72.アリと恐竜 (2003/04/14)

恐竜とゴジラを較べたかと思えば、今度はアリと較べるのかとお思いでしょうが、こ の話は、10年ほど前、県の商工会議所か何かの講演会で、江崎玲於奈博士が招待講演をされたものです。おそらく、いろいろなところで講演されておられたと思います
ので、既にご存じの方も多いかと思います。


アリは、頭、胴、腹が、細い首、腰に相当する部分でつながっておりま
す。
一方恐竜や、現在の動物で言えばなどは、首や腰があまりくびれてはおりません。と言うよりは、寸胴であります。小さい虫などで寸胴なものはたくさんおりますから、逆に大きい動物で、アリのようにキュッと締まった首や腰を持った物がいても良い
ような気がします。


では、どうしてアリと同じ様な形の大型動物がいないのか?


例えば、身長1センチメートルのアリと、同じ形で長さで1000倍、身長で10メ
ートルの動物を考えてみます。首は頭の重さを支えなければなりません。頭の重さ は、その体積に比例するでしょうから、長さで1000倍の頭の重さは1000倍の3乗
1000000000倍(10億倍)になります。


ところが、その頭を支える首の太さは面積ですから、長さで1000倍ならばその2乗、つまり1000000倍(100万倍)にしかなりません。つまり、アリが頭を支え るのに較べて1000倍も厳しい条件で頭の荷重を支えなければなりません。


大きな動物は、太い首と腰でなければ、その荷重を支えられない為、アリのよ
うな形の大きな動物は、存在できないのだということでした。
そういえば、人間も太ってくる時には、真っ先に首の周りに肉がついて二重あごになったり、ウエスト周りの脂肪が気になってきますが、これも自然に重さに耐えうる首や腰にしておく為でしょうか?


このような考え方は、パームやノートブックパソコンを比較する時にも、使えるかもしれ
ません。例えば、体積に比例しているリチウムイオン電池の充電容量などは、小さくしていく時には長さの3乗で効いてきますから、小型化による影響が最も大きいものの一つでしょう。その上、CPUクロックを引き上げようとすれば、さらに電池に対する負荷が増えますから、うまく設計しなければ同じ連続使用時間を保つことは出来ません。


ラフで、いい加減な計算をしてみると、ノートブックパソコンが1.3Ghzから1.8GhzぐらいのCPUクロックの場合、電池の容量から考えると、パームは大体100Mhz辺りが妥当かなと思ったりしています。もちろん、ノートブックパソコンとパームは、CPUその物も使い方も違いますので、この通りには行かないでしょうが、コンピューターを小型化していくときの、ひとつの目安として考えなければいけないと思います。


手のひらのコンピューターという形にするためには、多くの技術や苦労の積
み重ねがあったのだろうと言う事を、改めて感じた次第です。