201.巨大地震対策 (2003/09/22)

NIKKEI NETに社説に「津々浦々を津波から守れ」と言う記事が掲載されています。東海、東南海、南海地震の3つの地域を震源とする巨大地震に対する政府の備えが、あまりにも無策であると強く批判しています。


これまでの日本の地震対策は、地震の予知に重点が置かれ、予知が可能になれば被害を最小に食い止めることができると言った考え方でした。その予知の技術に対しては、いまだに決定的な進展が見られず行き詰まっています。またたとえ予知が完璧にできたとしても、避難すればそれでよいと言うものではなく、人命財産を守るための対策に関しては、いまだに手付かずと言った状態です。


グァムの地震の際、平屋や低層の住宅にはほとんど被害がなかった代わりに、最新の高層ホテルに多くのひび割れが発生したことは忘れてはなりません。


某ホテルの一階のエレベーターロビーには、長さ2メートルぐらいのひび割れが数本走っていました。また、新規オープンを間近に控えた、全室ジャグジーを備えた新築の高層ホテルが、開業を断念しました。(その後、世界的なホテルチェーンによって改修され、ホテルとして営業されています。)


現地の建設業者の手抜きがあったとする意見もありますが、それにしてはあまりにも多くのホテルが被害にあっています。これは、地震の揺れ具合によっては、低層の建物より高層ビルの方が危険であると言うことではないのでしょうか?


確かに、1995年の神戸の地震の際には、10階ぐらいまでのビルには大きな被害がありましたが、それより高層になると被害は少なかったようです。直下型地震であったため、振動の周波数が比較的高かったためだと思われます。


ところが、南海地震においては震源が深いと予想されており、比較的低い周波数成分の振動が伝わり易いため、より高層の建築物に被害が出ることが考えられます。また、津波による被害が大きいと予想されながら、対策が遅れているように思います。


最悪で死者2万8300人、被害総額は80兆円を超すとされる予想を、地震が起こってから「被害は予想通りでした」などと言わないようにするためにも、今の被害予想を十分に検討し、国と地方が一体となって対策を立てていく必要があります。


また、国民に対しては、情報の公開が遅れているように思います。東海、東南海、南海地震が発生してから津波がやってくるまで、どのぐらい時間が掛かるかを、自分の住んでいる地域について答えることができる人は、どのぐらいいるのでしょうか?


大阪湾では、10メートル以上の高さの津波地震後30分以内にやって来ると言われています。海岸に近いところは人口も密集していますから、水門や堤防に対策を講じることはもちろんですが、防ぎきれない場合の避難経路を確立するなど、早急の対策が必要です。


過去に地震のあった日を、「地震防災の日」に制定して、意識を高めて行くことも良いかも知れません。日本に地震が多いのは今に始まったことではありません。自分が生きているうちは、巨大地震は起こらないだろうと思っていると、その地震で命を落とすことになりかねません。


是非、科学的なデータに基づく対策を積み重ねていき、地震が来ても安心して生活を続けることができる社会にして行きたいものです。

193.国の危険回避調査が物語るもの (2003/09/11)

神戸新聞WEB NEWSに、「神戸、大阪の空やっぱり過密 国の危険回避調査
」と言う記事が掲載されています。危険回避を指示する衝突防止装置(ACAS)が作動した経歴を調査した結果、大阪地区の空が過密状態であると指摘されています。


現在大阪には、伊丹空港関西空港がありますが、これらに加えて神戸空港の建設が進められています。現在すでに過密化が問題になっていて、衝突防止装置が作動しているとすれば、さらに危険度が増すことは必死です。


ご存知の通り、飛行機は追い風では揚力が不足するため、向かい風になるような方角から、滑走路に進入・離陸します。関西空港の場合、普段は南側から着陸し、離陸は北向きいに飛び立つのですが、風向きによっては北から着陸することがあります。


この時、着陸態勢に入った飛行機は、徳島空港上空から淡路島をかすめながら、神戸港上空を通過して、大阪湾全体を使って旋回します。これは、伊丹空港の離着陸機を避けるためだと思われます。


しかし、その神戸港の中に、新しく神戸空港を建設しているのです。本当これらの空港は、同時に使うことが出来るのでしょうか?あまりにも距離が近すぎるように思えます。実際は、神戸に空港を造っても、それほど便数が無いのかもしれませんが、それならなおさら建設の必要は無いでしょう。あるいは頻繁に離発着が繰り返されるなら、異常接近する事が頻繁に起こるでしょう。


米国のハブ空港では、多くの便をこなすために、平行に2つの滑走路を持つ空港があります。同時に発進して同じタイミングで離陸していく飛行機を見ていると、お互いの旋回する向きを間違えると、すぐに衝突してしまいそうでヒヤヒヤします。


飛び上がって数十秒後には、お互い離れる方向に向きを変えていきますが、かなりアクロバティックな感じがします。只、同じ空港から飛び立つのは、管制官が2機とも把握しているので、間違いが起こりにくいかも知れません。しかし、近くにある別々の空港から飛び立った飛行機同士の場合は、あっという間に接近してしまい、管制官が異常接近に気づいた時は、既に手遅れになっているということが起こらないか心配です。


192の雑記の、製造現場の安全性でも同じ事が言えますが、安全を保つための努力をすることはもちろん必要です。しかしそれ以上に大切なのは、設備や交通システムそのものが持つ、潜在的な安全維持能力ではないでしょうか?地元経済への期待を皮算用する前に、交通機関で一番重要である安全性の検討を十分にして頂きたいものです。

192.安全性とコストの問題 (2003/09/10)

Nikkei Netの社説に、「製造業は基本に戻り安全対策の確立を」と言う記事が掲載されています。最近、日本の製造現場で続いている事故の原因がどこにあるかを、検証しています。


原因のひとつとして、製造現場の人員削減を上げていますが、製造業の従事者の数は、1992年の1569万人から2002年の1222万人まで減ったそうです。無駄を省くための人員削減であれば良いのですが、安全に欠かせない人員の削減になっているのではないかと危惧を呈しています。


また、設備の老朽化が進んでいるそうです。製造設備の使用年数が、1991年では日本が9.3年、USが7.3年だったのが、今では日本12年、US7.9年と、極端に日本の設備の老朽化が進んでいるそうです。


使用年数に関しては、よく航空機の例が出されますが、安全と言われている航空会社は、概ね平均機齢が若いようです。勿論、新しいばかりではなく、使い込むことによってカバーできる部分もあるでしょう。これまで以上にアイディアをひねり出して、安全性を保つ方法を考えていかなければなりません。


NASAの事故の際にも、徹底的に安全性を見直したようです。スペース・シャトルが経済性や安全性で優れているという前提さえも、見直しの対象になっているそうです。


安全と言うものの考え方や設計思想までも含めて、日本の生産現場の現状に合わせた、新たな安全管理、品質向上の方法論を築いていかなければならないのです。


米国式は、マニュアルで事細かく規定して、誰がやっても同じ結果が出るようにしています。これに対して日本では、これまで製造現場の自主的な改善活動に任せておけば良かったのですが、これからは設計で品質を作り込むことを、いっそう進めていくことが求められて行く事でしょう。

189.ビッグサンダー・マウンテン (2003/09/06)

同様の事故が最近も起こっていますから、改めてスリルと危険性は隣り合わせなのかと考えてしまいます。ディズニーランドは、普段からアトラクションの運転を停止することが多く、それだけ安全性には気を使っていると思っていただけに、完璧に危険を取り除くことの難しさを感じます。


私がこのアトラクションに初めて乗ったのは、1988年フロリダでした。まだ新設されたばかりだったので人気があり、長い時間並びました。やっと乗ってスタートしたと思ったら、トンネルの坂を上り始めた途端に停止し、しばらく待たされた後に、非常階段を使って下りる羽目にあいました。


暗いトンネルの中で、しばらく待機するようにと男性の声アナウンスされたのですが、最初はこれがアトラクションの演出だと思っていました。しかし、あまり長い間アナウンスが繰り返されるので、少しおかしいなと感じていると、やがて非常階段を使って避難してくださいと言われるに至って、やっとトラブルだと確信した次第です。


当時はそのような場合でも、また一から並び直さなければなりませんでしたから、次の日再度一から行列に並びやっと乗ることが出来ました。


途中で停止して運転を取りやめたときでも、理由は公表されませんから、どのぐらいシビアな問題があったのか判りません。再開されれば、問題が完全に解決したと思って、あまり気にせずまた並んでしまいますが、停止した理由を聞いたならば、結構怖いことがあったりするかもしれません。


その後ビッグサンダー・マウンテンには、1989年に今回事故を起こしたカリフォルニアで乗ったことがあります。その時は、すでに登場してからしばらく経っており、待たずに乗れたので2回続けて乗ったのを覚えています。その後、東京ディズニーランドにも開設されて、ジェットコースター系では定番のアトラクションになっています。


最近のディズニーランドの新しいアトラクションとしては、「プーさんのハニーハント」がありますが、これもよく止まると言われています。どうもあの不思議な乗り物が、からきし電子的なノイズに弱く、携帯電話の電波の影響すぐに停止するという噂があるようです。


乗り物の類は、別に遊園地に限らず危険性が潜んでいるのは確かですが、夢と魔法の世界では、事故と言う現実を考えないで済むように願いたいものです。

187.日本の特許法改正を迫るUS (2003/09/04)

9月1日号の日経ビジネスに、「深層 中村修二氏の訴えを揺さぶる特許国際化の波」という記事が掲載されています。少し前に新聞の記事にもありましたので、覚えておられる方も多いかと思います。


同じ発明がそれぞれの国に出願され、別々の特許法によって保護された場合、ある国では発明の対価が会社のものだとされ、ある国では発明した社員のものだとされると、その対価を求めて社員による訴訟が数多く起こされることが予想されます。


元来、USでは、職務発明に関しての発明の対価は、会社のものとみなされるため、このような訴訟は起こらないそうです。しかし、日本の特許法の第35条(職務発明)の3・4項では、職務発明であっても社員が相当の対価を貢献度に応じて受け取れるようになっています。


ということは、USの企業が日本の特許法によって保護される発明を実施し、対価を得たときは、USの企業の社員は、対価を受け取ることができるということになります。


これまでUSでは、職務発明の対価に関して企業が独占してきたにもかかわらず、日本に限っては社員が貢献に応じて受け取れると言うのでは、日本の特許を取得することを躊躇することもありえます。


ましてや、USの法律も日本のようにしろと世間が言い出さないとも限りません。気づかれないうちに日本の特許法を圧力をかけて改正してしまえば、USの企業にとって日本での特許に関する不安はなくなります。


そもそも第35条4に書かれている、「対価の額は、その発明により受ける利益の額、及び使用者等が貢献した程度を考慮して定めなければならない。(勝手に抜粋)」というあいまいな規定では、訴訟が増えて当然です。これまで、日本は訴訟を起こすことに抵抗がありましたから、このような規定でも問題にならなかったのでしょうが、USから見ればこのようなあいまいな条項は、訴訟の種にしか見えないのでしょう。


ただ、日本側としては、USの危惧を理解することは必要ですが、簡単に法改正してUSの機嫌を伺うのだけは避けてもらいたいものです。もし単に法改正すれば、日本の企業の発明を生み出すモチベーションを失う可能性があります。


難しいのは、特許法だけの問題ではなく、勤務規則や契約条項にも関係するので、かなり社会の深い部分にまで影響が及ぶということです。十分に議論を行い、日本とUSの互いの利益になるような解決策をひねり出してもらいたいものです。