127.パソコンと壊れたハードディスク2: 歴史は繰り返す (2003/06/18)

昔、デパートでおもちゃを買って家に帰り、30分程遊んでいると必ず壊れてしまっていた時代がありました。特に、電池とモーターを使ったおもちゃでは顕著であり、当時最新のリモコンのおもちゃが1ヵ月以上も動いていたことはまれでした。ましてや保証制度も発達しておらず、間(まん)が悪かったと言って諦めていたものでした。日本製品とはそんな物でした。


いつしか日本製品の品質が良くなって、今度はめったに壊れなくなりました。日本製品が世界中に輸出され、その高品質によって他の国の製品を市場から締め出していきました。


その頃の壊れ方は、カラーテレビなら画面の色が薄くなり出したとか、洗濯機ならボディーの鉄板が錆びて穴が空いたとか、10年ぐらい使ってから素材そのものが朽ちて来たために壊れるのです。これは、製品の寿命なので確かに買い換える時期だったのです。


どのような製品でも各家庭に普及してしまうと、新規購入者が減ってくる為、新機能を投入して買い替え需要を起こそうとしました。買い替えの動機が新機能の追求ですから、まだ使えるとしても捨ててもらわなければ需要は生まれません。みんなは、新しい機能を手に入れるために、まだ寿命の来ていない物ゴミとして捨てました。


もう寿命が来るまで使いきる人は、少なくなって来ました。壊れたから買い換えるのではなく、型が古くなったから買い換えるからです。しかもあっという間に型は古くなっていきます。


もう耐用年数を心配する人はいません。耐用年数よりずっと早く買い換えられていくからです。そして、昔はたくさんいた壊れるまで大事に使う人がいなくなって、メーカーは耐久性よりも新規性を優先するようになってきたのです。


もちろんすべての企業がそうなったのではありません。今でも古い顧客を大切にする企業はあります。たとえば一部のカメラメーカーなどは、修理の部品を実際のコスト以下で提供してきました。長く愛用される製品を提供しようと努力をしてきました。しかし、このような企業はごく限られており、多くの企業は長く使うことより、短いサイクルで買い換えてもらえる製品作りに、邁進していったのです。


さて、寿命や耐久性を無視し続けた結果、すぐに壊れてもそれ程珍しいことではなくなってきました。以前なら、すぐに壊れる品質の悪い製品を作ったメーカーは評判を悪くしましたが、最近は壊れたとしても、その後のサポートをうまくやれば、顧客はまた同じメーカーの製品を買ってくれると言った誤った認識が蔓延しています。


その結果、1年で壊れたことに対して、その本当の問題点を認識しようともせず、起きて当然騒ぐ程の事ではないと、事もあろうがユーザーサポートの人間が平然と言いきってしまう事が起こってしまうのです。


そろそろ使い捨ての時代を、終えなければならないのではないでしょうか?使い捨てだけが楽しい消費生活ですか?修理しながら愛用していくのも楽しいのではないでしょうか?


さあ、次回はどう展開していきましょうか?我ながら見当もつきません。

126.パソコンと壊れたハードディスク1: 序章 (2003/06/17)

実は先週木曜日に、家で使っているデスクトップパソコンのハードディスクが壊れまして、週末から昨日ぐらいまでにかけて、リカバリーに奔走しておりました。


通販で買ったパソコンが、1年と1ヶ月で動かなくなりました。1年以内なら保証期間ですので、不便はあるにせよ無償でメーカーによる修理が提供されますし、5年いや3年使った後に壊れたのなら、まだ仕方がないと諦めるのですが、1年と1ヶ月は壊れるタイミングとしては一番ダメージが大きいのです。


駄目もとでメーカーのサポートに電話してはみたのですが、保証期間が過ぎているので、修理に2週間と35,000円が必要だとのこと。


「パソコンがないと困るから、35,000円を出して修理するしかないか。メーカーはもっとしっかり作ってくれなきゃ困るんだけどなぁ。」と言いながら、修理をする人


「もうこのメーカーのパソコンはこりごりだ。修理してもどうせすぐに壊れるだろう。別のメーカーのパソコンに買い換えよう!」と、このパソコンメーカーから決別する人


「もうパソコンなんてこりごりだ。こんな役に立たないものに、散財した私が馬鹿だった。」と、パソコンそのものから決別する人


こんな事をしていたら、大型ゴミが増えて仕方がありません。


この壊れたディスクに関して、少し考えるところがありますので、数回に渡って書いてみたいと思います。

125.所変われば刃物も変わる4: シカゴカッツレー (2003/06/16)

USでは、コンシューマーレポートなる雑誌があり、あらゆる消費者向けの製品の評価をしています。シカゴカッツレーの包丁は、そこで高い評価を得ていました。


ドイツのヘンケルも良い評価でしたが、シカゴカッツレーはほとんどの評価項目で上回っていました。これは買っておかなければ後悔すると思いました。


近くの店に行くと、鍵の掛かったショーケースに、いろいろな種類の包丁が並んでいます。その中から、少し小振りの使いやすそうな包丁を選びました。


家に帰って早速使ってみるのですが、これが冗談のように切れないのです。刃の背で切っているようでした。


日本では、良く切れる包丁と言えばスーと力を入れずに切れる物を言いますが、とてもそんな感じではなく、どちらかと言うと押し切ると言う感じでした。


その後、何度か研いで見たものの、さほど切れる様になる訳でもなく、すっかり切れない包丁のイメージができてしまいました。


そう言えば、USのどの家庭に行っても、切れる包丁にお目に掛かることはほとんどありませんでした。たいていの家庭では、8本ぐらいの包丁が木でできた包丁立てとセットになっているのを持っているのですが、まず切れる物がその中にあることはありませんでした。


元々切れないのに手入れをしないものですから、包丁は切っていると言うより押しつぶしている感じになります。確かに、日本のようにみじん切りをしたり、刺身を切ったりするわけではありませんから、それほど切れる必要はないのかもしれません。本当に切らなければならないときは、フードプロセッサーを使えば良いのです。


そもそも、まな板がではなく大理石だったりします。せいぜい角切りをするにしてもまな板は使わず、手で持ったまま切りますから、あまり切れる包丁は危険なのかもしれません。


まあ、切れない包丁吸わない掃除機は、USの家庭で必ず見つける事が出来る定番アイテムといえるのではないでしょうか。

124.所変われば刃物も変わる3: スイスの刃物 (2003/06/11)

あれから10年が過ぎ、USでポットラック(Potluck)と言う食べ物持ち寄りのパーティーがあった時、そこに来ていたスイス人と雑談していた時の事です。


その頃、ドイツのボッシュ製の電動鋸(のこぎり)を買ったばかりだった私は、その刃がスイス製であった事を思い出して、こう訪ねました。


「この前買った鋸に付いていた刃がスイス製だったけど、スイスの刃物っていいの?


スイス人「もちろんだよ。スイスの刃物は世界一さ!なんだ、日本人はそんなことも知らないのか?」


「日本じゃ聞かないねぇ。刃物はドイツのヘンケルなら有名だけど。


スイス人「何だ、そのヘンケルて言うのは?」


「ドイツの有名な刃物メーカーの中でも一番評判が良いメーカーで、日本では誰でも知っているよ。


スイス人「いや、だいたいドイツの刃物なんて誰も知らんぞ!ヨーロッパではスイスの刃物が一番人気があるんだ。スイスのアーミーナイフを持っていないのか?


またしても、ヘンケルは知らんと言われてしまいました。ヘンケルは、輸出が中心のブランドなのでしょうか?


USのコンシューマーレポートなどで、キッチンナイフの比較レポートにはヘンケルが出ていますから、USでの知名度はあるようです。ただ、USには国産メーカーのシカゴカッツレーがあり、評価はいつもダントツでトップでした。


次回は、このシカゴカッツレーの私なりの評価と、USキッチンナイフ事情です。

123.所変われば刃物も変わる2: ゾーリンゲン (2003/06/11)

ドイツのゾーリンゲン刃物で世界的に有名な町で、その中でもヘンケル代表的な刃物メーカーであると学校で習った記憶があります。


1987年に、新婚旅行でドイツに行ったとき、仕事で付き合いのあったドイツ人のお宅に、泊めて頂いたことがありました。


ストゥツガルト近郊のヘレンベルグに住む彼が、市役所広場を案内してくれた後、おみやげを買おうとした私と、彼、ピーターの会話です。


ドイツと言えば刃物だけど、やっぱりヘンケルが良いのかな?」


ピーターヘンケルって何の事だ?」


「ドイツで有名刃物メーカーヘンケルだよ。」


ピーター「そんな名前は聞いたことがないな。」


「そんなはずはないよ。ゾーリンゲンと言う町で作っているヘンケルだよ。発音が悪いのかな。エンケル?ヘーンケル?エンケール?ユンケル?」


ピーター「とにかく、そんなメーカーは知らん。ゾーリンゲンも刃物で有名ということは聞いたことがない。ドイツで刃物と言えば、WMFが一番だ!


WMFなんて、日本では聞いた事がないけど、それがお勧めならWMFの物でも買って見るかな。」


と言うことになりました。ピーターが知らないだけなのでしょうか?


ただ、私が小学生だった頃、デュッセルドルフに5年ほど駐在された方が日本に帰って来られた時に、ヘンケルのナイフをおみやげに頂きましたから、現地でも有名であったのは間違いないと思います。しかし、日本と同じ様にドイツも地域によって、有名な刃物の産地がいろいろあるのかもしれません。


この話には後日談がありまして、ヘンケルでもう一度、変な会話をすることになります。