「きれいな写真とムービーを一台で楽しめるカメラ」と言うキャッチフレーズで、サンヨーから「ザクティ」の愛称で、デジタルムービーカメラが発売されています。1998年から発売されていたムービーカメラシリーズに、記録媒体としてSDカードを採用した機種を追加したそうです。
「写真撮影をメインにしながら、動きと音で伝わる感動はムービーで手軽に残す」と言うコンセプトが、サンヨーの顧客アンケートの結果強い支持を受けているそうです。今回は、特にSDカードを記録媒体に選んだことで、150グラムほどの重さを実現し、携帯電話を同じ感覚で持ち運ぶことができると謳っています。
確かに150グラムまで軽くなれば,あまり持っていることを意識しないで携帯することができますから、撮影の機会が増えると思います。
SDカードに記録できる動画の撮影時間は、512MBのSDカードを使って30分であり長いとは言えませんが、今後1GBのSDカードが登場すれば1時間になりますから、旅行はともかく1日単位の撮影では十分かもしれません。
動画と静止画は、デジタル方式においてはほとんど同じメカニズムによって撮影することができますから、ひとつの本体に両方の機能を搭載することは、自然の成り行きかもしれません。
ただ動画と静止画では、画質に対する要求度が異なります。静止画では欠点になってしまうブレやボケも、動画の場合はそれほど目立ちません。また、画素の要求度も違います。静止画に合った画素数を確保すると、動画ではオーバースペックになってしまいますし、逆の場合も考えられます。
今回のサンヨーの製品は、どちらかと言えば得意のデジカメに機能の中心を置き、動画を追加したと言うコンセプトのようです。今や携帯電話についている程度のデジタルカメラでは、あえて機能として追加する事もありませんから、正しい選択だと思われます。
特に、デジタルカメラでは世界の3割のシェアを持っているサンヨーの強みを生かして、ムービーカメラにも進出すると言う戦略は理解できます。
では、これが売れるかと言うことになると、なかなか難しいのではないかと思います。そもそも動画と静止画を取る場合、撮影する人の心構えが異なっています。おそらく、このデジタルムービーカメラを持参して何かの撮影に出かけたとすれば、撮影の9割方は静止画のみで、動画はせっかくだからとわざとらしく取った数十秒のものがある程度ではないでしょうか?
人はカメラを持っているときは、自分の周りの物事の形を意識します。面白い風景や顔に表情があればシャッターチャンスと考えます。一方ビデオの場合は、動きに注目しています。個々の形の面白さではなく、流れに注目しています。
世の中には器用な人がいて、どちらも同時に考えられる人もいるでしょうが、普通はどちらかひとつしかできないでしょう。ですから、このようなムービーカメラを持っているよりも、ビデオならビデオ、カメラならカメラとはっきりした方が集中して撮影できますし、その方が楽しく撮影ができるのではないでしょうか?
もちろん、旅行にビデオとカメラの両方を持って行きたいが、2つ持っていくのは無理がある場合は、単に軽くかさ張らないと言う利点が生きてくるでしょう。
小型ビデオを買うつもりで、デジカメも付いて来ると言う乗りの人には、今回の製品の75,000円と言う価格は、ビデオ+カメラとしてはいい設定かもしれません。
世界中で、カメラ付き携帯電話の出荷台数(世界で2500万台)が、デジタルカメラ(2000万台)を上回ったと言うニュースがありましたが、デジカメ、デジタルビデオカメラ、カメラ付き携帯電話の間の争いは、今後も熾烈になってくると思われます。(でも作っているのは全て同じメーカーですから、それほど熾烈ではないでしょうけど。)