368.近くて遠いミラクルな国4: 食は全州にあり (2004/07/31)

最近では日本でも韓国料理専門店が増えてきましたが、韓国に来ればやはり本場の味を試さないで帰るわけには参りません。


韓国料理と言えば唐辛子をふんだんに使った料理がまず頭に浮かびますが、扶余で選んだ晩ご飯の辛さは、危険度レベル5。食べ終わるまでに何度お茶のおかわりをしたことか。(おかわりの単位は、コップではなくてやかんです。) 中国やフランスでは、料理を食べることが出来るかどうかは食材で決まりますが、韓国では辛さの度合いが重要な意味を持ちます。


名物料理として一度は試したいのが参鶏湯(サムゲッタン)です。若鶏のおなかの中に、餅米や小豆や高麗人参などの薬草を入れて、スープで煮込んだ韓国の代表料理ですが、なるほど身も柔らかく、中の詰め物もおいしく頂ける、名物料理として誰にでもお勧めできる料理だと思います。


しかし、韓国料理で一番ポピュラーなものは、やはりビビンパでしょう。韓国の穀倉地帯の中心都市である全州は、ビビンパの発祥の地として有名です。さっそく本場全州の中央会館でビビンパを注文してみましょう。


韓国料理ではまずキムチが食卓に運ばれてきますが、その数の多さに驚きます。それらはたいがい辛いか酸っぱいかのどちらかであり、よほどこの味に慣れていないとそう多くを食べることは出来ません。


一通りキムチをつついたところで本命のビビンパがジュージューと音を立てて登場します。この音がしている間はかき混ぜるのが優先です。ビビンビビンとかき混ぜます。このかき混ぜることは韓国の文化のようで、しっかりとかき混ぜないとビビンパがおいしくならないとされています。


全州中央会館は、今では本場全州からソウルに移転し、明洞をはじめソウル市内に数店舗展開しているようですが、当時はまだ全州にしかなく、ソウルからツアーを組んで食べに来ていたそうです。一度中央会館のビビンパを食べたら、他のビビンパは何となく偽物に思えてしまいます。


お箸は朝鮮半島から日本に伝来しましたが、おさじをお箸と同じように日常の食生活に使う習慣はやって来ませんでした。


ビビンパをかき混ぜながら、なぜ日本にお箸と一緒におさじが食生活の習慣として伝来しなかったかを考えるのも、意味があることかも知れません。

367.近くて遠いミラクルな国3: 落花岩 (2004/07/30)

新羅と唐の連合軍によって滅ぼされた百済は、日本との間に深いつながりがあったため、多くの技能者や文化人が日本にやって来たとされています。飛鳥の人口の7割が、百済から渡来した人々であったとさえ言われています。


「くだらない」とは、「百済ではない人」から由来したという説がありますが、それ程に進歩的な文化や技術を持っていたのでしょう。


その百済最後の都があったのが扶余です。ソウルから高速バスで3時間あまり。日本の奈良と似ていると言われていますが、やはり明日香により近いように思えます。到着してみるとかなりひなびた様子で、荒廃した人参工場があったりして、いかにも滅亡した都と言った感じがします。


街を地図を見ながら歩いても、端から端まで20-30分で歩けてしまいます。史跡としては定林寺跡がありますが、百済塔とやたらと大きい石仏しか残っておらず、哀れさが伝わってきます。


扶余にも慶州と同じく立派な国立博物館がありますが、多くの宝物が略奪されたと見えて、それ程多くの展示物があるわけではありません。百済の最盛期を彷彿させるものを見つけることは出来ませんでした。


扶蘇山は徒歩30分ほどで登れる山で、この山の頂上付近にあるのが落花岩です。新羅・唐の連合軍によって攻めたてられ、最後に3000人もの宮女が、下を流れる白馬江に身を投げ、その様子が遠くから花が散るように見えた為に、落花岩と名付けられたそうです。


後に日本が百済に援軍を送り大敗した「白村江の戦い」の白村江は、白馬江の下流に当たります。


落花岩には百花亭と呼ばれる東屋が建てられています。さらに身を投げた宮女を偲んで、扶蘇山の山麓に皐蘭寺が建立されています。


お寺の裏には、百済の時代から沸き続けていると言われる薬水があります。飲んでみたいと思ったのですが、慶州の甘露水の一件がありましたので止めておきました。


青く透き通った薬水をぼんやり眺めながら、今は静かに時が流れる扶余の気だるい夏の昼下がり、遠い昔の古都に思いを馳せることにしました。

366.近くて遠いミラクルな国2: 甘露水 (2004/07/28)

歴史の好きな人なら、朝鮮半島を語る上で三国時代を外すことは出来ないでしょう。その三国であった、高句麗・百済・新羅のうちの新羅の都が置かれていたのが慶州です。


釜山から高速バスで1時間ほどの所にあります。代表的な古都であることから、京都に例えられますが、30万人程の人口からすると高山により雰囲気が近いかも知れません。古都らしく品のある優雅なたたずまいを見せています。


街中が遺跡と言っても過言ではありません。特に街の中にある古墳公園は見事なものです。仏国寺石窟庵、さらに郊外に広がる5つの地域がユネスコの世界遺産に指定されています。


仏国寺は、全盛期の10分の1の規模しかないと言われていますが、それでも威厳を保っています。市の中心部から30分ぐらい、のどかな風景の中をバスに振られていると、仏国寺観光のための旅館などが集まった街に到着します。


仏教が弾圧されていた時代が長かった為、多くの寺院が焼き払われている中、往年の姿を忍ばせる見事な建築です。特に、仏教の思想が建築や塔の形に具現化されているところに、この寺院の非凡さを見る事ができます。


仏国寺からさらにマイクロバスで20分ほど上ったところに、もう一つの世界遺産である石窟庵があります。長い間人々の記憶から忘れ去られていたのですが、郵便配達人が雨宿りをしようとしたときに発見したそうです。


洞窟のようになった空間を山中に人工的に作りだし、その中に仏像を設置することによって、仏教が示唆する宇宙を表現しているようです。その整ったお顔の釈迦如来坐像は正に、仏教芸術と呼ぶに相応しい雰囲気を醸し出しています。


この石窟庵の参道の途中に、甘露水を言う名のついた湧き水が、大きな鉢に満ちています。そのあまりにも透き通った滴と甘露水という名前に惹かれて飲んでみました。確かに自然にわき出た水のおいしさを感じます。


ただ、暑い夏のことでしたので少し飲み過ぎたようです。既に夏ばて気味だったことも手伝って、マイクロバスの乗り場に帰ってきたときには、雷でもないのに「ピーヒャラドンドン」になってしまい、あわててトイレに駆け込んだのです。


こんな人里離れた山奥の公衆トイレは、どこの国に行っても期待出来ませんから、あまりお世話になりたくなかったのですが、出物腫れ物所構わずでは仕方がありません。バス停近くにあったトイレに行ってみて驚きました。なんと清潔できれいなのです。


決して新しく作られたからきれいなのではなく、しっかりとメインテナンスされている感じだったのです。こんな山の中で水洗の設備を持っているのも驚きで、この遺産を大切にしていこうという意思の表れでもあるのでしょう。


そう言えば、釜山で泊まった宿で、階段の掃除をしているところを見て驚きました。石で作られた階段を、ほうきで掃くでもなく、掃除機で吸うのでもなく、はたまた雑巾掛けをするのでもなく、なんと石鹸を泡立ててゴシゴシ洗っていたのです。


長い歴史がありながら、多くの遺産が破壊され続けてきた経験があるからこそ、現存するものを大切にしようとしているのでしょう。


しかし、日本も少し前までは、ものを大切にしていたように思うのですが。

365.近くて遠いミラクルな国1: 韓国ブーム (2004/07/24)

「冬のソナタ」から始まった韓国ブームも一部のファン層に留まらず、NHKの業績に影響を及ぼしたり、総理大臣がその人気にあやかろうとするようになってきました。もはや一過性のブームとは言えないようです。


「冬のソナタ」のドラマの中では、近代的な空港の中をヒロインが走り回り、日本と似ていながら異なっている韓国の風景や文化が、あらゆるシーンの中に表れています。


以前は国の重要な施設や高所からの撮影は禁止されていました。すなわち空港鉄道の駅橋梁などの交通設備や、高いビルやタワーからの撮影は御法度でした。


釜山の空港のチェックインカウンターの写真を、航空会社の係員に撮影の良否の確認をしてから1枚だけ記念に写真を撮った途端、2人の警備員に駆け寄られ、「何を撮ったか?」、「なぜ撮ったか?」と聞かれたことがありました。


今、ドラマのシーンで空港の中の様子が大きく映し出されているのを見て、以前より規制が緩くなってきている事を感じました。


昔の個人旅行のガイドブックには、似た風景であるがどこか異なっている国、日本から一番近い国であるにも関わらず、なぜか遠い国。意外なことを発見する事が出来るこの国のことを、ミラクル韓国と呼んでいました。


ペ・ヨンジュンがソニーのハンディカムビデオのCMキャラクターに起用されましたから、日本のテレビに登場する機会がまた増えそうです。さらに「冬のソナタ」に続けとばかりに、いくつかの韓国ドラマが放映され始めました。


韓国ドラマから始まる韓国ブームは、私達がこれまで知っているようで良く分からなかった韓国の人々の生活を知ることができる、良い機会になるのではないでしょうか?


「冬のソナタ」を見ながら、1986年の夏に2週間の韓国旅行をした時の事を思い出してみました。

364.百万人の打ち水 (2004/07/23)

暑い日が続いていますが、最近は夕方頃から少し風が吹くようになりしのぎやすくなって参りました。パソコンルーム兼物置でサイトの更新をしております関係上、暑すぎる日にはパソコンの電源を入れることさえ苦痛になります。特にCRT式のディスプレーは暑さに悲鳴を上げて、時々内部で火花を散らしております(冗談ではなく本当に)。


さて、東京では「打ち水大作戦」と称しまして、毎年夏の間、一斉に打ち水をして気温を下げ、風を起こそうと言う運動があります。


昨年は、34万人の方が参加されたそうで、実際に東京の気温を1度下げることが出来たとされています。今年は、100万人の参加で気温を2度下げる事を目標とされているそうです。


打ち水を江戸の風習として見直し、ヒートアイランド効果で上昇中の都会の気温を、少しでも下げる運動を広げようとしています。


大阪でも「御堂筋打ち水大作戦2004」が、8月18日正午に計画されています。ここでも2度気温を下げることが目標になっています。大阪は、以前から東京よりヒートアイランド現象が顕著であるとされていますから、その効果が期待されます。


エアコンは温度を下げるものと思っていますが、実際は部屋の熱を部屋の外に移動しているだけですから、決してトータルでは温度を下げる訳ではなく、逆にモーターを運転する事によって冷媒に与えられたエネルギーは、余分な熱エネルギーとなって大気中に放出されます。消費した電力分の熱エネルギーが、夏の暑さに拍車をかけることになります。


きつい冷房は体に悪いからと言って、部屋を閉め切らずに外気を入れながら冷房をかける人がいます。自然の空気に触れていないと健康に悪いと言う理屈です。


それなら冷房を切るべきです。部屋の温度がいつまで経っても下がらないので、エアコンがフル稼働するため必要以上に電気を浪費します。スピードが出ると怖いからと言ってアクセルとブレーキを一緒に踏んでいるドライバーと同じで、エネルギーの無駄遣いになります。


打ち水にも夏場の貴重な水を使うのではなく、洗濯のすすぎ水や風呂の残り湯などを使うように呼びかけています


東京では一斉に打ち水をする日が決められていて、8月18日(水)正午8月25日(水)正午に予定されています。1人当たり1リットルの水を蒔くと、百万人で行えば2度気温が下がると予想しているようですが、果たして今年の結果はどうなるでしょう?


あまりに多くの水蒸気が発生して、局地的に夕立が降ったりしないかと心配になってきますが、人がジャンプして地震を起こす運動よりは役に立ちそうです。


ただ、打ち水をして気温が下がって風が吹き始めたら、エアコンを止めることをお忘れなく。そよ風の吹く街を、浴衣を着て夕涼みに出かけると言うのも、これまた情緒があってよろしいのではないでしょうか。