしょう。(両方厳しいだろうと言う見方もあるかもしれませんが。)

211.中途半端はわかりにくい (2003/10/03)

また何が言いたいか判り難いタイトルです。余り真剣に読まないようにしてください。


よく人と議論しているときに、「ちょっと極端過ぎないか?」とか、「それは極論だ!」などと言う人がいます。つまり、極端過ぎて現実的でないため、想定することさえできないと言う事でしょう。


有り得ないほど極端な場合は、確かにそういうことがあるかもしれません。しかし逆に、中途半端でどう解釈して良いかわからない場合も、判断に困ってしまいます。


例えば、信号で「青は進め」「赤は止まれ」です。世界中で誰に聞いても、大体答えは同じだと思います。では「黄色は?」と聞くと、「注意して渡れ!」とか「急いで渡れ!!」と言う人が多いのではないでしょうか?


確かに現実の問題としては、その方が安全な場合もありますが、基本的な考え方としては「止まれ」です。現実的には「可能な限り止まれ」であり、最後の解釈として「止まる事が危険な場合のみ危険回避のために速やかに交差点から退出せよ!」と言うことのようです。


しかし、実際目前で信号が青から黄色に変わったら、まずブレーキよりもアクセルを踏む人が多いのではないでしょうか?


この「黄色」の中途半端さが、判断する人に都合の良い様々な解釈を生んでしまいます。


このことは、商品企画にも通じるところがあります。機能が盛り沢山で高価格である製品や、限定された機能であるが安い製品はわかり易いのです。


ところが、中間的な値段とサイズで、機能も程ほどと言う機種は、余程その機種を吟味して自分のニーズと照らし合わせることができる人以外には、中途半端にしか見えないでしょう。


ソニーが日本で発売する新製品、CLIE-TJ25ですが19,800円と言うわかり易い値段設定で、年末の手帳の買い替え需要を狙っているようです。システム手帳は、安いものでも1万円ぐらいしますし、高いものは4万円もしますから、19,800円は相対的に安いと言えるかもしれません。


確かに、新規にシステム手帳を買おうかと思っている人は、19,800円のCLIEは比較の対象になるかもしれません。ただ、新規のシステム手帳を買う人が、それほどたくさんいるのかどうかいささか疑問です。つまり、システム手帳の新規需要を狙っても、余り売り上げが期待できないのではないでしょうか?


さらに既存のシステム手帳ユーザーの場合は、システム手帳は一度買えばレフィルを1セット交換するだけで済みますし、使い慣れた人は今更そのシステム手帳を手放せないでしょう。


それでもなお、システム手帳のユーザーの乗り換えを狙うと言うのなら、CLIEの値段をシステム手帳と同じにするのではなく、レフィルの1セット分の値段と張り合わなければならないでしょう。CLIEに手帳の代わりをさせるためには、製品価格が中途半端ではないでしょうか?


では、palmOneの新製品、Zire 21$99はどうでしょうか?この値段にはシステム手帳ではなく、1年ごとに使い捨てる手帳の需要を取り込もうとする意思が感じられます。もちろん、使い捨ての手帳に比べてまだ高いのは事実ですが、毎年交換する手帳の数年分だと思えば、金額的にも対抗できるでしょう。


また、そのような人たちに、実際に目で見て比較してもらえるような売り場の開拓と、分かりやすい製品パッケージを用意したことは、販売戦略において大切な事だと思います。中途半端では、新規需要開拓できません。


今日の結論です。私は、ずばりソニーの新製品、CLIE-TJ25の19,800円は高いと思います。これまでのCLIEを知っている人から見れば、値ごろ感のある価格に見えるかもしれませんが、これまで使い捨ての手帳とレフィルしか見てこなかった人の目には、高いと映ることでしょう。


無理を承知で言わせていただきます。本気で手帳の代替を提案するのなら、9,980円でしょう。これまでのソニーの伝統であるテクノロジー優先の設計思想を改め、マーケット主体の製品を提供していかなければ、手帳を競争相手に市場の拡大は望めません。


世界のソニーなら、高価格で最高の機能を提供する製品も、廉価でありながら魅力のある製品も、両方可能にすることができるはずです。中途半端はわかりにくい!ソニーに、Zire 21を超える製品を期待します。(本当は安いモデルに魅力を感じるのは、何を隠そう、私がケチだからです!)