89.デジタル一眼レフカメラシステムを考える2: カメラ形式の比較 (2003/05/03)

さて、ここでいくつかのカメラ形式について、その違いを見ていきましょう。デジタルカメラとして、どのカメラ形式が適しているかを考える参考になるかもしれません。


皆さんは、記念写真の時、写真屋さんが、大型の箱のようなカメラを使っていたのを覚えておられますか?頭から黒い布をかぶって、ピントを合わせます。あのカメラを、ビューカメラと言います。正にプロカメラマンの道具と言った感じです。フィルムは、4インチx5インチや、8インチx10インチの乾板を使います。


ピント板は、すりガラスのような物で、布をかぶって、すりガラスに上下逆に写った像でピントを合わせます。カレンダーやポスターなどの、大型写真を撮影するのにも使います。あおりと言う方法を使って、全画面にピントを合わせることができます(パンフォーカス)。シャッターと絞りはレンズに組み込まれており、測光は単独の露出計を使います。プラウベルやカンボと言うメーカーが有名です。


二眼レフは、撮影用のレンズファインダー用のレンズが別々になっており、交換するときは、一体になった2つのレンズを同時に交換します。縦長のデザインで、ファインダーレンズを通った画像は、ミラーを介してファインダーに導かれ、上からのぞき込むのが普通です。測光は、2つのレンズ以外の、別の取り込み窓を使うことがあります。


距離計連動レンジファインダーカメラは、M型ライカに代表される形式ですが、三角法による測距ファインダー内で行います。有効基線長と呼ばれる2つの窓の間隔が、測距の精度に大きく影響します。広角レンズを使ったときの測距精度は、一眼レフよりも高くすることが可能です。


このことは、M型ライカが広角レンズを使う場合一眼レフよりも優れていると言われる理由です。また、レンズの設計も、一眼レフのように大きなミラーがないため、レンズ後玉とフィルム面の距離に制限がなく、設計の自由度が高くなります。


反面、望遠レンズの場合は、ファインダーの枠(ブライトフレーム)が小さくなるため、ライカの135ミリ以上の望遠を使うときは、一眼レフと同じ様な、レフレックスボックスと言うアタッチメントを、使わなければなりません。


距離計連動レンジファインダーカメラは、自動焦点カメラが登場する前に、コンパクトカメラのほとんどが採用していた形式です。自動焦点式コンパクトカメラは、距離計を三角法による自動焦点モジュールに置き換えたものです。


一眼レフは、全ての処理を、撮影レンズのみで行います。撮影レンズを通った画像は、ミラーによってペンタプリズムに導かれ、正転画像として見ることができます。撮影時は、ミラーが急速に引き込まれ、その後シャッターが開き、露光されます。


撮影時に、逆行ならばゴーストやフレアーが出ることがありますが、これらはレンズごとに違った出方をします。一眼レフの最大の特徴は、フィルムに到達する最終的な画像を、ファインダーで確認してから撮影できることにあります。絞りによる被写界深度の効果フィルターワークも、ファインダーで撮影画像を直接確認する事ができます。


また、一眼レフは、測光測距も撮影レンズを通して行うのが普通です。TTL(Through The Lens)と呼ばれ、より正確な計測に役立っています。失敗が許されないプロカメラマンが、一眼レフを好んで使うのには、このような理由があります。


また、一眼レフは撮影用とファインダー用のレンズが同じであるため、幅広い撮影レンズの選択が可能になります。超広角から超望遠まで、撮影レンズを変えるだけで、ファインダー画像もそれに応じて変化します。


さらに、一般撮影は言うに及ばず、接写や複写、商品撮影、顕微鏡撮影や天体撮影など、一眼レフカメラが活躍する場面には限りがありません。正に、全ての撮影に対応できるシステムカメラと言えるでしょう。


以上、カメラの形式の概要と、一眼レフカメラの特徴を説明してきました。そろそろ、私の意図していることに、気付かれている方もおられるでしょうが、次回は、デジタルカメラと銀塩写真の異なる点について、焦点を当てたいと思います。