542.愛・地球博探訪記6: あとがき (2005/08/23)

累計入場者数が目標の1500万人を突破して、総額500万円もの商品が振舞われたようです。


通常なら1500万人目が入場した時に入場ゲートでクス球が割られるところでしょうが、なんせ早朝から整理券目当てに必死に並んでいる人が大勢いますから、入場ゲートでの足止めは不可能と見たのでしょうか。


1500万人を突破した日に入場した人の入場券番号によって当選者を選び、さらに抽選場所に現れた当選者によって上位入選者を選ぶといった凝った方法が取られたようです。


万博を見て、おまけにプリウス43インチのプラズマテレビが当たると言うことで、常連の中には狙っていた人もいたそうですが、それにしてもめぼしい商品の当選者のほとんどが愛知県の方だったと言うことに驚きました。


あれほど名古屋のホテルが満杯になっていようと、いかに新幹線名古屋駅の乗降客が増えていようと、入場者のほとんどは地元の方だったのでしょう。4回行けば元が取れる全期間入場券が、総入場者数を押し上げる要因のひとつであったのは間違いなさそうです。


さて、目標の入場者数は達成できたのですが、それはどちらかと言えば営業的な観点と言えるでしょう。「地球上の総てのいのちの持続可能な共生」を追求する愛・地球博でしたが、その目的は達成できたのでしょうか?


自然のもつすばらしい仕組みといのちの力に感動できたでしょうか?世界各地での自然とのつき合い方と知恵を学ぶことができたでしょうか?残念ながら、問題を提起するまでで終わっていたように思います。


それほど地球環境の問題は難しいと言うことなのかもしれません。なぜなら、これまでの人類の経済活動の多くを否定することになるからです。


確かに会場内のいたるところには、環境に配慮した設備を見つけることができます。パビリオンの前に無造作に置かれた大きな箱が燃料電池であったり、室温を一定に保つために植物を植えた屋根があったり、タクシーが自転車であったり。


涼を求めるためにを噴出するのも、愛・地球博の特徴でしょう。それぞれは少しの効果しかなくても、いろいろと組み合わせることによって大きな効果を得ることができるかもしれません。


自然を取り戻すことは容易ではありません。そのために必要な方法も、私たちには明確ではありません。


しかし、愛・地球博を訪れた人たちが、その問題の大きさを知り、その問題の重要性を感じることができたとしたら、“EXPO 2005 AICHI,JAPAN”は成功したと言えるのではないでしょうか?


最後に、韓国館で上映されている3Dアニメーション、"TREE ROBO"の言葉で締めくくりたいと思います。



"Nature gives us another chance."

541.愛・地球博探訪記5: 食に見る万博 (2005/08/21)

世界中の様々な食べ物が揃うのが、万博の魅力の一つです。会場内で配られている公式マップに掲載されている以外にも、多くのレストランが各国のパビリオン内にあります。


そう言えば、大阪万博のフランス館でエスカルゴが供されていたのは話題になりました。当時、まだフランス料理をよく知らなかった日本人には、フランス料理=エスカルゴと思い込んでいたものです。ちなみにフランス館で供されていたカタツムリは、フランスから運ばれてきたものではなく、大阪府下で採取されたものだったそうです。


あれから35年経った今、フランス料理に限らず様々な国の料理を楽しむことが出来るようになりました。特に万博では気軽に本格的な料理を楽しむことが出来ますから、グルメの方には絶好の機会です。


ドイツ、フランス、イタリア、スイス、ベルギーなどの定番レストランはもちろんのこと、チェコビールを看板に掲げたチェコ、民族音楽と共に楽しめるルーマニアなど、ここでしか味わえないメニューも豊富です。しかし、どこのレストランも人気があり、パビリオンに入るよりも長い時間待たされることも多いようです。


また軽食をフードコート形式で提供する所もたくさんありますから、名物料理を試すならおすすめです。レストランの給仕係は、その国の学生がアルバイトでやっていることが多いようです。概ね愛想のない人が多いですが、話しかければ意外と面白い会話になったりします。


フランスピザを売っていたフードコートでは、フランスからやって来た学生たちが販売員をやっており、日本の夏の暑さでくたばっているご様子。


会場内の食べ物は1000円単位のものが多く、フレンチ・ピザの1000円がちと高いように思いますが、エビ天入りきしめん+ソフトドリンクで1000円は妥当なところでしょうか。


各国のカレーを食べ較べるのも良し、キューバ館で変わったカクテルをバーテンダーに注文するのも良し。突然目の前に現れますから、その度に気軽に挑戦してみるのがよいでしょう。


リトアニア館の前で販売しているビールを試してみるのも良いかも知れません。リトアニアのビールがうまいかどうかは知りませんが、話のネタにはなりそうです。販売しているリトアニアの女性は、色白で美しい人が多いみたいですから、それだけでも価値がありそうです。


しかし実のところ、会場で一番うまかったのは生ビールでした。キリンビールが会場内の販売を独占しているようですが、暑い会場を歩き回った後の冷えたビールは最高です。反対に暑いときにキューバ館の度数の強いカクテルを飲んだらひっくり返りそうになりました。


市販の弁当や飲料の持ち込みが禁止されていて不便に感じますが、それは安全性確保のためと割り切って、会場内のグルメを探すのも、愛・地球博の楽しみ方であると思いました。

540.愛・地球博探訪記4: 日本・企業パビリオン (2005/08/20)

しかし、企業パビリオン人気は凄まじいものです。特に人気の日立館トヨタ館の整理券を手に入れるために、朝早くからゲート前に並ぶ人が多いようです。


企業パビリオンが多い北ゲートは、主要交通機関であるリニモが到着するため早くから並ぶことが出来ることもあって、多くの人が開門前から並ぶようですが、朝7時に並んだのでは日立やトヨタの整理券は入手できないそうです。


又、日立やトヨタをもう何回も見たフリークのお目当ては、シャチハタのワークショップらしく、こちらはさらに激戦が繰り広げられています。オリジナルのスタンプを作れるそうですが、毎回30名と定員が少ないため、かなり整理券の取得が困難になっているようです。


愛・地球博では混雑緩和の為に、当日会場で配られる整理券以外にも、パソコンや携帯電話から出来る事前予約や、当日予約機による時間指定の予約が出来るようになっています。しかし、人気の高いパビリオンでは、予約の取得が容易ではなく、予約以外の一般入場の列には、軽く3時間待ちの表示が出てしまいます。


そう言えば、1970年の万博の時も、行列が名物になっていました。当時人気が高かったのは、アメリカ館、ソ連館の外国館と、三菱未来館、ミドリ館、それに日立館でした。概ね2・3時間待ちが続いていたように思います。


待ち時間が長いので定評のある日立館ですが、これは人気が高いだけでなく、収容人数も大きく影響しているでしょう。


マンモス・ラボは今回の万博の目玉であり人気が高いのですが、見学を動く歩道から行うため連続して見学者が流れるため、時間当たりの見学者の数は多いようです。


整理券が配られていますが、入手はさほど困難でなく、待ち時間を短くして、来場者にもれなくマンモスを見てもらうのに役立っています。


トヨタ館では、夏休みに入ってから小学生や高齢者を対象とした整理券を配っており、付き添い者1名と共に入手することが出来ます。配り始めの時間が遅いこともあって、比較的入手しやすくなっています。


結局日立館には入れませんでしたが、その他の企業パビリオンにはほとんど入場できましたし、長久手・瀬戸の両日本館や愛知県館、大地の塔など、ほとんどを制覇することが出来ました。


パビリオンの満足度ランキングは、いろいろなところで発表されていますが、日本・企業パビリオンの私の個人的なランキングは以下の通り。



  1. 三井・東芝館 (自分の顔が映画に登場することも楽しいが、最後にたくさんの人が同じ目的地に向かっていたことに感動!)
  2. 瀬戸・日本館 (大阪万博の日本館に通じ、日本の心を感じさせる。出演者が一体となった秀作!)
  3. トヨタ館 (トヨタらしさは会場への入場案内にあり。「15歩前に進んでください」でピタリと決めるのはさすが。未来コンセプトビークルには乗ってみたい。)
  4. ガスパビリオン (一般的には評価が低いが、エンターテインメントとして見れば楽しい。)
  5. 長久手・愛知県館 (国内系パビリオンで唯一真っ向から環境問題を取り上げている。結論がないのは残念であるが見応えは十分。)
  6. ワンダーサーカス電力館 (何と言ってもお金がかかっている。レベルが高い内容かどうかはともかく、手を抜いていない所が好印象。)
  7. 三菱未来館 (2つのプレショーは中途半端。最後の映像は大阪万博を彷彿させる。鏡で映像を大きく見せる手法は健在。)
  8. 瀬戸・愛知県館 (海上の森について説明。隠れたテーマ館と言えよう。奇をてらったところが全くなくて良い。)
  9. 長久手・日本館 (世界初の360度全天球型映像システムはすばらしいが、映像が鮮明でなく臨場感が低い。ミドリ館の全天全周映画の時の感動はなかった。)
  10. 大地の塔 (万華鏡に対して、どのような興味を持つかで評価が分かれるであろう。ギネス公認の大きさは、単に大きいと言うだけ。万華鏡としての綺麗さは、玩具屋で売っているものと同じかそれ以下。)

さて最後に、長久手・日本館の最後に展示されている水槽について、会場で説明を受けたので書いてみたいと思います。ほとんど人は、鯛と鯉が一緒に泳ぐ水槽に意味が分からないまま通り過ぎて行かれるそうです。


淡水魚海水魚を一緒の水槽で飼う方法はいろいろ研究されているそうですが、ここではマイクロバブルという技術によって実現しているそうです。


通常海水には4%ほどの塩分が含まれますが、この水槽では1%に塩分を押さえ、さらにマイクロバブルを加えることによって、淡水魚と海水魚を同じ水槽で飼うことが可能になっています。


マイクロバブルは微細な気泡のことで、細菌の繁殖を押さえ、生物を元気にする効果があるとされています。この技術は、将来的に農薬抗生物質に頼らない農業や養殖に、応用されることが期待されているそうです。


農薬や抗生物質の過剰使用による地球環境破壊も、忘れてはならないと言うことでしょう。

539.愛・地球博探訪記3: 万博に見るテクノロジーの進化 (2005/08/19)

大阪万博が開催されてから35年が経ちました。愛・地球博におけるテクノロジーは、35年前と較べてどれほど進化しているのでしょうか?


よくニュースにトヨタ館演奏ロボットが登場しますから、ロボットがテクノロジーの象徴のような印象を受けますが、全体的にはロボットを使った展示は多くはありません。


今回のトヨタ館のロボットはトランペットを演奏するとき、胸に内蔵した空気袋(肺)を使って、本当に吹いているそうですから、大阪万博のフジパンロボット館からは、かなり進歩しているようです。


あと目立ってロボットが登場するには三菱未来館ぐらいでしょうか? こちらは最新式ではなく、見た目はフジパンロボット館の時代とさほど変わらないように感じます。


JR東海パビリオンは、リニアモーターカー一色です。超伝導実験や映像、そして実験線を実際に走っていたリニアモーターカーが展示されています。


35年前に日本館で模型が走っていたのを覚えておられる方は、いまだに実験中であることに違和感を覚えるでしょうが、35年前の模型は決してリニアモーターで走っていたわけではありません。会場への交通としてリニモが実用化されていますから、着実に進歩してきたと言えるでしょう。


会場内の交通にはいくつかの方法があります。自転車タクシーはローテクの最たるものですが、なかなか人気があるようです。


ゴンドラやトラムは目新しいものではありませんが、IMTSと呼ばれる自動運転のバスは、新しい交通システムとして注目されています。


大阪万博のモノレールは自動運転が可能でしたが、実際は運転手が乗っていました。IMTSは何とモリゾーのぬいぐるみが運転席に座っています。


自動運転には特別な軌条が必要になりますが、道路の上でもバスとして運転することが出来ますから、密集地では鉄道のように連接して運行し、周辺地ではそのままバスになる事が可能です。


離れていた車体が、連結器もないのにピタッとくっつくように走行するのは見事です。ディズニーランドの「プーサンのハニーハント」のライドを、実用的な都市交通に発展させたものと言えるでしょう。


さて、今回の万博のキーデバイスの一つに、ICカードを利用した入場券があります。事前予約当日予約機は、このICカードがなければ成り立ちません。最新技術を有効に利用している好例と言えるでしょう。


ただ、ITインフラが整備されていて、会場内で必要な情報がすぐに手にはいるかと言えば、決してそう言うわけではありません。パビリオンの混雑状況もエリア内の情報に限られていますし、毎日変わるイベント情報の入手も困難です。


フードコートで警備員が2才ぐらいの子どもを抱えて親を捜し回っていたのも、あまりハイテクとは言えないでしょう。迷子センターや迷子ワッペンが提供されていた大阪万博の方が進んでいたかも知れません。


一方パビリオンや交通機関の混雑状況が、携帯電話で確認できるようになっています。確かに携帯電話は便利なものですが、その便利さだけに頼ってしまうと、他の情報伝達の手段が発達しなくなる恐れがありそうです。


大阪万博のシンボルであった太陽の塔には、3つの顔がありました。未来の顔の目から一直線に放たれた強力なせん光には、未来を明るく照らし出すという意味が込められていました。


愛・地球博のシンボルである大地の塔は、ギネス公認、世界最大の万華鏡です。変幻自在に見える万華鏡が、私たちの混沌とした未来を暗示しているのでしょうか?

538.愛・地球博探訪記2: 外国パビリオンあれこれ (2005/08/17)

愛・地球博では、何と言っても企業パビリオンの人気が高く、インターネットによる事前予約当日予約機、あるいは当日整理券の獲得は、至極困難になっています。


一方の外国館では、ゴンドラ型の乗り物で人気のあるドイツ館を除けば、待ち時間も概ね20分程度までと、比較的無理なく入館できる事もあり、いろいろなパビリオンを訪れることが出来ます。


アメリカ館は、映像による展示でありながら、座席が振動したり画面に合わせて風が吹いたり、あるいは雨が降ったりと、ディズニーランドのアトラクションのような楽しさが味わえます。セグウェイを使って展示の説明をしているのも、未来のクリーンな交通機関としての提案なのかも知れません。


韓国館は、その映像が賞を受けた事もあってなかなかの人気パビリオンです。映画が終わった時、あれほど拍手がわき起こるとは思いませんでした。お馴染みの特殊眼鏡を使った3Dアニメーション画像ですが、メッセージが明確に伝わって来ます。一部にオリジナリティーがないと言った批評があるようですが、短い時間でよくまとめられていると思います。


中国館は、各地の観光案内や最近のテクノロジーの紹介をするディスプレーと、中国楽器の演奏が中心です。他の国々と較べて立派なパビリオンの規模と設備に、中国の勢いを感じました。


ロシア館は、マンモスの模型や宇宙開発の展示が中心です。本物のマンモスは頭部や脚の一部しかないのですが、ここでは模型でありながら全体の形を再現しているため、熱心に見学している人が多いようです。ただ、マンモスが本物と勘違いしている人もいたのではないかと思います。


スイス館では、入り口で音声ガイドになる機械を渡されます。機械が懐中電灯になっており、その明かりを展示物に向けて照らすと、スピーカーから音声による説明が聞こえてきます。この音声ガイドは本物のスイス軍が使っていた懐中電灯を改造したものであり、私が使ったものは1940年製と書かれていました。会場ではこの懐中電灯が売られているのですが、お値段は16,000円。骨董品としての価値がありそうです。


ルーマニア館では民族音楽とダンスを見ることが出来ますし、イギリス館では英国式庭園を眺めた後、イギリス発のテクノロジーの紹介があります。オーストラリア館ではジャンボ・カモノハシが名物になっています。


外国館は、いろいろな国々を短い時間内に訪れることが出来ます。愛・地球博のテーマと一致した展示ばかりではなく、観光案内に徹しているところも多いのですが、案内役は現地の方がほとんどですから会話を楽しんだり、珍しいビールを試すことができて、万博ならではの楽しみ方を堪能することが出来ます。


私が愛・地球博で最初に訪れたのはフランス館でした。四角い部屋の壁全面を使った映像が中心でしたが、その映像の中に印象に残った言葉があります。



地球は親の代からもらったものではない

子の代から借りたものだ



サンテクジュペリ