581.国語の問題に物申す (2006/04/24)

「ゆとり教育」によって低下し続ける教育レベルを引き上げようと、教育界ではさまざまな変革を行おうとしています。


英語教育を小学校から必修にして、日本人は英語力が弱いとされている現状を改善しようと言う動きも、そのひとつです。しかし、「いや、英語をやる前に国語の力が不足していることの方が問題だ!」、といった声も多く聞かれるようです。


「ゆとり教育」がダメなら、次はまた「詰め込み教育」といった安易な変更では教育現場が右往左往するだけですから、しっかりしたビジョンを示し、将来の日本を担う次世代に本当に必要となる、知識・教養を身に付けることができる教育を目指してもらいたいものです。


さて、ここにあるのは、とある小学6年生用の国語の問題です。日本に永く住む外国人ジャーナリストが書いた文章が抜き出されています。


まず、そのジャーナリストが本を出版した時の話から始まり、同じ本を読んでも日本は地域ごとに文化が異なっているので、反響に大きさ差があると書いています。一方で非常に賛同を得た本が、別のところでは批判されるようなことが日本では珍しくないとしています。


「日本国中を講演して回った時、大阪と京都では爆笑を誘って大いに受けたので、九州での講演でも同じように受けるかと思っていたら全く反応が異なっていて、挙句の果てに「   」人までいたのには驚いた。」と書いています。


さあ、「   」にはどのような人がいたのでしょうというのが、問い1の問題です。



  1. 近くの人と話を始めた
  2. 怒って帰ってしまった
  3. 手帳を取り出してメモを取り始めた
  4. 居眠りを始めた

さて、正解はどれでしょうか?


これはあくまで国語の問題ですから、関西で受けたのとは逆であったことは想像できます。つまり受けなかったということなのですが、1から4のどのケースもありそうな気がします。少なくとも多数の聴衆の中には、それぞれ一人や二人はいたのではないかと思います。


で、正解は3番です。つまり関西では爆笑だったのに、九州では真面目な顔でそれをメモしていたというところに、オチがあるということのようです。


私はてっきり、本にも批判があったというので、怒って帰ってしまったのだと思いました。その方が爆笑になった地域との差が大きいと思ったのです。


この問題の場合はすでに文章が書かれた後ですから、それと同じでなければ正解でないと言うことかもしれませんが、正解以外の答えについて、論理的に説明ができるかどうかはいささか疑問です。


以前、大学入試問題の国語の問題に、「作者はこの時どのように感じたか、正しいものを以下の1から5までの中から選びなさい。」というのがありました。その後、当の作者が、「私がその時感じていたのは、1から5のどれでもありませんでした。」と言われていた事を思い出しました。


過去に作られた同じ問題を何回も使うことはできませんから、次々と新しい文章から問題を作り続けていかなければなりません。しかし、テレビのクイズ番組のように、ただおもしろい問題を作ればよいというものではありません。子どもたちが国語の勉強をしていく上で、どのような問題を出していくかは非常に重要です。


日本語文化を正しく継承していくために必要な、しかも子どもたちが国語の勉強を楽しく感じる事ができる、質の高い国語の問題を望みたいものです。