608.クレジットカードによる国際電話にご用心 (2006/10/30)

最近はスキミングなどのクレジットカードの不正利用が頻発していますから、海外旅行から帰った後に来るクレジットカードの請求書は、十分注意をしてチェックしておかなければなりません。


さて、インドに出張に行ってから一ヶ月が経ち、クレジットカードの請求書が届いたのを見て驚きました。帰りにクアラルンプールの公衆電話からかけた電話代の請求金額が、1件当たり約40米ドル。それが計6件も請求されてきたのです。利用店名には、"INTL CL*"と表示されています。うまく電話がかからなかったために2枚のクレジットカードを試したので、それぞれのクレジットカード会社からの請求に含まれていました。


使用した公衆電話機は、クアラルンプール中央駅構内にあったものです。公衆電話の横に国際電話の使用方法が説明してあり、ある特定の電話番号をキーインした後に、クレジットカード番号相手先番号を入力することによって、クレジットカード払いの国際電話がかけられるものです。


その使用方法を記したものは、如何にも電話機の設置者が掲示したものに見えましたから、何も疑問を持ちませんでした。また国際電話にかかる費用に関する一切の表示はありませんでした。


さて、その余りにも高い電話代と、接続できなかった場合にも請求されている事から、今日2つのクレジット会社に請求内容を電話で問い合わせてみました。


一つ目のクレジットカード会社は、とりあえず支払いは保留しておき、電話会社に詳細を問い合わせてみるが、結果が分かるのは2・3ヶ月先になるだろうとのこと。


もう一つのクレジットカード会社は、国際業務部の担当者(Y氏)が対応され、この電話会社は、"International Call"という名前の会社で、世界中で営業をしており、いつも通話一回当たり35米ドルぐらいを請求してくるとのこと。請求内容に関する苦情は直接電話会社にしてくれと言うことで、その会社のメールアドレスを教えてもらいました。


さて、そのメールアドレス("info@bbgcomm.com")を手がかりに、インターネットを探してみると、BBG Communicationsという会社が見つかりましたが、どうも怪しい雰囲気の会社です。(注:サイトのアドレスは、http://www.bbgusa.com/ ですが、その怪しさ故、参照することはお勧めいたしません。)


クレジットコールによる国際電話を扱っている会社にしては、サイトに掲載されている情報があまりにも貧相です。サイトそのものの完成度も低いですし、会社の情報もほとんど記載されていません。


これは何か変だと思い、さらに検索してみると出てくるは出てくるは。同じ手口で高い国際電話代をクレジットカードに請求された人が他にも大勢いたようです。


アムステルダムやパリの空港の公衆電話で、あるいはドイツのホテルの公衆電話で。その他南米やアジアまで。また被害にあったのは、日本人ばかりではないようです。


それらの掲示板の情報を元に整理すると、電話料金は回線使用料として接続されたかされなかったかに関わらず一律15米ドル、通話料は一分当たり約5米ドル。ただし最低通話時間5分と言うことで、どんなに短い通話であっても、あるいはつながらなかった場合でも、最低40米ドルほどが課金されるようです。


クレジットカードに請求してくる会社名には何通りかあるようですが、すべてBBG Communicationsと言うUSにある企業の子会社のようです。私の場合は、クレジットカード会社で教えてもらったメールアドレスからその企業名が分かりましたが、"INFONAA"という名前で請求してくる場合もあるようです。


掲示板を見ていると、被害にあった人は概ね泣き寝入りする人が多いようですが、中には電話会社にメールをしたりUSまで電話で抗議したりして、電話会社に一部返金させた人もいるようです。また、海外の掲示板の情報によると、USのFCC (Federal Communications Commission)FTC (Federal Trade Commission)にクレイムしながら同時に電話会社と交渉し、全額返金させた人もいるようです。


ただ、この電話会社の苦情受付電話の応対が英語かスペイン語のみで、かなり早口でしゃべりまくられるそうですから、一部返金だけで納得してしまう人が多いようです。


交渉するときのポイントは、



  • 電話機に料金が明示されておらず、もしそれを予め知っていたら利用しなかったこと。
  • クレジットカードによる国際電話が、公衆電話の設置者が提供するサービスであるかのように見せかけていたこと。

でしょうか。


BBG Communicationsのサイトで、Clientsというページを見に行くと、ホリディインやシェラトン、リッツ・カールトンにような有名ホテルの名前が並んでいます。これらのホテルは、この企業が法外な電話料金を吹っ掛けていることを知って契約をしているのでしょうか?


また、クレジットカード会社も、請求金額が異常に高いと知りながら、そのような企業を放置しているのは、法的に問題がないとしても、消費者に注意を喚起するなどする必要があるのではないでしょうか?


さあ、それでは私もBBG Communicationを相手に返金交渉をしてみますか。さて結果は如何相成りますでしょうか。


ご参考のために、この問題に関するリンクを掲載します。


607.「ゲノムひろば2006」のご紹介 (2006/10/28)

商用化に適した宇宙船をいち早く実用化したものに賞金を与えるとして、世界中の注目を集めた米カリフォルニア州の非営利教育機関「X賞財団」が、新たに10日間で100人の遺伝子を完全に解読したチームに、1000万ドルを与 えるという賞金レースを始めたそうです。


日経ビジネス10月23日号が"The Wall Street Journal"の記事を紹介するところによると、解読される遺伝子の提供者として、グーグルやマイクロソフトの創業者が名を連ねているそうです。


ヒトゲノムの解読計画は2001年に第一段階が終了し、平均的とされるな匿名のDNAドナーが解読されています。DNA情報を解読する事によって、どの薬を飲むべきか、どの病気にかかる危険性が高いかをあらかじめ知ることができ、また新しい病気の治療方法を探す事ができると期待されています。


DNA配列の解析にかかる費用は、近年急激に下がってきているそうですが、
基本的な手法である「サンガー法」は20年来変わっておらず、まだ誰もがその恩恵にあずかれるほど手軽に行うことはできません。今回のX賞を獲得する為には、まったく新しい解析方法を開発しなければならないと予想されています。


5年以内には実現可能だと考えているそうですが、最終的には人のDNA解析にかかるコストを1000ドル程度まで下げようとしているそうです。今私たちが医療機関で受けている検査と同じ手軽さで、DNA解析が可能になる日も近いかも知れません。


さて、そこで「ゲノムひろば2006」のご紹介です。先日から当サイトのトップページにリンクを掲載させていただいておりますが、11月に東京と京都で、生命科学分野の最新の研究テーマを一般の方々に公開するための「ゲノムひろば2006」が開催されます。


当サイトでは、2003年に「244.ゲノムひろば (2003/11/05)」「247.ゲノム三題1: ゲノムとDNA (2003/11/09)」で紹介させていただきました。


「ゲノムひろば2006」では、さらに進化したゲノム解析の最前線情報が満載です。国内の最先端の研究者がこぞって参加されておられますから、きっと面白いテーマが見つかるに違いありません。ひょっとしたら、その中から1000万ドルの賞金レースを射止める研究テーマが出てくるかも知れません。


特に今年は、コンピューターサイエンス(計算機数学)を応用した、バイオインフォマティクス分野での成果が面白そうです。


東京は11月4日・5日に丸ビルで、京都は11月18日・19日に京都大学で開催されます。少しでもご興味をお持ちの方には、きっと新たな発見があるのではないかと思います。ぜひお立ち寄りください。

606.正露丸訴訟について (2006/10/25)

日経ビジネス10月16日号の「敗軍の将兵を語る」という記事に、正露丸訴訟で敗訴した大幸薬品の社長の言葉が掲載されています。


この訴訟については、すでに語り尽くされている感がありますが、この記事を読んで少し疑問に思ったことがありましたので、書かせていただきたいと思います。


この訴訟は、「平成17年(ワ)第11663号不正競争行為差止等請求事件」として、大阪地裁で平成18年7月27日に判決が言い渡されたものです。事件名として不正競争行為とあるように、「正露丸」という商標や製品のパッケージの意匠を中心に争われています。


原告の大幸薬品の主張は、以下の通りです。



  1. 最近10年だけに限っても約60億円の宣伝広告活動を行ってきた。
  2. 同期間に約285億円の販売実績を記録しており、正露丸という名前の医薬品のブランドを築いている。
  3. 被告の和泉薬品工業が、その類似した医薬品名と製品パッケージによって、大幸薬品の商品イメージに便乗した商売をしている。
  4. 消毒薬のクレオソートを主成分とする点で似た医薬品であるが、和泉薬品工業の製品には「ロートエキス」という緑内障,排尿困難,心臓病等の患者には症状を悪化させる可能性がある成分が含まれており、それにより大幸薬品の製品に対する信頼や信用が毀損されている。

さて、判決文を読んでみると、結局大幸薬品の「ラッパのマーク」と、和泉薬品工業の「瓢箪マーク」を、消費者が混同するかどうかだけが焦点になっていることが分かります。


製品のパッケージそのものの類似性は当然のものとして、マークが明らかに異なるために混同する恐れはないと言うのが、判決文の趣旨です。


さて、日経ビジネスの記事の中で大幸薬品の社長は、「争点が商標や意匠にすり替わってしまったが、本当に訴えたかったのはロートエキスの副作用による信用喪失であった。」と言われています。実際に消費者から苦情があり、返品された商品を受け取ってみると異なるメーカーのものであったことが頻発するようになってきたため、訴訟に踏み切ったと言うことでした。


判決では、ロートエキスが添加されている事による副作用に関しては、もし現に症状の悪化が生じているとしても、包装箱に禁忌例を記載するなどによって解決すべき問題であるとしています。また、ラッパ瓢箪のマークが明らかに異なっているので、それらを消費者が取り違える可能性はないとしています。


ここで消費者の立場で考えてみると、同じ「正露丸」という医薬品名である以上、一般にその成分に大きな違いがあるとは想像しにくいことです。「ロートエキス」が配合されていることが成分表示から知ることが出来ても、その成分によってどのような影響があるかは容易には分かりません。


ロートエキスは、一種の興奮状態を作り、腸の動きを一時的に止めることによって腹痛を鎮める効果があるそうですが、その為に細菌性の下痢の場合には腸内で細菌が繁殖し、悪化することがあるそうです。


O157が流行した時に、ある種の胃腸薬を服用すると、かえって症状を悪化させるという例が報告されていました。ロートエキスがその一因として考えられるのなら、成分を解りやすい場所に表示する事が、ラッパや瓢箪のマークにこだわるより重要でしょう。


一般的に、クレオソート製剤と言うことで全く同じ効能があると思っていましたが、添加された成分によって大きく異なってくると言うのなら、同じ「正露丸」という製品名を付けるところに問題があるのかも知れません。


登録商標の「正露丸」をめぐっては、過去に最高裁判所で商標の無効、すなわち普通名称として広く使うことを認める判決が出されています。しかし、消費者にはいまだに特定の商品名だと思っている人が多いようですし、ましてや成分に違いがあると思っている人は少ないのではないでしょうか?


「正露丸」は元来「征露丸」と呼ばれ、日露戦争当時から使われてきた医薬品名だそうですから、類似した医薬品が同じ名称を付けることは仕方がない部分もあるでしょう。そもそも、「正露丸」という普通名称か商品名か消費者が容易に判断できない曖昧な名前を使い続けることが、すでに問題であるように思います。


大幸薬品は、大阪高裁に控訴したようです。控訴審では、商標・意匠の問題にとどまらず、医薬品表示や販売方法にまで踏み込んだ判断を仰ぎたいものです。


参考までに、判決文(PDFファイル)のURLを、リンクを張らずに記載しておきます。興味のある方はご参照ください。→ http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20060731093511.pdf

605.番号ポータビリティー制度 (2006/10/20)

番号ポータビリティー制度(電話番号継続制度)が、10月24日から始まります。日経ビジネス10月16日号に、どのぐらいこの制度を利用しようとしている人がいるかを調べたアンケート結果が、掲載されています。


ぜひ利用したいという人が2%、今後検討するという人を会わせても20%程度だったようです。携帯電話会社のシェアが大きく変わると予想されたことから、各社は既存の顧客の確保と新規顧客の取り込みに躍起になっていましたが、すぐに勢力図が一気に変わってしまうことはなさそうな気配です。


電話会社を変えたいと思っている人の内訳は、ソフトバンクモバイル(旧ボーだフォン)を使用中の人が約3割NTTドコモ約2割au約1割だったそうです。また、新しく契約したいと思っている会社は、auが圧倒的に多かったそうです。どちらからも、今はauが人気を集めていると言うことが出来るでしょう。


約8割の人が、番号ポータビリティー制度の利用を考えていないと言うことですが、その一番大きな理由は、「メールアドレスを変更する事が煩わしい」と言うことのようです。電話番号が変わらなくても、メールアドレスを変更しなければならないので結局通知して回らなければならず、電話番号が変わるのと手間はほとんど変わらないと言うことのようです。


携帯電話が普及し始めた頃はおまけにしか過ぎなかった携帯メールも、今や欠かせないものになっていますから、そのアドレスを変えることは、電話番号を変えるのと同じぐらいの労力を伴います。


一部の携帯電話会社では、POP3メールなどに対応した機種もありますし、携帯電話会社が提供するメールサーバーで、".com"や".jp"などの独自ドメインが使えるものも出始めています。今後、携帯電話会社のサブ・ドメインを使ったお仕着せのメールアドレスではなく、独自ドメインを使ったオリジナルアドレスを取得して、それを継続的に使う人が増えてくるのではないでしょうか?


また、メールサーバーを携帯電話やプロバイダーと切り離して、独立したサービスとして提供するメールサーバー・プロバイダーが主流になってくるかも知れません。そうなった時に初めて、電話番号やメールアドレスに束縛されずに、携帯電話を選択することが出来るようになるのでしょう。


番号とメールアドレスの両方がポータビリティーを備えたとき、料金制度や接続の安定性など、携帯電話の基本的な性能が真に問われることになりそうです。

604.501から603の雑記を振り返る (2006/10/13)

インド特集をやっている間に600番目の雑記を通り過ぎておりました。これまで100回更新ごとに振り返ることにしておりましたが、今回は104回目の更新で集計してみたいと思います。


まず、各ジャンルの雑記の数を調べてみました。



Palm
15
インターネット
13
サイエンス

サイト・メインテナンス

テクノロジー

教育

海外
23
社会
15
雑談
27

相変わらず雑談が多く、「27」とトップを占めました。また、今回は海外ネタが「23」と2位になりましたが、インドネタでかなり数を稼いだようです。


Palmネタが「15」とはなかなか健闘しているのですが、パームの世界に新しい話題がほとんどないため、かなり無理をして話題を作っている感じがいたします。


海外が増えた影響か、サイエンスや教育関連の話題が少なかったようです。これからは、もう少し均等に話題を提供して行きたいと思います。


最近の100回更新に掛かった日数は、1年4ヶ月ほどでした。サイトを始めた頃は1年で300回更新していましたから、ずいぶんとスローペースです。もう少し更新頻度を上げて行かなければならないなと思っております。


サイト開設当初、700回ぐらいは更新できるのではないかという目標みたいなものがあったのですが、600回を過ぎてみると欲が出てきて、もう少し継続してみようかなと思っております。


それでは、次は700回更新を目指して参ります。お気が向いたときにはお立ち寄りください。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。