226.デジタル対応した標準ズームレンズ (2003/10/19)

最近は、硬派で貫くアサヒカメラも徐々にデジタルカメラの記事が増えてきています。アサヒカメラ11月号にデジタルカメラに対応した高級標準ズームレンズの比較が掲載されています。


28ミリから70ミリと言う、標準ズームレンズの中でも倍率の低いレンズは、入門用の廉価なレンズからプロ仕様の高級レンズまで、バリエーションの幅が広いのですが、その中で、F2.8クラスのレンズは各カメラメーカーの看板と言えるもので、技術を競い合った優秀なレンズが揃えられてきました。


解像度も、1ミリ当たり200本(画面中心の開放時)を誇る製品が多くあり、その10万円を超える価格と共にプロ用として標準ズームが一般的になって以来、一眼レフカメラの中心的存在として君臨してきました。


そのレンズに、最新のデジタルカメラ対応の設計に直したものが増えてきています。デジタルと言っても性能の基準が大きく変わるわけでないのですが、色収差に関してフィルムよりさらに精度が要求されるようです。


さて、キャノンやニコンと言ったカメラメーカーに混ざって、最近OEMで力を付けてきたレンズ専門メーカー製のレンズが注目されています。特にタムロンは性能と価格付けが突出しており、注目されているそうです。


もっと昔、まだズームレンズに馴染みがなかった頃、レンズ専門メーカーと言えばサンズームが有名でしたが、その後サンが無くなると同時に、タムロン、シグマ、トキナーの3大ズームレンズメーカーが台頭してきます。


そして、今やキャノンやニコンに匹敵するレンズを、それらの3分の1程に価格で提供するようになったのを見て、時代の変遷を感じないわけには行きません。


デジタル時代になって、これまでのレンズの性能が格段と向上したそうですが、果たしてその実力の程は如何なものでしょうか?

210.デジタルムービー+カメラ (2003/10/02)

「きれいな写真とムービーを一台で楽しめるカメラ」と言うキャッチフレーズで、サンヨーから「ザクティ」の愛称で、デジタルムービーカメラが発売されています。1998年から発売されていたムービーカメラシリーズに、記録媒体としてSDカードを採用した機種を追加したそうです。


「写真撮影をメインにしながら、動きと音で伝わる感動はムービーで手軽に残す」と言うコンセプトが、サンヨーの顧客アンケートの結果強い支持を受けているそうです。今回は、特にSDカードを記録媒体に選んだことで、150グラムほどの重さを実現し、携帯電話を同じ感覚で持ち運ぶことができると謳っています。


確かに150グラムまで軽くなれば,あまり持っていることを意識しないで携帯することができますから、撮影の機会が増えると思います。


SDカードに記録できる動画の撮影時間は、512MBのSDカードを使って30分であり長いとは言えませんが、今後1GBのSDカードが登場すれば1時間になりますから、旅行はともかく1日単位の撮影では十分かもしれません。


動画と静止画は、デジタル方式においてはほとんど同じメカニズムによって撮影することができますから、ひとつの本体に両方の機能を搭載することは、自然の成り行きかもしれません。


ただ動画と静止画では、画質に対する要求度が異なります。静止画では欠点になってしまうブレやボケも、動画の場合はそれほど目立ちません。また、画素の要求度も違います。静止画に合った画素数を確保すると、動画ではオーバースペックになってしまいますし、逆の場合も考えられます。


今回のサンヨーの製品は、どちらかと言えば得意のデジカメに機能の中心を置き、動画を追加したと言うコンセプトのようです。今や携帯電話についている程度のデジタルカメラでは、あえて機能として追加する事もありませんから、正しい選択だと思われます。


特に、デジタルカメラでは世界の3割のシェアを持っているサンヨーの強みを生かして、ムービーカメラにも進出すると言う戦略は理解できます。


では、これが売れるかと言うことになると、なかなか難しいのではないかと思います。そもそも動画と静止画を取る場合、撮影する人の心構えが異なっています。おそらく、このデジタルムービーカメラを持参して何かの撮影に出かけたとすれば、撮影の9割方は静止画のみで、動画はせっかくだからとわざとらしく取った数十秒のものがある程度ではないでしょうか?


人はカメラを持っているときは、自分の周りの物事のを意識します。面白い風景や顔に表情があればシャッターチャンスと考えます。一方ビデオの場合は、動きに注目しています。個々の形の面白さではなく、流れに注目しています。


世の中には器用な人がいて、どちらも同時に考えられる人もいるでしょうが、普通はどちらかひとつしかできないでしょう。ですから、このようなムービーカメラを持っているよりも、ビデオならビデオ、カメラならカメラとはっきりした方が集中して撮影できますし、その方が楽しく撮影ができるのではないでしょうか?


もちろん、旅行にビデオとカメラの両方を持って行きたいが、2つ持っていくのは無理がある場合は、単に軽くかさ張らないと言う利点が生きてくるでしょう。


小型ビデオを買うつもりで、デジカメも付いて来ると言う乗りの人には、今回の製品の75,000円と言う価格は、ビデオ+カメラとしてはいい設定かもしれません。


世界中で、カメラ付き携帯電話の出荷台数(世界で2500万台)が、デジタルカメラ(2000万台)を上回ったと言うニュースがありましたが、デジカメ、デジタルビデオカメラ、カメラ付き携帯電話の間の争いは、今後も熾烈になってくると思われます。(でも作っているのは全て同じメーカーですから、それほど熾烈ではないでしょうけど。)

207.そろそろパソコンに変革は来ないかな? (2003/09/27)

パルマガで、マイクロソフトの話題が、いろいろと掲載されています。そのどれもが、それぞれ何かしらの問題を含んでいるように思います。


とくに独占的にパソコンのOSを世界中に提供していることに寄る問題は、私達が考えている以上に大きな社会問題だと思うのです。


進歩と言うものを、取りあえず美徳であるとするならば、独占している間はおよそ進歩などあり得ない訳です。成功体験をした企業は、同じ器の中で、あたかも新しいかのごとく新製品を出して見せますが、それらが本当に新しかったことは過去にはほとんどありませんでした。


勿論、過去には江戸末期のように、海外からの新しい刺激がなかった時代に日本の文化が発展したと言うこともありましたが、結果的には欧米に後れをとってしまったのです。


パソコンを考えるとき、Windowsパソコンは大きな功績を残しました。Windowsほど世間に知れ渡ったコンピューターはなかったでしょうし、一般大衆にコンピューターの操作を可能にさせたのは、Windowsと言うOSがあったから可能になったことでしょう。


物事の始まりには、あまり多くの選択が可能だと、初めて取りかかる場合に迷いを生じます。この迷いがくせ者で、不安を抱えた初心者はこの迷いを解決できるほど知識や信念を持ち合わせていないことが多く、挫折する理由の多くはここにあります。


つまり、物事の始まりの時期には、半ば独占された業界標準的なものがあった方が、スムーズに進むわけです。


しかし、事が進むにつれて、標準に独占されたままだと、次の進歩が見えてこない、新たな動き(Move)に対応できないと言う弊害が顕著になってきます。


現在はWindowsパソコンが、進歩を妨げている弊害が顕著になっているのではないでしょうか?今が、レガシーパソコンに別れを告げるときかもしれません。


しかし、新しいものを目指すには、ビジョンが無ければなりません。今の問題点を洗いざらえ、それらの欠点を見事に修正するのはもちろんのこと、新世代のOSに希望を与える斬新な新機軸を搭載した、新しい時代を切り開くOSでなければなりません。


今のWindowsは、昔の大型ホストマシンが使っていたDOSに縛られているように思います。昔、IPLやブートストラップ、終了処理やファイルのクロージングなど大型機が必要としてきたことを、パソコンに置き換えただけではないのでしょうか?


例えば、パソコンからハードディスクを取り去ることが出来るかどうかが、新世代のOSに問われていると思います。


PalmSourceの今後の展開に期待したいと思います。

197.車載センサーで渋滞情報提供 (2003/09/18)

NIKKEI NETに、「ホンダ、車載センサー使い独自の渋滞情報提供
」と言う記事が掲載されています。これまでの渋滞情報は、道路交通情報通信システム(VICS)のような、道路側から発信される情報を利用していましたが、この新しいシステムは、通行中の自動車自身が情報を発信し、センターに電話回線で送ることによって、渋滞情報を共有しようと言うものです。


道路の渋滞状況を知ろうとすれば、道路を通行する自動車を観測し、同じ車が一定の区間をどのぐらいの時間をかけて通行したかを調べていました。つまり、渋滞情報を道路固有のの特性として捉えていました。


この新しいシステムは、カーナビゲーションシステムと連動させることによって、ある定められた道路の通過時間を記録し、そのデータを数多く集めることによって渋滞状況を把握しようとするもののようです。


これまでのシステムが、道路上にカメラや画像解析装置を配置しなければならなかったのに対して、どのような道路であっても、自動車が走りさえすれば自動的にデータが集まってくるのですから、インフラの整備にかかるコストを削減することが出来ます。


逆転の発想と言えるのでしょうが、既存のカーナビゲーションやGPS、無線通信技術をうまく組み合わせたシステムと言えるでしょう。


ただ、普及率がある程度上がってこないと十分な渋滞情報を集められないので、メーカー間で規格を統一し、素早くシステムを立ち上げていくことが必要になります。一定区間を1時間に数百台ぐらい通過すると、割と良い精度の渋滞情報が得られる様に思います。


ところで、渋滞情報を人々が利用してより空いている道路を見つけて走れば、渋滞が平均化するのは良い効果ですが、そもそも渋滞を解消する方策が十分に練られていないような気がします。


鉄道や航空管制に比べて、道路管制旧態依然たる方法に留まっているのではないでしょうか?平行した道路への流入を、運転者に意識させずに信号のコントロールで変化させ自然と回り道に迂回させるような、インテリジェント道路管制システムは実現できないものでしょうか?

196.デジタルカメラの新しい潮流 (2003/09/17)

9月16日にソニーが発表した新しいデジタルカメラ、「サイバーショット DSC-F828」のプレスリリースを見て、高機能デジタルカメラのひとつの標準形ができあがって来たと感じました。先立って発表されているミノルタ「DiMAGE A1」とともに、これからのデジタルカメラのひとつの潮流を形成して行くと思いました。


これらの2機種には、共通しているスペックがありますが、それは単なる偶然や模倣ではなく、これからの高機能デジタルカメラが必然的に備えなければならないスペックのように思います。


その共通したスペックとして、、



  1. レンズを固定式ズームレンズにし、焦点距離を35mmカメラ換算で28mm-200mmに設定したこと。
  2. 一眼レフ式ファインダーを使わず、TTL電子ビューファインダー視野率100%を実現したこと。
  3. デジタル画像処理によって多彩な機能を提供したこと。

の3点を上げることができると思います。


まず、レンズに関してですが、焦点面のごみの問題もあってデジタルカメラでは固定式レンズが望ましいのですが、交換できないため1本であらゆる撮影をこなす、オールマイティなレンズの搭載が必要になってきます。この両者が採用する、28mm-200mmという焦点距離は、それに最も相応しい選択だと思われます。


28mmより短焦点の24mm21mmになると、単により広い範囲が撮影できるだけでなく、その特殊な効果(デフォルメ)を積極的に使った広角レンズ特有の面白い写真を撮ることができます。しかし、ディストーションが顕著に表れ、画像の湾曲が不自然に見えることがあるため、一般的には使いこなすのが難しいと言われています。


また、200mmより長焦点になると、たとえば300mm400mmは、引き寄せ効果が大きいので、迫力のあるスポーツ写真や、遠近感を強調した立体的な写真が可能になります。しかし、肉眼で見るのとは異なる世界であるため、相応しい被写体を探すのにはそれなりの経験が必要になり、また通常の撮影においてはそれほど使う機会がないと言えるでしょう。


そもそも、一眼レフ魚眼レンズから超望遠まで使えますが、誰もがそのすべてを必要としているわけではありません。また、ライカレンジファインダーカメラなどでは、28mmからせいぜい135mmぐらいまでが常用レンズであり、逆に言えばこれまで人々に感動を与えてきた写真の多くは、その範囲のレンズで撮影されたきたわけです。


135mmでは、さすがに引き寄せ効果が少ないので、200mmまで伸ばしたのでしょう。35mmカメラに比べて、イメージサークルが小さくなるデジタルカメラでは、レンズを小さく設計できますから、無理なく7倍ズーム常用レンズとして搭載可能になったということだと思います。


2番目のTTL電子ビューファインダーは、一眼レフに今もこだわるメーカーにとっては悩むところです。これまで、一眼レフがカメラの最高峰であると宣伝してきたカメラメーカーにとって、それ以外のカメラを手がけることは方針の転換を意味します。ライカが、レンジファインダーカメラMシリーズを供給しながらも、一眼レフRシリーズを手がけたのと似ています。


ただ、電子ビューファインダーが100%視野率TTLで実現できるのに、わざわざ高く重い光学系を搭載する必要もないと思います。一眼レフのクイックリターンミラーは、振動と騒音をきたし、機械系に高い制動力を要求しますし、光学式のファインダーで100%の視野率を実現するには、コストがかかります。


しかも、その高価な一眼レフファインダーが見やすいかと言えばそうとも言えず、フォーカシングスクリーンを通して見る画像は、正に磨りガラスに映ったぼやけた像でしかありません。現在、一眼レフファインダーを搭載する機種を提供しているメーカーも、いずれは電子ビューファインダーになって行くと思われます。


最後のデジタル画像処理は、今後最も進歩が期待でき、デジタルカメラの新しい試みがどんどん提案されていくことでしょう。これまでのフィルム式のカメラは、ファインダーで絵作りをするため、ファインダーがカメラで一番重要でありました。しかし、これからは、デジタル画像処理による撮影後の絵作りが重要になってきます。


このことは、2番目のファインダーが重要でなくなってきたことにも関係します。以前は写真の基本的作業、すなわち合焦露出フレーミングにはすべてファインダーが重要な役割を担ってきました。フィルムに露光した時点で、写真の出来具合がほとんど決まってしまったからです。ファインダーの良し悪しは、写真の出来具合に決定的な影響力を持っていました。


しかし、デジタルカメラでは露光した後からでも、画像処理によって写真に変化を付けることができるようになります。ファインダーの性能より、デジタル画像処理のアルゴリズムに、写真の出来具合が左右されるようになって来ました。


デジタルカメラは、これまでのフィルム式のカメラで苦労した、フィルム感度の問題光源の適応性現像プロセスのばらつきの問題などを解決することもできます。またこれまでは、一部の趣味の世界であった暗室作業と同じ事が、画像処理プロセッサーによって誰にでも失敗なく行うことができるようになります。


このように、デジタルカメラはこれまでの銀塩カメラを置き換えるだけでなく、全く新しい写真表現を実現することが可能になるのです。これまでの一眼レフにこだわり続けるのではなく、デジタルカメラの可能性を理解し、十分に生かしきる技術を投入して行くメーカーだけが、生き残って行くように思います。


デジタルカメラの新潮流を感じたこれらの機種が、どのように市場を形成していくか、注目しています。