W-ZERO3という、一見凝ったようでいて実は成り行き任せのネーミングと、「新世代モバイルコミュニケーション端末」という、これまでにも幾度となく使われてきた当たり障りのないキャッチコピーを引っさげて、ウィルコム、マイクロソフト、シャープの大連合がやってきました。
何となく控えめな演出によって、携帯電話とノートパソコンの間のニッチを狙ったかのような印象を持ちますが、私はこの製品が、これからのモバイルライフの主導権を握るものと確信いたしました。
日本でのスマートフォン時代の到来が本格化する前触れでもありましょう。しかし、これは進化した携帯電話の一形態であるだけに留まらず、これまでノートパソコンと携帯電話の間で分断されていた真のコンピューティングと通信の融合が、やっと実現するのではないかと期待されます。
思えばこれまで、Palmを応援してきたのは、携帯電話とパソコンの間に割ってはいる分野で、Palmが主役になって欲しかったからに他なりません。PalmTrotterで取り上げてきたダウンサイジング関連の雑記はたくさんありますが、Palmが果たせなかった夢がPalm以外の手によって実現されるということはとても残念であります。
今回の協業は見事なものでした。PHSのウィルコム、OSのマイクロソフト、そしてハードウェアのシャープと、完璧に役者が揃ったと言えましょう。Palmであっても、あるいはソニーであったとしても、単独では決して成し遂げることは不可能だったでしょう。
携帯電話にPIM機能を組み込んだだけならスマートフォンの範疇であり、現在ではそれほど珍しくありませんし、通信機能に重点を置いたシグマリオンも以前から安定した人気がありました。
しかし、W-ZERO3をもっとも特徴的な製品にしているには、何と言ってもマイクロソフトの参画だと思います。マイクロソフトが優れたパートナーと一緒になったことで、ついにパソコンと携帯電話の垣根が取り去られようとしているのです。
結局、パソコンのOSを牛耳っているマイクロソフトでなければ、パソコンの機能をハンディに持ち歩けるようにはできないと言うことかも知れません。
当初はPHS端末としての販売に限定されるようですが、無線LANが通勤電車の中で可能になってくるご時世ですから、PHS端末としてだけではなく、よりPIMやモバイルパソコンとしての需要が見込めそうです。
特にマイクロソフト・オフィス関連のファイルの編集作業もできることによって、モバイルと呼ぶには重すぎたノートパソコンを必要とする機会が今後減ってくることが予想されます。
その他、無線LAN環境でのIP電話としてSkypeを搭載し、音楽ファイルの鑑賞やゲームに至るまで、全てのモバイル・アプリケーションを丸ごと飲み込もうとしているようです。
製品発表の様子から、製品のネーミングや方向性、ターゲットとするユーザー層が絞り切れていない感じがありますが、逆にそれだけ特定のユーザー層に限らず、多くの人々から支持される可能性があると言えましょう。
Palmが、今後の製品にマイクロソフト製OSを採用するとアナウンスしたのは、PalmOSの限界を感じていたからでしょうか?
今ははっきりとした製品のカテゴリーを持たないW-ZERO3ですが、近いうちに新しいネーミングが与えられるのではないかと思います。
例えば、そうですね、コミュニケーター&コンピューターで「コムコン」はいまいちですか。では携帯電話とパソコンを引っ付けて「ケイコン」はもっといまいちですね。やっぱり手のひらに乗るコンピューターと言うことで「パムコン」ですかね。
パーム・コンピューティングよ、もっとがんばれ!