日経BizTechに、「米コダックが事業転換、写真から商業用印刷へ◇ロイター」という記事が掲載されています。規模の縮小が続いている、消費者用写真事業から、商業用印刷事業にシフトして行こうということです。
コダックと言えば、カラーフィルムの発色が世界七不思議のひとつに数えられていたことを、懐かしく思い出される方も多いのではないでしょうか?
まだ、日本製の製品がアメリカを追いつけ追い越せといっていた時代に、コカコーラの味と並んで、コダカラーフィルムの発色のすばらしさは、なかなか追いつけないように思えたものです。
その後、日本製のフィルムの性能が飛躍的に向上し、コダックは輝きを失ってきていましたが、ついに写真事業のリストラを決断するまでになったようです。どれぐらいの時間をかけて縮小していくのかは判りませんが、一つの時代が去ったと言うことなのでしょう。
ネガカラーフィルムでは、日本の市場ではフジフィルムが一番高く売られ、コダックはプライスリーダーになれなかったのですが、数年前のUSでは、コダックが一番高く売られていたと思います。しかし、USのハイアマチュアの中には、フジのベルビアのような鮮やかな発色を好んで使う人が増えてきていました。
コダックのフィルムといえば、その現像プロセスの複雑さに特徴がある、リバーサルカラーフィルムのコダクロームが代表です。フィルム乳剤中に色素を持たない外式と呼ばれ、色素を乳剤中に持つエクタクロームや、フジのフジクローム、コニカのコニカクロームなどとは一線を画しています。
外式の現像作業は、色素を注入するために潜像の反転作業が必要になるため、現像中に露光作業をしなければなりません。その複雑なプロセスの為、日本では2カ所の現像所しかコダクロームを処理できないと聞いたことがあります。
特に、コダクローム25(ISO25)の渋めの発色と、驚異の粒状性は人気がありました。プロのカメラマンが風景写真を撮影するときは、引き伸ばし時の耐性を考えて、大判や中判カメラを使いますが、唯一コダクローム25と35mm一眼レフカメラの組み合わせは、プロの要求に耐えることができました。
また、白黒フィルムの傑作といえば、Tri-X(ISO400)がありますが、このフィルムとD-76という現像液の組み合わせは、正に白黒現像の世界標準として何十年と君臨してきました。白黒フィルムには、多くの現像処方が存在していますが、そのほとんどがコダックの処方であったり、その変形であったりして、世のカメラマンが多くの作品を残すことに貢献してきたのです。
写真の起源は、銅乾板を使ったフランスのタゲレオ・タイプであると言われていますが、まだ100年少ししか経っていません。最初一部の金持ちの道楽であった写真を、一般大衆の娯楽や文化、あるいは芸術にまでなっていった過程で、コダックの果たした功績は偉大であったというべきでしょう。
これから、写真はますますデジタル画像化していきますが、コダックが写真分野に残してくれた財産を大切にしていきたいものです。