153.Linux CLIEの可能性 (2003/07/23)

ふと思ったのですが、ソニーCLIELinuxを採用したらどうなるのか?


このパームコミュニティーにも、様々な嗜好の方々がおられ、パームOSが好きだったり、パーム社の製品が好きだったり、CLIEが好きだったり、ソニーが好きだったり、PDAが好きだったり、、、、ソニーが次の新製品からLinuxを採用した場合、困りそうな人はCLIEとパームOSが同時に好きな人ぐらいかと思いましたので、無責任にも書いてみました。


ザウルスがLinuxを採用しているからといって、遠慮する必要はないでしょう。パソコンやサーバーでは、多くの企業が同時にLinuxを採用しています。今は、SCOの絡みで採用しづらい時期ではありますが、それを考えなければ、Linuxの方が将来にわたって大きなビジネスに結びつくと考えれなくもありません。


理由は3つあります。



  1. そもそもソニーはパームOSを好きで選んだ訳ではなかったのです。 ソニーがPDAを始めた時、パームOSとポケットPCとザウルスの中から選ぶとすれば、立場上パームOSしか選ぶ事ができなかったのです。シャープの軒下を借りる事はできませんし、ましてや宿敵マイクロソフトのOSなどは論外です。そうするとパームOSしか選択肢はなかったのです。
  2. ソニーは特徴のあるPDAを目指しています。ハイレゾ画面でエンターテインメントの道具であるCLIEには、独自のソフトウェアでなければ魅力を発揮できない事が多々あります。パームOSに蓄積されたのソフトウェア資産に、それほどソニーは魅力を感じていないのではないでしょうか?どうせ、独自ソフトウェアでなければ特徴を出せないのであるなら、開発環境がよりグローバルであるLinux環境の方が、サードパーティベンダーの協力も得やすく、パームOSより容易にソフトウェア開発を進める事ができるでしょう。
  3. ソニーは将来のネットワークコンピューティングに野望を持っています。ソニー社内で開発の許可が出るには、ネットワーク関連の商品だけであると言われています。情報家電、つまりこれからはコンピューターと家電・AV機器の融合が起こってくると予想されています。その為には、コンピューター会社と対等に張り合えるだけのハードウェアとソフトウェアの実績を積んでおかなければなりません。Linuxは、ハンディ端末から大型システムまで広範囲の適用業務をこなしますから、一気にコンピューター会社と対等な資産を備える事ができます。

要するに、今のCLIEには、パームOSと言う鳥かごは小さすぎるのではないでしょうか?ザウルスのように、独自OSで長らく実績を蓄えてきたシャープでさえ、Linuxバージョンのザウルスを出すのですから、パームOSをライセンスで使っているだけのソニーが、他のOSに鞍替えしても不思議ではありません。


今回のPEG-UX50は、特にパームらしさを捨てているように思います。もうそろそろ、小手先の改良の繰り返しではなく、どーんと大きな衝撃を私たちに与えてくれそうな予感がするのですが、いかがでしょうか?

150.まほろばのCLIE (2003/07/19)

「遠い明日しか見えない僕と

足下のぬかるみを気に病む君と」

ーさだまさし まほろばよりー


ソニーの新パームPEG-UX50の話題で盛り上がっています。パームコミュニティーの最近の話題をvega21社と二分するほど、ソニーの製品には注目が集まっています。


各サイトのみなさんのご意見を読ませていただいていると、「なかなか良いのだけれども今回は買わない」と断言されているサイト管理者の方が多いのが目立ちます。あと、デザインがどこかに似ているということと、キーボードが期待できないといったところでしょうか。


それとAirHの対応がないということに失望されているようで、次回のマイナーチェンジで対応されれば、購入に踏み切る方も多そうですね。ソニーの発表で言われていたように、今回は電池の持ちを優先してカードスロットを付けなかったということですから、使い勝手より電池の寿命にこだわったということなのでしょう。


デザインにしても、ザウルスと酷似しているという意見はもっともですが、ノートブックパソコンを縮小したらすべてこのような形になってしまうでしょうから、模倣性があると言うよりは必然性であると言えるかもしれません。もちろんザウルスと開発時期が重なっていれば、偶然似てしまったとも言えるでしょう。


一般の消費者にはノートブックパソコンを縮小した形の方が、使い方が分かりやすいと思われます。これまでのパームの形のままでは、いつまでたっても電子手帳の殻は破れないと考えたのかもしれません。


多くのサイトで既に様々な視点からレビューがされていますし、パームボンチで奥の深い考察がなされていて、見事にPEG-UX50のベールが剥がされています。そこで私は、今回の製品の意味について少し考えてみたいと思います。

Handheld Engine(ソニーのTMの様です)と言う少し端臭いネーミングですが、これを採用したことに意義があるのだと思っています。そしてその優位性を示すために、電池寿命を延ばすことが必要だったのです。


このLSIの特徴は、ARMコアーDRAMを1チップに搭載し、DVFM(Dynamic Voltage and Frequency Management)を世界で初めて採用したことにあります。ロジックとDRAMを混載するには、専用の半導体プロセスが必要ですが、今回64Mbと言う大きなメモリーを同一チップ上に搭載したことによって、コストを抑え消費電力を低減することが期待できます。


DVFMは、速度を必要としない時に、クロックを低下させると同時に、電圧も下げるものと思われますが、消費電力にはクロックは1乗でしか効きませんが、電圧は2乗で効きますから低消費電力化には欠かせない手法です。


しかし、クロックを急激に変化させることには回路的な難しさもありますし、同じトランジスター構造で電圧を下げても、トランジションタイムが長くなるため無駄な貫通電流が増えることがありますから、DVFMに関しては今後もソフトウェアも含めた改良が継続的になされていくことと思われます。


さらに、その他の製品にHandheld Engineを採用したときに、その必要なパフォーマンスに応じて電圧やクロックを設定することによって、幅広い機器に適用が可能になり、大量生産により製造原価の低下が期待できるでしょう。携帯電話や電子辞書、携帯AV機器などに、同じLSIを搭載する事を目指しているのかもしれません。


また近い将来、ARMではなくソニー自社製のCPUが搭載されると思われます。そして、今後発展すると期待されているネットワーク端末や情報家電の中枢部を担う、デファクトスタンダードになることを目指しているのではないでしょうか?


汎用コントローラーとして多くの機器に採用できるように、広い範囲のクロックに対応し、メモリーもDRAMによって比較的安く組み込むことが可能で、電圧もアプリケーションによって自由に設定できるようです。


日本は、パソコンの時代はUSにハードとソフト両面で負けたので、情報家電の分野では主導権を取ろうと狙っています。ソニーが目指しているのは、将来のインテルの姿ではないでしょうか?パソコンの時代に成功したのは、すべての製品に同じ部品を供給する、デファクトスタンダードを擁する企業だったのです。パソコンの時代の成功体験は、そう簡単に忘れ去ることはできません。


「デザイン、キーボードの出来、AirHの未対応などは、足下のむかるみのようなものだ。われわれは、そんなことよりもっと将来の夢を追いかけているのだ」という、ソニー首脳の声が聞こえてきそうです。


そう考えると、ザウルスがLinuxに向かっているのも、マイクロソフトの方向を目指しているのでしょうか?いや、シャープは、長い間日本でPDAを発展させてきたという自負がありますから、ザウルスを大切に育てていきたいという気持ちの方が強いように思われます。


しかし、ソニーはどうでしょう。これまでソニーはCLIEに対して、エンターテインメントの新しい実現方法の一つと考えていたように思います。しかし、これからはそれに飽きたらず、ネットワーク時代のコンピューティングを世界制覇するための先兵として、CLIEに力を注いで行くのではないでしょうか?

138.PDAの配置問題 (2003/07/02)

さて、LSIにおける論理セル配置問題が、なかなか最適解にたどり着けない事を説明してきましたが、最適解を見つけることが難しいのは、PDAの世界でも同じ事のようです。


PDAの業界全体を一つのLSIに例えると、その構成要素はあたかも論理セルのようです。PDAやソフトウェアのメーカーを始め、ユーザーやフリーウェア作家やユーザーコミュニティーなどが複雑に絡み合って、引っ張り合ったり反発し合ったりしています。


何となくある一定の状態で収まっているかと思えば、今まで2つだったものが1つに合体したりして、そうするとまた別のところで連鎖的に影響し合って、また別の分裂消滅が起こったりします。


大きなな論理セルには、PalmWin MobileLinuxザウルスなどがありますが、どうもWin Mobileは、運動エネルギーが他よりも大きいみたいで動きが活発です。しかし、ただ右往左往していると言った感じで、ヒューリスティクに解を見つけようとしているのでしょう。まだ最適解がどこにあるのか分からない様子です。


Palmは最近Handspringと合体したのですが、勢いは以前とあまり変わっていないようです。


どうもこのままでは、PDA全体としての最適解にはたどり着けそうもありません。初期条件が良くなかったのかもしれません。こうなったら、一度大きな力で全体的に運動エネルギーを与えて、根本的に大きな変化を引き起こしてやるのが良いかもしれません。


さてPDAの中でなかなか最適解が見つけられない内に、同じ基板にある別の機能を持つ2つのLSI統合して、3つのLSIを2つにする事になってしまいました。こうした方がコストを削減でき、性能も向上する可能性があるからです。


これまで、PDAのLSIにあったPalmWin Mobileは、それぞれ2つのLSIに別々に吸収されていったのです。その2つのLSIとは、パソコン携帯電話でした。


Win Mobileは、パソコンと同じLSIに吸収されましたが、ほとんどパソコンと似ていた為、その存在意義を失い、その名が消えるまでにそう長い時間はかかりませんでした。一方Palmは携帯電話と同じLSIに吸収され、そこでの存在意義を見つけ最適解を捜し始めました。


さらに時代は進み、次はパソコンと携帯電話が小型化され、ついに一つに統合されてしまいました。その統合された小型の携帯電子機器を、人々は偶然にもPalmと呼びました。過去にそのような名前の小型コンピューターが実際にあったことも知らずにーーー。

116.道楽息子が帰ってきた (2003/06/05)

確かニューヨークタイムスは、パーム社によるハンドスプリング社の買収を、このように表現していました。2つの会社の業績が、あまり良くない状態での買収ですから、同じ地域にある2つの支店が1つになったようなものでしょうか。リストラが、その目的の一つであるのは明らかです。


ハンドスプリングが独立する時には、もっとPDAの売り上げが拡大して行くと予想したのが、意外と伸び悩んだ為、出直しを図ると言う感じでしょう。年内に社名を変更すると言うことですから、パーム系サイトの名称にも多少なりとも影響が出るかもしれません。


そもそも、PDAはパソコン携帯電話と競争していかなければならない宿命にあります。パソコンや携帯電話が、何もないところに新しいユーザーを開拓していったのとは異なり、パソコンと携帯電話に挟まれた狭い陣地を広げようとすれば、両陣営のテリトリーを奪って行かなければなりません。


簡単に悲観論に走ることが許されるならば、PDAが今がんばっているエリアは、パソコン会社か携帯電話会社に任せる方が、PDAを含めて総合戦略を練ることが出来たり、スケールメリットが活かせる事で、将来的に今の形態よりPDAそのものは発展するのかもしれません。


パームが、すばらしい経営・開発陣営と製品を持ち合わせていたとしても、世界中でしのぎを削っているパソコン会社や携帯電話会社と互角に戦うには、相手が悪過ぎるように思われます。


ザウルスを擁するシャープでさえも、Linuxを採用してOSにこだわらない姿勢を見せています。パームも、シェアをまだ保って価値があるうちに、ソフトウェアはPalm
Sourceとして、ハードウェアの方はこれまでのノウハウを持つ2つの会社を1つにまとめて、それぞれ新しいオーナーが現れるのを待つと言うのも、アメリカンドリームの一つの実現方法なのかも知れません。


自動車でも、多くの独立していたブランドがより大きなブランドの傘下に入りましたが、独自性を失っていないところも数多くあります。大きな資本の傘下に入る事のメリットを生かして、継続的にブランドを成長させていくことも可能でしょう。


そして、ブランドを成長させていく為には、ユーザーの支持、あるいはパーム・コミュニティー不可欠です。パーム社が、今後どのような展開をするか、見守っていきたいと思います。

114.専用パーム機はいかがですか?: 反省 (2003/06/03)

これまで、いくつか特集みたいな事をやってきましたが、今回のテーマほど失敗を実感したものはありません。いや、これまでも結論のない中途半端な内容が多かったことは、十分に承知しております。読んで頂いた皆さんが「つまらない」と呟かれるのを、幾度となく聞いておりました。しかし、今回は書いていて、自分で「つまらん」と思いました。


こんな訳の分からん専用パームなんて言っている間に、世間では怒涛の如く新製品が発表されていました。先輩諸氏のパームサイトで、唸るようなファーストレビューが紹介されている時に、「ブランド物のケースは如何ですか?」とは、甚だとんちんかんでありました。


新製品の発表ラッシュで、これほどパームを始めとしたPDA製品群が強化されている時期は、久しぶりではないかと思われます。ついに、PDA第3次普及期が到来するのではないか、とさえ予感させます。


パームのOSやハードウェアの進歩によって、手のひらサイズでかなりのことが出来るようになってきました。すべてをオールインワンにするのも便利かもしれませんが、煩雑になるからすべては要らないと言う人のためには、それぞれの用途で最適な性能と価格を実現する時が、やってきたような気がします。


そろそろPDAの進化の分岐点に、差し掛かったのかもしれません。そこで、4つの進化形に分類してみました。



  1. 一番目は、ネットワーク端末としてのPDA。つまり、インターネット接続やメール、あるいはIP電話も含めた、データのソースがネットワークの先にあるタイプ。無線通信アダプターが、重要な要素です。ネットワーク上にあるデータに、アクセスをすることに重点を置き、通信以外のハードウェアは、軽快な動作が必要です。シグマリオンが代表です。
  2. 二番目は、ノートパソコンを小型化したパームパソコン。ノートパソコンを、さらに技術の進歩によって小型化しようとするタイプ。CPUの高速化やディスクの大容量化が中心になります。パソコンで行っているアプリケーションを、PDAサイズで実現していきます。ポケットPC系が目指しているところでしょう。
  3. 三番目は、PIM機能を発展させていく電子手帳の完成型。こちらは、進化をすると言うより、PIMの機能を突き詰めていき、究極の手帳を目指します。シャープHPの新製品とPalm Zireが該当するでしょう。
  4. 四番目は、エンターテインメント端末。オーディオとビデオを、オンデマンドでネットワークからダウンロードしますが、あくまでプレイヤーとしてのハードウェアを重視します。iPodが代表ですが、CLIEもカバーしています。

これ以外にも、携帯電話、電子辞書、ポケットテレビ、ディジタルカメラやビデオカメラなど、PDA以外にも様々に発展しそうな機器がたくさんあります。PDAは、ある時は競合しながら、またある時は合体してパートナーとして、想像以上に違った形に発展していくかもしれません。切磋琢磨しながら、生き残っていったり、絶滅したり、正に恐竜の進化を見るようです。


私たちのパームも、何年もしてから、化石のように発掘されるのでしょうか?