141.意識を持つコンピューター (2003/07/07)

もう20年以上前になりますが、確か読売新聞の特集記事で人工知能の事が書かれていたことがありました。座談会形式で数人の識者が将来のコンピューターについて語っていました。


当時はAI人工知能と言う言葉が流行っており、家電やカメラの新製品は必ずと言って良いほどインテリジェンスを謳い文句にしていました。AI洗濯機、AI炊飯器、AI扇風機、AI電子レンジ、AIカメラ、云々、云々。まあマイクロプロセッサーが本格的に民生機器に搭載され始めた時期であり、それをインテリジェンスと称していたのですが、近い将来意識(心)を持ったコンピューターが登場する事は、当然のように期待されておりました。


「2001年宇宙の旅」のHALや、「鉄腕アトム」を誕生させるには、そろそろ人工知能を実現しておかないと間に合わないと考えていた人がいたのかも知れません。


その座談会の中で、ある人がこんな事を言っていました。


「コンピューターの意識と言うのは、メモリーがどんどん増大して、過去の人類の経験や文化・習慣等の記憶があるレベルにまで達した時に、ろうそく明かりぽっと灯るみたいに芽生えるのではないか」、と。


正確には少し違う表現であったかもしれませんが、この意識の芽生えろうそくの明かりに例え、しかも最初の内は、それが薄ぼんやりしたものであると言っていたのが印象に残っています。


最近では、脳の研究も以前より進んで来ており、その複雑さが解明されつつありますから、人間の脳と同じようなコンピューターが、そう簡単にできるとは誰も思わなくなりました。しかし、コンピューターのメモリーがどんどん増えて、過去から人類が蓄積してきた情報をどんどん記憶していくと、ある日誰も気づかないうちに、ぽっと意識の明かりが灯っている事があっても不思議ではありません。(いや、やっぱり不思議だ!)

140.通勤電車+無線LAN=PDA (2003/07/04)

少し前に、JR西日本が無線LANを使った実験を始めたと言うニュースがあり、少し気になっていました。「無線LANの鉄道への応用技術開発-未来を拓く鉄道の変革をめざして-」には、車両の運行状況の把握や駅の案内表示の為の情報を、大量かつ高速通信する事を目的としていると書かれています。


JR宝塚線の沿線に、無線LANのアクセスポイントを400-500メートルごとに配置し、130Kmで走行する車両から社内のネットワークに接続する事ができたと報告されています。


確かに、最近列車の事故が増えていますし、乗務員に事故の情報や復旧の予定などが伝わらず、数時間も車両に閉じ込められたと言う事が何回か起こっていますから、情報の伝達方法の改善は必要だとは思います。


しかし、それにしては不自然なスペックがいくつかあります。例えば:



  • 無線LANとして広く一般に普及していると言う理由で、IEEE802.11bを採用した事。
  • 複数のネットワーク(複数の線区)を同一IPアドレス移動できる事を目指した事。
  • 130Kmで走行中の車両から、2-3Mbpsの伝送速度の送受を行った事。
  • 乗務員室から、WEB形式で閲覧できる事を確認した事。
  • IP電話普通の電話と同じ品質で使える事を確認した事。

これを見て、通勤電車で近い将来、無線LANが使えるようになると予想しない人がいるでしょうか?


もちろん、列車の運行情報の伝達でも、このような事が要求されるのかも知れませんが、それならもっとそれに特化した方法がありそうに思います。


そして、昨日の発表は更に期待を膨らませるものでした。「駅における無線LANによるインターネット接続サービスの実験」は、そのものずばりです。取りあえず新幹線の駅の待合室だけのようですが、走行中の列車と駅の両方で無線LANを実用化しようとしている事が、はっきり分かります。


最近は、アメリカン航空のように航空機の中でも、携帯電話の利用制限が緩くなってきているようです。現在は、携帯電話の利用が列車内で制限されていますが、無線使用可能車両を指定するなどの動きも出ています。


さて、通勤電車で無線LANが使えるようになったら、その端末の主役は当然PDAしかないでしょう。


これまで駅のキオスクなどで、ソフトウェアや電子書籍のダウンロードの実験をしていましたが、電車内でダウンロードできるようになれば、利用は飛躍的に拡大するに違いありません。通勤電車の必需品になりますから、まず駅のキオスクパーム特約店契約を結びましょう!


ここは一気にパームを普及させるチャンスです!

129.パソコンと壊れたハードディスク4: なぜLSIは壊れるのか? (2003/06/20)

さて、また昔の話しになりますが、私の家にはソニーの6石トランジスターラジオがありました。今でも家のどこかに置いてありますが(本当はダンボール箱に突っ込んであります)、まず壊れるようなものではなかったのです。一度足で踏みつけた為、スピーカーが陥没した事があったのですが、町の電気屋で修理されて完璧によみがえった事がありました。


あるいは、真空管式のラジオやテレビがトランジスター式になった時には、オールトランジスターやらソリッドステートと言われ、その寿命半永久的であるとさえ言われていたものです。


それに引き換え最近の電気製品においては、やたら電子部品の使用が増えている為もあるでしょうが、故障が多いような気がします。テレビやビデオは言うに及ばず、洗濯機や冷蔵庫、電子レンジや掃除機に至るまで、その主要機能部品の故障もさる事ながら、コントロールする目的で搭載されているLSI部品の故障が、結構多いのではないでしょうか?


勿論、昔のアナログの製品に比べると、デジタル機器は徐々に調子が悪くなると言うより、突然動かなくなる事が多いですから、壊れるときに印象が強いのは確かです。しかし、もう少し壊れない作り方もあるのではないかと思います。


もう1年近く前になりますが、半導体のパッケージの封止材が問題になったことがありました。パソコンにおいては、ハードディスクの交換にに応じたメーカーも多かった事は、まだ記憶に新しいと思います。実はこれと同じような現象が、LSIの内部においても起こっています。


LSIに経年変化を来す現象の一つに、エレクトロマイグレーション(EM)があります。これは、金属中に電流が一定方向に流れ続けると、金属原子が電子流によって押し流される現象で、温度と電流密度によって進行速度が異なってきます。LSIの内部回路を接続している金属配線で、特にクロック系の配線は、常にEMのストレスにさらされているのです。


CMOSは、基本的にゲートのチャージ・ディスチャージを繰り返しますから、双方向に電流が流れる配線もあるのですが、電源バスやグランドバスに接続されている配線については、一定方向のみの電流が流れるため、EMの影響を大きく受けることになります。


アルミより銅の方がEMの影響が少ないため、銅配線が採用された時は、これからはEMの事を考えないでデザインできると喜んだのも束の間、さらに微細化された配線幅によって、銅配線でさえもEMを考慮した配線を求めなければならなくなりました。


また温度上昇や内部スイッチングは、十分にシミュレーションされている筈ですが、プロセスの振れ実際の動作状態の把握を完全に行うのはかなり困難です。LSIチップの一部だけが異常に発熱することや、機器内部のエアーフローが計算値より低下している場合など、設計段階での予想寿命が、そのとおり実現できない事も起こり得ます。


LSIのコスト設計の安全性背反する事が多いですから、コストを下げる事により重きを置くメーカーの製品は、ギリギリの設計をしてしまう事が多いようです。特に電源周りの設計は、手を抜けばコストを下げられますから、安易に行われる可能性がありますが、動作が不安定になったり、耐用年数が出せなかったりして、性能の低下も顕著に表れます。


壊れにくいLSIにするには、先端技術をギリギリのところで使わないのが良いのですが、スペックを競い合うにはギリギリを狙わないと負けてしまいますから、なかなか難しいところです。デルは、独自技術を使わずに汎用の技術のみを使うと言われていますが、それも一つの故障のリスクを避けるテクニックなのでしょう。


ところで、USの潜水艦に搭載する装置に使われている半導体は、2・3世代前のテクノロジーを使ったものだと聞いた事があります。究極の信頼性は、枯れたテクノロジーに限るという事でしょうか。

128.パソコンと壊れたハードディスク3: ハードディスク交換 (2003/06/19)

さて、パソコンと壊れたハードディスクは、何とかしなければなりません。私に残された道は以下の通り。



  1. パソコンから足を洗う。
  2. 新しいパソコンを買う。
  3. メーカーに出して、2週間と35,000円を費やして修理する。
  4. パーツを買ってきて、自分で取り替える。

パソコンから足を洗うのは、悟りを開いた時で良いので、まだ私には早いようです。新しいパソコンを買うというのも悪くはないのですが、これを一度やり出すと癖になってしまいます。では35,000円を出すかというと、それももったいない話です。結局自分で取り替えるしかないのでした。


実は、私はパソコンのハードウェアに関しては素人です。以前ビデオデッキを壊した事があり、静電気に弱い製品には触らないようにしています。


しかし、安くあげるためには仕方がありません。早速デスクトップのケースを開けてみることにしました。とりあえずハードディスクを取り出し、ついでにメモリーの形状を確かめていざパソコンショップへ。


最終的にバルクのパーツに行き着いたのですが、バルクのパーツが格安航空券と同じ仕組みであるとは、この時初めて知りました。店の人に「返品はできませんよ」と釘を差されて、若干緊張しながら買って帰り、パソコンにぶち込んでみれば問題なく動いたので一安心です。


5400rpmから7200rpmになったのと、メモリーが64MBから192MBになったため、以前より快適にパソコンが動作するようになりました。ハードディスクの交換ととメモリーアップで、12,000円なら悪くはないと思った次第です。


今回は、少しセコイ話になってしまいましたが、実はこのテーマでお話ししたかったのはこんな事ではありません。本当にお話ししたい事は、「こんなに早く壊れていて良いのか?」と言う事です。次回が本題で最終回です。

127.パソコンと壊れたハードディスク2: 歴史は繰り返す (2003/06/18)

昔、デパートでおもちゃを買って家に帰り、30分程遊んでいると必ず壊れてしまっていた時代がありました。特に、電池とモーターを使ったおもちゃでは顕著であり、当時最新のリモコンのおもちゃが1ヵ月以上も動いていたことはまれでした。ましてや保証制度も発達しておらず、間(まん)が悪かったと言って諦めていたものでした。日本製品とはそんな物でした。


いつしか日本製品の品質が良くなって、今度はめったに壊れなくなりました。日本製品が世界中に輸出され、その高品質によって他の国の製品を市場から締め出していきました。


その頃の壊れ方は、カラーテレビなら画面の色が薄くなり出したとか、洗濯機ならボディーの鉄板が錆びて穴が空いたとか、10年ぐらい使ってから素材そのものが朽ちて来たために壊れるのです。これは、製品の寿命なので確かに買い換える時期だったのです。


どのような製品でも各家庭に普及してしまうと、新規購入者が減ってくる為、新機能を投入して買い替え需要を起こそうとしました。買い替えの動機が新機能の追求ですから、まだ使えるとしても捨ててもらわなければ需要は生まれません。みんなは、新しい機能を手に入れるために、まだ寿命の来ていない物ゴミとして捨てました。


もう寿命が来るまで使いきる人は、少なくなって来ました。壊れたから買い換えるのではなく、型が古くなったから買い換えるからです。しかもあっという間に型は古くなっていきます。


もう耐用年数を心配する人はいません。耐用年数よりずっと早く買い換えられていくからです。そして、昔はたくさんいた壊れるまで大事に使う人がいなくなって、メーカーは耐久性よりも新規性を優先するようになってきたのです。


もちろんすべての企業がそうなったのではありません。今でも古い顧客を大切にする企業はあります。たとえば一部のカメラメーカーなどは、修理の部品を実際のコスト以下で提供してきました。長く愛用される製品を提供しようと努力をしてきました。しかし、このような企業はごく限られており、多くの企業は長く使うことより、短いサイクルで買い換えてもらえる製品作りに、邁進していったのです。


さて、寿命や耐久性を無視し続けた結果、すぐに壊れてもそれ程珍しいことではなくなってきました。以前なら、すぐに壊れる品質の悪い製品を作ったメーカーは評判を悪くしましたが、最近は壊れたとしても、その後のサポートをうまくやれば、顧客はまた同じメーカーの製品を買ってくれると言った誤った認識が蔓延しています。


その結果、1年で壊れたことに対して、その本当の問題点を認識しようともせず、起きて当然騒ぐ程の事ではないと、事もあろうがユーザーサポートの人間が平然と言いきってしまう事が起こってしまうのです。


そろそろ使い捨ての時代を、終えなければならないのではないでしょうか?使い捨てだけが楽しい消費生活ですか?修理しながら愛用していくのも楽しいのではないでしょうか?


さあ、次回はどう展開していきましょうか?我ながら見当もつきません。