74.スチュアーデス日記 (2003/04/17)

最近の国際情勢においては、たとえゴールデンウィークといえども、海外旅行に出かける人は、例年に比べ少なくなっているようです。旅行会社も、ゴールデンウィークに激安を謳ったツアーを企画するところもあり、出発日に近づけば近づくほど、更に残った席の値段を下げていくそうです。特に、今年は大きな休みを取りにくい連休になっていますので、なおさら長い旅行はしにくい状況になっています。


そこで、せめて海外に飛び出す気分だけでも出すために、飛行機ネタを少しばかり紹介したいと思います。


以前、某航空会社の国際線スチュアーデスをされていた方の近くに住んでいたことがあり、いろいろと面白い話を聞くことが出来ました。その時に聞いた話の中で、印象に残っている話を今日はしてみたいと思います。あっと驚くスチュアーデス日記です。


その1.ワインはお肌に良いらしい?


国際線ならお酒のサービスがありますね。小瓶でサーブされる時もありますが、フルボトルのワインの場合もあります。さて問題は、残ったお酒はどうするのかと言うことです。当然、お酒として飲める状態であったなら、入国する際に課税されてしまいますから、お酒として飲めない状態にしなければなりません。


栓を抜いていない場合は、施錠してその国内で使用できないようにすれば良いようですが、栓を抜いてしまったワインは、どうするのでしょうか?


実は、どうも捨てているらしいのです。


到着間際に残ったワインは、スチュアーデスの皆さんの手で、ギャレで捨てられているそうです。どうせ捨てるなら、手でも洗ってみようと思うのも自然です。ファーストクラスなどでサーブされるワインの中には、かなりのお高いものがあるようですが、それらを捨てる作業はなかなかの迫力がありそうです。


スチュアーデスの皆さんの間では、こんな会話がされているのでしょうか?


「ドンペリを、飲んで喜んでいるうちは素人ね。あのたまらないお肌の刺激を知らないうちは、ドンペリ通とは、言えないわよ。」


その2.ドアロックは確実に?


さて、あなたの乗ったジャンボ機は、お客さんの搭乗も全て完了し、滑走路に向かって動き出しました。さあ、これから離陸までが緊張する瞬間です。


機内では、ビデオで救命胴衣の着用手順の説明が始まり、続いて非常口の場所を説明しています。機長が、アテンダントに何やら、「離陸するのでドアのモードを切り替えろ」、とかアナウンスで指示を出します。


すると、それまで客室内で忙しく離陸前の仕事をしていた乗務員が、一斉にそれぞれの担当するドアに行き、なにやらレバーを操作すると、全員で完了を指差して確認します。


私は長い間、空の上で、急にドアが開かないように、ドアロックをしているのだとてっきり思っていました。しかし、これはドアを開けた時に、自動的にシューター(すべり台)が膨らんで出るようなモードに変えているのだそうです。


いつも、この作業は、ドアロックだと思っていましたので、終わった時にホッとしていたのですが、馬鹿らしく思えてきます。それより、機長が、暗に「次にドアを開けるときは、海に不時着したあとかもしれないよ、と言っているようなものですから、真剣に救命胴衣の付け方を復習しておくべきだったのかもしれません。


その3.河童


さて、飛行機にはいろいろなお客さんがいるわけですが、極めつけにこんな話があるそうです。ヨーロッパから日本に向かう便に、ある一見普通のサラリーマンに見える、中年の帽子をかぶったお客さんが乗っていたのですが、離陸してすぐに、スチュアーデスさんを呼んでこう言ったそうです。


「大きな声では言えないのですが、実は私は河童です。だから、1時間おきに私の頭の上に水をかけてもらえませんか?さもなければ、日本につく前に死んでしまうかもしれません。


よく、このような変な人はいるらしいのですが、あまりに真剣に言われたので、そのスチュアーデスさんは、機長に相談に行ったそうです。すると、機長は、


冗談で言っているとは思うけど、もし、ほっておいて何か問題が起きても困るので、言われたとおりにしておこう。


と言われたそうです。そのスチュアーデスさんは、そのお客さんの言われたとおりに、1時間おきに帽子を取り、頭の上に手に取った水をパッパとかけたそうです。


別に、帽子を取っても頭の上にお皿があるわけでもなく、普通の人にしか見えないのですが、そのお水かけは日本に到着するまで、10時間以上も続いたそうです。


さて、日本に着いて、搭乗客が機内から降りる時、そのお客さんは、そのスチュアーデスさんに、


「頭を湿らせてくれたおかげで、快適なフライトだった、ありがとう。」


と言って降りて行ったそうです。