ドーナツを食べれば胃の中に入る。簡単に片づければそれでお仕舞いですが、せっかくですから、もう少しこの2つの間に関連を付けてみましょう。
今ドーナツの絵を書いてくださいと言われたら、どのような絵を描くでしょうか?単純に書くのなら、同心円で、半径が異なる円を2つ書くでしょう。確かに、ドーナツ型をしています。
しかし、「大小2枚の丸いお皿が重なっている」と言われれば、そのようにも見えてきます。つまり、小さい方の円の中が詰まっているのか空いているのか、見方によって変わってくるのです。
CADのような平面図形を扱うソフトウェアでは、同心の2つの円をどのように解釈するかが困難です。単に円が2つ重なっているだけでは、ドーナツなのか、2枚のお皿なのか判りません。
図形を構成する線は物の境界を示してはいても、その境界のどちら側にものがあるか明確ではないからです。
ドーナツ型の場合は、外側の円はその内側にものが存在し(Inside Topology)、内側の円はその外側にものが存在する(Outside Topology)と言う属性を持たせることによって区別します。
これで解決したように見えますが、例えば内側の円(Outside
Topology)を拡張(Expand)させていき、外側の円より大きくなると変なことが起こります。
また、同心円を2つに切った場合、アルファベットの"C"の文字が向かい合ったような形になりますが、その場合はInside/Outsideの区別がなくなります。再び結合させたりすると、さらに複雑になってしまいます。
これら一連のドーナツ図形を扱う上での問題を、「古典的ドーナツ問題」と呼ぶことがあります。
このようにあらゆる図形の演算に対して、取り扱いが煩雑になるため、ドーナツ型を作るときは、最初から"C"の文字を向かい合わせてような作り方をします。
また、"C"の空いている部分を延ばして閉じた円になるようにした場合、少しでも重なってしまうと"Self Intersection"と称してやっかいな現象が起こります。正に、ヘビが自分のしっぽを食べたかのように、図形が消滅する事になります。
さて、胃の中の話しに戻りますが、2つの大きさが違う同心円を見て、2つの大きさの異なる丸いお皿が重なっていると考えれば、胃の中は体の中になりますし、ドーナツだと考えれば、胃の中は体の外になるのです。考え方によってどちらにも見える訳です。
ここまで考えてくると、お化粧をする女性にとって、「デパートの化粧室は中でデパートの売場は外」であるとしたら、「電車の中は中で電車を降りたら外」と言う理屈もあるのかも知れません。電車の中でお化粧をしている女性は、自分ではプライベートな世界にいるのかも知れません。
おっとその前にもっと重要なことに気付いていませんでした。そもそも電車でお化粧をする女性は、隣に座っているおっさんを男性(異性)とは思っていなかったのですね。