83.ダウンサイジング推進計画6: オンデマンド・コンピューティング (2003/04/28)

ユビキタスを実現するために、なぜオンデマンド・コンピューティングが必要になるのでしょうか?


多くの方は、ユビキタスは、これまでのように通信インフラを整備していくだけで、実現できるとお考えかもしれません。確かに、いつでも、どこでも、インターネットにつながるだけで良いのなら、通信のインフラを整備して行くだけで、十分かもしれません。


ところで、今のノートパソコンは、いくら軽く小さくなったと言っても、いつでもどこでもと言うわけには行きません。ですから、機器はさらに小型にならなければなりませんが、小型のディスプレーには、無駄な情報を表示している余裕はありません。ページからフレームへと、表示の単位を変えていかなければなりません。


そこで、いつでも、どこでも、に加えて、欲しいだけと言う事が、ユビキタスの実現に不可欠となってくるのです。必要な情報のみを選択して表示できることが必要になってきます。


ここで、「必要な情報をさらに選択するには、検索のキーワードを増やせば良いのだ」、とおっしゃる方は、Google使いのベテランでいらっしゃる。それはそれで良いのですが、ベテランになるには経験が必要です。できれば、誰にでもできるように、コンピューターにやってもらいたいのです。


しかも、これまでのインターネット検索は、検索キーワードを多く含むURLを羅列していただけで、情報を選び出していたわけではありません。そのURLの作者が用意したページ全体を表示する事はできても、そのページの持つ多くの情報から、必要な情報を選び出す作業は、人間がやっていかなければなりません。できれば、コンピューターにやらせたい作業です。


なぜ、コンピューターは必要な情報だけを選ぶことができないのか?


それは、インターネットの情報がHTMLで書かれているからです。


HTMLは、ご存じの通り、文字列を見やすいようにフォーマットするための、タグが含まれています。人間が見やすいように、文字列をどのように配列して表示するかを、規定しているわけです。


例えば、製品の名前と価格が表形式にきれいにフォーマットされていた場合、これを見た人は、そこに並ぶ数字が、金額であることを理解し、どれが安いかを比較検討することができます。それは、表の並び方などから、どこの欄が金額であると言うことが、経験的に分かっているからです。


しかし、コンピューターには、文字列が金額なのか、製品の型番なのか、判断できません。例えば「一番安い製品を選べ」、とリクエストしても、どの文字列が金額であるかさえも分からないでしょう。


もちろん、このPalmTrotterもお世話になっております、アンテナサイトの「ぱむあん。」PALMLINKでいこう!!のように、更新時刻をある決まった形式でページに記載することによって、文字列をコンピューターに、更新時刻であると認識させることもできますが、もう少し汎用性のある方法は、ないでしょうか?


XMLというのは、拡張されたマークアップ言語ですが、その機能を使うことによって、文字列の属性を表現することができます。コンピューターは、インターネットから呼び出された情報の中で、どれが製品番号で、どれが価格であるかを判断することができるようになります。XMLのタグを使えば、コンピューターに属性を持った文字列を使って処理をさせ、結果のみを表示することが可能になります。


つまりXMLによって、これまで人の経験に頼っていた必要な情報を探し出す作業を、コンピューターが代わりにする事ができるようになります。インターネットが、人の閲覧用にフォーマットされたページの集合体から、コンピューターが処理のできるデーターベース生まれ変わるのです。


XMLを使った情報を提供してくれるのが、WEBサービスと呼ばれます。例えば、辞書検索などがWEBサービスとして既にあります。


XMLとWEBサービスなどを使って、インターネットをWEBデータベースとして活用する、新しいコンピューティングの姿が、オンデマンド・コンピューティングです。これまでのコンピューターシステムで、データベースとアプリケーションを長い期間掛けて構築していたのが、オンデマンド・コンピューティングでは大きく変わるかもしれません。


これまでは、グループ・ウェアなどで構築してきたデータベースが、今後はWEBデータベースとして、世界中でシェアできるようになるでしょう。インターネットと言うネットワーク上に分散された、正に、人類の英知を結集したデータベースになるでしょう。


さらに、グリッド・コンピューティングのように、CPUもネットワーク上に分散され、ユビキタス・コンピューティング環境を形作って行くでしょう。そして、その新しいユビキタス&オンデマンド・コンピューティング環境において、人とのインターフェースの部分を受け持つのが、他ならぬパームなのです。


さあ、私のダウンサイジング推進計画も、終わりが近づいてきました。次回は、最終回、「パームよ、機は熟した!」をお送りします。