360.無理難題コラム3: 日本でTreo600が使えるようになるための方策 (2004/07/08)

さて、ふふふ総帥から次に頂いたお題は、「日本でTreo600が使えるようになるための方策」であります。確かにパーム・コミュニティーにおきまして、Treoを始めとするスマートフォンを熱望する声が多いのは事実であります。


日本の携帯電話市場においては、日本独自規格の採用により、いわゆる世界でシェアを取っているノキアモトローラの製品はそれ程多く出回っておりません。


反対もまたしかりで、国内のメーカーが世界の携帯電話市場で、多くのシェアを取っている訳ではありません。この辺りの解説はアットマーク・アイティの解説記事、「先行するヨーロッパの携帯電話OS事情 ―世界標準から取り残される日本の携帯電話―」が、将来展望も含めて良くまとまっています。


もう2年も前の記事ですが、今の日本の携帯電話業界が抱える問題がそのまま浮き彫りにされています。パソコンとワープロ専用機に例えて、日本の閉鎖的な携帯電話環境を問題視しています。


ハードウェアとソフトウェアが一体になったワープロが、汎用性のあるパソコンに取って代わられた例や、長い間NEC独自規格が主流であったために、世界標準から取り残されてしまったパソコンの例をあげ、日本の携帯電話がまた同じ道を歩む可能性を指摘しています。


Treo600に魅力を感じ、何とか日本で携帯電話として使えないかと模索されている方も多いようですが、同じCDMA方式のauであっても、発信回路に細工をしないと使えないと聞いたことがありますので、ハードウェア的には同一ではないようです。


また、通信プロトコルなどもキャリアごとに違いがあるでしょうから、アマチュア無線のトランシーバーに改造しそうな「とらじろうさん」ならともかく、一般的には諦めるしかないようです。


そもそも、日本ではPIM機能を搭載したスマートフォンは売れないと言う定説があるようで、今の携帯電話が提供する簡易版のPIM機能で十分だと考えられているのでしょう。


あるいは、シグマリオンの販売が一部のユーザーに留まっている事も、スマートフォンの開発に踏み切れない理由かも知れません。


ただ、「17.携帯電話が開発プラットホームを考える時 (2003/02/14)」にも書いていますが、携帯電話のアプリケーション・ソフトウェアの開発プラットフォームとしてのパームOSには、過去のソフトウェア資産の流用や開発費の削減などのメリットがあります。


スマートフォンの汎用性や進歩性を正しく評価し、開発環境の世界標準化を図って行かなければ、今後携帯電話の市場が先細りになるかも知れません。


良い機会ですから、日本でTreo600が使えるようになるための方策を練りましょう。(そんなに簡単に行くのでしょうか?今後取りあえず、「スマートフォン普及作戦」を進めていきます。)


それではふふふ総帥、そろそろ本領を発揮していただいて、「夏のバカンス!」でお願いします。(バカンスって死語?)

359.無理難題コラム1: 参議院選挙 (2004/07/06)

vega21.comふふふ総帥との共同企画が、「いきなりリレーコラム」だったはずが、いつの間に「無理難題コラム」に変わっていました。しかも初回のテーマが「参議院選挙」とは確かに無理難題でございます。


政治と宗教に関しての話題を避けて通ってきた当サイトと致しましては、当たり障りのないところでウェブにある情報を拾いながら、お次の方に引き継いでいきたいと思います。


そう言えば、数週間前から選挙ポスターの掲示板が近所に設置されて、何の選挙が始まるのかと思っていたら、参議院の選挙だったのですね。その掲示板の半分しか埋まらない候補者のポスターを見ていて、いまいち盛り上がりに欠けると思っているのは私ばかりでしょうか?


試しにGoogleで「参議院選挙」を検索してみると、政党のホームページの間に埋もれそうになっている、総務省・中央選挙管理会のページを見つけました。


「日本に関心を持てるのは、スポーツだけですか?」「あなたの一票には力がある。」、とサッカーの中山雅史選手と白石美帆さんが笑顔で語りかけます。


当日投票できない人のための「期日前投票制度」「郵便等投票制度」、あるいは「不在者投票制度」の具体的な方法が紹介されています。


選挙制度には国民の過半数の投票率が不可欠ですが、最近の投票率の推移はどうなっているのでしょうか?International IDEAには各国の選挙の投票率等のデータが網羅されていますが、日本の投票率は25年ぐらい前までは70%台をキープしていましたが、その後徐々に落ち始め、最近10年では60%台をキープすることができなくなってきました。


他の国々でも同様に、投票率は低下傾向にあるようです。フィリピンやドイツなどでは今でも80%程度を保っていますから、国によって状況は同じとは言えませんが、選挙制度を継続するためには、そろそろ投票率の低下傾向に歯止めを掛ける必要がありそうです。


また、記憶に新しい米国大統領選のフロリダ州の集計ミスに代表されるように、僅少差で決着が着く場合の、選挙システムの精度の曖昧さにも問題があります。集計をやり直すたびに結果が異なるようでは、投票の信頼性に疑問が生じます。


選挙の結果によって、戦争が始まるかどうかが決まる場合がありますから、信頼性の高い選挙システムの構築が望まれるところです。


IT Media Mewsの古いところを探してみると、古いパンチカード・システムの問題新しい投票システム開発のニュースが、前回の大統領選の問題が発生した頃に論じられています。


古いパンチカードシステムはIBM誕生のきっかけでしたし、新しいシステムにはユニシスデルマイクロソフトが参画しているようです。選挙とITは深い関わりがありますが、信頼性のある投票システムによって投票集計の精度を高めて行くことが、選挙制度の信頼を保つために求められています。


日本でも携帯電話を使った自動投票集計システムが、特許を取得しています。投票即集計が可能となれば、開票速報の経過を見ながら投票する事が、技術的には可能になるかも知れません。その投票に対応した携帯機器の中に、パームが含まれていればうれしいのですが。


投票に行く手間を省くことによって投票率の低下を防ぐことが、新しい投票集計システムによって可能になるかも知れません。


ただ、選挙が終わった日に、日曜夜の全てのテレビ番組が特番を組み、開票速報を見て過ごすのも、それはそれで楽しみかも知れませんが、、、


最後に参議院ホームページを紹介しておきます。FAQにはトリビア的話題がありますので、意外と楽しめます。


さて、非常に中途半端になってしまいましたが、お後に引き継ぎたいと思います。ではふふふ総帥殿、明日は「お中元」でよろしくお願いいたしまする。

358.気持ちを伝えるPDA (2004/07/02)

神戸新聞WEB NEWSに、「自閉症者の思い代弁 携帯端末ソフトに反響」と言う記事が掲載されています。


自閉症の方のコミュニケーションを支援する携帯端末機を、コンピューターソフトウェア開発会社とボランティアグループが共同開発したというニュースです。


手のひらサイズのコンピューターにコミュニケーションソフト、「あのね♪」を搭載し、手ごろな価格と相まって全国から問い合わせが寄せられているそうです。


携帯端末機がiPAQであることが少し残念ですが、ハード・ソフト込みで41,790円という価格設定は、このようなコミュニケーションツールを待ち望んでいた人にとっては、無理なく手の届く範囲と言えるでしょう。


タッチパネルからひらかなを入力する事によって単語や文章を作成し、合成音声で相手に伝えることが出来るそうです。


またあらかじめよく使う言葉を、グループに分けて登録することが出来るので、すばやく引き出すことが可能になっているようです。


操作パネルは5種類しかなく、初めて手にしたときから惑うことなく使えるように配慮されています。また子どもが使用する事も想定されているようです。


確かにこの用途の場合、文字入力が素早く出来ることが必要ですし、表示も見やすくなければなりません。また、音声合成処理能力と大音量のスピーカーが要求されます。しかも携帯性が良くなければなりませんから、PDAならではのアプリケーションと言えるでしょう。


6月25日のパルマガのコラム、「狂おしき音の洪水の中で」で、機長さん「氾濫するスパムメールによって、テキストを音声に変換するソフトウェアを使う視覚障害者が、多くの時間を無駄にしなければならない」、と言う記事を紹介されておられました。


インターネットに代表される情報のバリアフリー化は、まだまだ解決しなければならない問題が多く残っていますが、自閉症の方々がPDAによって積極的にコミュニケーションが出来るようになれば、情報のバリアを一つ取り除くことが出来るかも知れません。

ユビキタス・コンピューティングなどと難しい言葉を使わなくとも、私達の身の回りを見回してみれば、必要な情報がすぐそこにありながら、手の届かない人がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?


デジタルデバイドを埋めていくために、パームを始めとするPDAや携帯端末の果たすべき役割は、以前にもまして重要性を増してきているのでしょう。

357.中と外のトポロジー4: CADにおける古典的ドーナツ問題 (2004/06/29)

ドーナツを食べれば胃の中に入る。簡単に片づければそれでお仕舞いですが、せっかくですから、もう少しこの2つの間に関連を付けてみましょう。


今ドーナツの絵を書いてくださいと言われたら、どのような絵を描くでしょうか?単純に書くのなら、同心円で、半径が異なる円を2つ書くでしょう。確かに、ドーナツ型をしています。


しかし、「大小2枚の丸いお皿が重なっている」と言われれば、そのようにも見えてきます。つまり、小さい方の円の中が詰まっているのか空いているのか、見方によって変わってくるのです。


CADのような平面図形を扱うソフトウェアでは、同心の2つの円をどのように解釈するかが困難です。単に円が2つ重なっているだけでは、ドーナツなのか、2枚のお皿なのか判りません。


図形を構成するは物の境界を示してはいても、その境界のどちら側にものがあるか明確ではないからです。


ドーナツ型の場合は、外側の円はその内側にものが存在し(Inside Topology)、内側の円はその外側にものが存在する(Outside Topology)と言う属性を持たせることによって区別します。


これで解決したように見えますが、例えば内側の円(Outside
Topology)を拡張(Expand)させていき、外側の円より大きくなると変なことが起こります。


また、同心円を2つに切った場合、アルファベットの"C"の文字が向かい合ったような形になりますが、その場合はInside/Outsideの区別がなくなります。再び結合させたりすると、さらに複雑になってしまいます。


これら一連のドーナツ図形を扱う上での問題を、「古典的ドーナツ問題」と呼ぶことがあります。


このようにあらゆる図形の演算に対して、取り扱いが煩雑になるため、ドーナツ型を作るときは、最初から"C"の文字を向かい合わせてような作り方をします。


また、"C"の空いている部分を延ばして閉じた円になるようにした場合、少しでも重なってしまうと"Self Intersection"と称してやっかいな現象が起こります。正に、ヘビが自分のしっぽを食べたかのように、図形が消滅する事になります。


さて、胃の中の話しに戻りますが、2つの大きさが違う同心円を見て、2つの大きさの異なる丸いお皿が重なっていると考えれば、胃の中は体の中になりますし、ドーナツだと考えれば、胃の中は体の外になるのです。考え方によってどちらにも見える訳です。


ここまで考えてくると、お化粧をする女性にとって、「デパートの化粧室は中でデパートの売場は外」であるとしたら、「電車の中は中で電車を降りたら外」と言う理屈もあるのかも知れません。電車の中でお化粧をしている女性は、自分ではプライベートな世界にいるのかも知れません。


おっとその前にもっと重要なことに気付いていませんでした。そもそも電車でお化粧をする女性は、隣に座っているおっさんを男性(異性)とは思っていなかったのですね。

356.中と外のトポロジー3: ヘビが消える? (2004/06/27)

「人間の胃の中は体の外にある」と言うのは、動物の進化の過程を考えると分かりやすいかも知れません。


最初の動物は消化器官を持たず、体の表面に接する液体から養分を吸収していました。しかし、それでは接している時間が短いため、全ての養分を吸収することが出来ません。動物としてより活発に活動するためには、もっと効率よく養分を吸収することが必要です。


そこで最初はくぼみであった養分を吸収する組織が進化して、体を貫通する消化器官になったそうです。消化器官は体の表面の形が変化して出来たものなのです。


そう考えると人間は、トポロジー的には「ドーナツ型」をしていると言えるでしょう。


おなかの空いたヘビが、間違って自分のしっぽを食べ物だと思って食いついてどんどん食べていき、最後に頭の部分を食べたら消えてしまったと言う話しがあります。


これは冗談だとしても、ドーナツ型には不思議な現象が起こることがあります。


「メビウスの帯(輪)」は、裏と表がない図形として様々な研究の対象になっています。


試しに適当な長さの2センチ幅ぐらいの紙テープを、一回ひねって輪を作ります。そのテープの真ん中にぐるっと一周線を引き、その線上をはさみで切って輪を2つにしたとき、2つの輪は分かれているでしょうか?それともつながっているでしょうか?


実際にやってみると、予想と違う結果になることがあります。(と言うか、問題自体が誤った表現をしていますね。)そこでなぜそうなるかを説明するための数学がトポロジーです。


トポロジー(Topology)とは、辞書で引くと「位相幾何学」と訳されますが、大雑把な図形間の相対的位置関係を扱う数学です。


ドーナツ型は日常的によく目にする図形ですが、注意して扱わなければならない要注意図形です。それにはトポロジー的な考え方が必要になります。


では次回は最終回、「ドーナツはドーナッてんの?」をお送りします。(いや、あまりにもベタですので、題はちゃんと考えます。)