446.パームが甦る日9: PDAが抱える致命的な問題点 (2004/12/30)

さて、これまで8回にわたってお届けして参りました特集、「パームが甦る日」。このあたりで前置きはそろそろ終了して(長い前置きやなー)本題に入らなければ年を越してしまいそうです。


その前に、これまでのあらすじを簡単に書いておきたいと思います。



  • PDA携帯電話PIMに負けたのが本当なら、何故手帳はなくならないのだろうか?
  • 手帳売場には毎年同じように手帳が並んでいるが、手帳の売れ行きには毎年変化がないように見える。
  • パームは手帳のハードウェアをそのまま電子化するのではなく、ソフトウェアまで含めた電子化をする必要があるのではないか?
  • PCとの"HotSync"に頼っていては、パームはいつまでもPCの付属品に過ぎない。
  • PCから独立するために、バックアップはメモリーデバイスに、インターネットは無線LANで対応すれば良い。
  • 同時にダウンサイジング携帯電話へ挑戦することによって、一気にIT機器の覇権を取ることが出来るかも知れない。

と、まあこんなところでしょうか。パームはこれまで面倒なところをPCに頼っていたところがありましたが、PCの力を借りないようにすることによって、逆にPCや携帯電話の牙城に切り込むことが出来るのではないかというのです。


ただこれには、致命的な問題点があります。PCと携帯電話の牙城に攻め込むことができるのは、PCも携帯電話も作っていないメーカーでなければならないからです。PalmOneには出来ても、おそらくソニーには出来ないでしょう。


PDAが本来のポテンシャルを発揮できない理由は、実はこの辺りにあるのかも知れません。ほとんどのメーカーは、既にパソコンや携帯電話でビジネスを成り立たせていますし、突如として無名のメーカーがPDA業界に参入しても、無名なだけにそう簡単に振り向いてはもらえないのです。


いつの日か、手のひらサイズの情報機器のあるべき姿を世に問う、勇敢な企業が現れることを、心から待ち望んでおります。


さて、この特集の本題は、「パームを電子手帳としてよりよいものにするにはどうすればよいか」を提案することです。


手帳が使い続けられている秘密は、それぞれの使い手による工夫にあると書きました。ですから、手帳としてパームをより良いものにして行くには、使い手のアイディアが必要です。


こう書くと、「だからパームはパームウェアをダウンロードして、使い手の好きなようにカスタマイズ出来るようになっているではないか」と言われそうですが、それはそれが好きで出来る人だから言えること。ほとんど人はそんなのは面倒なのです。


これまで、パームのPIM機能にはあまり手が加えられてきませんでしたが、改良できるところはたくさんあるはずです。次回は最終回として、パームが紙の手帳に取って代わるための条件を、一パームユーザーである私の希望と言う観点で、書かせていただきたいと思います。

444.パームが甦る日8: ネットにつながらない情報機器なんてあり得ますか? (2004/12/29)

パームは、パソコンとHotSyncしながら使うことを前提としているために、パソコンの周辺機器(付属品)と言う位置づけから抜け出せないと書いてきました。ネットワークからのダウンロードの為にパソコンの力を借りなければならない今のPDAでは、電子手帳と言うよりパソコンデータのハンディビューワーと呼ぶべきでしょう。


今や冷蔵庫や電子レンジまでもがインターネットに接続されようとしています。曲がりなりにも情報機器であるパームが、インターネットからいつまでも乖離されたままで良いはずはありません。


インターネットからデータをダウンロードしたいならば、パソコンに頼ることなく、PDAを直接インターネットにつなげばよいのです。確かに、これまでにもPHSカードを内蔵したパームがありましたし、スマートフォンと言われるパームは携帯電話を通してインターネットに接続することができます。


しかし、PHSによるデータ通信は、結果としてそれほど普及しませんでした。また、スマートフォンはあくまで携帯電話のひとつの形態に過ぎず、ビジネスモデルが異なります。それはそれでパームの普及と言う観点からは歓迎すべきものでしょうが、キャリア事業の一環として提供されるものであり、ここでは別のものとして扱うことにします。


以前、このサイトで「ダウンサイジング推進計画」と称しまして特集を組んだことがありました。ノートパソコンまでダウンしてきたサイズが、そこで止まってしまっているのではないかと言う疑問を投げたのですが、その原因にネットワークがあると思うのです。


ノートパソコンには機動力があると言ってもやはり重いものです。モバイルといっても使用場所は移動先の空港やホテル等に限られてしまいます。またユビキタスを目指すにしても、移動中にインターネットにつなげる方法は携帯電話しかなく、通信費や使用できる場所の制限があり、自由に使えるわけではなかったのです。


そこで登場してきたのが無線LANによるホットスポットです。まだ日本では大きな駅周辺や空港などに限られていますが、海外ではバス停のようなところにまで浸透してきているようです。


私は、無線LANをパームに標準で実装することによって、2つの事が同時に実現する可能性があると思います。


一つ目はダウンサイジングの進行です。ノートパソコン止まりであったダウンサイジングを、PDAのレベルまで引き下げることが現実的になるかもしれません。


二つ目は携帯電話への挑戦です。家庭の固定電話でも、これまでの電話回線からIP電話へのシフトが進んでいます。


これまでPDAは携帯電話によって席捲されてきたと言われてきましたが、携帯電話はキャリア(通信網)が生命線です。その生命線を、インターネットを経由するIP電話によって断ち切ることは、ありえないでしょうか?


無線LANのホットスポットが今後どれだけ普及するかに掛かっていますが、専用の回線を使う携帯電話に比べて、インターネットによるメールや電話は大きなコストメリットを生むでしょう。


これまでパームがパソコンに頼って来たことによって、パソコンと一緒に生長することができたのは事実です。


しかし、そろそろ親離れしないといけない時期に来ているのではないでしょうか?そして子は、いつしか偉大な存在であった親をも越えていくものなのです。

441.パームが甦る日7: 文字の書けない電子手帳 (2004/12/28)

さて、PDAがパソコンに頼っているのは、バックアップを取るためだけではありません。文字入力に関しても、パソコンの力を借りて行っている方は多いでしょう。


パームデスクトップと呼ばれるパソコンで実行するソフトウェアは、パームをパソコンと連携させるためにはなくてはならないものです。パームの基本的なアプリケーションをそのままパソコンの画面上で再現することが出来ますから、予定やメモをパソコンを使って高速に入力することが出来ます。


ところで、皆さんが辞書を買おうとするとき、何に着目して選ぶでしょうか?収録語数内容は勿論重要ですが、それと同時に「引きやすさ」を重視するのではないでしょうか?字の大きさ見出しの付け方字の大きさから紙の質装丁まで。あらゆる書籍の中で辞書ほど機能を重要視するものはないかも知れません。


電子辞書を選ぶ場合も同様です。売場に並んでいる電子辞書を使って、ある言葉の意味を調べるわけですが、引きやすさは重要な要素です。いくつかの電子辞書を試してみて、一番引きやすかった機種は印象に残るはずです。


手帳を選ぶときも、ページのめくりやすさや記入のしやすさは重要でしょう。手帳なら実際に書いてみなくても、使いやすいかどうかはすぐに判りますから、中のページをパラパラとめくっては、使いやすいかどうか判断をするのです。


このサイトを始めたころ、こんな雑記を書いたことがありました。つまり、売場においてあるパームを見て、使いやすい、便利だと思う人がいるのかと言うことなのですが、そもそも電子手帳にはまともに字が書けないのです。


電子辞書を買うつもりではなかったのに、売場でその便利さに感心して買って帰る人がいる、その隣のパーム売場では、買う気で来たのに文字を書き込むこともできないために、そのまま買わずに帰ってしまう人がいるのです。


文字を書くにも訓練が必要な手帳なんて、一体誰が買うのでしょうか?


ここにもパームがパソコンに頼りすぎた弊害があります。入力しにくければパソコンで入力して"HotSync"すればいいと。少なくとも紙の手帳は、それだけで完結しているのです。電子手帳はパソコンがなければ使えないものだとしたら、それはパソコンの付属品に過ぎないのです。


実は、パームへの文字入力をいかに賢く行うかは、大変難しい問題です。グラフィティーは優れた方法でありますが、慣れが必要になります。この文字入力とPIM機能の充実に関しては、最終回で提案してみたいと思います。(今から考えます。)

436.パームが甦る日6: パソコンのいらないバックアップ (2004/12/23)

デジタルカメラもかなり普及して来ました。一眼レフ式デジタルカメラも各社出揃い、新しい主役の優劣争いが白熱しています。


とにかく写真が撮れればいいと言う人にはコンパクトデジタルカメラがありますから、高価で重いデジタル一眼レフカメラを使おうとする人は、画質にこだわりがあるのでしょう。良い写真を撮るためには、多少の犠牲はいとわないと言う姿勢はさすがです。


しかし、各社のカタログを見ていると共通した謳い文句が見えてきます。「パソコンがなくてもデジタル写真は出来る。」


すべての人がパソコンを好きで使っているわけではありません。写真のためにパソコンを駆使するのはイヤだという人は多いのです。そのような人にもデジタルカメラを使ってもらうためには、パソコンを使わないですべての機能が十分発揮できなければなりません。


デジタル一眼レフカメラだけでなくパソコン用のプリンターでさえも、パソコンを介さずにメモリーデバイスから直接デジタル写真をプリントできるようになっています。


もちろんパソコンを使えば、画像を編集したり、自由に補正を掛けたりすることが出来るのですが、そこまで凝る人はそれほど多くはいないでしょう。銀塩写真において、暗室作業をしていた人がごく少数であったのと同じです。


もうだいぶ昔のことになりますが、初期の電子手帳で電池が切れたために入力していたデータがすべて消えてしまい、裁判沙汰になったことがありました。手帳は大切なデータを控えておくものですから、それが消えてしまうことは電子手帳にとって致命的だったのです。


パームでは"HotSync"と言う機能によって、パソコンにバックアップを取ることが出来るようになっています。そのおかげで私たちは大切なデータの喪失という心配をしなくて良いわけです。


しかし、これはパソコンを使うことが前提になっていますから、パソコンを日常的に使わない人やこれを煩わしいと考える人は、決してパームを手にすることはなかったのです。


"HotSync"は、パソコンのユーザーにパームを広める為には有効であっても、パソコンを使わない人には障壁になっていたのです。


電池を使っている以上データのバックアップは必要です。パソコンを使わずにバックアップを取るには、メモリーデバイスを使えば良いでしょう。パームの製品としては既にメモリーデバイスに対応したものがありますから、技術的な問題はないと思われます。


パソコンを前提としないパームの使い方を提案していくことによって、これまで手帳を使ってきた人たちがパームに移行する時に越えなければならないハードルが、少しは低くならないでしょうか?(あまり変わらない?では次の手を考えましょう。)

433.パームが甦る日5: ハードルは低い方が跳び越えやすい (2004/12/18)

何事も新しいことを始める時には、ハードルが存在するものです。学校に入学する時、就職する時、結婚する時。ハードルを越えなければ、次のステージに上がることが出来ない場面がよくあるものです。


ハードルには高いハードルもあれば低いハードルもあるでしょう。しかし、ハードルを越えること自体が目的でないならば、ハードルは低いことにこした事はありません。ハードルが少しでも高いと誰しも一瞬躊躇するものです。


パームに欠かすことのできない特長のひとつに、"HotSync"があります。パソコンからパームにデータをダウンロード出来るため、パソコンのデータをパームで共有でき、その結果パームでインターネットからダウンロードしたテキストを読んだり、地図を見ることが出来るようになります。


また、パソコンにアップロードすることもできますから、パームで作成した文章やスケジュールをパソコンに転送することもできます。同時に、パームのデータをパソコンにバックアップしてデータの喪失を防ぐことができますから、安心してパームを使うことが出来るのです。


パームの日本語版がワークパッド30Jとして日本に紹介されたとき、PCコンパニオンと言う製品の位置づけでした。パソコンと併用することによって、それぞれの特長を生かし、あるいは欠点を補い合って行こうと言うものでした。


データの作成はパソコンで行い、それを参照する為により小型のパームを使うのは理にかなっていました。ノートパソコンと言えども、いつでもどこでもさっと取り出して使えるわけではありませんから、パソコンの補助的な端末としてパームを利用するのは、便利であることに異論はありません。"HotSync"が今でもパームの最大の特長のひとつになっていることは頷けます。


しかし、PCコンパニオンの考え方の根底にはパソコンが中心にあり、あくまでパソコンメーカーによるパソコンの利用方法を拡張するためのものだったのです。パームはパソコンの付属品に過ぎなかったのです。


もちろんパソコンの付属品としてパームを手に入れた人は、私を含めてたくさんいたのですが、逆にパームをパソコンと切り離して単独の商品(スタンドアローン)として買うことが出来なくなってしまったのです。


つまり、パソコンを使っている人にとっては、"HotSync"はワークパッドを使い始める際にハードルを低くしたのですが、パソコンをあまり使わない人にとっては、"HotSync"によってハードルが高くなってしまったのです。


"HotSync"に紙の手帳から単純にパームに乗り移れない原因があるのではないでしょうか?


手帳は手軽でハンディでなければなりません。パームそのものはハンディであることに間違いはありませんが、パソコンと一緒でないと使えないと聞くと、大げさに思えてくる人も多いのではないでしょうか?これでは「ハンディー」(handy)でなくて「ハンデ」(handicap)です。


パソコンからパームを独立させるためには、一体どうすればよいのでしょうか?


私は、3つの秘策を考えました。