382.有機ELとPDA (2004/09/15)

ソニーの新しいCLIE 「PEG-VZ90」が発売されるニュースは、パーム業界に久々の明るい話題を振りまいています。この前の新製品は辞書ソフトのバンドルが主体で、本体の方は若干の変更に留まりましたが、今回の製品は有機ELディスプレーを引っさげての堂々の登場です。


ただ、あまりに堂々としているため、奥まったところにあるPDA売り場ではもてあますかも知れません。大型量販店の正面入り口でキャンペーン販売なんて事になるのではないかと思います。


それはそれで華々しくてよいのですが、有機ELが注目を集めるであろうと予想するに付け、別にCLIE(パーム)でなくてもソニーさんは良かったのだろうなと思う訳です。


あくまで有機ELの市場性実験的な製品で確かめるのが目的であるのならば、誰もがすぐに飛びつくようなもの(例えばiPodのような)で製品化すると、売れすぎて供給が間に合わなくなった時に社会問題になりかねません。


ですから、たとえ潜在的購入者が全員買うようなことになったとしても、計画より遅れて量産が始まった、おそらくまだ歩留まりの良くない有機ELパネルの供給量でまかなえるCLIEを選択したのでしょう。


なんせ月産1000台の予定だそうですから、それは実に的を得たものと言えます。(さびしい!) ある意味ではCLIEは、テクノロジードライバーと言えるかも知れません。


95,000円という価格も中途半端ではなく、新しい物好きが衝動的に飛びついて買うのを躊躇させるには十分です。 


言うまでもなく、ソニーはトリニトロンによって長い間カラーテレビの分野でトップブランドでした。しかし、液晶テレビではシャープの後塵を拝し、やがてソニー神話の崩壊につながっていきます。


ソニーにはこれまでテレビ産業を背負ってきた自負がありますから、このままの状態で甘んじているわけにはいきません。高分子有機ELパネルを引っさげて、一気に液晶テレビを駆逐して再びトップの座を狙う気配です。


この製品によってPDAの将来に変化があるとは思えませんが、ソニーCLIEシリーズにもう一つの伝説が誕生した、今はその瞬間なのかもしれません。

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