94.印鑑万能主義 (2003/05/09)

asahi.comで「印鑑万能主義」を改めようと言う動きについての記事が載っています。確かに、印鑑に対する不安と言うのは、誰しも持ち合わせているのではないでしょうか?特に、実印銀行印は、盗まれたり偽造されたりして悪用された場合、ほとんどは被害者が泣き寝入りする事になるのではないでしょうか?


特に最近では、写植技術によって、印鑑の印影から新たな印鑑を起こす事が容易ですので、印鑑を持っているからと言って、本人であることの証明にはなりにくくなってきています。しかし、記事の中で、「欧米のように、重要な契約は第三者立ち会いのもとで署名すれば、印鑑は不要のはずだ」と言われていますが、印鑑より署名の方が安全と言えるでしょうか?


不動産の売買の時を例にとって、考えてみたいと思います。日本では、不動産を売買する時、役所に印鑑登録をして印鑑証明を受け、同じ印鑑によって契約をします。これによって、本人が契約した事を証明するのです。印鑑証明書の手続きを考えると、それほど安全であるとは言えません。


欧米の場合、例えばオーストラリアの不動産売買を日本で行う場合、契約する本人がパスポートなどの本人を証明するものと共に、権限を与えられた人、例えば総領事の前で、サインをします。この事によって本人が契約した事を証明します。面白いのは、オーストラリアの物件の場合、ニュージーランドや英国の公館でも、同様に署名証明を受ける事ができることです。


米国に住んだ時、パーソナルチェックのサインに悩みました。いつも同じサインが出来るように、練習もしましたが、銀行では実際はそれほど厳密に確認はしていないようです。印鑑もサインも、それ程安全とは言えないように思います。


そこで、やはり電子的に本人確認できる方法が望まれます。世界中で共通した技術によって提供されれば、大きなビジネスチャンスです。パームで指紋を読み取り、赤外線ビーム!!ぐらいでは、いまいち信頼性に欠けますか。もう少し、パームの技術が進歩する必要があるようですね。

93.2画面特許 (2003/05/08)

日経エレクトロニクスの最新号に、2画面特許の記事が載っています。携帯電話やPDAは言うに及ばず、ノートパソコンやDVDプレーヤーまで、その対象に含めてしまうような特許です。


この特許の内容は、WEB上で”2画面特許”で検索すれば出て来ますが、その特許の内容と共に、出願の歴史も重要になるようです。


この特許が、日本の有力メーカーによって、無効にされるのか、あるいはこの特許に屈してしまうのか、これから注目していきたいと思いますが、日経エレクトロニクスの記事を読んでいて、2つほど疑問が起こりました。


この特許は、全文修正を行っています。確かに修正は、最初の出願時である1992年の出願の範囲を超えなければ、できると言うことになっています。2画面と言う言葉を、最後の全文修正時に請求項に入れたようですが、この出願の範囲を超えるかどうかは、たとえ2画面という言葉で、物事を限定する場合でも、実際の社会に於いては、2画面という言葉によってより広く解釈できるようになる可能性があると思います。


本来、PDAを想定していたと思われる、ペン入力デバイス(ニュートンの発表の時期と一致する)の記述があったのを、全文修正を繰り返す間に、2画面と言う言葉にすり替わっている様ですが、これほど内容が変わる、ましてや対象にする機器を変えるような修正が、1992年に遡って適応されるなど、あり得る事なのでしょうか?


使う言葉が代わる場合、それによって範囲が狭められるか、逆に広がるかは、状況によって変わってきます。修正をする場合、もっと厳格な制限を設けるべきだと思います。


書面を十分準備する時間がない場合でも、出願できるようにすると言う趣旨も分かります。しかし、それを良いことに、書面作成のテクニックと称して、一般常識から外れたアンフェアなやり方が、まかり通っているのではないでしょうか?


もう一つの疑問は、担当の弁理士が、全文修正を入れたときに、「既に多く出回っていた2画面付きの携帯電話を見て、思い付いた」と語っていることです。このことは、現在普及している物を、過去に遡って特許請求できると言うことを、弁理士自ら証明している事になります。


そのようなことを公言した特許が、このまま生き続ける事ができるのでしょうか?実に面白い特許事例になるでしょう。6月に特許公開されるそうです。

55.補足:なぜ2000円札は流通しないのか? (2003/03/29)

昨日の雑記は、書いている時から思っていたのですが、最後まで読んでくれる人がいるかなと思っていました。それから、若干注釈をしたいところがありますので、補足として追加させていただきます。


まず、昨日の長い雑記を読む程暇がなかった方のために、昨日の結論をまとめておきます。(読まれた方が暇だと言っているわけではありません。)まとめてみると:



  • なぜ2000円札が流通しないのか?
  • 貨幣の種類を決めるのは、指数関数的に金額を捉えると良い。
  • 1000円と10000円の間で、2000円札は理想から離れている。
  • よって、2000円札が流通するのは困難である。

と言う感じです。2000円札が流通しないわけは、いくつかあるのでしょうが、その中の一つとしてこのようなことが考えられるのではないかと言うことです。


もし、最後まで読まれて、疑問に思われた方がいらっしゃったかもしれませんが、1000円と10000円の間の、理想的な貨幣を今更求めて見ても意味がなく、5000円札が既に存在している事を前提にしなければならないと言う意見も、あると思います。


実際その通りなのですが、1000円から10000円で考えてみることで、2500円札の可能性、5000円札の流通量が少ないことの説明、さらにUSの25セント硬貨に結びつけたかった、などの理由で敢えて5000円の存在は考慮しませんでした。


1000円が103で、5000円が103.7ですから、その指数的な中間は103.35で、2239円になります。理想的な金額は、昨日より下がりましたが、現実的には、やはり2000円札か2500円札になります。


2000円札が使えると、確かに支払いの時の貨幣の数は減らすことができます。そこで、昨日は”それ程改善されない”とか、”大きくは減らない”などと書いているのです。しかしそれより、2500円札の方が効果があると言うことを示しておきたかったのです。


2000円と言う単位は、今までの1,5,10という体系になかったものですから、使い慣れて行くには、数年はかかるのでしょう。それも流通していての話ですが。ユーロには20と言う単位の貨幣がありますが、以前からフランスの20フラン硬貨などがあったので歴史があります。


それから、指数関数的に貨幣の種類を揃えると効率が良いというのは、確か聖徳太子から福沢諭吉に変わったときに、新聞か雑誌に解説されていました。


2000円札が使われない理由の一つに、自動販売機や、ATMの未対応がありますが、やはりこれが一番大きい理由かもしれません。流通しなければ、いつまでも対応されません。まず無理矢理にでも、流通させてしまう事が必要ではないでしょうか?


昨日の10%増量は無理でも、例えば映画館で、1800円の映画とポップコーンと飲み物で、2000円札で払った人だけ2000円ポッキリなんてのはできそうな気がします。しかし、結局そこまでして流通させる必要がないと誰もが思っているのかもしれません。

54.なぜ2000円札は流通しないのか? (2003/03/28)

“35.なぜデビットカードが普及しないのか?”“53.なぜクレジットカードが使われないのか?”と来ましたので、その次はキャッシュについて語らなければならないでしょう。つまり紙幣・硬貨で失敗の代表として、2000円札がなぜ流通しないかと言う疑問に、私なりに答えてみたいと思います。


2000円札は使いにくいという意見をよく耳にしますが、なじみがない券種は、支払いの時に計算するのが面倒ですから、使いにくいのは確かです。


そもそも日本の紙幣や硬貨は、1、5、10の単位のものしかなかったのですから、急にの単位を使いこなすのは難しいですね。


紙幣や硬貨の種類は、どのように決めるのがよいのでしょうか?要するに、支払いが簡単にできればいいのですが、そのためには2つの条件があります。



  1. できるだけ少ない数のお金で払えること
  2. できるだけ少ない種類のお金を用意すること

例えば、798円を支払わなければならないとき、798円玉があれば1つの硬貨で支払えますが、同様に392円とか945円を支払うには、392円玉や945円玉を作らなければなりません。お金の種類が多くなりますし、いつも財布にすべてのお金を持っておくのは困難です。


あるいは、すべて1円玉で支払えば、お金の種類は1種類で済みますが、798円を支払うのに798個の硬貨が必要になります。数多くのお金を持ち運ばなければなりませんから、財布が大きくなってこれもまた不便です。


つまり、いろいろな金額を、できるだけ少ないお金の数と種類で表現できればよいのです。


今、1円と10円硬貨だけが既にあります。それらの中間的な硬貨を、新たに作るとしたら何円の物を作ればよいでしょうか?


そこで、次のような10円までの簡単なシミュレーションをやってみました。


既に1円、10円の硬貨はありますから、新しい硬貨は、2円から9円までのいずれかになります。


その新しい硬貨があったとき、何個の硬貨で、それぞれの金額が払えるかを表にしてみました。少ない数の硬貨で払うことができる方が、良いとします。


”1円のみ”は、1円硬貨と10円硬貨しかない場合、”2”から”9”はそれぞれの硬貨を新しく作った場合の、支払う金額ごとの必要枚数を示します。
























































































































































支払う金額 1円のみ 2 3 4 5 6 7 8 9
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
2 2 1 2 2 2 2 2 2 2
3 3 2 1 3 3 3 3 3 3
4 4 2 2 1 4 4 4 4 4
5 5 3 3 2 1 5 5 5 5
6 6 3 2 3 2 1 6 6 6
7 7 4 3 4 3 2 1 7 7
8 8 4 4 2 4 3 2 1 8
9 9 5 3 3 5 4 3 2 1
10 1 1 1 1 1 1 1 1 1
合計枚数 46 26 22 22 26 26 28 32 38




この結果から見ますと、2円玉や5円玉を作るより、3円玉か4円玉を作ったほうが、少ない数の硬貨で支払うことができるようです。


ここでは、1円から10円までを支払う場合について考えましたが、10円から100円、100円から1000円、1000円から10000円まででも同様です。1000円から10000円の場合は、1000円未満は硬貨で支払うので、1000円単位で考えればよく、3000円札か4000円札を作るのが一番支払う枚数が少なくなります。


実は、この支払いを少ない硬貨・紙幣で支払うと言う問題は、金額を指数であらわすと簡単に求めることができます。まず、最小の貨幣を1円、最大の貨幣を10000円と決めた時、それぞれ100と104になります。次にあれば便利な貨幣は、指数的に1円(100)と10000円(104)の中間である、100円(102)になります。


その次にあれば便利なのは、1円(100)と100円(102)の中間の10円(101)と、100円(102)と10000円(104)の中間の1000円(103)です。ここまでで、1円、10円、100円、1000円、10000円が揃いました。


さて、その次にあれば便利なものを考えますが、1000円と10000円の間を例として考えると、1000円(103)と10000円(104)間で103.5になりますから、1円未満を切り捨てると3162円です。


ただ、実際の問題として、他の額面の貨幣と交換する時に、単純な整数枚で交換できなければ互換性に欠けますので、2000円、2500円、5000円が妥当な候補になります。


5000円(約103.7)、2500円(約103.4)、2000円(約103.3)のうち、理想である103.5に一番近いのは2500円になります。2000円と5000円は同じだけ理想から離れています。


もし、2500円札を発行していれば、支払い枚数を減らすことができたでしょう。しかし、2500円はどうも中途半端です。日本では、クォーター(4分の1)は昔からそれ程親しみがありません。最近になって会社の業績が四半期ごとに発表されていますが、これもUSに合わせたのでしょう。ですから、2500円札は残念ながら没です。


そうすると、5000円札はすでにありますから、2000円札しか新しく発行できる券種はありません。そこで2000円札が発行されたと言う事だと思います。そして、その後どうなったかは皆さんご存知の通りです。なぜ2000円札は流通しないのか?これでやっと結論にたどり着きます。


もうお察しの方もおられると思いますが、さっきも指摘したとおり、2000円札と5000円札は、紙幣の券種の理想から同じだけ離れているのです。つまり、2000円札が新たに発行されても、支払いに必要な枚数はそれ程改善されないのです。このことが、2000円札が流通しない原因のひとつであると考えられます。


確かに、1000円札、5000円札、10000円札に加えて、2000円札が増えたのですから、支払う時に使う紙幣の組み合わせ方が増えたのは確かです。しかし、結果として2000円札ができたからと言って、支払う紙幣の枚数は大きくは減らないのです。


もちろん、全ての券種がいつも財布に十分な数が用意されているとは限りませんし、おつりをもらう場合も考えなければならないでしょう。支払いの必要になる金額も、ランダムに発生するとは限りません。実際はもっと複雑な要因が絡むと思われます。


そもそも5000円札は、1000円札や10000円札に比べ、以前から流通量が少なかったのです。それだけ使いにくい券種なのです。そこへ、同じような2000円札を投入したのですから、今の結果は当然のことかもしれません。


敢えて、2500円札を発行していたら、どうなったかと言うことには興味があります。計算が難しくなるため、やはり使われなかったでしょうか?それさえ我慢できれば、2500円札の方が5000円札より流通していたかもしれません。


2000円を流通させると言っても、もともと素性の良くない券種ですから、自然と流通が増えるのは無理だと思います。やはりここは、キャンペーンでも張って、無理やり使ってもらうしかないでしょう。例えば、今なら2000円札が10%増量、2200円分の買い物ができるキャンペーンなどいかがでしょうか?一気に銀行に眠っている2000円札を流通させることができるのは請けあいます。無茶な話ですが。


ところで、ここまで読んでこられた方の中で、USの25セント硬貨(クォーター)のことを思い浮かべられた方も多いかもしれません。25セント硬貨は実際にも使いやすく、このためかどうか解りませんが、50セント硬貨はほとんど使われません。ただ、この4分の1ドルを使いこなしているアメリカ人には、使いこなせるだけの秘密があるのです。それは、また別の機会に書いてみたいと思います。

53.なぜクレジットカードが使われないのか? (2003/03/26)

まず始めに、”35.なぜデビットカードが普及しないのか?
(2003/03/11)
”におきまして、”USのクレジットカードは、支払いに金利が加算される”と書いておりましたところ、US在住の方からメールを頂きまして、指定された期日以内に支払いが完了すれば、金利負担はないとの指摘を頂きました。確かにご指摘の通りですので、ここに訂正させていただきます。ご指摘ありがとうございました。


さて、表題の件ですが、この前はデビットカードがなぜ使われないかで、今度はクレジットカードかと思われるでしょうが、実は私もクレジットカードは、もっと使われていると思っていました。


日経BizTechに3月19日付けで、日本のクレジットカード利用の少ないことが、取り上げられています。記事によりますと、アジア・太平洋地域で、使うお金に対するクレジットカードの利用率が、韓国がトップで58%オーストラリアが27%、台湾が14%と並んでおり、対する日本は7%であると言うことです。


これには、いろいろと理由があるのでしょうが、私の経験上、クレジットカードを使う上ですっきりしないところを、上げてみたいと思います。


まず第一に、お店の人がいやそうな顔をする事があります。さすがにデパートなどでは、そのようなことはありませんが、安さを売りにしているような店では、できれば現金でお願いしたいと言われたりします。


第二に、同じマークが付いていても、使えたり使えなかったりすることがあります。よくある話は、ビザマークが付いていても、ビザジャパンのビザなら良いが、それ以外のビザは駄目と言われたりします。最近は、このような話は減ってきているかもしれません。


第三に、特にガソリンスタンドに多いのですが、現金より、クレジットカードを使う方が高くなることがあります。これも、最近では現金よりクレジットカードの方が安いこともあり、一概には言えませんが、値段が支払い方法によって変わるというのは、あまりよいことではありません。


まあ、このようなことがクレジットカードの普及を、妨げるほどのことではないと思いますが、使いづらいなと思う事があるのも確かです。


クレジットカードも、入会の勧誘や利用による特典を、盛りだくさんに行っていますが、思ったようには効果を上げていないようです。パームの普及も、なかなか容易ではありませんが、いろいろなアイデアを出しながら切り開いていこうではありませんか!と、かなり無理がありましたようで、、、