NIKKEI NETに社説に「津々浦々を津波から守れ」と言う記事が掲載されています。東海、東南海、南海地震の3つの地域を震源とする巨大地震に対する政府の備えが、あまりにも無策であると強く批判しています。
これまでの日本の地震対策は、地震の予知に重点が置かれ、予知が可能になれば被害を最小に食い止めることができると言った考え方でした。その予知の技術に対しては、いまだに決定的な進展が見られず行き詰まっています。またたとえ予知が完璧にできたとしても、避難すればそれでよいと言うものではなく、人命と財産を守るための対策に関しては、いまだに手付かずと言った状態です。
グァムの地震の際、平屋や低層の住宅にはほとんど被害がなかった代わりに、最新の高層ホテルに多くのひび割れが発生したことは忘れてはなりません。
某ホテルの一階のエレベーターロビーには、長さ2メートルぐらいのひび割れが数本走っていました。また、新規オープンを間近に控えた、全室ジャグジーを備えた新築の高層ホテルが、開業を断念しました。(その後、世界的なホテルチェーンによって改修され、ホテルとして営業されています。)
現地の建設業者の手抜きがあったとする意見もありますが、それにしてはあまりにも多くのホテルが被害にあっています。これは、地震の揺れ具合によっては、低層の建物より高層ビルの方が危険であると言うことではないのでしょうか?
確かに、1995年の神戸の地震の際には、10階ぐらいまでのビルには大きな被害がありましたが、それより高層になると被害は少なかったようです。直下型地震であったため、振動の周波数が比較的高かったためだと思われます。
ところが、南海地震においては震源が深いと予想されており、比較的低い周波数成分の振動が伝わり易いため、より高層の建築物に被害が出ることが考えられます。また、津波による被害が大きいと予想されながら、対策が遅れているように思います。
最悪で死者2万8300人、被害総額は80兆円を超すとされる予想を、地震が起こってから「被害は予想通りでした」などと言わないようにするためにも、今の被害予想を十分に検討し、国と地方が一体となって対策を立てていく必要があります。
また、国民に対しては、情報の公開が遅れているように思います。東海、東南海、南海地震が発生してから津波がやってくるまで、どのぐらい時間が掛かるかを、自分の住んでいる地域について答えることができる人は、どのぐらいいるのでしょうか?
大阪湾では、10メートル以上の高さの津波が地震後30分以内にやって来ると言われています。海岸に近いところは人口も密集していますから、水門や堤防に対策を講じることはもちろんですが、防ぎきれない場合の避難経路を確立するなど、早急の対策が必要です。
過去に地震のあった日を、「地震防災の日」に制定して、意識を高めて行くことも良いかも知れません。日本に地震が多いのは今に始まったことではありません。自分が生きているうちは、巨大地震は起こらないだろうと思っていると、その地震で命を落とすことになりかねません。
是非、科学的なデータに基づく対策を積み重ねていき、地震が来ても安心して生活を続けることができる社会にして行きたいものです。