358.気持ちを伝えるPDA (2004/07/02)

神戸新聞WEB NEWSに、「自閉症者の思い代弁 携帯端末ソフトに反響」と言う記事が掲載されています。


自閉症の方のコミュニケーションを支援する携帯端末機を、コンピューターソフトウェア開発会社とボランティアグループが共同開発したというニュースです。


手のひらサイズのコンピューターにコミュニケーションソフト、「あのね♪」を搭載し、手ごろな価格と相まって全国から問い合わせが寄せられているそうです。


携帯端末機がiPAQであることが少し残念ですが、ハード・ソフト込みで41,790円という価格設定は、このようなコミュニケーションツールを待ち望んでいた人にとっては、無理なく手の届く範囲と言えるでしょう。


タッチパネルからひらかなを入力する事によって単語や文章を作成し、合成音声で相手に伝えることが出来るそうです。


またあらかじめよく使う言葉を、グループに分けて登録することが出来るので、すばやく引き出すことが可能になっているようです。


操作パネルは5種類しかなく、初めて手にしたときから惑うことなく使えるように配慮されています。また子どもが使用する事も想定されているようです。


確かにこの用途の場合、文字入力が素早く出来ることが必要ですし、表示も見やすくなければなりません。また、音声合成処理能力と大音量のスピーカーが要求されます。しかも携帯性が良くなければなりませんから、PDAならではのアプリケーションと言えるでしょう。


6月25日のパルマガのコラム、「狂おしき音の洪水の中で」で、機長さん「氾濫するスパムメールによって、テキストを音声に変換するソフトウェアを使う視覚障害者が、多くの時間を無駄にしなければならない」、と言う記事を紹介されておられました。


インターネットに代表される情報のバリアフリー化は、まだまだ解決しなければならない問題が多く残っていますが、自閉症の方々がPDAによって積極的にコミュニケーションが出来るようになれば、情報のバリアを一つ取り除くことが出来るかも知れません。

ユビキタス・コンピューティングなどと難しい言葉を使わなくとも、私達の身の回りを見回してみれば、必要な情報がすぐそこにありながら、手の届かない人がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?


デジタルデバイドを埋めていくために、パームを始めとするPDAや携帯端末の果たすべき役割は、以前にもまして重要性を増してきているのでしょう。

350.クリエショック (2004/06/11)

CLIEの欧米市場撤退のニュースからだいぶ日が経ちましたが、いまだにそのショックから立ち直っておりません。その為にサイトの更新も滞ってしまいました。(サボりの言い訳です。)


このニュースについて触れずに全く違う話題で更新を続けようかとも思いましたが、CLIEの将来が危ぶまれるかも知れない事態に、パームの普及を願う当サイトが言及しないわけには参りません。


そもそも、パーム普及作戦やらパーム販促作戦と言ってみたところで、自分でパーム製品を作ったり売ったりしていないのですから、国内ではSONYさんにお願いして、がんばってもらわなければどうにも成らない訳です。


コストパフォーマンスを重視するアメリカ人やヨーロッパ人が納得する価格では、SONYが納得する性能のパーム製品を供給する事ができなかったと言うことでしょう。しかしまた機が熟せば、SONYによる欧米市場の再開があることを信じております。


昔、初めてフラッシュ内蔵のカメラが売り出された時、全く売れずにすぐに消え去ったそうです。当時写真を撮るシチュエーションと言えば、旅行に行った時の記念写真が主でしたから、、日常的に室内で撮影すると言うことを想像しにくかったようです。


その後、ストロボが普及しコンパクトカメラばかりでなく本格的な一眼レフにまでストロボが内蔵されるようになり、室内で気軽に撮影することができるようになりました。同じようにPDAの普及には、何らかの生活環境の変化が必要なのかも知れません。


ところで、最近中国が工業製品の生産国としてだけでなく、消費国としても注目を集めています。北京で開催されている自動車ショーには、多くのメーカーが高級車を展示しているそうです。


また、携帯電話の普及が進み、既に2億台以上が売れているそうです。2億と言えば米国の全人口に近づいてきていますから、これまでの欧米市場中心の考え方を、転換する時期に来ているのではないでしょうか?


日本では国民皆中流意識があって、購買傾向が国民全体で同じ方向を持っているのが普通のように考えてしまいがちです。多くの商品で流行りすたれが同時に起こり、若干の地域格差があるとしても、多くの点で単一のマーケット戦略が使えます。


しかし人口の多い中国ではそうは行きません。同じ国の中に様々な階層の人たちが存在し、それらの人たちが形成する市場はそれぞれで異なり、それらを一言で中国市場と呼ぶことは不可能です。そして例え中国の一部の階層でしか売れなくても、すぐに億単位の市場になるのです。


アメリカ人にはコストパフォーマンスで割高感のあったCLIEの高級機種が、意外と中国では大ヒットに成るのではないでしょうか?少なくとも一部の階層には受け入れられるでしょう。普及率が低いままでも、市場規模はそれなりの額になると思われます。


特にSONYお得意のエンターテインメントとPDAの合体は、中国受けするように思います。これからは中国市場をメインターゲットとしたCLIEを、開発してみては如何でしょうか?

348.パーム普及作戦小学生編9: 学問に王道なし (2004/05/22)

「IT化による教育改革」「パームを利用して授業の効率を高めよう」などと言うと、真っ先に「学問に王道なし」、とお叱りを受けそうです。「地道な努力なくしては学問は成就しない!」、と。


おっしゃるとおりです。方向を見定めてコツコツと毎日少しずつ、それぞれの目標に近づいていく事の重要性は、今も昔も変わっていません。


しかし、方向を見誤っていたり、より効率のよい方法があるのなら、これまでの慣習にとらわれずに採用していくことも、必要なのではないかと思います。


この事が、「学問に王道なし」が示すもう一つの意味、つまり「学問を成就するための方法は一つではない!」、ということなのです。


1年ほど前、USの友人から届いた手紙を読んだとき、その内容に驚きました。友人の小学生の子どもたちが、地元の小学校には行かず、その代わりに母親が家庭で教えていると言うのです。


「嫌がらせ」「不登校」の言葉が、私の頭をよぎりました。その子たちが幼い頃からよく知っているので、なおさら残念に思いました。


ところが、それからも届く手紙やメールを読んでいると、それ程悲壮感が感じられないのです。いや、それどころか勉強を家で教えていることを、楽しんでいるようにも見えます。


最近になってやっと理解できました。USやヨーロッパでは、ホーム・エデュケーションホーム・スクーリングと称して、学校へは通わせず、各家庭で親が自分の子どもの勉強を見ていく制度があるそうです。


最近、特に採用する家庭が増えているそうで、1980年頃から広まり始め、今ではUSで200万人の子どもたちが、家庭で教育を受けていると言われています。


学校へ行かないと聞くと、集団生活面での不安がありますが、ホーム・エデュケーションの子どもたちが参加する、ボーイスカウト・ガールスカウトなどの活動も盛んなようです。


背景の一つとして、教室で行われる教育ではどうしても画一的になってしまい、一人一人の子どもが持っている個性が失われてしまうという事が上げられています。


教室でみんなと一緒に勉強した方が楽しいと思っている子どもがいると同時に、自分の家で一人で勉強する方が落ち着いて勉強ができるという子どもがいても、不思議ではありません。


日本では登校拒否と言うと、ネガティブに捉えがちですが、その子が勉強そのものを否定しているとは限りません。何らかの理由で、特定の環境に適応できないとしても、その子どもの全ての可能性を否定する事はできないのです。


先週、「松下電器・学習研究社、小学低学年向けデジタル学習塾開始」と言うニュースがありました。小学校低学年向けに、学習教材をオンライン配信するというものです。


面白いのは、子どもがパソコンに向かって一人で勉強するのではなく、教材をいったん紙にプリントして、親と一緒に会話しながら学べるように工夫したという点です。


教育と言えば、教室でみんなと一緒に学ぶものと決まっていましたが、日本でもホーム・エデュケーションが、教育の一つの方法として認知される時が来るでしょうか?


「学問に王道なし!」


教育の可能性を広げていくことによって、子どもたちの未来も、大きく広がっていくのではないでしょうか?

347.パーム普及作戦小学生編8: 教育用パーム・ハンドヘルド (2004/05/21)

パーム・アプリケーションが揃ってきましたので、今度は教育用パーム・ハードウェアを考えてみましょう。


パームを個人所有を前提で考えるか、他の生徒と共用することを前提で考えるかによって、ハードウェアの仕様に違いが生じます。343.と344.の雑記で紹介した例でも、個人で購入することを奨励してはいますが、基本的には共用しているようです。


個人で管理ができる年齢になれば個人所有も良いかもしれませんが、小学生の場合は共用の方が便利でしょう。教師によってインストールされたアプリケーションを把握することができますし、予め授業に応じたセットアップをしておくことができます。充電やトラブルに対するメインテナンスも、まとめて行うことができます。


パーム本体は、落としても壊れないような筐体と液晶画面が必要です。またポケットに入れて持ち運ぶ訳ではありませんから、あまり小さくする必要はありません。また1日中使ってもなくならない充電容量が不可欠です。


CPUやメモリーは、どのようなアプリケーションを使うかによって変わってきます。画像や音声を扱うのならば高速CPUと大容量メモリーが必要になります。しかし、何と言っても予算と相談することになるでしょう。


教師とのコミュニケーションは、赤外線かあるいは無線LAN、またはブルートゥースが必要になります。いずれにしても、多くの生徒が一斉にビームしてくるのを受け取ることができるように、天井付近にアンテナ赤外線センサーを設置する必要があるでしょう。


さて、教師用のパームですが、こちらは教室だけでなく常に携帯して、少なくとも1年間のデータを保存できなければなりません。CPUやメモリーは最強のものを奢ることが必要です。生徒たちは、「いつかは、あのパームを自分も手にするんだ!」、と羨望の眼差しを向けるのです。(教師は置き忘れないように、注意しなければなりません。)


教師は、教員室のパソコンとパームを連携して、ダウンロードやバックアップを行います。クレードルは、教師用のパームと生徒用のパームすべてを同時に搭載でき、充電バックアップ故障診断アプリケーションやデータのインストールを行います。アタッシュケース型のクレードルなら、そのまま教室まで運べます。


1クラス分の生徒用パーム、教師用パーム、パソコン、クレードル、教室の受信設備などを一つのパッケージにして、学校に導入するのです。学年に応じたアプリケーションも、カリキュラムと共にパッケージすれば、速やかに授業に展開する事ができます。


これまで専用教室に導入してきたパソコンは、「パソコンのための授業」が必要でした。パソコンを使うこと自体が目的ならそれでも良いのですが、ITは道具(ツール)として利用されなければ意味がありません。


これからは、「授業のためのパーム」を導入しましょう。パームを授業に活用することによって、効果的な授業を、教師の負担を軽減しながら実現し、生徒は興味を持って授業に取り組むことができるのです。


学校教育におけるIT化が、今始まるのです。

346.パーム普及作戦小学生編7: 教育用パーム・アプリケーション (2004/05/20)

海外の例の中にも、いくつかの教育用パーム・アプリケーションが登場していましたが、日本の教室で使うとしたら、どのようなアプリケーションがあれば良いでしょうか?


大きく3つに分類してみましょう。まず教材としてのアプリケーション、次に辞書や図鑑のようなリファレンスとしてのアプリケーション、最後に授業をサポートするアプリケーションです。


最初の教材として使うものには、ひらかな・かたかなの書き方を覚えるものや、九九の練習から始まって、足し算、引き算、掛け算、割り算の練習をするものが考えられます。


仮名の練習が終われば、漢字の学習が始まりますが、学年が進むに従って学習する漢字の数も増えてきます。パームを使って書き順をなぞって練習したり、漢字を表示して音読み・訓読みを入力したり、熟語を作成したりするアプリケーションがあれば、効率よく覚えることができます。


漢和辞典とリンクすれば、画数部首字の成り立ちなど、多くのことを同時に学ぶことができます。


実は、日本の初等教育で多くの時間を費やしているのが、漢字の勉強です。これを如何に効率よく勉強することができるかが、教育改革の重要な課題と言えるでしょう。


漢字の勉強を効率よく行えば、同じ教育内容でも時間的ゆとりを生み、英語などの時代の要請に合った内容を無理なく組み入れていくことができるのです。


漢字と同様に、難しい言葉も国語辞典とリンクしていれば、同音・同義語や参考文例等を含めて参照することができます。


パームのアプリケーションで実現すれば、学年に応じた難しさの国語辞典を使うことができるでしょう。今は、小学校に間に1冊かせいぜい2冊の辞典を使うようですが、学年に応じて字の大きさや説明の難しさを変えたバージョンを用意することもできます。


計算の練習も、パームのアプリケーションなら、多くのバリエーションを揃えることができます。毎日の結果を貯えておき、平均点やかかった時間などを記録することも簡単に出来ます。


これら以外にも、時計の読み方カレンダーの使い方度量法の勉強ことわざ辞典、地雷の伏せ方やのろしの上げ方(これは落語でした?)、等々、いくらでもパーム・アプリケーションを利用した教材を用意することができるでしょう。


リファレンスとしては、漢字辞典国語辞典以外にも、理科年表歴史事典、あらゆる図鑑の類から地図に至るまで、多くのものが考えられます。


今までの授業では、辞典や図鑑を授業中に参照することは、スペースの関係で無理がありました。掌のパームなら、狭い教室の机の上で十分です。


最後の授業をサポートするアプリケーションですが、前にも出てきた"Classroom Wizard"のような、教師と生徒のコミュニケーションツールが必要になります。


テストを迅速に実施し、結果をすぐさまサマリーする事ができる事は、手によって採点したり集計していたのに比べて、教師の生産性の向上に寄与するでしょう。


また、生徒がどの問題をどのように間違えたかがすぐに判るため、弱点に絞って重点的に指導することが可能になります。


出席を採ったり、生徒に連絡事項を伝えたりすることも、これまでより簡単で確実に行うことができます。


さらに、教師の為のアプリケーションとして、生徒情報管理年間の行事管理成績の統計的処理レポート作成等々、パソコンとの連携を利用して様々な用途に使うことができます。


小学校から中学校、高校まで、ほとんどの学校教育の場でパームは有効な教育ツールとなるでしょう。パームを利用することによって、これまでより授業を効率的に行うことができ、教師の負担を減らすことができます。


そして最も重要なことは、生徒がパームを使うことによって、「勉強することが楽しくなってくる」ことなのです。