ところで、最近のpalmOneの製品群で気づくのは、以前からのモトローラに加えて、インテルやTIのプロセッサーを採用していることです。これらは、ARMのコアを採用しています。
今やARMコアと言えば、泣く子も黙る破竹の勢いで様々な製品に採用されています。PalmOSがARMベースのプロセッサーに対応したことによって、PDA以外の他の製品と同じプラットフォームで、Palm製品の開発をすることができるようになったようです。
OMAPはTIのアプリケーションプロセッサーとその開発プラットフォームの名称で、“Open Multimedia Application Platform”の略だそうです。FOMAをはじめとする今の3Gと呼ばれている携帯電話のプロセッサーとして、世界中で採用されているそうです。
特徴は、何と言ってもARMコアとDSPのコラボレーションでしょうか。音声や動画などを処理する場合、ARMコアだけの場合と比べて、半分以下の消費電力で2倍以上のパフォーマンスが出ると言われています。
DSPを1チップに搭載する事によって、別個のDSPチップを搭載するより低コストにできますし、何より世界中の携帯電話と同じプロセッサーを採用すれば、その膨大な生産量によるコストの引き下げが期待できます。
また、開発プラットフォームを携帯電話と共通化することで、携帯電話で開発された機能をPalmに移植することも容易に出来るでしょう。
Dellのビジネスモデルは、デファクトスタンダードをかき集める事だと言われています。世界中で標準的に使われている技術をうまく製品に取り込んでいく事が、変化の激しいデジタル機器を短期間に開発するためには必要になっています。
ソニーは、Handheld EngineをPEG-UX50で登場させました。ARMコアとDRAMを1チップに搭載したもので、Embedded DRAMによるコストの削減を狙ったものだと思われますが、その半導体のプロセスを含めソニーの自前ですべてを供給しようとしています。
全てのCLIEが、将来Handheld Engineを搭載するかどうか分かりませんが、デファクトスタンダードに乗って行こうとするpalmOneとは、戦略が少し異なる様に思えます。
モバイル機器のための自前のプロセッサーを持っていることは、大きなアドバンテージであると同時に、高コスト体質になる危険性も持ち合わせています。そのことが、現在のCLIEの価格に影響していると言えるかもしれません。
OMAPの資産を積極的に利用し始めているpalmOneと、独自技術を研鑽するソニー。それぞれが、別々の道を歩んでくれた方が、製品に幅が出てくるのでユーザーにとってはありがたいのですが、どちらの道が険しいかは、もうしばらく様子を見てみなければならないでしょう。(両方厳しいだろうと言う見方もあるかもしれませんが。)