ロバート・モンダヴィのワイナリーのすぐ斜め向かいに、オーパス・ワン(Opus One)はあります。今のカリフォルニアワインを語る上で、オーパス・ワンは欠かすことができません。
カリフォルニアワインの父と呼ばれるロバート・モンダヴィと、フランスのボルドー・シャトーワインのバロン・フィリップの、ジョイント・ベンチャーとして紹介されてからまだ4半世紀しかたっていないにもかかわらず、カリフォルニアワインの中で不動の地位を確立しています。
2人が1970年にハワイのワインコンベンションで出会ったのが、共同事業のきっかけであったと言います。その8年後、ボルドーに集う2人が、事業の骨子を決めるのに1時間もかからなかったといいますから、よほど意気投合したのでしょう。
ハイウェイ29号線から眺めるワイナリーの建物は壮観です。神殿や古墳に似ていると言われるようですが、サンフランシスコの銀行なども手がけた建築家スコット・ジョンソンによる建築物は、ゲートを車でくぐることを一瞬躊躇させるほどの存在感に満ちています。
内部に入ると落ち着いた雰囲気で、どこかの豪邸に招かれたかの錯覚に陥ります。オーパス・ワンのテイスティングは、開始時間がグループごとに決められ、時間が来るとモダンな大理石張りの空間に案内されます。
グラス1杯、25ドル!普通なら「高い!」と言って帰るところですが、「オーパス・ワンに出会えるだけ幸せである」とまで言われるそうですから、ここまで来たら奮発してみましょう。
ロバート・モンダヴィで試したワインをさらに研ぎ澄ましたかのような、見事なCabernet
Sauvignonです。華やかさはこちらが勝っているでしょう。なるほど確かに、ワインの味や香りを味わう以前に、幸せな気分になってきます。
テイスティングに使われていたワインは、1999年と2000年のものでしたが、最近のビンテージで優れているのは1995年や1997年のものとの事で、これはナパのどのワイナリーでも同じ事を言われましたので、カリフォルニアで作柄が良かった年なのでしょう。
ここのワイナリーで試飲している他のお客さんは若い人たちが多く、家族連れはほとんどいません。ワイナリー・ツアーの途中に気軽に立ち寄るようなワイナリーではないようです。確かに、お土産に1本買って帰るというのも気安くできる訳ではありません。その代わりにオーパス・ワンのグラスが気に入ったので、記念に買い求めて外に出ました。
きれいに整備されたぶどう畑が見渡せる丘の上でしばらく記念写真を撮っていると、テイスティングルームで一緒だったお客さんたちがリムジンに乗って帰って行かれました。
この建物は建築的な美しさを誇るだけではありません。ワインの製造過程において、通常使われているポンプの代わりに、重力を利用して自然に落下させる様に設計されているそうです。ワインを丁寧に扱うことによって、華やかさが増すのだそうです。
ワイン作りの理想を求め惜しげもなくお金を注ぎ込み、コンセプトをそのまま具現化したこのワイナリーがこれから長い年月を刻んでいく時、歴史に残るすばらしいワインを残していくに違いありません。