385.ナパ・ワイナリー紀行1: 前書き (2004/09/28)

私が初めてワイナリーに行ったのは、ニューヨーク州フィンガーレークエリアでした。Seneca Lake周辺に数多くのワイナリーが集中しており、秋のぶどうの収穫のシーズンには多くの観光客が訪れていました。


各ワイナリーで使われているワイングラスには、"UNCORK Newyork !"と言うキャッチフレーズがワイナリーのロゴと共に、サンドブラストで描かれています。記念に持ち帰ったものが今でもいくつか残っており、良い思い出になっています。


しかしUSのワイン雑誌を見ていると、ニューヨークワインはあくまでテーブルワインであり、本格的なワインとしてはカリフォルニア産が良いと書かれています。そこで今度はサンノゼに行ったついでにホテルにあったパンフレットを見て、「ミラソー」と言うワイナリーに行ってみました。


「ミラソー」(”Mirassou")は家族経営のワイナリーを150年間続けてきたUSで最古参のワイナリーの一つです。日本では「ミラス」と表示されていることが多いのですが、現地での発音は「みらっそーぅ」と聞こえます。


以前はUSで一番古いワイナリーだと称していました。しかし、USには禁酒時代があったために、一番古いワイナリーがひとつではなかったのです。創業年が古いワイナリーと、禁酒時代にも舟で沖に出て醸造し、継続営業年数が長いワイナリーがあったためです。そのせいか、最近は一番古いワイナリーだと言うことにあまりこだわっていないようです。


「ミラソー」があるのは、同じカリフォルニアでもサンフランシスコの南側になり、モントレー(Monterey Country)になります。ワイナリーツアーに参加すると、フランス語訛りの強い気さくなおねえさん(本当はおばさんですが)が案内してくれました。ツアーといっても、その時の客は私を含めて3人だけ。


ツアーの途中で、その年に農学部を卒業したばかりと言うかわいらしい女の子が、長靴を履いてバケツを持ってうろうろ歩いているのに出くわしました。どうもバクテリアを使って赤ワインの熟成期間を短縮する実験をしていると言います。熟成が終わればフィルターでバクテリアは取り除くそうですが、実験はうまくいったのでしょうか?


ただ赤ワインはビンテージを特に気にしますから、いくら熟成が早くなっておいしいワインが出来たとしても、年数が経たない限り市場価値は高くならない可能性があります。


やはり一度行った事のあるワイナリーのワインは贔屓にしてしまい、日本でも「ミラソー」を見かけたときは必ず買ってしまいます。皆さんもMirassouをお店で見かけられましたら是非どうぞ。(宣伝してどうする!)


さて、カリフォルニアワインといえば、ナパソノマが有名ですが、昨年秋にナパのワイナリー巡りをした時の様子を、次回から数回に渡ってお伝えしたいと思います。

384 文化資産と保管コスト (2004/09/22)

asahi.comに「昔のCM10万本、廃棄の危機 保管コストかさむ」と言うニュースが掲載されています。1985年以前のCMの原版のほとんどが捨てられる運命にあるそうです。


1985年までに製作されたCMの総数は30万から40万本あり、そのうち現在でもフィルムやビデオで保管されているのが約10万本あるそうです。


ところが保管コストがかさみ、なおかつ視聴が困難になってきているため、廃棄処分が始まっているそうです。


古いメディアで作られたCMを保管するとしても、良い状態で保管するには温度・湿度管理が十分になされていなければなりません。また、再生するための装置をメインテナンスし続けなければならず、旧式の装置を常に動作する状態にしておくのは容易ではありません。


そこで、デジタル化して情報を新しいメディアに移し替えるのですが、コストがかかるため全てのCMをデジタル化するわけにはいかないようです。


古いテレビCMを見ると、当時の生活を偲ばせるものが少なくありません。また、その時代の新製品は人々の憧れでもありましたから、人々の嗜好や生活の水準を推し量る事のできる重要な資料に違いありません。


「タイムマシン」と言う映画で、主人公は未来の図書館の本棚が、ほこりの塊と化した朽ち果てた書物で埋め尽くされているのを見て嘆きます。人類の英知が継承されなかったために、未来の人類は他の動物と同じような野性的な営みに戻ってしまっているのです。


CMのフィルムやビデオを保管コストが高いからと言って廃棄することは、ほこりと化した書物と何ら変わりません。


全てのCMをデジタル・アーカイブとして保存するのは無理でも、博物館などで視聴出来るように今編集しておかなければ、貴重な文化資産を失うことになるでしょう。一刻も早い対応が望まれるところです。

383.デジタルの向こうにアナログがある (2004/09/17)

今日、仕事に帰りに久しぶりに梅田にヨドバシカメラに寄ってみました。相変わらずの混雑ぶりで、特に全店でポイントアップを行っているようで、いつもより多くのお客さんで賑わっていました。


ヨドバシカメラには白物家電と呼ばれる家庭電化製品もありますが、中心はやはりデジタル家電と呼ばれるものでしょう。音楽、写真、ビデオ・テレビ等の何らかの情報を伝達するための製品は、今はほとんどがデジタル技術を駆使したものなっています。


そればかりか、代物家電の中にもマイクロプロセッサーは必ず内蔵されていますから、家電製品の中でデジタル技術を使っていないものを探す方が難しいかも知れません。


デジタルと言う言葉が、一般大衆に対して初めて使われたのは、おそらくデジタル時計でなかったかと思います。「デジタルって何?」と面と向かって質問することがまだ出来たその頃、山口百恵がテレビCMで「デジタルゥーはカシオ♪」と歌っていたのを覚えています。(古い!)


それからCDが普及し、MDが登場すると一気にデジタル製品が溢れ出しました。今では、「デジタルって何?」などと聞くことが出来ないほど、誰もがデジタル家電に埋もれています。


これほどデジタル製品が多くなってきますと、アナログと言う言葉自体が何か古めかしいもののように聞こえますが、今でもデジタル製品の中には必ずアナログ回路が活躍しているのです。

ソフトウェアでいろいろな高級言語が登場しても、ハードウェアを動かす部分でアセンブラーが使われているのと同じように、デジタル製品と言えども電気信号によってハードウェアを動かす回路は、アナログでなければならないのです。


例えば、DVDレコーダーのモーターを動かす場合、実際にモーターの動きは電圧と電流で決まるわけで、それを10Vで0.1Aと決めるまではデジタルで表現できたとしても、モーターにインプットされるのはアナログ信号です。


また、如何にCDの信号を読みとるピックアップの出力信号が、CDの表面に1ビット単位でとして記録されていても、まずアナログの電気信号が出力され、それをアナログーデジタル変換(DAC)を通して初めてデジタル信号になるのです。


しかも、アナログからデジタルへの相互変換に誤差があれば、ただちに音質や画像ノイズになってしまいますから、アナログの回路設計技術の精度は、デジタル製品が高度になればなるほど、より高いものが求められます。


今や表には出てこないアナログ技術ですが、「縁の下の力持ち」としてデジタル製品の発展に貢献しているのです。

382.有機ELとPDA (2004/09/15)

ソニーの新しいCLIE 「PEG-VZ90」が発売されるニュースは、パーム業界に久々の明るい話題を振りまいています。この前の新製品は辞書ソフトのバンドルが主体で、本体の方は若干の変更に留まりましたが、今回の製品は有機ELディスプレーを引っさげての堂々の登場です。


ただ、あまりに堂々としているため、奥まったところにあるPDA売り場ではもてあますかも知れません。大型量販店の正面入り口でキャンペーン販売なんて事になるのではないかと思います。


それはそれで華々しくてよいのですが、有機ELが注目を集めるであろうと予想するに付け、別にCLIE(パーム)でなくてもソニーさんは良かったのだろうなと思う訳です。


あくまで有機ELの市場性実験的な製品で確かめるのが目的であるのならば、誰もがすぐに飛びつくようなもの(例えばiPodのような)で製品化すると、売れすぎて供給が間に合わなくなった時に社会問題になりかねません。


ですから、たとえ潜在的購入者が全員買うようなことになったとしても、計画より遅れて量産が始まった、おそらくまだ歩留まりの良くない有機ELパネルの供給量でまかなえるCLIEを選択したのでしょう。


なんせ月産1000台の予定だそうですから、それは実に的を得たものと言えます。(さびしい!) ある意味ではCLIEは、テクノロジードライバーと言えるかも知れません。


95,000円という価格も中途半端ではなく、新しい物好きが衝動的に飛びついて買うのを躊躇させるには十分です。 


言うまでもなく、ソニーはトリニトロンによって長い間カラーテレビの分野でトップブランドでした。しかし、液晶テレビではシャープの後塵を拝し、やがてソニー神話の崩壊につながっていきます。


ソニーにはこれまでテレビ産業を背負ってきた自負がありますから、このままの状態で甘んじているわけにはいきません。高分子有機ELパネルを引っさげて、一気に液晶テレビを駆逐して再びトップの座を狙う気配です。


この製品によってPDAの将来に変化があるとは思えませんが、ソニーCLIEシリーズにもう一つの伝説が誕生した、今はその瞬間なのかもしれません。

381.タッチ通信システム (2004/09/14)

松下電工が、「タッチ通信システム」と言う人体通信技術を実用化したそうです。人体に微弱な交流電流を流し、手などにつけた機器から指を介して情報を他の機器に通信することができるそうです。


今回発売されるのは、計量器メーカーの対面販売計量プリンタに内蔵したものですが、商品情報を人体を経由して計量器に伝達するものです。このような人体から機器への通信だけでなく、人体から人体への通信も可能だそうです。


微弱な電流を用いるため外部に漏洩する危険性が低いと言うことや、低コストにできるメリットがあるそうです。


本来、人体は電気的には食塩水を満たした袋でありますから、人体を通信の伝送路として利用することは、古くから研究されていましたが、人体に影響がないレベルの微弱電流を扱わなければなりませんから、なかなか実用化しなかったのでしょう。


肩に人体側通信機を固定した場合、肩から指にかけての人体部分が通信線として使われます。そして、肩から脚の部分が大地に対して静電容量を持つため、機器側通信機のグランドとの間に交流電流による通信が可能になります。


人体機器側の両極間を流れる漏れ電流を検出して、フィードバックをかけることによって安定した通信を実現するそうです。実際には検出する電流レベルに個人差があり、かつ電流が微弱ですから、機器の設定には工夫が必要になるのでしょう。特許が出願中を含めて300件もあるそうです。


応用分野としては、車のキーレスエントリーや、入退出管理の為の個人認証電子マネーシステムなどが考えられるそうです。


3700bpsと言うビットレートは高速とはいえませんが、無線や赤外線で問題になる漏話性の問題がないため、セキュリティが重要視される場面で、今後利用されると思われます。


パームに応用できるかどうか考えて見ると、人体に取り付けたパームOS機から指でタッチした機器にデータを流し込む事が考えられます。


パームを人体側通信機として腕にくくりつけ、パームのPIMデータを携帯電話で参照する事が可能になれば、携帯電話のデーターサーバーとしてパームを使うことができておもしろいと思ったのですが、機器側通信機がグランドにつながっていなければ回路が形成されないため、携帯電話のようなハンディ機器には適用できないようです。


やはりパームをデータサーバーとして使うことを考えるより、パームOS採用の携帯電話の登場を待つ方が良さそうです。