580.どこの業界も似たり寄ったりか、、、 (2006/04/22)

昨日は建築業界の呆れた実体を綴ってみましたが、今日も建築士の名義貸し問題がニュースになっています。昔から資格が必要になるところには、必ず資格貸し問題が存在しているとも言えるでしょう。


人々の生活の安全に関わる建築業であるからこそ資格制度が必要になるのでしょうし、またそれを厳格に運営・管理していく監督省庁の役割が重要であることは言うまでもありません。


建築業法という法律によって、建築業界は規制されている筈なのですが、実際この法律によって処罰を受けることは稀のようです。さらに建築士の名義貸しによって、建築士がアルバイト収入を得ることが日常茶飯事であるとまで開き直られてしまうと、国民の生活を守る筈の法律を、業界が食い物にしていると言われても反論の余地はないでしょう。


もっと身近な例を探せば、不動産の手続きで必要になる印紙税を正規に納めている業者の方が、奇特な感じがしますし、全く胡散臭くない建築業者や不動産業者は皆無と言っても過言ではないような気がします。


知り合いの大手建築会社に勤めておられる方が購入された住宅に、構造的な欠陥が発見されたり、別の建築士の方が自分で設計して建築を始めた住宅に、大きな手抜き工事が見つかったと言うことを聞いた事がありました。


これを「紺屋の白袴」と聞き流す事は簡単ですが、実は彼らはプロだからこそ問題を発見出来たのであって、多くの建築に疎い人たちは、家屋の重大な欠陥を知らずに住んでいるだけなのかも知れません。(私もその中の一人です。)


しかし、社会を見渡してみますと、決して建築業界だけが酷いわけではないのかも知れません。保険金の不払い問題で国民の信頼を裏切っている保険業界も似たり寄ったりでしょう。


保険会社は、保険金を支払わなければそれがそのまま利益になりますから、出来るだけ支払いを少なくしようとするのはありがちな話です。


考えてみれば保険会社のセールスは、「保険商品を売る」と言いますが、そこには本来の商品があるわけではなく、ただ契約をしているだけに過ぎません。旅行会社に例えれば、パンフレットに書かれた旅行プランの申し込みを受け付けた状態であり、旅行に行くというサービスを提供して、初めて商品を売ったと言えるでしょう。


つまり、保険金そのものが保険会社における実質的な商品なのですから、保険金の不払いは、代金をもらっておきながら商品を渡さない商店と何ら変わらず、詐欺に近いかなり悪徳な部類に入ると思われます。


他にも、ずさんなメインテナンスで運行に支障をきたしている航空会社があったり、保証期間の1年を過ぎた途端にすぐに壊れてしまう製品を売るメーカーがあったり、、虫歯を治すために行ったのに頼みもしない歯の神経を抜きまくる歯医者がいたり、どの業界にも似たようなことがいっぱいあるのではないでしょうか?


すべての業界において、本来あるべき姿を常に追求し信頼を裏切らないようにしていくことが、今一層強く求められていると思います。

579.建築業界はなぜ自浄作用が働かないのか? (2006/04/21)

耐震強度の偽装問題は、新たに建物の解体に至る物件があったり、新規分譲販売を取りやめる物件があったりと、一向に沈静化の兆しが見えないままに長期化する傾向にあります。


この問題で根が深いのは、単に一部の物件特有の問題ではなく、建築業界が以前から抱えてきた業界全体の構造的な問題であるからです。耐震強度の検査機関を民間に解放したのが原因であるとか、問題を起こした建築士に問題があったとか言うことではなく、今回の偽装が発覚するずっと以前から、建築業界はグレーな部分を抱え続けてきたと言えるでしょう。


しばらく前までは、欠陥住宅が大きな社会問題になっていました。住宅の基礎工事が手抜きされたとか、地盤改良工事に法外な金額を請求されたと言った事件が、頻繁に起こっていました。


実は同じ頃、住宅の設計をお願いしようとして、建築士さんにお話を伺ったことがありました。どうしたら欠陥住宅を防ぐことができるかと言う話になった時、その建築士さんは、おもむろにそれは不可能だとおっしゃいました。


「設計図を描いたプロの建築士なら、手抜き工事を見抜けると考えるかもしれないが、工事をする方も手抜き工事のプロであるので、そう簡単に見つかるような手抜きはしないものだ。」、と言われました。


また、「建築業界は、手抜き工事や欠陥が建築物にあることを、決して悪いことだとは思っていないのだ。」、ともおっしゃいました。


つまり、欠陥があって工事の補修ややり直しをやることは業界にとって悪いことではなく、むしろまた新しい仕事にあり付けて商売が繁盛するという考え方が蔓延っている業界であるから、手抜きや欠陥を無くしていこうというモチベーションすら持っていないのだと言うことでした。


もし手抜き工事や欠陥によって修復が必要になったとしても、一向に悪びれることもなく、「これ幸い、また仕事にあり付ける!」と言ったノリだというのです。土建国家と呼ばれてきた日本ならではの、何と自分勝手な発想ではありませんか!


ここで賢明な方なら、欠陥住宅訴訟でも起こせば建築業界の思い通りにはならないだろう、と考えられるかも知れません。しかし、過去の欠陥住宅に関連する裁判の判例において、住宅メーカーなどの建築業界側敗訴したケースは、ほとんど無いに等しいのです。


裁判所が、個人を守ることより国家を守ることを優先するなら、土建国家における建築業界が擁護されるのも当然と言えば言い過ぎでしょうか。


大量の資本や税金を投入して築いてきたはずの建造物が、手抜きや欠陥によって不良資産やただの産業廃棄物になって行くのを、いつまでも放っておいて良いのでしょうか? 耐震強度偽装問題が、建築業界全体の改革を促すきっかけになってもらいたいものです。

577.阪急と阪神が経営統合? (2006/04/18)

いやまたおったまげた事になっていますね。阪神間に永らく住んできた者にとって、阪急阪神という企業グループにはそれぞれ思い入れがあるものです。同じ地域に根ざした企業でありながら、全く企業風土が異なっていると言えるでしょう。


どちらも大阪の梅田地区ターミナル・デパートを構え、鉄道網の沿線開発や娯楽施設を事業基板にしています。阪急電車も阪神電車も大阪の梅田を出発すると、30分も経たないうちに再び同じ神戸の三ノ宮に到着します。


ただ、阪急が山の手を走り、阪神が海の手を走る関係上、沿線の趣はかなり異なっています。古くから開発されてきた海の手を走る阪神電車は、以前はカーブが多く、よく揺れることで有名でした。また駅の数がやたらと多いので、各駅停車の車両には加速性能に優れたものが採用されていたことも、揺れが大きくなる理由のようです。


昭和の初期には、まだ阪急沿線には住宅が少なかったため、大阪ー神戸間のノンストップ特急を走らせていたそうです。電車がいつもガラガラに空いていた為、「いつでも座れる阪急電車」と言うのが宣伝文句だったそうです。それに対し、2両編成の電車を多用して運転間隔を短く設定した阪神電車は、「待たずに乗れる阪神電車」と宣伝していたそうです。


最近では、阪神電車が山陽電車の姫路まで乗り入れをしていたり、阪神南大阪線近鉄難波を接続して、神戸から奈良まで直通電車を計画するなど、提携を推し進める阪神に対して阪急は静観していた感がありましたが、ここに来て一気に動き始めたと言った感じがします。


阪神間や京阪間の輸送におけるJRとの競合も、いくらJRがゆとりダイヤに変わりつつあると言っても、スピードではJR側にまだまだ分があります。また沿線の住宅地開発に失敗したり、それでなくても人口が減少し始めている状況では、経営統合による規模の拡大しか残された道はないのかもしれません。


ただ、鉄道や沿線の商業施設はその地域の財産でもあります。今回の経営統合が、単なる経営の効率化だけに終わらず、地域の統合的な発展につながっていってもらいたいものです。

558.修繕費は貸手の責任 敷金訴訟で最高裁 (2005/12/16)

asahi.comに、「修繕費は貸手の責任 敷金訴訟で最高裁」という記事が掲載されています。今年7月の神戸地裁での判決に続いて、最高裁でも同様の判決が出たことは喜ばしいことです。


しかし、どちらも逆転判決であると言うことが、まだ日本の司法においては、敷金訴訟について統一した見解がなされていないことを物語っています。


退出時に敷金が貸主によって強制的に取り上げられてしまうと言う、ある種の恐怖感が賃貸契約には付きまといます。「どうせ取られてしまうものだから仕方がない」と諦める人も多いかもしれませんが、同じようにきれいに使用していたつもりの部屋の改修費が、貸主によって異なっていたのでは、いつまで経っても健全な賃貸住宅の市場が形成されません。


その結果として、不動産は怪しいものだという認識が、蔓延ってしまうのではないでしょうか。


敷金に関しては、全国でいくつもの訴訟が起こされているそうですが、賃貸契約と言う、もっとも人々の生活に密着した社会の営みにおいて、筋の通らないことが何ら改善されずに放置されてきたのは残念なことです。


特に今回の訴訟の被告は、大阪住宅供給公社でした。大量の賃貸住宅を、公の立場で提供するところでさえこのような問題を抱えていますから、民間の不動産業者ではさらに悲惨な状況が起こっているかもしれません。


神戸地裁の判決に関してのPalmTrotterの雑記にも書いていますが、USでは契約書そのものに、州の法律で敷金(デポジット)に関する条件が書かれていることがあります。借主が自然な汚れや経年変化に対しての補修を負担しなければならないとすると、毎月一定額の賃料を徴収することに矛盾が生じてくるのです。


今回の判決では、借主の具体的な負担が明示され認識されていれば、敷金からの補填が可能だとされています。今こそ、賃貸住宅業界で統一した具体的な基準を明確にするべきでしょう。


例えば、「壁紙の汚れは借主の負担とする」などといった曖昧なものではなく、「壁紙に油性ペンでの落書きは×」とか、「画鋲の穴は何ミリを何個まではOK」といったような、客観的に判断できるような基準を設けるべきでしょう。


今回の最高裁の判断によって、敷金に関するトラブルが減少していく事を、期待したいと思います。

557.「算数」で成り立つ掛け算の交換法則が、「社会」では成り立たなかった。 (2005/12/14)

65万円 × 1 = 65万円

1円 × 65万 = 65万円


小学校で習った交換法則は、掛け算や足し算では成り立つことになっています。ただし、これは「算数」の時間だけのこと。「社会」の時間では、次のようなことが実際に起こります。


65万円 × 1 = 65万円

1円 × 65万 = 数百億円

一体最終的な損失がいくらになるのか、よく判らない状態になっています。簡単な入力ミスだからこそ、日常的に起こりうる可能性が高いといえます。警告が表示されてもいつもの事と全く無視してしまい、間髪入れずに実行キーを押してしまって失敗したことは、誰しも経験したことがあると思います。私も何回ディスクの中身を消し去って、リカバリーに時間を費やしてきたことか。


ましてやすぐに気付いて取り消そうと必死にしがみつくも、一向にコマンドを受け付けない時の焦りようは、大変なものだったに違いありません。


ニュースによると、多くの担当者が株の売買での入力ミスを経験しているそうです。今回のケースでは初めて上場された会社だったために、通常の取り消し作業ができなかったと言われています。数億円で済んだはずの被害が、数百億円に膨れ上がってしまった事で、非常に大きな問題になってしまいました。


今回は、市場に実際に流通している株数を大幅に超えた売り注文が出てしまった訳ですが、大量に買っている側に大手証券会社が名前を連ねているのは、如何なものでしょうか。


証券会社は、購入した株数が流通している株数を大きく超えているのですから、何らかの手違いがあったことは容易に想像ができるはずです。しかも、システムの不備によって取り消しができなかったことが判ってきた以上、当然のようにその利益に与ろうとする姿勢には疑問を感じます。


これは証券会社の社会的信頼性に関わる事件なのですから、業界を挙げて二度と同じ過ちが起きないように、システムやオペレーションを改善していくことに、力を合わせて行くべきではないでしょうか。