もう30年近く前になるでしょうか。当時、国鉄の新快速は、京都から大阪まで32分ぐらいで走っていたと思います。現在の130Kmで突っ走る新快速でも29分掛かりますから、相当速かったと言えるでしょう。
もっとも今は高槻と新大阪に停車しますが、当時は京都・大阪間はノンストップでしたから、速度的には今より遅かったのでしょうが、それでも、同じ区間をノンストップで走る特急列車を、途中で追い抜いてしまう程でした。「特急料金を払っている列車を追い越すとは何事だ!」と、問題になったこともありました。
一方、迎え撃つ阪急、京阪もスピード競争の真っ只中でした。しかし、停車駅が多いこともあり、京都・大阪のそれぞれのターミナル駅まで、36分から40分と言ったところでした。
ダイヤだけを見れば、国鉄が一番速いのははっきりしています。しかし、出発地点と目的地によっては、どの鉄道を使うのが一番早いか判らないものです。
各鉄道間のスピード競争の激しさが増す中、ある鉄道関係の雑誌では、ひとつの実験をすることにしました。実際にある出発地点からそれぞれの鉄道を使って目的地に向かい、どの鉄道が一番先に着くかを競争したのです。
スタートを正午とし、出発地点は京都市役所、目的地は大阪市役所でした。
京都市役所は、一番繁華な河原町三条・四条のすぐ北にあり、京阪の三条駅まで徒歩7分、阪急の河原町駅まで徒歩10分の距離にあります。一方、国鉄京都駅まではバスに乗らなければならず、30分以上は覚悟しなければなりませんでした。
また、大阪市役所は淀屋橋にあり、京阪淀屋橋駅からはすぐのところにありますが、国鉄と阪急は、地下鉄御堂筋線を一駅乗らなければなりません。
3人の雑誌スタッフが、正午ちょうどに京都市役所前をスタートして、それぞれの駅から電車に乗り、大阪市役所前で再び集合したのですが、果たしてどのルートが一番早かったのでしょうか?
結果は、阪急が一番早く、次に京阪、最後は国鉄だったと思います。一番有利だと思われた京阪は、ダイヤの関係で出発駅での待ち時間が長かった為に、2位止まりになったようです。また、全体としてはどのルートでもそれ程大きな差がなく、1位と3位の差は10数分だったと思います。
さて、あれから30年近く経った今、同じ競争をすればどうなるでしょうか?「ジョルダンの乗り換え案内」で京都市役所から大阪市役所をシミュレートしてみました。各市役所の最寄りの地下鉄駅まで、徒歩5分とした結果は次の通りでした。
- 京阪 13:07到着
- JR 13:14到着
- 阪急 13:18到着
今回は阪急の始発駅での待ち時間が長くなってしまい、不利になってしまいました。JRが2位に食い込んだのは、車両の高速化もさることながら、京都市地下鉄が開通したおかげで、JR京都駅までの時間が大幅に短縮された効果が大きいようです。
目的地に早く到着することは、交通機関にとって大切なことですが、それ以外にも駅の利便性や駅構内の移動のしやすさ、運行の定時性や車内の快適さ、リーズナブルな運賃など、鉄道を選ぶ上で重要な要素はいくつかあります。
車両の高速化だけに目を奪われるのではなく、鉄道システム全体の調和を取りながら進歩することによって、安全で快適な交通システムを目指してもらいたいものです。