552.CMSについて考える3: BlogとCMSの相違点 (2005/10/31)

そもそも、Blogコミュニケーションの為のツールであると定義するところから、誤解が生じて来るようです。


Blogを使ったサイトがさらに進化していくと、もっと優れたコミュニケーションの手段が必要になり、それを実装したツールが、Blogに取って代わる次世代のサイト構築ツールになると考えがちです。SNSツールが、次世代のウェブツールの主流になると予想されていたとしても不思議ではありません。


確かに、HTMLを直にコーディングしたサイトと比較すれば、Blogコメントトラックバックなどのコミュニケーション機能に特徴を持っています。しかし、Blogが持つコミュニケーションの機能だけを将来にわたって拡張していけば、さらに優れたウェブツールになるかと言えば、そうとも言い切れません。


つまり、Blogがこれほどまでに広まってきたのは、優れたコミュニケーション機能を持っていたからだけでなく、Blogのコンテンツ管理ツールとしての利便性が受け入れられたからではないかと、考えられるようになってきました。


現在では、BlogCMS (Contents Management System) を区別せずに、BlogをCMSのひとつの形だと見なす場合もあるようです。


よく引き合いに出されるのは、もう一年以上前のものですが、ITmediaの「主要Blog、CMSツール機能比較(2004年7月版)」と言う記事です。BlogとCMSの言語やデータベースを一覧表にしていますが、特に日本語環境の程度を記載しているところがありがたいです。


ここでもBlogとCMSのどちらに分類されるか困難なツールがあると書かれていますが、BlogとCMSの違いを次のように定義しています。



Blog
日常の備忘録の為のツールで、トラックバックやping機能を持つ。
CMS
サイトのコンテンツをモジュールごとに管理して、ページ上の配置やコンテンツをGUIメニューで変更する機能を持つ。

Blogはデーターベースによってコンテンツを管理し、ウェブ上で利用可能なcgiによってコンテンツの管理やレイアウトの修正を行うことができます。また、サイト内のページ間リンクや、日付順・テーマ別のインデックスを自動作成する機能は、正にCMSそのものと言って良いでしょう。


このことから、コメントやトラックバック機能は、CMSが提供する機能の一部であると考えられるようになってきました。実際、ほとんどの大規模CMSには、これらをサポートするモジュールが装備されているようです。


Blogが今後どのように発展していくかを考える時、CMSという枠組みの中で捉えることが重要になって来るでしょう。

では次回は、もう少しCMSについて勉強してみたいと思います。

551.CMSについて考える2: ソーシャル・ネットワーキング・サイト (2005/10/29)

サイトの作成者がすべてのコンテンツを作っている場合に較べて、Blogの場合はコメントやトラックバックによって、コンテンツにサイト作成者以外のよるものが含まれてきます。


どれぐらい活発に投稿されるかによってその割合は異なってきますが、コメントが全体の数%から数十%になることは珍しくないでしょう。そして、コメントが全体のコンテンツの50%を越えた辺りから、サイトの性格に変化を来します。


すなわちサイト作成者は、全体のコーディネートをすることが中心となってきて、多くの人の様々な意見がサイトの大勢を占めるようになってきます。個人の日記であるBlogから、コミュニティー・サイトの意味合いが強くなってきます。


Blogが急速に広まった時、次に訪れる波がコミュニティーのためのウェブ・ツールになると予想されていたのも当然かも知れません。


一般にソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)と言われる場合、会員による紹介でなければ参加できないものを指すようです。ですから、USではソーシャル・ネットワーキング・サイトと出会い系サイトが、同じ意味で使われている場合も多いそうです。つまり最後はデートがあると。


MovableTypeは、Blogにおけるデファクト・スタンダードとなりつつありますが、同様にソーシャル・ネットワーキング・ツールとして、XOOPSが注目を集めていました。ただ、XOOPSにはサイトを管理するための機能が充実しているため、どちらかと言えばコンテンツ・マネージメント・システム(CMS)として分類されているようです。


一方、Yahoo GroupGoogle Groupにように、完全に仲間内のコミュニケーションに特化したサービスが広まってきました。これらはポータルサイトから無料で利用することが出来、意見やスケジュールを共有することが可能です。又、メーリングリストもその機能の一つとして提供されています。


今後、ソーシャル・ネットワーキング・サイトとしては、Groupというツールが主流になるのではないでしょうか。会員が新しい仲間を招待したり、過去のメーリングリストを掲示板のスレッドごとに表示する機能などが装備されています。


次第にソーシャル・ネットワーキング・サイトとGroupが同一のものと見なされ、これ以外のサイト作成ツールはBlogかCMSのいずれかに分類されていくのでしょう。


それでは、次回はBlogとCMSの相違点を考え、CMSにはどのようなものがあるかを、探していきたいと思います。

550.CMSについて考える1: HTMLエディターからBlogへ (2005/10/27)

当サイトが、Blog(ウェブログ)ツールのひとつであるMovableTypeを採用してから、約1年が経ちました。まだ、十分にその機能を使いこなしているとは言えませんが、これまでに使用して感じたBlogのメリット・デメリットと、今後の個人サイト運営におけるツールのあり方を少し考えてみたいと思います。


この数年でパーム・コミュニティーはもちろんのこと、個人サイトに限らず芸能人や企業サイトでも、Blog(ウェブログ)はもっともポピュラーなウェブ・ツールになったと言えるでしょう。今新しくサイトを開設する場合には、まずBlogを第一候補に考えるのではないでしょうか?


始めからBlogをサポートした無料ウェブスペースもたくさんありますし、有料レンタル・サーバーでもBlogが予めインストールされているところが少なくありません。


以前から個人サイトを始めて持とうとする人に対しては、テンプレートを使った簡易サイト作成ツールがプロバイダーなどから提供されていましたが、今ならその簡易ツールそのものが、Blogの構築ツールであることが少なくありません。


考えてみれば、Blog以前にはクライアント・ツール(パソコン側で実行するプログラム)として、ホームページビルダーに代表されるHTMLエディターが中心でした。パソコンにバンドルされていたソフトウェアを使って、サイトオーナーの仲間入りした方も多いのではないでしょうか?(実は私もその一人です。)


これらのソフトウェアは、HTMLのタグを覚えなくてもHTMLファイルを作成することができたり、用意されたテンプレートによって、デザインを簡単にカスタマイズできるところに、主眼が置かれていました。


ですから、1ページずつHTMLファイルを作っていくのには便利なのですが、ページ数が増えてサイトが複雑になってきたときに、それを効率的に管理するのはあまり得意ではありませんでした。


また、個人サイトとして重要な機能であるコミュニケーションの機能が、クライアントで実行するツールであるために、うまく取り込むことができませんでした。


これらのソフトウェアにも、掲示板アンケートを実現するツールが用意されていましたが、クライアントだけでは実現できない部分があり、サーバー側のツールとの連携が必要でした。そのため制限が多く、初心者には使いやすいとは言えなかったのです。


そこで、Blogが登場してきます。BlogがHTMLエディターと大きく異なるのは、サーバー側で実行されると言うことです。


HTMLエディターの場合、クライアントでサイトの内容(コンテンツ)を全て作りこみますから、そこにクライアントの外から変更を加えることは不可能です。


しかし、サーバーで実行される場合は、サーバーにアクセス可能ならば、制限された範囲内で誰にでも更新が可能になります。サイトの構築手段が、HTMLエディターからBlogに移り変わっていったことによって、サイトが持つコミュニケーション能力が格段に高まりました。


コメントトラックバックによって、多くのユーザーやサイトが有機的に結びついたのは言うまでもありません。Blogは、実行する場所をクライアントからサーバーに移すことによるメリットを、十分に生かしていると言えましょう。


さて、Blogの爆発的な広まりを見て、さらにコミュニケーション機能を拡張することによって、コミュニティ型サイト、つまりSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)が、Blogの次にブームになると考えられました。


そこで、次回はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)について、考えてみたいと思います。

549.ダウンサイジングの鐘がなる (2005/10/21)

W-ZERO3という、一見凝ったようでいて実は成り行き任せのネーミングと、「新世代モバイルコミュニケーション端末」という、これまでにも幾度となく使われてきた当たり障りのないキャッチコピーを引っさげて、ウィルコム、マイクロソフト、シャープの大連合がやってきました。


何となく控えめな演出によって、携帯電話ノートパソコンの間のニッチを狙ったかのような印象を持ちますが、私はこの製品が、これからのモバイルライフの主導権を握るものと確信いたしました。


日本でのスマートフォン時代の到来が本格化する前触れでもありましょう。しかし、これは進化した携帯電話の一形態であるだけに留まらず、これまでノートパソコンと携帯電話の間で分断されていた真のコンピューティングと通信の融合が、やっと実現するのではないかと期待されます。


思えばこれまで、Palmを応援してきたのは、携帯電話とパソコンの間に割ってはいる分野で、Palmが主役になって欲しかったからに他なりません。PalmTrotterで取り上げてきたダウンサイジング関連の雑記はたくさんありますが、Palmが果たせなかった夢がPalm以外の手によって実現されるということはとても残念であります。


今回の協業は見事なものでした。PHSのウィルコム、OSのマイクロソフト、そしてハードウェアのシャープと、完璧に役者が揃ったと言えましょう。Palmであっても、あるいはソニーであったとしても、単独では決して成し遂げることは不可能だったでしょう。


携帯電話にPIM機能を組み込んだだけならスマートフォンの範疇であり、現在ではそれほど珍しくありませんし、通信機能に重点を置いたシグマリオンも以前から安定した人気がありました。


しかし、W-ZERO3をもっとも特徴的な製品にしているには、何と言ってもマイクロソフトの参画だと思います。マイクロソフトが優れたパートナーと一緒になったことで、ついにパソコンと携帯電話の垣根が取り去られようとしているのです。


結局、パソコンのOSを牛耳っているマイクロソフトでなければ、パソコンの機能をハンディに持ち歩けるようにはできないと言うことかも知れません。


当初はPHS端末としての販売に限定されるようですが、無線LANが通勤電車の中で可能になってくるご時世ですから、PHS端末としてだけではなく、よりPIMやモバイルパソコンとしての需要が見込めそうです。


特にマイクロソフト・オフィス関連のファイルの編集作業もできることによって、モバイルと呼ぶには重すぎたノートパソコンを必要とする機会が今後減ってくることが予想されます。


その他、無線LAN環境でのIP電話としてSkypeを搭載し、音楽ファイルの鑑賞やゲームに至るまで、全てのモバイル・アプリケーションを丸ごと飲み込もうとしているようです。


製品発表の様子から、製品のネーミングや方向性、ターゲットとするユーザー層が絞り切れていない感じがありますが、逆にそれだけ特定のユーザー層に限らず、多くの人々から支持される可能性があると言えましょう。


Palmが、今後の製品にマイクロソフト製OSを採用するとアナウンスしたのは、PalmOSの限界を感じていたからでしょうか?


今ははっきりとした製品のカテゴリーを持たないW-ZERO3ですが、近いうちに新しいネーミングが与えられるのではないかと思います。


例えば、そうですね、コミュニケーター&コンピューターで「コムコン」はいまいちですか。では携帯電話とパソコンを引っ付けて「ケイコン」はもっといまいちですね。やっぱり手のひらに乗るコンピューターと言うことで「パムコン」ですかね。


パーム・コンピューティングよ、もっとがんばれ!

548.新しいパーム・ハンドヘルドは集大成か (2005/10/17)

USでPalmの新製品、TXZ22が発表されてしばらく経ちましたが、評判はなかなか良いようです。特にびっくりするような目新しさはありませんが、それがかえって安心感を与えるのでしょう。高機能機種であるTXと普及価格帯のZ22の2本立ても、製品の方向性が明確で好感を持ちます。


特にPalmOneからPalmに戻ったブランドには、「これぞプロパーなり」といった意気込みを感じます。またTungstenZireの系列であることは確かですが、あえて名前をすっきりさせたあたりにこれまでとの違いを感じます。個人的には、倒産したUSのディスカウントストアのような、Zireという名前が隠れたことは好ましいと思います。


もちろん日本語対応ではないことで、以前CLIEの新製品が発表されていたころに比べると、国内の反響は大きいとは言えないでしょう。しかし、USのPalmがスマートフォンではなく、販売が低調であると言われているハンドヘルドの開発を継続していることに、拍手を送りたい気持ちです。


どちらも魅力的な製品であり、特にコストパフォーマンスの高さが優れています。デザイン的にTXは少しばかりシンプルすぎるかなとも思えますが、ここは調子に乗って、次期新製品にはフルキーボードを装備した"TZ"なんぞを期待したいものです。


ところで少し気になるのは、どちらの製品もあまりにまとまりすぎていると思えることです。機能的にもデザイン的にも冒険をしているところが全くないと言いましょうか。


しばらく前に、Palm社がWindowsを採用すると発表しました。あまり考えたくありませんが、もしPalm社が今後PalmOS採用の新製品の開発を止めるとすれば、今回の新製品2機種が最後のPalmOS機になってしまうかもしれません。


この2機種が、PalmOSを採用する最後の製品にならなければ良いなと思います。