85.デザートにワインは如何ですか? (2003/04/30)

一般的に、酒飲みは辛党と呼ばれ、甘いものは苦手と言う事になっていますが、一部には酒は結構飲むが甘いものも好きと言う、俗に言う両刀使いと言う方もおられます。実は、私もその口なのですが、そのような方にお勧めできるワインがあります。


デザートワインと称して、小振りのビンに入った白ワインがありますが、シェリー酒のような、女性にも飲みやすい、かなり甘口のワインです。このワインは、LateHarvesting と言って、普通のぶどうの収穫よりかなり遅く、収穫するのだそうです。その結果、ぶどうの木に実が着いたまま糖分が増えて、干しぶどうのようになってくるそうです。発酵させてアルコール化しても、なお甘みが残るだけの糖分を含んでいます。


私が、初めてデザートワインなる物を知ったのは、カリフォルニアのワイナリーでした。その時は、既に他の荷物でいっぱいで、あまり重たいものは持って帰る事が出来なかったので、小さいビンのデザートワインは好都合でした。日本に持って帰って飲んだのですが、香りや色と共に、本当の果実の甘みが大変おいしかったのを覚えています。


ワインの種類に、貴腐ワインというのがあります。やはり、収穫を遅くしてブドウに含まれる糖分を高め、甘口のワインに仕上げるのですが、普通に収穫を遅くすると、ブドウが腐ってしまうところを、貴腐菌と言う細菌が、ブドウの実に繁殖することによって腐敗を防ぐところから、貴腐ワインと呼ばれています。ハンガリーの貴腐ワインであるトカイワインは、かの昔は、王室などにも愛され、ルイ14世も好んで飲んでいたとか。


1989年に、ハンガリーブダペストに行ったとき、地球の歩き方にお勧めとして載っていたレストランに行きました。市の中心部から少し離れていましたが、立派な石畳の広場の一角にあったレストランは、かなり格式があるように見えました。


ハンガリーに行けば、トカイワインを試そうと思っていた私たちは、ワインリストの中から選ぼうとしましたが、値段が書かれていません。トカイワインは、その甘さの度合いを星の数で表現しており(実際は加える貴腐ブドウの量)、星の数が3つとか4つと言う事しか分かりません。


値段が分からなければ、適当に選ぶしかないので、適当に真ん中あたりにあったワインを選んだのですが、ウェイターがえらくうやうやしくボトルを持ってきて、「このワインでよろしゅうございますね」、みたいに見せる物ですから、とんでもなく高そうに思えて、緊張してしまったのを覚えています。


結局、2人でワイン込みで、4,000円ぐらいであったと思います。とにかく、サービスや料理・ワインが良かった割に安かったのは、社会主義の国ならではでしょう。


ハンガリーから、オーストリアに入ったのですが、その国境で出国手続きをする事務所が、免税店にもなっていて、トカイワインを何種類か売っていたのを、余ったフォリントでおみやげに買って帰りました。飲んだ後にラベルだけは写真と一緒に残してあります。


先日、阪急オアシスと言う地元のスーパーで、トカイワインを見つけました。メルシャンワインが輸入している物だったので、日本でも結構簡単に手に入るのでしょう。昔の味を思い出すほど、記憶が定かではないのですが、ブダペストの風景を少し思い出させてくれました。

84.ダウンサイジング推進計画 最終回: パームよ、機は熟した! (2003/04/29)

さて、これまで6回にわたって展開して参りました、ダウンサイジング推進計画ですが、少しおさらいをしておきましょう。


まず、過去のダウンサイジングの流れを、第1回はワークスステーション、第2回はパソコンをテーマに、振り返って見ました。第3回は、ダウンサイジングがパソコンで止まっている理由であるページサイズに着目し、ページからより小さいフレームにして行く事が、ダウンサイジングを押し進める為に必要であると主張しました。


第4回は、人間の記憶力との比較から、フレームが必要になる根拠を示し、第5回は、ユビキタスの勧め、第6回は、オンデマンド・コンピューティングによる情報の選択とその技術、でした。


さて、ここまで読んでこられた方の中には、「ユビキタスやオンデマンドと言っても、今の携帯電話のi-modeなどが既に実現していることを、言い換えているだけではないか」、と言う方もいらっしゃるでしょう。


今回、敢えて携帯電話の話題はしませんでした。あくまで、コンピューターの利用形態の変化に注目し、パソコンまでで止まっていたダウンサイジングを、更に小さいパームの世界に広げるには、どのようにすればよいかと言うことを考えてきました。


今後、電子財布、電子認証、電子入場券、電子定期券など、今まで「電子」が頭に付かなかった全ての物を、電子的に解決しようと言う流れの中で、ユビキタスオンデマンド・コンピューティングといった技術が私たちの身近なものになったとき、それまでPDA携帯電話と呼ばれていたものは、スペックの一つである通信方式に違いがあるだけで、どちらもネットワーク・コミュニケーターなどと呼ばれているかもしれません。PDAと携帯電話の境界がなくなり、融合する日は近いのかもしれません。


さて、いよいよ私の最後のメッセージです。大型汎用機からワークステーション・パソコンへのダウンサイジングは、Sunマイクロソフト主導的な役割を果たしました。彼らは、大型汎用機を扱わない企業だったのです。大型汎用機のメーカーは、それまでに築いてきた資産を守ろうとして、ダウンサイジングには否定的でした。


それならば、パソコンからのダウンサイジングは、パソコンを扱わないPDAのメーカーによって、進めていかなければなりません。


パルマガで、機長さんが4月25日付けで紹介されておられますが、米IDCによる1-3月期の世界ハンドヘルド機器出荷台数速報に掲載されている企業の内、パソコンも作っているのは、Hewlett-Packard、ソニー、Dell、東芝、カシオ、シャープです。これらの企業は、パソコンをPDAにダウンサイジングすれば、全体では売り上げは減少するでしょうから、ダウンサイジングを敢えて進めることはないでしょう。


そこで、PDA専業の企業で、しかも圧倒的にPDAの出荷台数の多いパーム・コンピューティングに、私はダウンサイジングの主導的役割を期待します。


「パームよ、機は熟した!」。今こそ、マイクロソフトの夢をもう一度、パームにもたらす絶好の機会です。是非、PDAの盟主として、新しいネットワーク・コンピューティングの世界を切り開いて行ってもらいたいものです。

83.ダウンサイジング推進計画6: オンデマンド・コンピューティング (2003/04/28)

ユビキタスを実現するために、なぜオンデマンド・コンピューティングが必要になるのでしょうか?


多くの方は、ユビキタスは、これまでのように通信インフラを整備していくだけで、実現できるとお考えかもしれません。確かに、いつでも、どこでも、インターネットにつながるだけで良いのなら、通信のインフラを整備して行くだけで、十分かもしれません。


ところで、今のノートパソコンは、いくら軽く小さくなったと言っても、いつでもどこでもと言うわけには行きません。ですから、機器はさらに小型にならなければなりませんが、小型のディスプレーには、無駄な情報を表示している余裕はありません。ページからフレームへと、表示の単位を変えていかなければなりません。


そこで、いつでも、どこでも、に加えて、欲しいだけと言う事が、ユビキタスの実現に不可欠となってくるのです。必要な情報のみを選択して表示できることが必要になってきます。


ここで、「必要な情報をさらに選択するには、検索のキーワードを増やせば良いのだ」、とおっしゃる方は、Google使いのベテランでいらっしゃる。それはそれで良いのですが、ベテランになるには経験が必要です。できれば、誰にでもできるように、コンピューターにやってもらいたいのです。


しかも、これまでのインターネット検索は、検索キーワードを多く含むURLを羅列していただけで、情報を選び出していたわけではありません。そのURLの作者が用意したページ全体を表示する事はできても、そのページの持つ多くの情報から、必要な情報を選び出す作業は、人間がやっていかなければなりません。できれば、コンピューターにやらせたい作業です。


なぜ、コンピューターは必要な情報だけを選ぶことができないのか?


それは、インターネットの情報がHTMLで書かれているからです。


HTMLは、ご存じの通り、文字列を見やすいようにフォーマットするための、タグが含まれています。人間が見やすいように、文字列をどのように配列して表示するかを、規定しているわけです。


例えば、製品の名前と価格が表形式にきれいにフォーマットされていた場合、これを見た人は、そこに並ぶ数字が、金額であることを理解し、どれが安いかを比較検討することができます。それは、表の並び方などから、どこの欄が金額であると言うことが、経験的に分かっているからです。


しかし、コンピューターには、文字列が金額なのか、製品の型番なのか、判断できません。例えば「一番安い製品を選べ」、とリクエストしても、どの文字列が金額であるかさえも分からないでしょう。


もちろん、このPalmTrotterもお世話になっております、アンテナサイトの「ぱむあん。」PALMLINKでいこう!!のように、更新時刻をある決まった形式でページに記載することによって、文字列をコンピューターに、更新時刻であると認識させることもできますが、もう少し汎用性のある方法は、ないでしょうか?


XMLというのは、拡張されたマークアップ言語ですが、その機能を使うことによって、文字列の属性を表現することができます。コンピューターは、インターネットから呼び出された情報の中で、どれが製品番号で、どれが価格であるかを判断することができるようになります。XMLのタグを使えば、コンピューターに属性を持った文字列を使って処理をさせ、結果のみを表示することが可能になります。


つまりXMLによって、これまで人の経験に頼っていた必要な情報を探し出す作業を、コンピューターが代わりにする事ができるようになります。インターネットが、人の閲覧用にフォーマットされたページの集合体から、コンピューターが処理のできるデーターベース生まれ変わるのです。


XMLを使った情報を提供してくれるのが、WEBサービスと呼ばれます。例えば、辞書検索などがWEBサービスとして既にあります。


XMLとWEBサービスなどを使って、インターネットをWEBデータベースとして活用する、新しいコンピューティングの姿が、オンデマンド・コンピューティングです。これまでのコンピューターシステムで、データベースとアプリケーションを長い期間掛けて構築していたのが、オンデマンド・コンピューティングでは大きく変わるかもしれません。


これまでは、グループ・ウェアなどで構築してきたデータベースが、今後はWEBデータベースとして、世界中でシェアできるようになるでしょう。インターネットと言うネットワーク上に分散された、正に、人類の英知を結集したデータベースになるでしょう。


さらに、グリッド・コンピューティングのように、CPUもネットワーク上に分散され、ユビキタス・コンピューティング環境を形作って行くでしょう。そして、その新しいユビキタス&オンデマンド・コンピューティング環境において、人とのインターフェースの部分を受け持つのが、他ならぬパームなのです。


さあ、私のダウンサイジング推進計画も、終わりが近づいてきました。次回は、最終回、「パームよ、機は熟した!」をお送りします。

82.ダウンサイジング推進計画5: ユビキタスとオンデマンド (2003/04/26)

突然ですが、問題です。ここに1リッターのガソリンで10キロメートル走ることができる自動車があります。この自動車を使って、10キロメートル先の地点に行くとき、あなたは何リッターのガソリンを積んでいきますか?ただし、途中にガソリンスタンドはないとします。


10キロメートル先に行くときに、1リッターだけのガソリンを積んでいく人は、よほど楽観的な人だけでしょう。燃費と言っても、ある一定の条件で測定された物ですから、いつもその通りになるとは限りませんね。1リッターちょうどのガソリンで出かけたら、およそ50%の確率で、途中でエンストすることになるでしょう。


ですから、1.5リッターとか2リッターとかのガソリンを積んで出かける訳です。余裕を持って必ずガソリンが余るようにするのです。


普通はガソリンを入れるのは手間がかかり、1リッター単位でしか入れることができず、エンストするまで、本当に必要なガソリンの量が分からないからです。


では、もし途中で、速やかに、1cc単位で、回数に制限なく、余分なコストがかからないで、ガソリンを入れることができるとしたら、どうするでしょうか?おそらく、0.8リッターぐらいでスタートし、途中で足りない分だけ、こまめに補給するでしょう。つまり、ガソリンが無駄にならないようにするのです。


自動車に、これまでのような大きなガソリンタンクは、必要でなくなるでしょう。その瞬間に必要なだけの量を蓄えることができる、必要最小限のガソリンタンクさえあれば、足りなくなったらすぐに必要なだけガソリンを手に入れることができます。


実は、ページからフレームへの転換を図る真意はここにあります。もう、無駄になるかもしれない情報を、後生大事に持ち歩くことはありません。


いつでも、どこでも、欲しいだけ!手間と余分なコストをかけずに、情報を享受できるようにするのが、ユビキタス・コンピューティングの姿です。パソコンからパームへの、ダウンサイジングを実現する秘法がここにあるように思います。


そして、ユビキタス・コンピューティングを実現するのに、重要なコンピューティング技術が必要になります。オンデマンド・コンピューティングです。


これまでのように、予め将来必要になるだろうと思われる情報を提供するシステムを、準備しておくのではなく、必要になったときに必要な情報をリクエストする為の、システム環境を構築する事が必要になってきます。


システムに対する要求は、時代と共に変化していきます。しかも、世の中の情報の流れは、ますます複雑になっていきます。今日は、昨日までと違った情報が、必要とされるかも知れません。


このような状況において、これまでのように個別にシステムを構築していけば、システムの稼働までに時間とコストがかかるばかりか、できあがったシステムの寿命は、予想よりはるかに短い物になってしまうかもしれません。これは、大きなリスクであると言えるでしょう。


オンデマンドが、いったいどのような物であるのか?これまでの情報の流れを、どのように変えていくのか?そして、パームは、その中でどのような役割を担うのか?次回は、これらの点について、考えてみたいと思います。

81.ダウンサイジング推進計画4: フレームの勧め、人間の知性を問う (2003/04/26)

写真印画を鑑賞する時、手に持って見るサイズは、最大でも四つ切りまでです。なぜなら、それ以上大きくなって、半切(はんぜつ)程になると、手で持っても大きすぎて、また真っ直ぐにして持っていることができなくなります。ですから、半切以上はパネルにします。


A4の用紙も同じ理由で、手に持って眺めるには、ちょうど良い大きさです。全体を見ることができますし、手で持て余す程大きくはありません。


A4サイズは、本のように文字がびっしり詰まった読み物でも、手で持ちやすい大きさですから、じっくりと読むことができます。では、オンラインの情報を表示する媒体として見たときに、A4のサイズはちょうど良い大きさなのでしょうか?


皆さんはA4に書かれた内容を、一瞬で理解できますか?A4に書かれた情報は、全て有効に使われましたか?WEBの1ページに表示されている全ての情報に目を通せましたか?


答えは、おそらくノーです。例えば、新聞のWEBサイトのトップページでさえも、全てを読むことは困難です。1ページには、その時、その人が必要な情報が含まれているはずですが、しかし、その時には必要のない情報も多く含まれます。いや、大半が必要でない情報かもしれません。


私たちは、多くの情報から自分の今必要である情報を選択するという仕事を、いまだにコンピューターに任せることができないのです。


駅の自動券売機で切符を買うとき、上に掲示されている運賃表から、到着駅までの料金を探し出すのは骨が折れます。目的地以外の駅の情報は、あなたが本当に必要とする情報を、埋もれさせてしまいます。同じ事がページと言う物理レコードの単位にも言えます。1ページには、本当に必要な情報を埋もれさせてしまう情報で溢れています。


更に、もしページに含まれる情報の全てが、その時に必要な情報であったとしても、その全てを有効に利用することはできないでしょう。それは、人間が同時に認識できる対象物の数には、限界があるからです。


動物が、いくつの数まで概念的に認識できるかを考えるとき、カラスの話が良く出てきますね。ごん平が種まきゃ、カラスがほじくる。そこで、2人が小屋に入り1人が出ていき、カラスを待ち伏せても、カラスは2と1の区別ができるので、寄って来ない。3人入って2人出ても同じ。結論は、5まで数えられたり、7まで数えられたり。まあカラスにも、優秀なカラスとアホガラス(失礼)がいても、不思議ではありません。


では、人間はどうかというと、一つずつ数えればいくつまででも数えられますが、一瞬で認識できるのは、やはり7ぐらいになりそうです。あるいは、記憶としては、3秒から5秒、つまり1つの俳句を詠む時間ぐらいしか、前の記憶を保持できないそうです。これは、俳句の標準的な長さである17文字に相当するそうです。また、別の研究によると、1ページ分の本を読んだときに、単語として読んだすぐ後に思い出せるのは、10語ぐらいだそうです。


54.なぜ2000円札は流通しないのか?
(2003/03/28)
で作った表を見てください。1円玉と10円玉しかない場合、最大9個の硬貨を使わなければならないのですが、5円玉を追加すると最大でも5個で払うことができるようになります。もし、人間が9までの数を直感的に認識できるのなら、5円玉はなくても不便ではないはずです。


コンビニで、100円ぐらいの物を買って、1万円を出したとき、お釣りの9千円が千円札ばかりで9枚来ると、いやですね。もし8枚しかなかったとしてもすぐには気づきません。でも、5千円札と4枚の千円札ならば、一目で間違いがないことが分かります。人間も、直感的に分かる数の限界は、カラスとそれ程違わないのかもしれません。


話が、大きくそれてしまいましたが、要約すると、人間は余り多くの情報を一度に見せられても、必要な情報を選び出さなければならないし、どうせ全て覚えているわけでもないので、最初から必要な情報だけを選び出してページより小さい物理レコードの単位である、フレームに表示するようにすればどうでしょうか、と言う提案をしたかったのです。


「何を言っとる、無駄なように見えて、1ページの中にはあれば便利な情報もあるから、備えあれば憂いなしじゃ」、みたいな意見もあるとは思います。この冗長性が有効である場合は、確かにありますが、それは、いつでも、どこでも、欲しいだけ、と言う事が、これまで難しかったから意味があったのです。


もうお解りですね。そうです、ユビキタスです。次回は、「ユビキタスとオンデマンド」で話を展開していきたいと思います。