梅雨に入った途端に真夏のような日差しの日になったり、一転して断続的な大雨が降ったりして、異常気象を実感させる天候が続いております。しとしと、じめじめといった梅雨のイメージは過去のものとなってしまいました。
先週は、京都で半導体関係のシンポジウムがあり、デバイス開発に関するいろいろな話題に触れることが出来ました。
10年ほど前までなら、最新の半導体技術を使ったデバイスと言えば、大規模なハイエンド機である大型のサーバーや高速演算を行うコンピューターに使われていることが多かったのですが、最近は家庭用のDVDレコーダーやゲーム機等にも多く使われるようになってきました。
シンポジウムにおける半導体デバイスのトレンドをみても、そのキーデバイスはゲーム機等のかつてはローエンド機と言われた市場が牽引しています。
半導体の進歩と言えば、少し前までのテクノロジーなら写真製版技術であるリソグラフィーの精細度が高まっていけば、自然と動作電圧が低くなり、高速化と低消費電力化が同時に実現できました。
ところが、90nm以降のテクノロジーにおいてはそう単純な話ではなくなってきています。
これまでのテクノロジーでは、世代が1つ上がるごとに寸法が0.7倍になるスケーリングファクターと呼ばれた一律の縮小率が成り立っていたのですが、最近の進んだテクノロジーではマスクレイヤーごとに異なる縮小率を採用しなければならないなってきました。
また、最小加工線幅が光の波長に近づくにつれて、寸法制度が求められる特定のマスクレイヤーには露光波長の位相を考慮した設計が求められてきています。
また、精細度が高まってデバイスが小さくなれば、酸化膜厚も同時に薄くなっていたため動作電圧をさげる事が出来ていたのですが、これも成り立たなくなりつつあり、速度を維持するためにはかえって電圧を上げる必要が出てきました。
ですから、一部のテクノロジー競争が過熱したゲーム機やグラフィックカードが、真っ先に新しいテクノロジーを採用したデバイスを開発しようとするのに対して、製品の差別化に新しいテクノロジーを必要としない製品分野では、90nmはおろか130nmまでの枯れたテクノロジーで、しかもすでに償却された低コストの製造ラインを使った部品が使われることが多くなってきています。
この状況が一過性のものではない場合、半導体のテクノロジーの進歩が限界に来ていると同時に、半導体が搭載される製品がもはやこれ以上のテクノロジーを必要としていないと言うことになるのかも知れません。DVDがさらに進化した次期光デバイスであるブルーレイディスクやHV DVの市場が、いまだに光ディスク全体の1%にしか満たないという現状に似ているでしょう。
一方、半導体の分野もRF無線技術をCMOS論理回路と混載することが出来る、シリコン・ゲルマニウムなどのテクノロジーが大きく成長し、携帯電話の高性能化に活かされています。
今回のシンポジウムの発表をいくつか聴いていて、さらに新しい半導体技術のトレンドが生まれつつあるように感じました。