579.建築業界はなぜ自浄作用が働かないのか? (2006/04/21)

耐震強度の偽装問題は、新たに建物の解体に至る物件があったり、新規分譲販売を取りやめる物件があったりと、一向に沈静化の兆しが見えないままに長期化する傾向にあります。


この問題で根が深いのは、単に一部の物件特有の問題ではなく、建築業界が以前から抱えてきた業界全体の構造的な問題であるからです。耐震強度の検査機関を民間に解放したのが原因であるとか、問題を起こした建築士に問題があったとか言うことではなく、今回の偽装が発覚するずっと以前から、建築業界はグレーな部分を抱え続けてきたと言えるでしょう。


しばらく前までは、欠陥住宅が大きな社会問題になっていました。住宅の基礎工事が手抜きされたとか、地盤改良工事に法外な金額を請求されたと言った事件が、頻繁に起こっていました。


実は同じ頃、住宅の設計をお願いしようとして、建築士さんにお話を伺ったことがありました。どうしたら欠陥住宅を防ぐことができるかと言う話になった時、その建築士さんは、おもむろにそれは不可能だとおっしゃいました。


「設計図を描いたプロの建築士なら、手抜き工事を見抜けると考えるかもしれないが、工事をする方も手抜き工事のプロであるので、そう簡単に見つかるような手抜きはしないものだ。」、と言われました。


また、「建築業界は、手抜き工事や欠陥が建築物にあることを、決して悪いことだとは思っていないのだ。」、ともおっしゃいました。


つまり、欠陥があって工事の補修ややり直しをやることは業界にとって悪いことではなく、むしろまた新しい仕事にあり付けて商売が繁盛するという考え方が蔓延っている業界であるから、手抜きや欠陥を無くしていこうというモチベーションすら持っていないのだと言うことでした。


もし手抜き工事や欠陥によって修復が必要になったとしても、一向に悪びれることもなく、「これ幸い、また仕事にあり付ける!」と言ったノリだというのです。土建国家と呼ばれてきた日本ならではの、何と自分勝手な発想ではありませんか!


ここで賢明な方なら、欠陥住宅訴訟でも起こせば建築業界の思い通りにはならないだろう、と考えられるかも知れません。しかし、過去の欠陥住宅に関連する裁判の判例において、住宅メーカーなどの建築業界側敗訴したケースは、ほとんど無いに等しいのです。


裁判所が、個人を守ることより国家を守ることを優先するなら、土建国家における建築業界が擁護されるのも当然と言えば言い過ぎでしょうか。


大量の資本や税金を投入して築いてきたはずの建造物が、手抜きや欠陥によって不良資産やただの産業廃棄物になって行くのを、いつまでも放っておいて良いのでしょうか? 耐震強度偽装問題が、建築業界全体の改革を促すきっかけになってもらいたいものです。

578.初夏の香りはヨットハーバーから (2006/04/19)

桜の季節も終わって、最近は少し汗ばむ日も多くなってきました。まだ海に行く本格的な季節ではありませんが、サイクリングがてら西宮市にあるヨットハーバーに行って来ました。


先週末には「関西国際フローティングボートショー2006」が開催されていたようです。最近景気が上向きになってきたからでしょうか、モーターボートの売れ行きが良いそうです。


西宮にはかなり昔からヨットハーバーがありましたが、数年前にできた新西宮ヨットハーバーは、冒険家の堀江健一氏が活動の拠点にされている事でも有名な、関西を代表する大規模なヨットハーバーです。確かに堀江氏が太平洋横断に使ったことがあるヨットが停泊しています。


自転車で埋め立て地を抜けて海際まで行くと、ボートやヨットのためのドックや立派なクラブハウスが目に入ってきます。クラブハウスの3階にあるレストランから海を眺めながら昼ご飯を食べていると、何やらモーターボートの試乗会をやっているようです。


ヤマハトヨタが並ぶようにしてテントを張っていて、3,4隻のモーターボートが先ほどから港を出入りしています。レストランで食事をしながら、一体あのボートはいくらぐらいするのだろうと思案していたのですが、何せ相場を知りません。300万円ぐらいだろうか、はたまた2000万円ぐらいはするかも知れないと思ったりしているうちに、値段を確かめたくなってきました。


クラブハウスを出てテントの方に行ってみると、子ども連れの家族がボートの試乗から下りてきました。トヨタは2種類のボートの試乗が出来るらしく、高い方は何と2700万円と書かれています。全く縁のないものだと立ち去ろうとすると、「時間があれば試乗してみてください」とのこと。それならと、港巡りの観光船にでも乗ったつもりでお願いすることにしました。


乗せていただいたのは、トヨタマリンのPONAM-28というボートで、定員12名、全長は10メートルあります。1階は如何にもシャンパンが似合いそうな豪華な内装でエアコン完備。大阪湾よりエーゲ海に浮かべた方が似合いそうです。その上はオープンのデッキになっていて、操縦は上下どちらでもできるようになっています。


さっそくデッキの上に上らせていただいてクルーズの開始です。おそらく港の中を1周して戻ってくるのでしょう。ヨットハーバーの中を極低速で進んでいきます。係りの方が、ボートについて説明をしてくれながら、防波堤を越えて夙川の河口の外に出てきました。


そろそろクルーズも終わりかなと思っていると、「さあ、少し揺れますから気を付けてください」と言いながら、スロットルをぐっと手前に引いて、あっという間に港巡りからマリンスポーツに変身です。


「ビョエー!!」


すっ飛んでいくモーターボートにしがみつきながら、これまでに味わったことがない異様な興奮に包まれていきます。


「時速50-60Kmはすぐに出ます」とはその通りで、決して波が高い訳ではないのに、結構波の上を吹っ飛んでいきます。淡路島まで、ヨットだと4-5時間かかるがこれだと1時間で行けるとのこと。宮島辺りまでなら燃料を補給せずに行くことが出来るそうです。


さっきまで遠くに見えていたヨットをあっという間に通り過ぎて、遙か沖に停泊していると思っていた貨物船が目の前に迫ってきます。


イヤー、気持ちがいいですね。いくら高級な車であっても、同じ道路を走っているうちは大きな違いはありませんが、海を走るというのは全く別の世界があります。


聞くところによると、このボートの底はアルミハルと呼ばれるアルミ製で、FRPのものに較べると波の衝撃を和らげる働きがあるそうです。サスペンションがある自動車なら乗り心地が違うのは当然ですが、ボートでも船底の材質で乗り心地が異なると言うことを初めて知りました。


アルミ製であるため傷が付きやすく、海に浮かんでいるゴミを避ける必要があるそうです。確かに水面を見ていると、ペットボトルが至る所に浮かんでいます。


30分程のクルーズの間、ボートの免許のことや燃費のこと、今まで余り聞いたことがなかった知識が得られてなかなか面白かったです。途中で少しハンドルを握らせてもらったりして、港巡りの観光船にはない、刺激的な試乗を体験することが出来ました。


試乗したボートはディーゼルエンジンを2基積んでいて、それぞれ別のスロットルでコントロールします。片方が駄目になったときでも、港に戻ってくることが出来るようになっているようです。


燃料の軽油は、自動車用に較べると税金が安いそうですが、満タンで550リットルも入りますから、燃料代も相当覚悟しなければならないようです。やはり購入されのはかなりのお金持ちで、しかも釣りをする人が多いそうです。


やはり一般庶民には高嶺の花。楽しかった試乗を終えて、再び自転車にまたがってスタコラ帰っていきました。(落差ありすぎ!)

577.阪急と阪神が経営統合? (2006/04/18)

いやまたおったまげた事になっていますね。阪神間に永らく住んできた者にとって、阪急阪神という企業グループにはそれぞれ思い入れがあるものです。同じ地域に根ざした企業でありながら、全く企業風土が異なっていると言えるでしょう。


どちらも大阪の梅田地区ターミナル・デパートを構え、鉄道網の沿線開発や娯楽施設を事業基板にしています。阪急電車も阪神電車も大阪の梅田を出発すると、30分も経たないうちに再び同じ神戸の三ノ宮に到着します。


ただ、阪急が山の手を走り、阪神が海の手を走る関係上、沿線の趣はかなり異なっています。古くから開発されてきた海の手を走る阪神電車は、以前はカーブが多く、よく揺れることで有名でした。また駅の数がやたらと多いので、各駅停車の車両には加速性能に優れたものが採用されていたことも、揺れが大きくなる理由のようです。


昭和の初期には、まだ阪急沿線には住宅が少なかったため、大阪ー神戸間のノンストップ特急を走らせていたそうです。電車がいつもガラガラに空いていた為、「いつでも座れる阪急電車」と言うのが宣伝文句だったそうです。それに対し、2両編成の電車を多用して運転間隔を短く設定した阪神電車は、「待たずに乗れる阪神電車」と宣伝していたそうです。


最近では、阪神電車が山陽電車の姫路まで乗り入れをしていたり、阪神南大阪線近鉄難波を接続して、神戸から奈良まで直通電車を計画するなど、提携を推し進める阪神に対して阪急は静観していた感がありましたが、ここに来て一気に動き始めたと言った感じがします。


阪神間や京阪間の輸送におけるJRとの競合も、いくらJRがゆとりダイヤに変わりつつあると言っても、スピードではJR側にまだまだ分があります。また沿線の住宅地開発に失敗したり、それでなくても人口が減少し始めている状況では、経営統合による規模の拡大しか残された道はないのかもしれません。


ただ、鉄道や沿線の商業施設はその地域の財産でもあります。今回の経営統合が、単なる経営の効率化だけに終わらず、地域の統合的な発展につながっていってもらいたいものです。

576.近況報告 (2006/04/15)

今年になって珍しく仕事が忙しくなっていて、しかも単発でなく次から次へと仕事がやってきます。私のビジネスモデル(どんなモデルだ?)では想定していなかった事態が続いております。


サイトの更新が滞っている言い訳をしている訳ですが、ネタがないわけではなく、書きたいことはあって貯まってきておりますから、少しばかり欲求不満状態になっております。やはり書きたいこと(言いたいこと)は貯めておくと良くありませんね(便秘と同じ)。自分でサイトが欲求不満のはけ口であることを改めて実感いたします。


また、特集として一つのテーマに沿って何回かに分けて書きたいこともいろいろあるのですが(皆様が聞きたいかどうかは別として)、どのような切り口でご紹介しようと迷っているものも多々あります。


特に今困っているテーマが、メーヨークリニック診察日記(仮称)です。実は、その後海外医療保険の不払いの目に遭っておりましてたいそう困っております。他人から見ればこれこそ参考になるし面白い話しだろうとは思うのですが、トラブルの処理が実際大変で、冷静にサイトの話題にするほど簡単な話ではなくなってきています。実際金融庁や損害保険苦情窓口への対応が、仕事が忙しくて手が回らないと言うのが現状です。


しかし、いつも思うのですが、何か問題が起こったときに相談する窓口はいくつかありますが、その影響力には限度がありますね。権限が全くないか極一部に限られていますし、それぞれの業界が完璧に保護されているような気がします。アメリカでのFTC(Federal
Trade Commition)
のような、すべての業界ににらみが利く政府機関が日本にないのは、まだ利用者がないがしろにされている日本の社会の未熟さの表れだと思います。


もうしばらくして結論が出たら、ご紹介させていただこうと思います。