528.インターネットは企業さえもユビキタス化するか? (2005/07/12)

インターネットの発達によって、いつでも誰でもどこででも、コンピューター・ネットワークが利用できるユビキタス社会が現実のものとなりつつあります。


しかし、同時にこれまでの大企業さえも、分散化されたユビキタス企業になっていくのではないかと言う予測があります。


日経ビジネス7月4日特別編集編に、「変幻自在に変化する分散化企業の時代へ」と言う記事が掲載されています。MITの教授が示す新しい企業の形態は、私たちの生活にどのような変化をもたらすでしょうか?


まずインターネットの発明を、文字印刷技術の発明と同等の、人類史上稀に見るイノベーションのひとつであると捉えています。


孤立散在した部族制から、文字の発明によって巨大な統治能力を生んだ結果王制が誕生し、さらに印刷技術の発明によって、民主制が誕生したとしています。


すなわち、文字や印刷技術の発明によって情報を正確に伝えることができるようになるたびに、統治能力が飛躍してきたと言うのです。


インターネットの発明によってユビキタス社会が到来すると、世界中の全ての人に情報が発信されたとほぼ同時に情報が行き渡りますから、意思決定の分散化を通じて、企業社会でも同様の変化が起こると予想しています。


これまでは、家内制工業から階層的組織を持つ大企業に巨大化する方向でしたが、これからは逆に分散化された新しい企業体が主流になっていくとしています。


国際的なネットワークを通じて、電子的につながりをもったフリーランスが一時的に組織され、仕事が終われば解散するeランス企業が発達し、特にグラフィックデザイン、翻訳、市場調査等の分野で、顕著な変化をもたらすだろうとしています。


働き手を保護するために、協同組合による保険や保護の仕組みができ始め、伝統的な企業の雇用形態から、仕事と育児の両立が可能な社会へと変化してきていると言っています。


今、私たちの常識の中にある企業形態は、実は情報伝達能力の限界による制約を受けた姿であり、ユビキタス社会によって、これまでは考えられなかったような新しい企業形態に変わる可能性があるとしています。


日本では、団塊の世代が定年を迎えようとしており、労働人口の減少が問題になっています。分散化企業によって、ネットワークで結ばれた経験豊かな世代が、現役と同じように社会に貢献することが可能になるかもしれません。


目的としてのIT化ではなく、社会が抱える問題を解決する手段としてITを活用することによって、真のユビキタス社会を目指して行きたいものです。