「目は口ほどに物を言う」と言いますが、これからは「照明も口ほどに物を言う」時代になりそうです。
2005年6月30日(木)と7月1日(金)の2日間にわたって、 関西国際空港2階国内線チェックインロビーにおいて、「照明光を用いた情報通信による情報提供に関する実証実験」が行われたそうです。
ユビキタス社会を目指すからには、ネットワークを意識しないで使える環境を整えることが不可欠です。携帯電話や無線LANが普及してきましたが、今後さらに多くの機器をネットワークに接続していくためには、さらに回線を増やしていく必要があります。
無線方式の問題点は、無線の周波数帯域が限られていることです。既存のラジオやテレビ、通信回線などでほぼ使い切っており、携帯電話への新規割り当ても容易ではありません。
そこで今注目されているのが、可視光を使った情報通信です。パームにおける赤外線ビームと似ていますが、可視光を使うことによって照明器具がそのまま送信機の光源として使えるため、設置の費用を低く抑えることが可能です。
また、無線の場合さまざまな法規制がありますが、可視光の場合は規制がほとんどなく、照明が届く範囲だけに限定して情報を伝えることができます。
関西空港での実験では、100人のモニターが携帯電話に装着する機器を用いて、搭乗する便の情報を得たり、施設の案内情報を参照することができたそうです。
これまでネットワークに端末を接続する場合、回線がつながる場所に移動する必要がありましたし、ネットワークから必要な情報を探し出さなければなりませんでした。
照明光による通信は、人間がちらつきを感じない速さで点滅させることによって、デジタル情報を伝えます。届く範囲は照明で明るい所だけですから、局所的に必要な情報だけを限定して配信することができます。
光源としては、変調装置を追加すれば既存の蛍光灯がそのまま使えます。ただ、蛍光灯の場合、時間応答性が悪く、10Kbps程度が限界だそうです。
光源として開発が進んできたLEDを使えば、数十Mbpsで通信を行うことができますが、まだ高価であるため、用途に応じて使い分けていく必要があります。
空港なら、発着案内の掲示板の前に立てば、自分の飛行機のスケジュールが自動的に表示され、ラウンジに近づけば場所の案内や混雑状況が表示されるなど、今いる場所によってさまざまな情報が提供されます。
基本的に照明が情報の発信源になるところがシステムの要ですから、双方向通信をターゲットにしている訳ではなさそうです。
また、光源がたくさんあると、それぞれの照明器具に情報を配信するネットワークも必要になりますが、そのためにケーブルを引き回したり無線を使ったのでは面白くありません。電力線通信などの新しい方式が、期待されているようです。
関空での実験には、JAL、NTTドコモ、松下電器・電工が参加して行われたようです。空港のように多くの人が集まる場所で、必要な情報が手軽に得られるようになれば、初めて訪れた場所で困ることが少なくなるでしょう。
しかし、光源として照明が使え、電力線による配信が可能になると言うことは、今後普及が期待される家庭内LANにおいて、威力を発揮するものと思われます。
日常空間を照らす照明によってすべてのものがネットワークに取り込まれたとき、私たちはネットワークを空気のように意識しなくなるのでしょう。