125.所変われば刃物も変わる4: シカゴカッツレー (2003/06/16)

USでは、コンシューマーレポートなる雑誌があり、あらゆる消費者向けの製品の評価をしています。シカゴカッツレーの包丁は、そこで高い評価を得ていました。


ドイツのヘンケルも良い評価でしたが、シカゴカッツレーはほとんどの評価項目で上回っていました。これは買っておかなければ後悔すると思いました。


近くの店に行くと、鍵の掛かったショーケースに、いろいろな種類の包丁が並んでいます。その中から、少し小振りの使いやすそうな包丁を選びました。


家に帰って早速使ってみるのですが、これが冗談のように切れないのです。刃の背で切っているようでした。


日本では、良く切れる包丁と言えばスーと力を入れずに切れる物を言いますが、とてもそんな感じではなく、どちらかと言うと押し切ると言う感じでした。


その後、何度か研いで見たものの、さほど切れる様になる訳でもなく、すっかり切れない包丁のイメージができてしまいました。


そう言えば、USのどの家庭に行っても、切れる包丁にお目に掛かることはほとんどありませんでした。たいていの家庭では、8本ぐらいの包丁が木でできた包丁立てとセットになっているのを持っているのですが、まず切れる物がその中にあることはありませんでした。


元々切れないのに手入れをしないものですから、包丁は切っていると言うより押しつぶしている感じになります。確かに、日本のようにみじん切りをしたり、刺身を切ったりするわけではありませんから、それほど切れる必要はないのかもしれません。本当に切らなければならないときは、フードプロセッサーを使えば良いのです。


そもそも、まな板がではなく大理石だったりします。せいぜい角切りをするにしてもまな板は使わず、手で持ったまま切りますから、あまり切れる包丁は危険なのかもしれません。


まあ、切れない包丁吸わない掃除機は、USの家庭で必ず見つける事が出来る定番アイテムといえるのではないでしょうか。

124.所変われば刃物も変わる3: スイスの刃物 (2003/06/11)

あれから10年が過ぎ、USでポットラック(Potluck)と言う食べ物持ち寄りのパーティーがあった時、そこに来ていたスイス人と雑談していた時の事です。


その頃、ドイツのボッシュ製の電動鋸(のこぎり)を買ったばかりだった私は、その刃がスイス製であった事を思い出して、こう訪ねました。


「この前買った鋸に付いていた刃がスイス製だったけど、スイスの刃物っていいの?


スイス人「もちろんだよ。スイスの刃物は世界一さ!なんだ、日本人はそんなことも知らないのか?」


「日本じゃ聞かないねぇ。刃物はドイツのヘンケルなら有名だけど。


スイス人「何だ、そのヘンケルて言うのは?」


「ドイツの有名な刃物メーカーの中でも一番評判が良いメーカーで、日本では誰でも知っているよ。


スイス人「いや、だいたいドイツの刃物なんて誰も知らんぞ!ヨーロッパではスイスの刃物が一番人気があるんだ。スイスのアーミーナイフを持っていないのか?


またしても、ヘンケルは知らんと言われてしまいました。ヘンケルは、輸出が中心のブランドなのでしょうか?


USのコンシューマーレポートなどで、キッチンナイフの比較レポートにはヘンケルが出ていますから、USでの知名度はあるようです。ただ、USには国産メーカーのシカゴカッツレーがあり、評価はいつもダントツでトップでした。


次回は、このシカゴカッツレーの私なりの評価と、USキッチンナイフ事情です。

123.所変われば刃物も変わる2: ゾーリンゲン (2003/06/11)

ドイツのゾーリンゲン刃物で世界的に有名な町で、その中でもヘンケル代表的な刃物メーカーであると学校で習った記憶があります。


1987年に、新婚旅行でドイツに行ったとき、仕事で付き合いのあったドイツ人のお宅に、泊めて頂いたことがありました。


ストゥツガルト近郊のヘレンベルグに住む彼が、市役所広場を案内してくれた後、おみやげを買おうとした私と、彼、ピーターの会話です。


ドイツと言えば刃物だけど、やっぱりヘンケルが良いのかな?」


ピーターヘンケルって何の事だ?」


「ドイツで有名刃物メーカーヘンケルだよ。」


ピーター「そんな名前は聞いたことがないな。」


「そんなはずはないよ。ゾーリンゲンと言う町で作っているヘンケルだよ。発音が悪いのかな。エンケル?ヘーンケル?エンケール?ユンケル?」


ピーター「とにかく、そんなメーカーは知らん。ゾーリンゲンも刃物で有名ということは聞いたことがない。ドイツで刃物と言えば、WMFが一番だ!


WMFなんて、日本では聞いた事がないけど、それがお勧めならWMFの物でも買って見るかな。」


と言うことになりました。ピーターが知らないだけなのでしょうか?


ただ、私が小学生だった頃、デュッセルドルフに5年ほど駐在された方が日本に帰って来られた時に、ヘンケルのナイフをおみやげに頂きましたから、現地でも有名であったのは間違いないと思います。しかし、日本と同じ様にドイツも地域によって、有名な刃物の産地がいろいろあるのかもしれません。


この話には後日談がありまして、ヘンケルでもう一度、変な会話をすることになります。

122.所変われば刃物も変わる1: 刃物の産地 (2003/06/10)

皆さん、日本の刃物の産地で有名な所は、どこだかご存知ですか?恥ずかしながら、私は大阪の堺しか思い浮かべることはできませんでした。


関西のデパートのエスカレーター横で包丁の宣伝販売しているとすると、たいていは堺で作られた物を売っています。ですから、日本の刃物と言えば堺だと思い込んでいました。


ところが少し調べてみると、日本の刃物は岐阜県の関が有名だそうで、「西のゾーリンゲン、東の関」などと称されているそうです。更に、新潟の三条、高知の土佐刃物、福井の武生、兵庫の三木などが、刃物の産地として有名だそうです。


良い子の住んでる良い町にも、確か鍛冶屋さんがありましたね。生活に必ず必要だったものですから、町ごとに鍛冶屋さんがあったのが、伝統的な産業として根づいている訳です。堺は包丁が有名で、三木は大工道具が有名であると言うように、発達の歴史によって、今も産地ごとに得意な分野が違うようです。


これらの刃物の産地が集まって技術の発展や産業の振興を図る、「全国刃物サミット」が開かれているようです。伝統の上に安住するのではなく、常に前進して行く姿勢は評価されるでしょう。


また日本中の大工さんが集まって、鉋(かんな)で薄く木を削る技を競うコンテストがあります。テレビで紹介されたこともあるのでご存知の方もいらっしゃるでしょうが、削り出された極薄い鉋屑は、それだけで芸術的でさえあります。


よく研ぎ澄まされた鉋で削った木の表面は、どんなに細かく磨いた物より滑らかであると言われています。場合によっては、表面がツルツルしすぎて、塗料をはじいてしまうこともあるそうです。


普通、刃の先を横から見ると1本の細い線に光って見えるのですが、研ぎ澄まされた鉋の刃は、横から見ても光らないそうです。つまり、刃の先端の厚さが限りなくゼロに近いのです。


鉋の刃は、片刃、つまり片面はあくまで平面を出し、もう一方に刃を付けます。菜切り包丁なども、片刃です。出刃包丁は、両刃です。一般に片刃は削る為、両刃は切る為と言われます。


日本の料理では、大根やりんごの皮をむいたり、キャベツをみじん切りにしたりしますから、片刃の包丁も便利ですが、西洋ではあまりそのような使い方はしないようですから、両刃の包丁が主に使われています。


さて、西洋の包丁と言えば、ドイツ・ゾーリンゲンのヘンケル社が有名です。日本のほとんどのデパートでも扱っていると思います。学校でも、ゾーリンゲンの刃物は有名であると習いました。


そのゾーリンゲンのヘンケルに関して、ちょっとしたお話がありますので、次回してみたいと思います。

105.野生動物は触るべからず (2003/05/26)

SARSウィルスが、いろいろな動物から検出されていると言うニュースが伝えられています。特に食用として売られている野生動物から、多く検出されているようです。


中国では、4つ足ではパンダ以外、2つ足では人以外、空飛ぶ物は飛行機以外すべて食に供すと言われてきましたから、中国の市場で食用として売られている動物は多種多様で、動物園と間違えるほどだそうです。


中国の桂林に行った時、夕食を食べた食堂の料理がおいしかったものですから、調理場を見せてもらった事があります。「この鍋で、今煮ているのはこれだよ」と言って、鉢から出してきたのは生きた山椒魚でした。ナマズみたいで足がありましたから!


ウィルスが検出されたのは野生動物だけで、一般に家畜のみを食べている私たちの場合は、特に対策を講じる必要はないでしょうが、野生動物を食べる習慣のある地方では注意が必要です。


フランスでは、秋になるとジビエの季節と称して、野禽類を供するレストランがあるようです。フォンテンブローの森鹿ウサギを追いかけて狩猟をすると言うのは、古来王侯貴族の楽しみであったようで、星付きのレストランでは秋の定番メニューになっているようです。


USでは、公園に行けばリスが寄ってくる事は珍しくありません。大都会でも、例えばニューヨーク市のセントラルパークや、ボストンのボストン・コモンでは、よほど寒い季節以外はすぐに寄ってくるはずです。しかし、あまり近づいては行けません。間違って噛み付かれたりすれば、訳の分からない高熱の出る病気になると言われています。


また、少し郊外に行けば、自分の家の庭に野性の鹿やムースが出没する事もありますが、動物の体が触れた木に後から触るだけでも大変重い病気になると言われています。


野生の動物に接触する時は、それなりの知識と覚悟がいるようです。