118.無敵のブランド (2003/06/07)

日経メカニカル2003年6月号の特集に、「無敵のブランド」と言う記事が載っています。この中で、「ブランドは高く売る為の武器である」と述べています。


今まで、いかに安く売るか、安く売る為にはいくらで作らなければならないか、と言うような思考でうまく行っていたのは、大量消費時代、つまり欲しいものはたくさんあるけれど、お金があまりないと言う時代であったからです。とにかくいっぱい買いたかったのです。まだ、お腹が空いていて栄養失調の状態だったのです。


しかし、そのうちに欲しいものも一通り買ってしまい、それでも買いあさるのが癖になっていた為、ガレージセールで売り飛ばしながら、また買ってしまっていました。今度は、拒食症のようです。「安物買いの銭失い」とは、良く言ったものです。


実は、私はバイキングを食べに行くと、必ず元を取らなければならないと考える性分ですので、いつも後で体調が悪くなるのです。そろそろ、高くてもおいしいものを、適当な量だけ食べてみたいと思うようになりました。もちろん、ブームに乗ってみんなと同じ物を食べに行くのではなくて、自分の好みに合ったものを、じっくりと味わいたいのです。


ブランドは、絶対的な信頼を保ち、決して選んだ人を裏切ってはいけません。記事では、ルイ・ヴィトンを優れたブランドの例として取り上げています。ルイ・ヴィトンは、最近の調査で、店員の応対サービスで、最高の評価を得ています。また、その製品の価値は、他の多くのブランドと比較することさえ無意味に思えます。


よく、プライスリーダーと言いますが、これは周りの似たような製品があり、まだ切磋琢磨している段階でのことです。本当のブランドになれば、他との比較を必要としない程の、絶対的な価値を与えなければなりません。


日進月歩のテクノロジー製品においては、製品そのもので絶対的な価値を目指すことは、困難なことかもしれません。しかし、企業の姿勢などは、1年2年で変化するものではありません。長い年月を掛けて築いた企業のイメージが、消費者を裏切らず信頼を勝ち得た時、ブランドといえるのではないでしょうか?個性豊かなブランドを確立していく日本企業が、これからはもっと必要になってくると思います。

104.朗読とは殊に難しい物である (2003/05/24)

先ほど、エアーボンチアメリカンジョークその2アメリカンジョークその3を紹介していただきました。ありがとうございました。余りにも、ちんさんがまじめに演じられているので、逆に聞いている方が緊張してしまいましたが、朗読というのは難しい物だと言うことを改めて感じながら、昔の経験を思い出していました。


もう35年ぐらい前になりますが、私の通っていた小学校では、毎朝校庭で朝礼があり、校長先生のお話やラジオ体操をやっていたのですが、雨の日は、放送室から校内放送を使って、各教室のテレビに朝礼を放送していました。


今でこそ、小学校に行けば各教室にテレビやビデオがあるのは、当たり前になりましたが、当時はまだカラー放送も少なかった時代で、しかもそのテレビ放送を、小学生だけで運営していたのは、全国的にも珍しかったのです。


視聴覚部に属していた私は、お昼の放送の担当でした。みんなが給食を食べている間、物語などの本を朗読するのです。私は、本を読むのは好きだったのですが、この朗読をするのはいやでした。3人で担当していたのですが、誰もやりたがらないので仕方なく朗読していたのですが、1人だけ遮音された放送室に入って、マイクに向かってただ本を読むのは、苦痛以外の何物でもありませんでした。


しかも、他の2人が機械室の方で、おしゃべりしながら給食を食べているのが、二重になった窓越しに見えているのです。しかも、生放送で直前になって、読む本が渡され練習なしで本番ですから、読めない字があった時の焦り様は、大変な物でした。


放送には失敗が付き物です。その当時小学校では、時間が授業とずれていた教育番組を録画しておいて、授業時間に放送室から放映していたのですが、そのビデオデッキが1インチのオープンリールで、巻き戻しをしようとした私は、上下を逆にしてしまい、再生してみると、NHK教育テレビの先生が逆立ちをして出て来たのにびっくりしたことを覚えています。


普通のオープンリールのテープレコーダーしか知らなかった私は、テープにはA面とB面がある物と思い込んでいましたから、間違った方向に巻き取ってしまったのです。


今日、ちんさんが朗読されているのを聞きながら、その昔の苦労を思い浮かべるに付け、エアーボンチも大変な苦労の上に生み出されていて、それをやり通そうとするちんさんの、並大抵ではないパワーを感じないわけには行きません。


ところで、ちんさんもエアーボンチでおっしゃってますが、アメリカンジョーク今一でしたか?私も責任を感じております。まあこれは笑うのが目的ではなく、文化比較論の実例として、教材の一つであるとお考え頂ければ幸いです。


ネットワーク時代に情報の大量消費を支えていくのは、エアーボンチのような情報を発信して行く個人にかかっています。ちんさん、応援しています!(来週も聞こっと!)

102.SDカードって知っていますか? (2003/05/21)

もう2週間ぐらい前になりますが、車で移動中に聞いていたFMの番組の中で、DJの方がSDカードの話題をしていました。何でも、100人に電話でアンケートを取って、SDカードを知っているかどうかを尋ねたのだそうです。


それでその結果は、約4割の人が知っていると答え、約3割の人は聞いた事はあるがよくは知らないと答え、残りの人は聞いた事がないと答えたそうです。


私は、「思ったより、みんな知っているのだなあ」と思って聞いていたのですが、その時はその後に仰天する事になろうとは、思いも寄りませんでした。


さて、DJは続けます。


「ところで皆さんは、SDカードに2種類ある事をご存知ですか?」


なるほど、デジタルカメラ用携帯電話用にいろいろなタイプがある事を紹介しようとしているな、と思って聞いていると、


「一つは、セキュアーデジタルカードの略称で、最近のデジタル機器でデータを保存する為に使われています。」


それが一つ目か。そうすると2つ目は、まさか、、、


「もう一つは、セイフティードライバーカードと言いまして、安全運転者の印です。今日は、このセイフティードライバーカードについて、知らなかったと言う方に、ご紹介してみたいと思います。」


と続いていた時には、私は放心状態でした。アクセルを踏んでも、車も加速しなくなってしまいました。


いや、勝手にSDカードと言えば前者だと思っていた私が早とちりなのですが、それなら、さっきのアンケートの結果は、何を意味しているのかさっぱり分かりません。


例えば、もしCDを知っているかどうかアンケートを取って、9割の人が知っていると答えたとしても、コンパクトディスクではなく、クリスチャン・ディオールだと言う人もいるでしょう。このような誤解を避ける為には、「コンパクトディスク(CD)を知っていますか?」とでも聞かなければならないでしょうね。


でも、どちらのケースもかけ離れた物同士なので、実際の生活で勘違いをして問題になるような事は起こらないでしょうが、FMを聞きながら運転するときは、ずっこけてしまわないように注意が必要です。以上、SDカードをもらう為の運転の心得でした。

84.ダウンサイジング推進計画 最終回: パームよ、機は熟した! (2003/04/29)

さて、これまで6回にわたって展開して参りました、ダウンサイジング推進計画ですが、少しおさらいをしておきましょう。


まず、過去のダウンサイジングの流れを、第1回はワークスステーション、第2回はパソコンをテーマに、振り返って見ました。第3回は、ダウンサイジングがパソコンで止まっている理由であるページサイズに着目し、ページからより小さいフレームにして行く事が、ダウンサイジングを押し進める為に必要であると主張しました。


第4回は、人間の記憶力との比較から、フレームが必要になる根拠を示し、第5回は、ユビキタスの勧め、第6回は、オンデマンド・コンピューティングによる情報の選択とその技術、でした。


さて、ここまで読んでこられた方の中には、「ユビキタスやオンデマンドと言っても、今の携帯電話のi-modeなどが既に実現していることを、言い換えているだけではないか」、と言う方もいらっしゃるでしょう。


今回、敢えて携帯電話の話題はしませんでした。あくまで、コンピューターの利用形態の変化に注目し、パソコンまでで止まっていたダウンサイジングを、更に小さいパームの世界に広げるには、どのようにすればよいかと言うことを考えてきました。


今後、電子財布、電子認証、電子入場券、電子定期券など、今まで「電子」が頭に付かなかった全ての物を、電子的に解決しようと言う流れの中で、ユビキタスオンデマンド・コンピューティングといった技術が私たちの身近なものになったとき、それまでPDA携帯電話と呼ばれていたものは、スペックの一つである通信方式に違いがあるだけで、どちらもネットワーク・コミュニケーターなどと呼ばれているかもしれません。PDAと携帯電話の境界がなくなり、融合する日は近いのかもしれません。


さて、いよいよ私の最後のメッセージです。大型汎用機からワークステーション・パソコンへのダウンサイジングは、Sunマイクロソフト主導的な役割を果たしました。彼らは、大型汎用機を扱わない企業だったのです。大型汎用機のメーカーは、それまでに築いてきた資産を守ろうとして、ダウンサイジングには否定的でした。


それならば、パソコンからのダウンサイジングは、パソコンを扱わないPDAのメーカーによって、進めていかなければなりません。


パルマガで、機長さんが4月25日付けで紹介されておられますが、米IDCによる1-3月期の世界ハンドヘルド機器出荷台数速報に掲載されている企業の内、パソコンも作っているのは、Hewlett-Packard、ソニー、Dell、東芝、カシオ、シャープです。これらの企業は、パソコンをPDAにダウンサイジングすれば、全体では売り上げは減少するでしょうから、ダウンサイジングを敢えて進めることはないでしょう。


そこで、PDA専業の企業で、しかも圧倒的にPDAの出荷台数の多いパーム・コンピューティングに、私はダウンサイジングの主導的役割を期待します。


「パームよ、機は熟した!」。今こそ、マイクロソフトの夢をもう一度、パームにもたらす絶好の機会です。是非、PDAの盟主として、新しいネットワーク・コンピューティングの世界を切り開いて行ってもらいたいものです。

83.ダウンサイジング推進計画6: オンデマンド・コンピューティング (2003/04/28)

ユビキタスを実現するために、なぜオンデマンド・コンピューティングが必要になるのでしょうか?


多くの方は、ユビキタスは、これまでのように通信インフラを整備していくだけで、実現できるとお考えかもしれません。確かに、いつでも、どこでも、インターネットにつながるだけで良いのなら、通信のインフラを整備して行くだけで、十分かもしれません。


ところで、今のノートパソコンは、いくら軽く小さくなったと言っても、いつでもどこでもと言うわけには行きません。ですから、機器はさらに小型にならなければなりませんが、小型のディスプレーには、無駄な情報を表示している余裕はありません。ページからフレームへと、表示の単位を変えていかなければなりません。


そこで、いつでも、どこでも、に加えて、欲しいだけと言う事が、ユビキタスの実現に不可欠となってくるのです。必要な情報のみを選択して表示できることが必要になってきます。


ここで、「必要な情報をさらに選択するには、検索のキーワードを増やせば良いのだ」、とおっしゃる方は、Google使いのベテランでいらっしゃる。それはそれで良いのですが、ベテランになるには経験が必要です。できれば、誰にでもできるように、コンピューターにやってもらいたいのです。


しかも、これまでのインターネット検索は、検索キーワードを多く含むURLを羅列していただけで、情報を選び出していたわけではありません。そのURLの作者が用意したページ全体を表示する事はできても、そのページの持つ多くの情報から、必要な情報を選び出す作業は、人間がやっていかなければなりません。できれば、コンピューターにやらせたい作業です。


なぜ、コンピューターは必要な情報だけを選ぶことができないのか?


それは、インターネットの情報がHTMLで書かれているからです。


HTMLは、ご存じの通り、文字列を見やすいようにフォーマットするための、タグが含まれています。人間が見やすいように、文字列をどのように配列して表示するかを、規定しているわけです。


例えば、製品の名前と価格が表形式にきれいにフォーマットされていた場合、これを見た人は、そこに並ぶ数字が、金額であることを理解し、どれが安いかを比較検討することができます。それは、表の並び方などから、どこの欄が金額であると言うことが、経験的に分かっているからです。


しかし、コンピューターには、文字列が金額なのか、製品の型番なのか、判断できません。例えば「一番安い製品を選べ」、とリクエストしても、どの文字列が金額であるかさえも分からないでしょう。


もちろん、このPalmTrotterもお世話になっております、アンテナサイトの「ぱむあん。」PALMLINKでいこう!!のように、更新時刻をある決まった形式でページに記載することによって、文字列をコンピューターに、更新時刻であると認識させることもできますが、もう少し汎用性のある方法は、ないでしょうか?


XMLというのは、拡張されたマークアップ言語ですが、その機能を使うことによって、文字列の属性を表現することができます。コンピューターは、インターネットから呼び出された情報の中で、どれが製品番号で、どれが価格であるかを判断することができるようになります。XMLのタグを使えば、コンピューターに属性を持った文字列を使って処理をさせ、結果のみを表示することが可能になります。


つまりXMLによって、これまで人の経験に頼っていた必要な情報を探し出す作業を、コンピューターが代わりにする事ができるようになります。インターネットが、人の閲覧用にフォーマットされたページの集合体から、コンピューターが処理のできるデーターベース生まれ変わるのです。


XMLを使った情報を提供してくれるのが、WEBサービスと呼ばれます。例えば、辞書検索などがWEBサービスとして既にあります。


XMLとWEBサービスなどを使って、インターネットをWEBデータベースとして活用する、新しいコンピューティングの姿が、オンデマンド・コンピューティングです。これまでのコンピューターシステムで、データベースとアプリケーションを長い期間掛けて構築していたのが、オンデマンド・コンピューティングでは大きく変わるかもしれません。


これまでは、グループ・ウェアなどで構築してきたデータベースが、今後はWEBデータベースとして、世界中でシェアできるようになるでしょう。インターネットと言うネットワーク上に分散された、正に、人類の英知を結集したデータベースになるでしょう。


さらに、グリッド・コンピューティングのように、CPUもネットワーク上に分散され、ユビキタス・コンピューティング環境を形作って行くでしょう。そして、その新しいユビキタス&オンデマンド・コンピューティング環境において、人とのインターフェースの部分を受け持つのが、他ならぬパームなのです。


さあ、私のダウンサイジング推進計画も、終わりが近づいてきました。次回は、最終回、「パームよ、機は熟した!」をお送りします。