昔、デパートでおもちゃを買って家に帰り、30分程遊んでいると必ず壊れてしまっていた時代がありました。特に、電池とモーターを使ったおもちゃでは顕著であり、当時最新のリモコンのおもちゃが1ヵ月以上も動いていたことはまれでした。ましてや保証制度も発達しておらず、間(まん)が悪かったと言って諦めていたものでした。日本製品とはそんな物でした。
いつしか日本製品の品質が良くなって、今度はめったに壊れなくなりました。日本製品が世界中に輸出され、その高品質によって他の国の製品を市場から締め出していきました。
その頃の壊れ方は、カラーテレビなら画面の色が薄くなり出したとか、洗濯機ならボディーの鉄板が錆びて穴が空いたとか、10年ぐらい使ってから素材そのものが朽ちて来たために壊れるのです。これは、製品の寿命なので確かに買い換える時期だったのです。
どのような製品でも各家庭に普及してしまうと、新規購入者が減ってくる為、新機能を投入して買い替え需要を起こそうとしました。買い替えの動機が新機能の追求ですから、まだ使えるとしても捨ててもらわなければ需要は生まれません。みんなは、新しい機能を手に入れるために、まだ寿命の来ていない物をゴミとして捨てました。
もう寿命が来るまで使いきる人は、少なくなって来ました。壊れたから買い換えるのではなく、型が古くなったから買い換えるからです。しかもあっという間に型は古くなっていきます。
もう耐用年数を心配する人はいません。耐用年数よりずっと早く買い換えられていくからです。そして、昔はたくさんいた壊れるまで大事に使う人がいなくなって、メーカーは耐久性よりも新規性を優先するようになってきたのです。
もちろんすべての企業がそうなったのではありません。今でも古い顧客を大切にする企業はあります。たとえば一部のカメラメーカーなどは、修理の部品を実際のコスト以下で提供してきました。長く愛用される製品を提供しようと努力をしてきました。しかし、このような企業はごく限られており、多くの企業は長く使うことより、短いサイクルで買い換えてもらえる製品作りに、邁進していったのです。
さて、寿命や耐久性を無視し続けた結果、すぐに壊れてもそれ程珍しいことではなくなってきました。以前なら、すぐに壊れる品質の悪い製品を作ったメーカーは評判を悪くしましたが、最近は壊れたとしても、その後のサポートをうまくやれば、顧客はまた同じメーカーの製品を買ってくれると言った誤った認識が蔓延しています。
その結果、1年で壊れたことに対して、その本当の問題点を認識しようともせず、起きて当然騒ぐ程の事ではないと、事もあろうがユーザーサポートの人間が平然と言いきってしまう事が起こってしまうのです。
そろそろ使い捨ての時代を、終えなければならないのではないでしょうか?使い捨てだけが楽しい消費生活ですか?修理しながら愛用していくのも楽しいのではないでしょうか?
さあ、次回はどう展開していきましょうか?我ながら見当もつきません。