一般的に、酒飲みは辛党と呼ばれ、甘いものは苦手と言う事になっていますが、一部には酒は結構飲むが甘いものも好きと言う、俗に言う両刀使いと言う方もおられます。実は、私もその口なのですが、そのような方にお勧めできるワインがあります。
デザートワインと称して、小振りのビンに入った白ワインがありますが、シェリー酒のような、女性にも飲みやすい、かなり甘口のワインです。このワインは、LateHarvesting と言って、普通のぶどうの収穫よりかなり遅く、収穫するのだそうです。その結果、ぶどうの木に実が着いたまま糖分が増えて、干しぶどうのようになってくるそうです。発酵させてアルコール化しても、なお甘みが残るだけの糖分を含んでいます。
私が、初めてデザートワインなる物を知ったのは、カリフォルニアのワイナリーでした。その時は、既に他の荷物でいっぱいで、あまり重たいものは持って帰る事が出来なかったので、小さいビンのデザートワインは好都合でした。日本に持って帰って飲んだのですが、香りや色と共に、本当の果実の甘みが大変おいしかったのを覚えています。
ワインの種類に、貴腐ワインというのがあります。やはり、収穫を遅くしてブドウに含まれる糖分を高め、甘口のワインに仕上げるのですが、普通に収穫を遅くすると、ブドウが腐ってしまうところを、貴腐菌と言う細菌が、ブドウの実に繁殖することによって腐敗を防ぐところから、貴腐ワインと呼ばれています。ハンガリーの貴腐ワインであるトカイワインは、かの昔は、王室などにも愛され、ルイ14世も好んで飲んでいたとか。
1989年に、ハンガリーのブダペストに行ったとき、地球の歩き方にお勧めとして載っていたレストランに行きました。市の中心部から少し離れていましたが、立派な石畳の広場の一角にあったレストランは、かなり格式があるように見えました。
ハンガリーに行けば、トカイワインを試そうと思っていた私たちは、ワインリストの中から選ぼうとしましたが、値段が書かれていません。トカイワインは、その甘さの度合いを星の数で表現しており(実際は加える貴腐ブドウの量)、星の数が3つとか4つと言う事しか分かりません。
値段が分からなければ、適当に選ぶしかないので、適当に真ん中あたりにあったワインを選んだのですが、ウェイターがえらくうやうやしくボトルを持ってきて、「このワインでよろしゅうございますね」、みたいに見せる物ですから、とんでもなく高そうに思えて、緊張してしまったのを覚えています。
結局、2人でワイン込みで、4,000円ぐらいであったと思います。とにかく、サービスや料理・ワインが良かった割に安かったのは、社会主義の国ならではでしょう。
ハンガリーから、オーストリアに入ったのですが、その国境で出国手続きをする事務所が、免税店にもなっていて、トカイワインを何種類か売っていたのを、余ったフォリントでおみやげに買って帰りました。飲んだ後にラベルだけは写真と一緒に残してあります。
先日、阪急オアシスと言う地元のスーパーで、トカイワインを見つけました。メルシャンワインが輸入している物だったので、日本でも結構簡単に手に入るのでしょう。昔の味を思い出すほど、記憶が定かではないのですが、ブダペストの風景を少し思い出させてくれました。