404.電子プライスタグ用ディスプレイ (2004/10/28)

昨日のワールド・ビジネス・サテライトで、ブリヂストンが開発した電子ディスプレーを紹介していました。ブリヂストンのサイトに行ってみると、10月20日付のプレスリリースが掲載されています。


「電子粉流体」と呼ばれる素材を使って、一度表示してしまえば後は電源を切っても画像を保持し続ける事ができるそうです。電子ペーパーは多くの企業によって研究がなされていますが、タイヤメーカーのブリヂストンが電子ディスプレーとは、不思議な感じがします。


「電子粉流体」と言う言葉は、ブリヂストンの登録商標らしく気安く使えないのですが、言い換えると、「電気的に制御可能な流動性粉体」とでも言えましょうか。(あまり変わっていない!)


粉でありながら、液体と同じ様な流動性を持ち、電気に反応することから、画像を描くことが出来、なおかつ粉体であることから、電源を切っても画像を保持することが出来るそうです。


その他にも、優れた特徴として、高視認性、広視野角、高速応答性等があり、しかも基板の間にこの電子粉流体を挟み込むだけの簡単な構造で出来るそうです。


今回製品化された「電子プライスタグ用ディスプレイ」は、スーパーなどの商品陳列の棚にある値札を置き換えるもので、これまでのように手で値段を書く替える必要がなく、毎朝本社から一括して新しい値段に更新する事ができるそうです。


さらに、これから中大型のディスプレーを商品化して行き、法的な規制によって生産者や産地情報を商品にタイムリーに表示することも考えられているそうです。


これまでの液晶ディスプレーに比べて非常に薄いため、電子書籍などへの応用も考えられるでしょう。またPalmを始めとするPDAや携帯電話などに使えば、複雑な形のディスプレー、例えば円筒形のディスプレーがあったりすると新たな可能性が開けるかも知れません。本体すべてがフレキシブルなディスプレーで覆われていて、気分によって模様を替えることが出来れば、palm100の着せ替えカバーの未来版と言えるでしょう。


折り曲げる事ができるほど薄いディスプレーによる電子ペーパーは、これからの電子書籍などで必要とされる技術として注目されています。


新しいテクノロジーによって、全く新しい製品が実用化されることは良くあることです。このフレキシブルで低消費電力なディスプレーによって、人々に夢を与える製品が生まれて来ることを期待しましょう。

393.2画面特許の顛末 (2004/10/08)

もうかなり古い話しになってしまいましたが、「93.2画面特許 (2003/05/08)」でご紹介した携帯電話のディスプレーの特許の民事訴訟の判決が、9月16日に東京地方裁判所で言い渡されたと言うニュースが、「日経IT Pro」に掲載されています。


判決では、被告側のNECとドコモの言い分を認めたそうですが、すべての携帯電話ばかりでなく、DVDプレーヤーやPDAまでもが特許の対象になっていましたから、ほっと胸をなで下ろした関係者も多かったのではないでしょうか?


勿論まだエイディシーテクノロジー側が控訴する可能性もありますから、判決が確定した訳ではありませんが、取りあえず法外な特許使用料によって利用者が迷惑を被る事は避けることが出来そうです。


そもそもこの特許自体が胡散臭いものでしたから、当然の結果かも知れませんが、判決の理由があまり正確に伝えられていないので、どのように携帯電話が特許の対象から外れていると見なしたか、興味のあるところです。


当初この特許が申請された時には、ペン入力のPDAも対象になっていましたが、請求項の修正を行っていく過程で、当時人気が出だした2つのディスプレーを持つ携帯電話の的を絞った結果、最終的に2画面特許となった経緯があります。


つまり、2画面を持つ携帯電話が普及しだした後に修正された請求項に対して、裁判所がどのような判断を下すかを注目していたのですが、今回のニュースではあまり正確に報告されていないのが残念です。


いずれにせよ、携帯電話を始め電子機器でディスプレーが2つあるものは、難を逃れることが出来て一安心です。


特許は、すばらしいアイディアを広く公開し利用することによって、社会や生活を豊かにするのが本来の目的です。既に広く利用されていることを、後から特許にして独占し利益を得ようとするのは、豊かになる事を妨げる行為です。


人々に利用されて本当に喜ばれるような特許を、考え出してもらいたいものです。

383.デジタルの向こうにアナログがある (2004/09/17)

今日、仕事に帰りに久しぶりに梅田にヨドバシカメラに寄ってみました。相変わらずの混雑ぶりで、特に全店でポイントアップを行っているようで、いつもより多くのお客さんで賑わっていました。


ヨドバシカメラには白物家電と呼ばれる家庭電化製品もありますが、中心はやはりデジタル家電と呼ばれるものでしょう。音楽、写真、ビデオ・テレビ等の何らかの情報を伝達するための製品は、今はほとんどがデジタル技術を駆使したものなっています。


そればかりか、代物家電の中にもマイクロプロセッサーは必ず内蔵されていますから、家電製品の中でデジタル技術を使っていないものを探す方が難しいかも知れません。


デジタルと言う言葉が、一般大衆に対して初めて使われたのは、おそらくデジタル時計でなかったかと思います。「デジタルって何?」と面と向かって質問することがまだ出来たその頃、山口百恵がテレビCMで「デジタルゥーはカシオ♪」と歌っていたのを覚えています。(古い!)


それからCDが普及し、MDが登場すると一気にデジタル製品が溢れ出しました。今では、「デジタルって何?」などと聞くことが出来ないほど、誰もがデジタル家電に埋もれています。


これほどデジタル製品が多くなってきますと、アナログと言う言葉自体が何か古めかしいもののように聞こえますが、今でもデジタル製品の中には必ずアナログ回路が活躍しているのです。

ソフトウェアでいろいろな高級言語が登場しても、ハードウェアを動かす部分でアセンブラーが使われているのと同じように、デジタル製品と言えども電気信号によってハードウェアを動かす回路は、アナログでなければならないのです。


例えば、DVDレコーダーのモーターを動かす場合、実際にモーターの動きは電圧と電流で決まるわけで、それを10Vで0.1Aと決めるまではデジタルで表現できたとしても、モーターにインプットされるのはアナログ信号です。


また、如何にCDの信号を読みとるピックアップの出力信号が、CDの表面に1ビット単位でとして記録されていても、まずアナログの電気信号が出力され、それをアナログーデジタル変換(DAC)を通して初めてデジタル信号になるのです。


しかも、アナログからデジタルへの相互変換に誤差があれば、ただちに音質や画像ノイズになってしまいますから、アナログの回路設計技術の精度は、デジタル製品が高度になればなるほど、より高いものが求められます。


今や表には出てこないアナログ技術ですが、「縁の下の力持ち」としてデジタル製品の発展に貢献しているのです。

381.タッチ通信システム (2004/09/14)

松下電工が、「タッチ通信システム」と言う人体通信技術を実用化したそうです。人体に微弱な交流電流を流し、手などにつけた機器から指を介して情報を他の機器に通信することができるそうです。


今回発売されるのは、計量器メーカーの対面販売計量プリンタに内蔵したものですが、商品情報を人体を経由して計量器に伝達するものです。このような人体から機器への通信だけでなく、人体から人体への通信も可能だそうです。


微弱な電流を用いるため外部に漏洩する危険性が低いと言うことや、低コストにできるメリットがあるそうです。


本来、人体は電気的には食塩水を満たした袋でありますから、人体を通信の伝送路として利用することは、古くから研究されていましたが、人体に影響がないレベルの微弱電流を扱わなければなりませんから、なかなか実用化しなかったのでしょう。


肩に人体側通信機を固定した場合、肩から指にかけての人体部分が通信線として使われます。そして、肩から脚の部分が大地に対して静電容量を持つため、機器側通信機のグランドとの間に交流電流による通信が可能になります。


人体機器側の両極間を流れる漏れ電流を検出して、フィードバックをかけることによって安定した通信を実現するそうです。実際には検出する電流レベルに個人差があり、かつ電流が微弱ですから、機器の設定には工夫が必要になるのでしょう。特許が出願中を含めて300件もあるそうです。


応用分野としては、車のキーレスエントリーや、入退出管理の為の個人認証電子マネーシステムなどが考えられるそうです。


3700bpsと言うビットレートは高速とはいえませんが、無線や赤外線で問題になる漏話性の問題がないため、セキュリティが重要視される場面で、今後利用されると思われます。


パームに応用できるかどうか考えて見ると、人体に取り付けたパームOS機から指でタッチした機器にデータを流し込む事が考えられます。


パームを人体側通信機として腕にくくりつけ、パームのPIMデータを携帯電話で参照する事が可能になれば、携帯電話のデーターサーバーとしてパームを使うことができておもしろいと思ったのですが、機器側通信機がグランドにつながっていなければ回路が形成されないため、携帯電話のようなハンディ機器には適用できないようです。


やはりパームをデータサーバーとして使うことを考えるより、パームOS採用の携帯電話の登場を待つ方が良さそうです。

380.電子書籍とメディア (2004/09/11)

モバイル機器の総合セミナーmobidec 2004が開催され、その中の電子書籍をテーマとした講演で、PDAは「ギア好きの男性の愛好品」と称されていたと言うニュースが、ITmedia Mobileの8月27日付けの記事に書かれていました。


パーム系サイトではこの記事についてあまり話題にならなかったようですが(無視したサイトも多かったのかも知れません)、ビジネスとして電子書籍を軌道に乗せようとするなら、最も普及度の高い機器を対象にするのは当然と言えます。


KDDIでは電子書籍を利用するための機器として、PC、PDA、専用機、それと携帯電話を比較したそうですが、PDAは先ほどの理由で没、PCは「本は机に座って読む物ではない」と没、電子書籍専用機は「関係者しか持っていないほど普及していない」と没にされています。


対して携帯電話は、普及度や広範なユーザー層、携帯性などで電子書籍に一番適していると結論付けたようです。KDDIが出す結論ですから携帯電話が主役になるのは当然の結果ですが、普及率が高いことによる携帯電話の優位性以外は他の機器にも活躍の場がありそうに思えます。


おそらく、携帯電話によって普及する電子書籍があるのと同時に、PCでしか実用にならない書籍が登場したり、PDAでなければ使いづらい電子書籍も登場するのではなかろうかと思うのです。あるいは、専用機でなければ読むことの出来ない電子書籍もあって良いと思います。


電子書籍とは呼ばれていなくても、既に文字情報や画像情報を取り扱うメディアはたくさんあります。それを書籍がデジタル化されたと捉えるかどうかは別にして雑誌ガイドブック等によってこれまでは伝達されてきた情報のかなりの部分が、既にデジタルメディアを通して氾濫しています。


電子書籍という言葉にとらわれずに、広い意味で文字や画像などの2次元情報を扱うメディア全体の健全な発展を期待したいものです。