348.パーム普及作戦小学生編9: 学問に王道なし (2004/05/22)

「IT化による教育改革」「パームを利用して授業の効率を高めよう」などと言うと、真っ先に「学問に王道なし」、とお叱りを受けそうです。「地道な努力なくしては学問は成就しない!」、と。


おっしゃるとおりです。方向を見定めてコツコツと毎日少しずつ、それぞれの目標に近づいていく事の重要性は、今も昔も変わっていません。


しかし、方向を見誤っていたり、より効率のよい方法があるのなら、これまでの慣習にとらわれずに採用していくことも、必要なのではないかと思います。


この事が、「学問に王道なし」が示すもう一つの意味、つまり「学問を成就するための方法は一つではない!」、ということなのです。


1年ほど前、USの友人から届いた手紙を読んだとき、その内容に驚きました。友人の小学生の子どもたちが、地元の小学校には行かず、その代わりに母親が家庭で教えていると言うのです。


「嫌がらせ」「不登校」の言葉が、私の頭をよぎりました。その子たちが幼い頃からよく知っているので、なおさら残念に思いました。


ところが、それからも届く手紙やメールを読んでいると、それ程悲壮感が感じられないのです。いや、それどころか勉強を家で教えていることを、楽しんでいるようにも見えます。


最近になってやっと理解できました。USやヨーロッパでは、ホーム・エデュケーションホーム・スクーリングと称して、学校へは通わせず、各家庭で親が自分の子どもの勉強を見ていく制度があるそうです。


最近、特に採用する家庭が増えているそうで、1980年頃から広まり始め、今ではUSで200万人の子どもたちが、家庭で教育を受けていると言われています。


学校へ行かないと聞くと、集団生活面での不安がありますが、ホーム・エデュケーションの子どもたちが参加する、ボーイスカウト・ガールスカウトなどの活動も盛んなようです。


背景の一つとして、教室で行われる教育ではどうしても画一的になってしまい、一人一人の子どもが持っている個性が失われてしまうという事が上げられています。


教室でみんなと一緒に勉強した方が楽しいと思っている子どもがいると同時に、自分の家で一人で勉強する方が落ち着いて勉強ができるという子どもがいても、不思議ではありません。


日本では登校拒否と言うと、ネガティブに捉えがちですが、その子が勉強そのものを否定しているとは限りません。何らかの理由で、特定の環境に適応できないとしても、その子どもの全ての可能性を否定する事はできないのです。


先週、「松下電器・学習研究社、小学低学年向けデジタル学習塾開始」と言うニュースがありました。小学校低学年向けに、学習教材をオンライン配信するというものです。


面白いのは、子どもがパソコンに向かって一人で勉強するのではなく、教材をいったん紙にプリントして、親と一緒に会話しながら学べるように工夫したという点です。


教育と言えば、教室でみんなと一緒に学ぶものと決まっていましたが、日本でもホーム・エデュケーションが、教育の一つの方法として認知される時が来るでしょうか?


「学問に王道なし!」


教育の可能性を広げていくことによって、子どもたちの未来も、大きく広がっていくのではないでしょうか?

347.パーム普及作戦小学生編8: 教育用パーム・ハンドヘルド (2004/05/21)

パーム・アプリケーションが揃ってきましたので、今度は教育用パーム・ハードウェアを考えてみましょう。


パームを個人所有を前提で考えるか、他の生徒と共用することを前提で考えるかによって、ハードウェアの仕様に違いが生じます。343.と344.の雑記で紹介した例でも、個人で購入することを奨励してはいますが、基本的には共用しているようです。


個人で管理ができる年齢になれば個人所有も良いかもしれませんが、小学生の場合は共用の方が便利でしょう。教師によってインストールされたアプリケーションを把握することができますし、予め授業に応じたセットアップをしておくことができます。充電やトラブルに対するメインテナンスも、まとめて行うことができます。


パーム本体は、落としても壊れないような筐体と液晶画面が必要です。またポケットに入れて持ち運ぶ訳ではありませんから、あまり小さくする必要はありません。また1日中使ってもなくならない充電容量が不可欠です。


CPUやメモリーは、どのようなアプリケーションを使うかによって変わってきます。画像や音声を扱うのならば高速CPUと大容量メモリーが必要になります。しかし、何と言っても予算と相談することになるでしょう。


教師とのコミュニケーションは、赤外線かあるいは無線LAN、またはブルートゥースが必要になります。いずれにしても、多くの生徒が一斉にビームしてくるのを受け取ることができるように、天井付近にアンテナ赤外線センサーを設置する必要があるでしょう。


さて、教師用のパームですが、こちらは教室だけでなく常に携帯して、少なくとも1年間のデータを保存できなければなりません。CPUやメモリーは最強のものを奢ることが必要です。生徒たちは、「いつかは、あのパームを自分も手にするんだ!」、と羨望の眼差しを向けるのです。(教師は置き忘れないように、注意しなければなりません。)


教師は、教員室のパソコンとパームを連携して、ダウンロードやバックアップを行います。クレードルは、教師用のパームと生徒用のパームすべてを同時に搭載でき、充電バックアップ故障診断アプリケーションやデータのインストールを行います。アタッシュケース型のクレードルなら、そのまま教室まで運べます。


1クラス分の生徒用パーム、教師用パーム、パソコン、クレードル、教室の受信設備などを一つのパッケージにして、学校に導入するのです。学年に応じたアプリケーションも、カリキュラムと共にパッケージすれば、速やかに授業に展開する事ができます。


これまで専用教室に導入してきたパソコンは、「パソコンのための授業」が必要でした。パソコンを使うこと自体が目的ならそれでも良いのですが、ITは道具(ツール)として利用されなければ意味がありません。


これからは、「授業のためのパーム」を導入しましょう。パームを授業に活用することによって、効果的な授業を、教師の負担を軽減しながら実現し、生徒は興味を持って授業に取り組むことができるのです。


学校教育におけるIT化が、今始まるのです。

346.パーム普及作戦小学生編7: 教育用パーム・アプリケーション (2004/05/20)

海外の例の中にも、いくつかの教育用パーム・アプリケーションが登場していましたが、日本の教室で使うとしたら、どのようなアプリケーションがあれば良いでしょうか?


大きく3つに分類してみましょう。まず教材としてのアプリケーション、次に辞書や図鑑のようなリファレンスとしてのアプリケーション、最後に授業をサポートするアプリケーションです。


最初の教材として使うものには、ひらかな・かたかなの書き方を覚えるものや、九九の練習から始まって、足し算、引き算、掛け算、割り算の練習をするものが考えられます。


仮名の練習が終われば、漢字の学習が始まりますが、学年が進むに従って学習する漢字の数も増えてきます。パームを使って書き順をなぞって練習したり、漢字を表示して音読み・訓読みを入力したり、熟語を作成したりするアプリケーションがあれば、効率よく覚えることができます。


漢和辞典とリンクすれば、画数部首字の成り立ちなど、多くのことを同時に学ぶことができます。


実は、日本の初等教育で多くの時間を費やしているのが、漢字の勉強です。これを如何に効率よく勉強することができるかが、教育改革の重要な課題と言えるでしょう。


漢字の勉強を効率よく行えば、同じ教育内容でも時間的ゆとりを生み、英語などの時代の要請に合った内容を無理なく組み入れていくことができるのです。


漢字と同様に、難しい言葉も国語辞典とリンクしていれば、同音・同義語や参考文例等を含めて参照することができます。


パームのアプリケーションで実現すれば、学年に応じた難しさの国語辞典を使うことができるでしょう。今は、小学校に間に1冊かせいぜい2冊の辞典を使うようですが、学年に応じて字の大きさや説明の難しさを変えたバージョンを用意することもできます。


計算の練習も、パームのアプリケーションなら、多くのバリエーションを揃えることができます。毎日の結果を貯えておき、平均点やかかった時間などを記録することも簡単に出来ます。


これら以外にも、時計の読み方カレンダーの使い方度量法の勉強ことわざ辞典、地雷の伏せ方やのろしの上げ方(これは落語でした?)、等々、いくらでもパーム・アプリケーションを利用した教材を用意することができるでしょう。


リファレンスとしては、漢字辞典国語辞典以外にも、理科年表歴史事典、あらゆる図鑑の類から地図に至るまで、多くのものが考えられます。


今までの授業では、辞典や図鑑を授業中に参照することは、スペースの関係で無理がありました。掌のパームなら、狭い教室の机の上で十分です。


最後の授業をサポートするアプリケーションですが、前にも出てきた"Classroom Wizard"のような、教師と生徒のコミュニケーションツールが必要になります。


テストを迅速に実施し、結果をすぐさまサマリーする事ができる事は、手によって採点したり集計していたのに比べて、教師の生産性の向上に寄与するでしょう。


また、生徒がどの問題をどのように間違えたかがすぐに判るため、弱点に絞って重点的に指導することが可能になります。


出席を採ったり、生徒に連絡事項を伝えたりすることも、これまでより簡単で確実に行うことができます。


さらに、教師の為のアプリケーションとして、生徒情報管理年間の行事管理成績の統計的処理レポート作成等々、パソコンとの連携を利用して様々な用途に使うことができます。


小学校から中学校、高校まで、ほとんどの学校教育の場でパームは有効な教育ツールとなるでしょう。パームを利用することによって、これまでより授業を効率的に行うことができ、教師の負担を減らすことができます。


そして最も重要なことは、生徒がパームを使うことによって、「勉強することが楽しくなってくる」ことなのです。

345.パーム普及作戦小学生編6: 教材としてのIT機器 (2004/05/18)

さて、保守的な小学校の教育現場では、IT化による変革がないまま時代に取り残されつつあります。しかし、世間にはIT機器が溢れていますので、子どもたちはいつしかIT機器のような物を手にするようになります。


携帯型ゲーム機は、その際たるものと言えるでしょう。その普及の度合いはパームの比ではありません。対象とする年齢層において、カリスマ的な存在と言っても過言ではありません。


今の日本の子どもたちは、IT機器に幼いときから接し、意識しないで使うことができるのです。教育のための道具として使わない手はありません。


幸か不幸か、携帯型ゲーム機を売りまくっている企業が、元来ゲームエンターテインメントが本業であるため、このハードウェアを教育用に使おうとはしていないようです。その気になればかなり高度な教育ソフトに対応できると思いますが、ゲーム以外には手が回らないといったところでしょうか。そのうちゲーム機としての需要に陰りが見られたら、教育ソフトにシフトするのかもしれません。


汎用型ではありませんが、単一機能の電子機器は、小学生向きの雑誌の付録として既に提供されています。例えば、ベネッセが小学生向きに通信教育・家庭学習教材として販売しているチャレンジシリーズには、年に数回電子機器を使った教材が付録に付きます。


小学1年生なら、ひらかなの練習機です。ボードの上をペンでなぞると、正しい書き順ならば「ピンポーン!」、誤りなら「もう一度!」とキャラクターの声で反応します。ボード上に圧力センサーが埋め込まれており、それぞれのかなの書き順に従った順番にオンになるかどうかを、検出しているようです。


学年が進むに従って、より高度な教材になっていきます。まず足し算・引き算の練習機が登場し、九九の練習機掛け算・割り算の練習機が続きます。それぞれの機能の為に専用に設計されたハードウェアが用意されています。


パームを使えば、これらの機能を1台で賄うことができます。学年が進めば使わなくなるハードウェアは無駄ですし、ソフトウェアで対応するならば、専用のハードウェアをいちいち開発しなくても良くなります。この共通のプラットフォームを使うことによるコスト削減は、より良いソフトウェアの開発を可能にするでしょう。


教育の中でも基本的な部分では、その内容はほとんど変化がありません。例えば、ひらかなの書き方や九九の練習は、今も昔も同じと言えるでしょう。一度優れた教育ソフトウェアが完成すれば、長い間愛用され続ける可能性が高いのです。


しかし、そのためにはプラットフォームが安定して、長期にわたってサポートされなければなりません。新規性や斬新さを競い合う携帯型ゲーム機とは、異なるコンセプトが要求されます。大切なのは、汎用性や信頼性であり、しかも継続的に保たれていることが重要です。


正にパームOSパーム・ハンドヘルドが活躍できる分野ではないでしょうか?

344.パーム普及作戦小学生編5: パームが活躍する教室ーその2 (2004/05/15)

もう一つの例を見てみましょう。"Clark County School District"は、ネバダ州で、カジノ産業に次いで多くの就労者を抱える教育地区団体です。30,000人が働き、285,000人の生徒が属しています。


パームを採用するに当たり、生徒の学習達成度を改善すると共に、教師のパフォーマンスの改善にも焦点が当てられました。


パームの導入コストは、ソフトウェアを含めてパソコンの10分の1に押さえる事ができました。また、パブリック・ドメインの書籍をダウンロードし、"Palm Reader"と言うアプリケーションを使って読む事によって、200冊の新しい本を購入するよりパームを購入する方が、効果的な投資になりました。


2003年1月までに、3クラス分のパームのセットと、各教師に1台ずつのパームが導入されました。


化学の授業では、元素の周期律表のアプリケーション"ChemTable"を使って、これまでに知っていた以上の情報を、参照することができます。


"Classroom Wizard"というアプリケーションは、教師が生徒にテストをして、リアルタイムに試験の結果を解析する事ができます。生徒も試験を楽しく受けることができます。教師は、生徒に試験を受けさせると、迅速に結果をいろいろな形式のレポートにすることができます。


生徒は、カフェテリアにあるHotSyncクレードル付きのワークステーションで、E-Bookやパブリック・ドメイン・テキストをダウンロードする事ができます。


理科の授業では、サイエンス・プローブを装着することによって、温度や運動を測定することができます。特に屋外で観察する場合、たとえノートブックパソコンでも大きくて重いのですが、パームなら簡単に持ち出すことが出来ます。


各教師は、生徒の情報を、専用のアプリケーションを使ってパームに構築しているため、緊急時の連絡先などがすぐに判るようになっています。


パームを使った授業をするメリットの一つは、これまでのように教師が黒板に書いた字を、生徒がノートに書き写す無駄な時間がなくなったことです。その代わり教師はノートと授業の概要を、生徒にビームするのです。


これによって、生徒は授業時間をより実践的な事に費やすことができ、50分間の授業をより有意義に生かすことができるのです。


生徒は、日常的にパームを使うことによって、これまでの分厚いバインダーから解放されます。パームの持つ魅力は、生徒たちにパームが学習に欠かせないものであることを、自然に気付かせるのです。