366.近くて遠いミラクルな国2: 甘露水 (2004/07/28)

歴史の好きな人なら、朝鮮半島を語る上で三国時代を外すことは出来ないでしょう。その三国であった、高句麗・百済・新羅のうちの新羅の都が置かれていたのが慶州です。


釜山から高速バスで1時間ほどの所にあります。代表的な古都であることから、京都に例えられますが、30万人程の人口からすると高山により雰囲気が近いかも知れません。古都らしく品のある優雅なたたずまいを見せています。


街中が遺跡と言っても過言ではありません。特に街の中にある古墳公園は見事なものです。仏国寺石窟庵、さらに郊外に広がる5つの地域がユネスコの世界遺産に指定されています。


仏国寺は、全盛期の10分の1の規模しかないと言われていますが、それでも威厳を保っています。市の中心部から30分ぐらい、のどかな風景の中をバスに振られていると、仏国寺観光のための旅館などが集まった街に到着します。


仏教が弾圧されていた時代が長かった為、多くの寺院が焼き払われている中、往年の姿を忍ばせる見事な建築です。特に、仏教の思想が建築や塔の形に具現化されているところに、この寺院の非凡さを見る事ができます。


仏国寺からさらにマイクロバスで20分ほど上ったところに、もう一つの世界遺産である石窟庵があります。長い間人々の記憶から忘れ去られていたのですが、郵便配達人が雨宿りをしようとしたときに発見したそうです。


洞窟のようになった空間を山中に人工的に作りだし、その中に仏像を設置することによって、仏教が示唆する宇宙を表現しているようです。その整ったお顔の釈迦如来坐像は正に、仏教芸術と呼ぶに相応しい雰囲気を醸し出しています。


この石窟庵の参道の途中に、甘露水を言う名のついた湧き水が、大きな鉢に満ちています。そのあまりにも透き通った滴と甘露水という名前に惹かれて飲んでみました。確かに自然にわき出た水のおいしさを感じます。


ただ、暑い夏のことでしたので少し飲み過ぎたようです。既に夏ばて気味だったことも手伝って、マイクロバスの乗り場に帰ってきたときには、雷でもないのに「ピーヒャラドンドン」になってしまい、あわててトイレに駆け込んだのです。


こんな人里離れた山奥の公衆トイレは、どこの国に行っても期待出来ませんから、あまりお世話になりたくなかったのですが、出物腫れ物所構わずでは仕方がありません。バス停近くにあったトイレに行ってみて驚きました。なんと清潔できれいなのです。


決して新しく作られたからきれいなのではなく、しっかりとメインテナンスされている感じだったのです。こんな山の中で水洗の設備を持っているのも驚きで、この遺産を大切にしていこうという意思の表れでもあるのでしょう。


そう言えば、釜山で泊まった宿で、階段の掃除をしているところを見て驚きました。石で作られた階段を、ほうきで掃くでもなく、掃除機で吸うのでもなく、はたまた雑巾掛けをするのでもなく、なんと石鹸を泡立ててゴシゴシ洗っていたのです。


長い歴史がありながら、多くの遺産が破壊され続けてきた経験があるからこそ、現存するものを大切にしようとしているのでしょう。


しかし、日本も少し前までは、ものを大切にしていたように思うのですが。